17 / 93
1部
第16話 モフモフうさぎの帰還後は、美青年と鳥が ご案内!
しおりを挟む
(……それにしても……)
ゆっくりゆっくり中庭をすすんでいき、頭にかぶったフードごしでもわかるくらい、チラチラ、チラチラこちらをのぞく気配がした、黒装束の5人。
どうして急にいなくなってくれたの?
屋外で、人がいるのにもかかわらず、私とロエルが熱くキスしている姿をみて、『これは婚約中にちがいない』って納得した、とか?
それって、急に、ものわかりがよくなってない?
あの人たち、すごくしつこくて、頑固そうだったのに。
だったら、別の理由?
……たとえば。彼らは聖兎と呼ばれる不思議なうさぎ、ティコティスを神聖視していた。
だからあの5人には、
『聖兎さまとお会いできた日は、キスしているカップルをのぞき見しちゃいけない。のぞく気がなくて視界に入ってしまった場合は即、立ち去ること』
とか……、そういう決まりごとがあるとか?
(うーん、自分で考えといてなんだけど、なんじゃ、そりゃ……。そんなピンポイントな戒律や規則って、ありえる? いくら異世界とはいえ、そんな決まり、ワケがわかんないよ)
そのとき。
私の疑問をよそに、一羽の鳥がこちらに向かって飛んできた。
ロエルや私がいる中庭のすぐ目のまえ、高さ2メートルほどの位置までくると、その鳥は黒い色をした、カラス……のような鳥だということがわかった。
この世界にもカラスがいるの?
黒い鳥は、クチバシをあけ、ロエルに向かって言う。
そう、「鳴く」ではなく、「言う」。この鳥さんは、人の言葉で言ったの!
「ロエル様、お客様5名は、たしかにお帰りになりました。もう館の敷地内にはいません」
なんて、お利口さんなんだ! と思いながら、その鳥をよくながめてみる。
羽毛は黒いけれど、細長いクチバシとぱっちりしたお目々のまわりは赤みをおびた黄色だ。
カラスというよりも、この世界の九官鳥なのかもしれない。
私がやってきた世界の、九官鳥や鸚鵡やインコ、それにカラスだって、人の言葉をマネることならあるけど……。
この鳥さんの話しかたは、すごくなめらか。
人間が話しているのと変わらない言葉づかい。
それは、もしかしたら、ティコティスが私にくれたチョーカーについてる翻訳機能のおかげかもしれないけど……。
とにかく本当に人が話しているように聞こえる。
しかも、内容からすると……あの、黒ずくめの5人が帰ってくれたことを報告しにやってきてくれたんだよね?
ただ単に人間の言葉をおぼえてマネをしたんじゃなくて。
有能すぎ!
もしかすると……この子も、ティコティスのように、他の世界からやってきた、不思議な生物?
私はこの世界にやってきたばかりなのだから、しかたないのかもしれないけれど、ここにやってきて、まだこの中庭から一歩も外にでていない。
なのに、謎ばかりが増えていく。
鳥さんは続けた。
「お客様、お茶の準備ができております。ささ、こちらへどうぞ」
鳥さんは私が目で追っていけるくらいのスピードで正面の回廊へと続く方向へ、羽をはばたかせてスイスイすすんでいく。
……お客様って、私のこと?
私は前方をすすむ鳥さんのうしろ姿とロエルを交互にみて、答えを探そうとする。
きょろきょろする私に、ロエルはあたたかなほほえみを向ける。
「おいで、ユイカ。きみのような客ならもオレも、ペピートも歓迎する」
「……ペピート? ペピートって誰のことなの、ロエルさん」
ペピートとは、いったい誰のことなのか、疑問がわいたと同時に、いままで『ロエル』と呼び捨てにしていたことに気づき、『ロエルさん』と呼んでみる。
「説明がたりなかったな。ペピートというのは、いま黒い翼をはためかせて、きみを案内している者のことだ」
「あの鳥さんは――ペピートという名前だったのね」
「ああ、あと、オレのことは呼び捨てで、かまわない。もう何度もロエルと呼んでくれただろう?」
「それは……婚約者のフリをしている最中のことだったし……」
初めて会った人なのに、さんづけで呼ぶのも忘れるほど、抱きしめられることやキスに夢中だったなんて、恥ずかしくって言えない。
ロエルはクスッとわらって、私に提案する。
「フリが終わっても、オレはきみをユイカと呼んでいるんだ。きみもロエルと呼んでくれ」
ロエルの口調はつつみこむようなやさしさがあり、それでいて相手にノーと言わせない雰囲気があった。
「あなたが、それでいいなら……私もロエルと呼ぶことにするけど」
たったこれだけ言うのに、なぜか、やたらもじもじしてしまった。
もう婚約者のフリは終わったんだ。平常心、平常心。
気分を切りかえていこう。
前方にはペピート、横にはロエル。
両名にいざなわれて、私は館内をめざし歩いていく。
私のとなりで私の歩調にあわせてゆっくり歩いてくれるロエルは、ときおり私と目があうと、やさしくほほえむ。
おだやかで真面目な好青年といった雰囲気。
――さっきまで私に甘いくちづけをしていた男性と同一人物とは思えないくらいだ。
(……もしかして、私は、黒ずくめの5人が帰ったことでロエルとのキスも終わってしまったことを――さみしいと思っているの?)
