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第三十一話 捜索
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昨晩、奈々海さんと連絡先を交換した僕は、奈々海さんから相談を受けていた。
クラスメイトのギャル、長谷川愛梨についてだ。
真偽は確かめられなかったが、愛梨さんは絶賛家出中らしい。
この時点でとんでもなく面倒くさいことに巻き込まれたと後悔した僕だったが、いまさら奈々海さんの相談を聞き流すこともできず、そのまま詳細を聞いた。
家出の理由は定かではないが、ここ最近、愛梨さんはクラスメイトの家に泊まっているとのこと。だけど一日中、友人宅で過ごすのは迷惑と考えているのか、昼間はショッピングモールをぶらぶらしているらしい。
ここまでなら、まあそっとしておいたら良いのでは? という感想だったのに、愛梨さんが大学生らしきイケメンと遊んでいるという目撃情報がある、そうチャットが届いたとき、ショッピングモールに集合するのはデートではないことを悟った。
菅野先生に相談すべきでは? とは提案してみたものの、事を大きくするのもどうなのかな、と奈々海さんは悩んでいるらしく、その相談も含めてのやり取りを夜にしていたわけになる。
結論として、ひとまず噂話で動くのは気が引ける、とのことで、現場を確認することになった。ショッピングモールをぶらつく愛梨さんを探し出し、尾行をすることになった。
奈々海さんが尾行するのはどう考えても目立つだろ、とツッコミを入れてみたら、『そのための宮部くんじゃん』と返ってきて、僕は奈々海さんの駒になったことを理解した。
『いろいろとお世話になってるし、それにね、年上として見過ごせないよ』
そう言われれば嫌だとは言えず、渋々ではあったものの、こうしてショッピングモールで奈々海さんと合流したわけになる。
「というか、毎日ショッピングモールにいるのはさすがに飽きるくね?」
僕がそう聞くと、奈々海さんは「確かに」と顎に手を添えた。
「愛梨ちゃんがここら辺で暇を潰すなら、あとは……水族館とか?」
「……カラオケとかネカフェじゃない?」
「うお、個室だと探しようがないね。部屋間違えました作戦でいく? 宮部くんが笑顔で」
「んな無茶な」
奈々海さんと合流して一時間、とりあえずショッピングモール内をぐるっと一周した僕たちは、空席があったカフェで作戦会議をしていた。初手でゲームセンターに行ったのは、一番暇を潰せる場所だと考えたからだ。空振りだったが。
カフェラテをストローでちゅうちゅう吸う奈々海さんのことは、年上というより妹みたいだな、と思いつつ、僕は周囲を見渡していた。
「ていうかさ、長谷川さんの連絡先知らないの?」
「ん? 知ってるよ?」
「直で聞いてみたら?」
「あの子さ、ツンツンしてるから、たぶん家出とかのこと聞いても教えてくれないと思うよ」
それもそうか、と奈々海さんに納得させられる頃には、カフェ周辺で休日を過ごしている人たちの顔を一通り見終えた。この人混みの中から居るかもわからないクラスメイトを探すのか。そんな簡単に見つかるものでも――。
そのとき、僕の目はカフェ隣にあったトイレの入口に引き寄せられた。見慣れた制服を着ていて、うなじのあたりで結んだ茶髪を左肩にのせているギャルがいた。
「長谷川さんまじでいるじゃん……」
「え! どこどこ?」
身を乗り出してきた奈々海さんも、僕が凝視していたトイレの入口に目を凝らし、「ほんとだ」とストローを咥えたまま驚いていた。
「宮部くん、ナイス! さっ! 追いかけるよ!」
奈々海さんはストローを引っこ抜くと、カップに直接口をつけて、酒をあおるみたいにカフェラテを一口で飲み込んだ。僕も負けじとコーヒーを二口で飲み干し、ゴミをゴミ箱に捨てつつ二人で愛梨さんを追った。
クラスメイトのギャル、長谷川愛梨についてだ。
真偽は確かめられなかったが、愛梨さんは絶賛家出中らしい。
この時点でとんでもなく面倒くさいことに巻き込まれたと後悔した僕だったが、いまさら奈々海さんの相談を聞き流すこともできず、そのまま詳細を聞いた。
家出の理由は定かではないが、ここ最近、愛梨さんはクラスメイトの家に泊まっているとのこと。だけど一日中、友人宅で過ごすのは迷惑と考えているのか、昼間はショッピングモールをぶらぶらしているらしい。
ここまでなら、まあそっとしておいたら良いのでは? という感想だったのに、愛梨さんが大学生らしきイケメンと遊んでいるという目撃情報がある、そうチャットが届いたとき、ショッピングモールに集合するのはデートではないことを悟った。
菅野先生に相談すべきでは? とは提案してみたものの、事を大きくするのもどうなのかな、と奈々海さんは悩んでいるらしく、その相談も含めてのやり取りを夜にしていたわけになる。
結論として、ひとまず噂話で動くのは気が引ける、とのことで、現場を確認することになった。ショッピングモールをぶらつく愛梨さんを探し出し、尾行をすることになった。
奈々海さんが尾行するのはどう考えても目立つだろ、とツッコミを入れてみたら、『そのための宮部くんじゃん』と返ってきて、僕は奈々海さんの駒になったことを理解した。
『いろいろとお世話になってるし、それにね、年上として見過ごせないよ』
そう言われれば嫌だとは言えず、渋々ではあったものの、こうしてショッピングモールで奈々海さんと合流したわけになる。
「というか、毎日ショッピングモールにいるのはさすがに飽きるくね?」
僕がそう聞くと、奈々海さんは「確かに」と顎に手を添えた。
「愛梨ちゃんがここら辺で暇を潰すなら、あとは……水族館とか?」
「……カラオケとかネカフェじゃない?」
「うお、個室だと探しようがないね。部屋間違えました作戦でいく? 宮部くんが笑顔で」
「んな無茶な」
奈々海さんと合流して一時間、とりあえずショッピングモール内をぐるっと一周した僕たちは、空席があったカフェで作戦会議をしていた。初手でゲームセンターに行ったのは、一番暇を潰せる場所だと考えたからだ。空振りだったが。
カフェラテをストローでちゅうちゅう吸う奈々海さんのことは、年上というより妹みたいだな、と思いつつ、僕は周囲を見渡していた。
「ていうかさ、長谷川さんの連絡先知らないの?」
「ん? 知ってるよ?」
「直で聞いてみたら?」
「あの子さ、ツンツンしてるから、たぶん家出とかのこと聞いても教えてくれないと思うよ」
それもそうか、と奈々海さんに納得させられる頃には、カフェ周辺で休日を過ごしている人たちの顔を一通り見終えた。この人混みの中から居るかもわからないクラスメイトを探すのか。そんな簡単に見つかるものでも――。
そのとき、僕の目はカフェ隣にあったトイレの入口に引き寄せられた。見慣れた制服を着ていて、うなじのあたりで結んだ茶髪を左肩にのせているギャルがいた。
「長谷川さんまじでいるじゃん……」
「え! どこどこ?」
身を乗り出してきた奈々海さんも、僕が凝視していたトイレの入口に目を凝らし、「ほんとだ」とストローを咥えたまま驚いていた。
「宮部くん、ナイス! さっ! 追いかけるよ!」
奈々海さんはストローを引っこ抜くと、カップに直接口をつけて、酒をあおるみたいにカフェラテを一口で飲み込んだ。僕も負けじとコーヒーを二口で飲み干し、ゴミをゴミ箱に捨てつつ二人で愛梨さんを追った。
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