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1章
第29話 安全第一! でも、こっちはこっちで問題があるような
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アパート沢樫荘の管理人室。
今日からこのアパートで一入居者として暮らす予定のわたしは、入居者でも管理人でも……それどころか人間ではない、「あやかし」のリンちゃんから、あることを助言される。
わたし、谷沼 紗季音のことを『サキっち』と呼ぶリンちゃんのアドバイスとは――。
『安全のためにもサキっちはオキツネサマと1年は、いっしょに暮らすべきっす』
リンちゃんは、人の言葉を話す、青い炎。彼(リンちゃんの一人称は『おれっち』なので、リンちゃんはたぶん男の子のはず)は、オキツネサマと呼ばれるイケメンのあやかしの横でプカプカ浮かんでいる。
わたしは、自分の隣で黙りこんでいる青年、オキツネサマに視線を走らせた。(オキツネサマはリンちゃんがいいと言うまで、わたしたちの話に口をはさまないように、リンちゃんからお願いされている)
和服を身につけた人間の成人男性の姿に、耳としっぽだけはキツネのそれであるオキツネサマは、かなりの美形。
だけど、だからといって今日会ったばかりの男の人と1年もいっしょに暮らすわけには、いかない。
わたしはリンちゃんに質問した。
「……なんで、『1年は』オキツネサマと暮らすべきなの?」
リンちゃんは青く輝く炎の体をゆらしながら、真剣な声色で答えた。
『あの黒い霊は、一度獲物と決めたものを丸1年間あきらめない、しぶとくて、しつこい霊だから! でもまぁ晴れて1年たてば……サキっちは自由の身になれるっす』
――あの黒い霊。
そう、今日のわたしは、このアパートの出入口手前で、黒い靄のような『何か』に、つかまえられてしまったのだ。
さいわい、その場にあらわれたオキツネサマがわたしを助けてくれたんだけど――。リンちゃんがさっき聞かせてくれた説明によれば、あの黒い色をした、なんだかよくわからないものは、霊体で……わたしはかなり危険な状況だったらしい。
実際、あのときわたしの手足をつかんだ黒い霊体は『ゴハン、ゴハン……』とわたしに向かって言ってきて、抵抗しまくるわたしをけっして放すまいとしていた。……もう少しでわたし、黒い霊のゴハン――食料として食べられちゃうところだったんだ。
今思い返しても、ひやひやするのに、わたしを食べそこねたあの黒い霊は、今後1年もわたしをあきらめてくれないなんて……。
(せっかく今日から始まる、初の1人暮らしを楽しみにしていたのに、とんだ災難にみまわれちゃったよ……)
この沢樫荘が、怪奇物件としてネットでウワサになってることに気づいた友達の恵が、わたしを心配して、わざわざ報告をくれたのに……。
当のわたしが、怪奇現象とか恐怖体験とか、そこまで本気にしてなかったことが、今となっては悔やまれる。
せっかくの恵の忠告をいかせなかったわたしだけど――だからこそ、今、リンちゃんがわたしにした忠告(黒い霊に食べられちゃわないようにしようね作戦)には、今度こそ素直に耳をかたむけておいたほうが、いいのかな……。
でも。
今日、会ったばかりの相手。しかも、キツネに変身したり人間に変身したりする、あやかしといっしょに暮らす。そのあやかしは何百年も生きているけど、見た目は20代男子、だなんて――。
初めての同居人として、いろいろハードルが高すぎな気がしてしまう。
かといって、このアパートから逃げだしたとしても……リンちゃんいわく黒い霊はオキツネサマが一時的に追い払っただけ。わたしが1人でどこかに行くと憑いてきてしまうらしい。
これじゃ、1人で神奈川の実家に戻ったとしても、状況はよくならないどころか、家族まで巻きこんでしまうかも……。それは避けたい。
(ここは……1年間このアパートに住んで、黒い霊にわたしを食事候補にするのをあきらめてもらうのが、一番安全なのかなぁ。リンちゃんの提案するとおり――)
だけど! それって、オキツネサマと同居するってことなんだよね。黒い霊を追い払えるのはオキツネサマなんだから。……って、あれ? わたし、さっきから思考が堂々めぐりになってる、ような。
ああでもない、こうでもないと、考えがぐるぐる、ぐるぐる、ただ、まわっているだけなことに気づき、わたしは余計あせりまくる。
心臓が尋常じゃないほど、ザワザワして、落ちついてものを考えられない。
こんなときこそ、落ちつかなきゃと思うのに……。
そこへ。
リンちゃんが、たたみかけるように言ってきた。
『サキっちの身の安全のためには、今はオキツネサマとの同居をテレている場合じゃないっす! 今日からオキツネサマとサキっちはさっそく同居する、それ以外の対策方法をサキっちが思いつかない以上、サキっちはオキツネサマといっしょに暮らす――異存ないっすね』
異存はないかと聞かれて、「うん、ないよ」と言える心境には、まだ至れない。
でも、たしかにわたしは、最善だと思える『黒い霊への対処方法』を思いつけずにいる。
リンちゃんの、強引な提案に――わたしは反論することができなかった。
緊迫した雰囲気でリンちゃんが言いたす。語尾がいつもの『~っす』じゃなかった。
『おれっちは、サキっちのことが心配なんだよっ』
「――リンちゃん」
リンちゃんの声はどこまでも真剣で、わたしは胸が熱くなる。
どうしてリンちゃんは、そこまでわたしのことを「心配」するの? って思った瞬間。
そういえば、リンちゃんとオキツネサマは両名とも、わたしを『2人が昔から知ってる相手』と人まちがいしているのだったと思いだす。(……黒い霊の存在のことで頭がいっぱいで、おもわず忘れかけてたけど、ちゃんと思いだしたよ)
わたしがいくら人ちがいだと説明しても信じてくれない2人に、疲れもしたし、今もわたしを「誰か」とカンちがいしたままとはいえ――。
懸命に他人の身を案じるリンちゃんの姿には、心を打つものがあって。かたくなにオキツネサマとの同居を拒んでいたはずのわたしなのに、気がつくと。
「うん……。たしかに現時点では、リンちゃんが言うとおり、オキツネサマといっしょにいるのが、安全面では一番いいのかもしれないね」
と言っていた。
リンちゃんはうれしそうな声で返事をする。
『わかってくれたみたいっすね、サキっち! やっかいな黒い霊に目をつけられたのは災難だけど、事態を甘くみないほうがいいっす』
そしてリンちゃんは、自分の横にいるオキツネサマに話しかける。
オキツネサマは……といえば、リンちゃんとの約束を守り、静かにわたしとリンちゃんの話を聞いていた。もしかして、すわりながら寝ちゃった? って、わたしに思わせるほど、オキツネサマは沈黙していた。
『……ということっす。オキツネサマ、もう話しても大丈夫ですよ』
「うむ」
あ、たった一言だけど、なんだかオキツネサマの声、ひさしぶりに聞く気がする。
けっこう長く、わたしとリンちゃんだけでしゃべってたからな。
……べつにリンちゃんはオキツネサマを邪魔者あつかいしたわけではなく、オキツネサマが黒い霊について説明すると――必要以上に聞く者を恐怖に陥れてしまう可能性が高いから、だそうだ。
オキツネサマには、オブラートにつつんだ言いかたができないから、らしい。
今日からこのアパートで一入居者として暮らす予定のわたしは、入居者でも管理人でも……それどころか人間ではない、「あやかし」のリンちゃんから、あることを助言される。
わたし、谷沼 紗季音のことを『サキっち』と呼ぶリンちゃんのアドバイスとは――。
『安全のためにもサキっちはオキツネサマと1年は、いっしょに暮らすべきっす』
リンちゃんは、人の言葉を話す、青い炎。彼(リンちゃんの一人称は『おれっち』なので、リンちゃんはたぶん男の子のはず)は、オキツネサマと呼ばれるイケメンのあやかしの横でプカプカ浮かんでいる。
わたしは、自分の隣で黙りこんでいる青年、オキツネサマに視線を走らせた。(オキツネサマはリンちゃんがいいと言うまで、わたしたちの話に口をはさまないように、リンちゃんからお願いされている)
和服を身につけた人間の成人男性の姿に、耳としっぽだけはキツネのそれであるオキツネサマは、かなりの美形。
だけど、だからといって今日会ったばかりの男の人と1年もいっしょに暮らすわけには、いかない。
わたしはリンちゃんに質問した。
「……なんで、『1年は』オキツネサマと暮らすべきなの?」
リンちゃんは青く輝く炎の体をゆらしながら、真剣な声色で答えた。
『あの黒い霊は、一度獲物と決めたものを丸1年間あきらめない、しぶとくて、しつこい霊だから! でもまぁ晴れて1年たてば……サキっちは自由の身になれるっす』
――あの黒い霊。
そう、今日のわたしは、このアパートの出入口手前で、黒い靄のような『何か』に、つかまえられてしまったのだ。
さいわい、その場にあらわれたオキツネサマがわたしを助けてくれたんだけど――。リンちゃんがさっき聞かせてくれた説明によれば、あの黒い色をした、なんだかよくわからないものは、霊体で……わたしはかなり危険な状況だったらしい。
実際、あのときわたしの手足をつかんだ黒い霊体は『ゴハン、ゴハン……』とわたしに向かって言ってきて、抵抗しまくるわたしをけっして放すまいとしていた。……もう少しでわたし、黒い霊のゴハン――食料として食べられちゃうところだったんだ。
今思い返しても、ひやひやするのに、わたしを食べそこねたあの黒い霊は、今後1年もわたしをあきらめてくれないなんて……。
(せっかく今日から始まる、初の1人暮らしを楽しみにしていたのに、とんだ災難にみまわれちゃったよ……)
この沢樫荘が、怪奇物件としてネットでウワサになってることに気づいた友達の恵が、わたしを心配して、わざわざ報告をくれたのに……。
当のわたしが、怪奇現象とか恐怖体験とか、そこまで本気にしてなかったことが、今となっては悔やまれる。
せっかくの恵の忠告をいかせなかったわたしだけど――だからこそ、今、リンちゃんがわたしにした忠告(黒い霊に食べられちゃわないようにしようね作戦)には、今度こそ素直に耳をかたむけておいたほうが、いいのかな……。
でも。
今日、会ったばかりの相手。しかも、キツネに変身したり人間に変身したりする、あやかしといっしょに暮らす。そのあやかしは何百年も生きているけど、見た目は20代男子、だなんて――。
初めての同居人として、いろいろハードルが高すぎな気がしてしまう。
かといって、このアパートから逃げだしたとしても……リンちゃんいわく黒い霊はオキツネサマが一時的に追い払っただけ。わたしが1人でどこかに行くと憑いてきてしまうらしい。
これじゃ、1人で神奈川の実家に戻ったとしても、状況はよくならないどころか、家族まで巻きこんでしまうかも……。それは避けたい。
(ここは……1年間このアパートに住んで、黒い霊にわたしを食事候補にするのをあきらめてもらうのが、一番安全なのかなぁ。リンちゃんの提案するとおり――)
だけど! それって、オキツネサマと同居するってことなんだよね。黒い霊を追い払えるのはオキツネサマなんだから。……って、あれ? わたし、さっきから思考が堂々めぐりになってる、ような。
ああでもない、こうでもないと、考えがぐるぐる、ぐるぐる、ただ、まわっているだけなことに気づき、わたしは余計あせりまくる。
心臓が尋常じゃないほど、ザワザワして、落ちついてものを考えられない。
こんなときこそ、落ちつかなきゃと思うのに……。
そこへ。
リンちゃんが、たたみかけるように言ってきた。
『サキっちの身の安全のためには、今はオキツネサマとの同居をテレている場合じゃないっす! 今日からオキツネサマとサキっちはさっそく同居する、それ以外の対策方法をサキっちが思いつかない以上、サキっちはオキツネサマといっしょに暮らす――異存ないっすね』
異存はないかと聞かれて、「うん、ないよ」と言える心境には、まだ至れない。
でも、たしかにわたしは、最善だと思える『黒い霊への対処方法』を思いつけずにいる。
リンちゃんの、強引な提案に――わたしは反論することができなかった。
緊迫した雰囲気でリンちゃんが言いたす。語尾がいつもの『~っす』じゃなかった。
『おれっちは、サキっちのことが心配なんだよっ』
「――リンちゃん」
リンちゃんの声はどこまでも真剣で、わたしは胸が熱くなる。
どうしてリンちゃんは、そこまでわたしのことを「心配」するの? って思った瞬間。
そういえば、リンちゃんとオキツネサマは両名とも、わたしを『2人が昔から知ってる相手』と人まちがいしているのだったと思いだす。(……黒い霊の存在のことで頭がいっぱいで、おもわず忘れかけてたけど、ちゃんと思いだしたよ)
わたしがいくら人ちがいだと説明しても信じてくれない2人に、疲れもしたし、今もわたしを「誰か」とカンちがいしたままとはいえ――。
懸命に他人の身を案じるリンちゃんの姿には、心を打つものがあって。かたくなにオキツネサマとの同居を拒んでいたはずのわたしなのに、気がつくと。
「うん……。たしかに現時点では、リンちゃんが言うとおり、オキツネサマといっしょにいるのが、安全面では一番いいのかもしれないね」
と言っていた。
リンちゃんはうれしそうな声で返事をする。
『わかってくれたみたいっすね、サキっち! やっかいな黒い霊に目をつけられたのは災難だけど、事態を甘くみないほうがいいっす』
そしてリンちゃんは、自分の横にいるオキツネサマに話しかける。
オキツネサマは……といえば、リンちゃんとの約束を守り、静かにわたしとリンちゃんの話を聞いていた。もしかして、すわりながら寝ちゃった? って、わたしに思わせるほど、オキツネサマは沈黙していた。
『……ということっす。オキツネサマ、もう話しても大丈夫ですよ』
「うむ」
あ、たった一言だけど、なんだかオキツネサマの声、ひさしぶりに聞く気がする。
けっこう長く、わたしとリンちゃんだけでしゃべってたからな。
……べつにリンちゃんはオキツネサマを邪魔者あつかいしたわけではなく、オキツネサマが黒い霊について説明すると――必要以上に聞く者を恐怖に陥れてしまう可能性が高いから、だそうだ。
オキツネサマには、オブラートにつつんだ言いかたができないから、らしい。
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