そんな自分を認めるのは、二十数年間、周囲から「地味で真面目」と評価されていた私には、むずかしかった。
いままでの私を知っている人が誰ひとりいない異世界にきたのだから、これをチャンスと思って、引っ込み思案な性格を封印して、積極的な性格になろう……! そんな高校デビューや大学デビューをめざすようなことは、私には無理みたい。
しかも、志望する学校を受験し、はれて入学するのとちがって、私はこの世界をめざしてきたわけじゃない。
心の準備もしてないうちに精霊さんによって、この館の中庭にある泉のそばに、とばされてしまった。
館の中に入るために回廊をめざす私は、
(そっか、鳥さんの名前は、ペピートっていうのか……)
などなど、極力、となりにいるロエル以外のことを考えようと意識した。
……だって、他のこと考えて気をまぎらわしていないと、さっきまでキスしていた人と、なんでもない顔していっしょに歩いたりなんて、恥ずかしくってできないよ。
ついさっきの私は――。婚約者のフリは終わったんだから、気分を切りかえてよう。そう自分に言い聞かせていた。
だけど、いくら婚約者のフリはしなくてよくなっても、いまもロエルといっしょに歩いている以上……気持ちを完全に切りかえ、平常心をとりもどすのは――私には難易度が高すぎた。
初日からこんなんじゃ、私の異世界での生活は前途多難かも。
ゆっくりゆっくり中庭をすすんでいき、頭にかぶったフードごしでもわかるくらい、チラチラ、チラチラこちらをのぞく気配がした、黒装束の5人。
どうして急にいなくなってくれたの?
屋外で、人がいるのにもかかわらず、私とロエルが熱くキスしている姿をみて、『これは婚約中にちがいない』って納得した、とか?
それって、急に、ものわかりがよくなってない?
あの人たち、すごくしつこくて、頑固そうだったのに。
だったら、別の理由?
……たとえば。彼らは聖兎と呼ばれる不思議なうさぎ、ティコティスを神聖視していた。
だからあの5人には、
『聖兎さまとお会いできた日は、キスしているカップルをのぞき見しちゃいけない。のぞく気がなくて視界に入ってしまった場合は即、立ち去ること』
とか……、そういう決まりごとがあるとか?
(うーん、自分で考えといてなんだけど、なんじゃ、そりゃ……。そんなピンポイントな戒律や規則って、ありえる? いくら異世界とはいえ、そんな決まり、ワケがわかんないよ)
そのとき。
私の疑問をよそに、一羽の鳥がこちらに向かって飛んできた。
ロエルや私がいる中庭のすぐ目のまえ、高さ2メートルほどの位置までくると、その鳥は黒い色をした、カラス……のような鳥だということがわかった。
この世界にもカラスがいるの?
黒い鳥は、クチバシをあけ、ロエルに向かって言う。
そう、「鳴く」ではなく、「言う」。この鳥さんは、人の言葉で言ったの!
「ロエル様、お客様5名は、たしかにお帰りになりました。もう館の敷地内にはいません」
なんて、お利口さんなんだ! と思いながら、その鳥をよくながめてみる。
羽毛は黒いけれど、細長いクチバシとぱっちりしたお目々のまわりは赤みをおびた黄色だ。
カラスというよりも、この世界の九官鳥なのかもしれない。
私がやってきた世界の、九官鳥や鸚鵡やインコ、それにカラスだって、人の言葉をマネることならあるけど……。
この鳥さんの話しかたは、すごくなめらか。
人間が話しているのと変わらない言葉づかい。
それは、もしかしたら、ティコティスが私にくれたチョーカーについてる翻訳機能のおかげかもしれないけど……。
とにかく本当に人が話しているように聞こえる。
しかも、内容からすると……あの、黒ずくめの5人が帰ってくれたことを報告しにやってきてくれたんだよね?
ただ単に人間の言葉をおぼえてマネをしたんじゃなくて。
有能すぎ!
もしかすると……この子も、ティコティスのように、他の世界からやってきた、不思議な生物?
私はこの世界にやってきたばかりなのだから、しかたないのかもしれないけれど、ここにやってきて、まだこの中庭から一歩も外にでていない。
なのに、謎ばかりが増えていく。
鳥さんは続けた。
「お客様、お茶の準備ができております。ささ、こちらへどうぞ」
鳥さんは私が目で追っていけるくらいのスピードで正面の回廊へと続く方向へ、羽をはばたかせてスイスイすすんでいく。
……お客様って、私のこと?
私は前方をすすむ鳥さんのうしろ姿とロエルを交互にみて、答えを探そうとする。
きょろきょろする私に、ロエルはあたたかなほほえみを向ける。
「おいで、ユイカ。きみのような客ならもオレも、ペピートも歓迎する」
「……ペピート? ペピートって誰のことなの、ロエルさん」
ペピートとは、いったい誰のことなのか、疑問がわいたと同時に、いままで『ロエル』と呼び捨てにしていたことに気づき、『ロエルさん』と呼んでみる。
「説明がたりなかったな。ペピートというのは、いま黒い翼をはためかせて、きみを案内している者のことだ」
「あの鳥さんは――ペピートという名前だったのね」
「ああ、あと、オレのことは呼び捨てで、かまわない。もう何度もロエルと呼んでくれただろう?」
「それは……婚約者のフリをしている最中のことだったし……」
初めて会った人なのに、さんづけで呼ぶのも忘れるほど、抱きしめられることやキスに夢中だったなんて、恥ずかしくって言えない。
ロエルはクスッとわらって、私に提案する。
「フリが終わっても、オレはきみをユイカと呼んでいるんだ。きみもロエルと呼んでくれ」
ロエルの口調はつつみこむようなやさしさがあり、それでいて相手にノーと言わせない雰囲気があった。
「あなたが、それでいいなら……私もロエルと呼ぶことにするけど」
たったこれだけ言うのに、なぜか、やたらもじもじしてしまった。
もう婚約者のフリは終わったんだ。平常心、平常心。
気分を切りかえていこう。
前方にはペピート、横にはロエル。
両名にいざなわれて、私は館内をめざし歩いていく。
私のとなりで私の歩調にあわせてゆっくり歩いてくれるロエルは、ときおり私と目があうと、やさしくほほえむ。
おだやかで真面目な好青年といった雰囲気。
――さっきまで私に甘いくちづけをしていた男性と同一人物とは思えないくらいだ。
(……もしかして、私は、黒ずくめの5人が帰ったことでロエルとのキスも終わってしまったことを――さみしいと思っているの?)
そんな自分を認めるのは、二十数年間、周囲から「地味で真面目」と評価されていた私には、むずかしかった。
いままでの私を知っている人が誰ひとりいない異世界にきたのだから、これをチャンスと思って、引っ込み思案な性格を封印して、積極的な性格になろう……! そんな高校デビューや大学デビューをめざすようなことは、私には無理みたい。
しかも、志望する学校を受験し、はれて入学するのとちがって、私はこの世界をめざしてきたわけじゃない。
心の準備もしてないうちに精霊さんによって、この館の中庭にある泉のそばに、とばされてしまった。
館の中に入るために回廊をめざす私は、
(そっか、鳥さんの名前は、ペピートっていうのか……)
などなど、極力、となりにいるロエル以外のことを考えようと意識した。
……だって、他のこと考えて気をまぎらわしていないと、さっきまでキスしていた人と、なんでもない顔していっしょに歩いたりなんて、恥ずかしくってできないよ。
ついさっきの私は――。婚約者のフリは終わったんだから、気分を切りかえてよう。そう自分に言い聞かせていた。
だけど、いくら婚約者のフリはしなくてよくなっても、いまもロエルといっしょに歩いている以上……気持ちを完全に切りかえ、平常心をとりもどすのは――私には難易度が高すぎた。
初日からこんなんじゃ、私の異世界での生活は前途多難かも。
0
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。
八坂
恋愛
ある国の王子であり、王国騎士団長であり、婚約者でもあるガロン・モンタギューといつものように業務的な会食をしていた。
普段は絶対口を開かないがある日意を決して話してみると
「話しかけてくるな、お前がどこで何をしてようが俺には関係無いし興味も湧かない。」
と告げられた。
もういい!婚約破棄でも何でも好きにして!と思っていると急に記憶喪失した婚約者が溺愛してきて…?
「俺が君を一生をかけて愛し、守り抜く。」
「いやいや、大丈夫ですので。」
「エリーゼの話はとても面白いな。」
「興味無いって仰ってたじゃないですか。もう私話したくないですよ。」
「エリーゼ、どうして君はそんなに美しいんだ?」
「多分ガロン様の目が悪くなったのではないですか?あそこにいるメイドの方が美しいと思いますよ?」
この物語は記憶喪失になり公爵令嬢を溺愛し始めた冷酷王子と齢18にして異世界転生した女の子のドタバタラブコメディである。
※直接的な性描写はありませんが、匂わす描写が出てくる可能性があります。
※誤字脱字等あります。
※虐めや流血描写があります。
※ご都合主義です。
ハッピーエンド予定。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
都合のいい女は卒業です。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。
しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。
治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。
どちらが王家に必要とされているかは明白だった。
「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」
だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。
しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。
それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。
だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。
「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」
偽りの婚約のつもりが愛されていました
ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。
だけど私は子爵家の跡継ぎ。
騒ぎ立てることはしなかった。
子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として
慎ましく振る舞ってきた。
五人目の婚約者と妹は体を重ねた。
妹は身籠った。
父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて
私を今更嫁に出すと言った。
全てを奪われた私はもう我慢を止めた。
* 作り話です。
* 短めの話にするつもりです
* 暇つぶしにどうぞ
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる