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第14章 草原の風
第7話 風の賢神サジュタリス
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クロキはクーナと共にキソニア平原へと来る。
広大な草原地帯であり、ナルゴルの地と同じくらいの大きさがある。
少し高い地にあり、地は豊かではなく農業には向かない。
人が住みにくく、エリオスの神々もあまりこの地に来ることはない。
そんなキソニア平原を代表している神はケンタウロス達に崇められる風の賢神サジュタリスである。
彼は特定の場所に住まず、キソニア平原のどこかを常に移動している。
だから、この地に来ても会えないだろうと思っていた。
だが、キソニアに入ってすぐ出会う事が出来た。
偶然にしては出来すぎである。
「お久しぶりです、サジュタリス殿」
クロキはグロリアスを草原に降ろすとサジュタリスの元へと行くと挨拶をする。
サジュタリスはケンタウロスの神の一柱であり、兄である他のケンタウロスの神と違い、理性的な神である。
もっとも、兄神がケンタウロスの暴力性を体現したかのような存在だったりするので、比較するのはどうかといえる。
「ふふ、お久しぶりですね。暗黒騎士殿。貴方の気配を感じ駆けつけて来ましたよ」
サジュタリスは笑う。
クロキはなるほどと思う。
サジュタリスはキソニアにいる風の精霊と情報交換できる。
キソニアで起きる事の全てを把握できるらしい。
向こうから会いに来てくれるのなら会えて当然である。
クロキはサジュタリスを見る。
ケンタウロスと同じ姿をした神であり、アルフォスを超える弓の使い手だ。
また、弓だけでなく様々な武芸に秀でている。
クロキも彼と戦えば苦戦をするかもしれなかった。
それほどまでにサジュタリスの武名は世界中に鳴り響いている。
だが、その武名とは裏腹にサジュタリスが争いに参加する事はほとんどない。
彼は神々の戦いの時にエリオスの神々に武芸を教えるなど、彼らに味方した。
しかし、共に戦おうとはしなかった。
あくまで補助に徹するだけである。
魔王モデスを盟主とする神々の連合に参加しているのも、争いを避けるためであり、モデスと共に戦う事はしないであろう。
それがサジュタリスという神だ。
どのような者にも深く関わろうとしないのである。
あらゆる種族の勇者を育成する事はしても、直接は助けたりしない。
それは自身の眷属であるケンタウロスに対しても同じだ。
ケンタウロスはまとまりのない種族である。
多くの氏族に別れ同じ種族で争っている。
サジュタリスはそれをほぼ仲裁する事はない。
争うままに任せている。
特に自身の眷属がどうなろうか気にしていないようだ。
まあ、眷属を自身の奴隷と同じように考えている神もいるので、その辺りは珍しくない。
だが、眷属を支配するつもりもないようだ。
むしろ、慈悲深い方で気まぐれに助けたりもする。
正直何を考えているのかわからなかったりする。
今回、会いに来た理由もわからない。
「なるほど、さすがですね。自分の気配がわかるとは……」
クロキは頬を掻く。
特に隠密をしてはいないが、広大なキソニア平原に入っただけですぐに見つかってしまうとは思わなかったのである。
「はは、貴方の気配は強力ですから……、すぐに気付きますよ。それにしても今日はどうしてここに? まあ、おそらくかの死神が支配する地の事でしょう」
サジュタリスはそう言うと西を見て言う。
西の中央山脈を少し超えた所にはワルキアの地がある。
そこで何かあったようだ。
「ザルキシスが? 何かあったのですか?」
クロキは驚いて聞く。
「おや、知らないのですか? ワルキアの地から瘴気があふれ出し、そこにいる亡者達があふれ出したようです。そのためエリオスの者達が急ぎワルキアに向かっているようです。あのレーナの勇者もこのキソニアに来ています。おそらく後でワルキアに向かうのでしょう」
サジュタリスがそう言うとクロキは驚く。
全くの初耳だ。
クロキは後ろにいるクーナを見る。
クーナはグロリアスからゆっくりと降り、今来たところだ。
「うむ、知っていたぞ。だが、ナルゴルの者達は特に動くつもりはないようだ。そのため、クロキにも報告が行かなかったようだぞ。クーナはレーナの動きから知っていたがな」
クーナは悪びれる様子もなく言う。
特に重要な情報だとは思っていなかったようだ。
「まあ、ワルキアで何が起きているのか、もっと確かな情報を得てから暗黒騎士殿に報告しようとしていたのかもしれませんね」
サジュタリスはそう補足する。
「その通りだぞ、クロキ。暗黒騎士団の一部がこのキソニアに来ている。情報を集めているようだぞ。合流するか?」
クーナがそう言って西を見る。
「暗黒騎士団の一部が? ランフェルド卿じゃないだろうし、誰だろう?」
クロキは首を傾げる。
騎士団長のランフェルドが動くとは思えない。
だから、おそらく部下の誰かだろう。
「まあ、少し話を聞くぐらいはした方が良いかもしれないな」
クロキは移動する事にするのだった。
◆
クロキはサジュタリスと別れクーナと共にグロリアスに乗りキソニア平原の西側へと来る。
キソニア平原は広大であり、様々な地域がある。
キソニアの西側は中央山脈に近いためかより標高が高い。
草原が広がり山羊等の動物の姿が見える。
この辺りはキソニアではあるがケンタウロスの数は少ない。
なぜなら中央山脈に住む鷲獅子グリフォンを恐れているからだ。
グリフォンは馬を捕食する魔獣であり、ケンタウロスにとっても天敵だ。
そのためケンタウロスは出来るだけ近づかないのである。
代わりに多いのが山羊男サテュロスだ。
彼らは酒と音楽の神ファヌンを信仰する、酒と踊りが好きな種族である。
酒と音楽の神ファヌンはナルゴルにいる魔宰相ルーガスの兄であるが、好色で自由奔放な性格をしている。
ルーガスの兄であるためか、その眷属もファヌンを信仰する者がいて、好色だったりする。
特に幻魔将軍ヴァーメッドはその傾向が強かったりする。
クロキは一度会った事があるが、泥酔していて話にもならなかった。
この辺りを本拠地にしているらしいが、普段から留守にしているらしい。
本当に自由気ままでクロキは少し羨ましくなる。
クロキ達が上空を飛ぶとグロリアスを恐れてサテュロス達が離れていくのが見える、ナルゴルにいるダークサテュロスとは違いかなり臆病のようだ。
この先に暗黒騎士達がいるはずであった。
しばらくすると巨大なグリフォンが近づいて来るのが見える。
そのグリフォンには黒い鎧を着た者が乗っている。
「これは、これは。まさか閣下が来られるとは……」
グリフォンに乗った黒い鎧の者は近くまで来ると頭を下げる。
「ノースモール卿。貴方でしたか」
クロキはこちらに来た暗黒騎士を見る。
暗黒騎士ノースモール。
デイモン族出身でランフェルドの副官であり、暗黒騎士団の副団長である。
他の暗黒騎士と違い巨大なグリフォンに騎乗する。
デイモン族でもっとも巨大な体躯をして頑丈で腕力ももっとも強い。
レイジ達と戦って敗れはしたが、頑丈な肉体なので何とか命は助かった。
その恵まれた体躯から暗黒騎士団に入団させられたが、本人は学者になりたかったらしい。
望んで入ったわけではないが、真面目な性格なので、任務は確実にこなすらしい
今ではランフェルドに信頼されている忠実な副官といったところだ。
「はい。閣下もかの地での事でここに来たのですか? あの死神が支配する地において瘴気があふれ出しているようですので……」
「そうです。ノースモール卿。どうなっているのですか」
「それが、エリオスの天使達が活発に動きすぎて、彼の地に近づく事ができず情報が入って来ないのです。ですので配下に奴らの様子を探らせていますが、さすがに奴らも中に入れないようなので結局わからずじまいです」
ノースモールは首を振る。
兜を被っているので表情は見えないが困っているようだ。
「ああ、向こうもかなり困っているようだぞ、クロキ。そして、レーナが来るようだ」
そう答えたのはクロキの後ろにいるクーナである。
「えっ、レーナが? 来るの?」
クロキが振り向いて言うとクーナが首を縦に振る。
「ああ、そうだぞ、クロキ。おそらくもうすぐキソニアに入るのではないかな?」
クーナは特に感情を込めずに言う。
レイジ達だけでなく、レーナもまた草原へと来るようであった
広大な草原地帯であり、ナルゴルの地と同じくらいの大きさがある。
少し高い地にあり、地は豊かではなく農業には向かない。
人が住みにくく、エリオスの神々もあまりこの地に来ることはない。
そんなキソニア平原を代表している神はケンタウロス達に崇められる風の賢神サジュタリスである。
彼は特定の場所に住まず、キソニア平原のどこかを常に移動している。
だから、この地に来ても会えないだろうと思っていた。
だが、キソニアに入ってすぐ出会う事が出来た。
偶然にしては出来すぎである。
「お久しぶりです、サジュタリス殿」
クロキはグロリアスを草原に降ろすとサジュタリスの元へと行くと挨拶をする。
サジュタリスはケンタウロスの神の一柱であり、兄である他のケンタウロスの神と違い、理性的な神である。
もっとも、兄神がケンタウロスの暴力性を体現したかのような存在だったりするので、比較するのはどうかといえる。
「ふふ、お久しぶりですね。暗黒騎士殿。貴方の気配を感じ駆けつけて来ましたよ」
サジュタリスは笑う。
クロキはなるほどと思う。
サジュタリスはキソニアにいる風の精霊と情報交換できる。
キソニアで起きる事の全てを把握できるらしい。
向こうから会いに来てくれるのなら会えて当然である。
クロキはサジュタリスを見る。
ケンタウロスと同じ姿をした神であり、アルフォスを超える弓の使い手だ。
また、弓だけでなく様々な武芸に秀でている。
クロキも彼と戦えば苦戦をするかもしれなかった。
それほどまでにサジュタリスの武名は世界中に鳴り響いている。
だが、その武名とは裏腹にサジュタリスが争いに参加する事はほとんどない。
彼は神々の戦いの時にエリオスの神々に武芸を教えるなど、彼らに味方した。
しかし、共に戦おうとはしなかった。
あくまで補助に徹するだけである。
魔王モデスを盟主とする神々の連合に参加しているのも、争いを避けるためであり、モデスと共に戦う事はしないであろう。
それがサジュタリスという神だ。
どのような者にも深く関わろうとしないのである。
あらゆる種族の勇者を育成する事はしても、直接は助けたりしない。
それは自身の眷属であるケンタウロスに対しても同じだ。
ケンタウロスはまとまりのない種族である。
多くの氏族に別れ同じ種族で争っている。
サジュタリスはそれをほぼ仲裁する事はない。
争うままに任せている。
特に自身の眷属がどうなろうか気にしていないようだ。
まあ、眷属を自身の奴隷と同じように考えている神もいるので、その辺りは珍しくない。
だが、眷属を支配するつもりもないようだ。
むしろ、慈悲深い方で気まぐれに助けたりもする。
正直何を考えているのかわからなかったりする。
今回、会いに来た理由もわからない。
「なるほど、さすがですね。自分の気配がわかるとは……」
クロキは頬を掻く。
特に隠密をしてはいないが、広大なキソニア平原に入っただけですぐに見つかってしまうとは思わなかったのである。
「はは、貴方の気配は強力ですから……、すぐに気付きますよ。それにしても今日はどうしてここに? まあ、おそらくかの死神が支配する地の事でしょう」
サジュタリスはそう言うと西を見て言う。
西の中央山脈を少し超えた所にはワルキアの地がある。
そこで何かあったようだ。
「ザルキシスが? 何かあったのですか?」
クロキは驚いて聞く。
「おや、知らないのですか? ワルキアの地から瘴気があふれ出し、そこにいる亡者達があふれ出したようです。そのためエリオスの者達が急ぎワルキアに向かっているようです。あのレーナの勇者もこのキソニアに来ています。おそらく後でワルキアに向かうのでしょう」
サジュタリスがそう言うとクロキは驚く。
全くの初耳だ。
クロキは後ろにいるクーナを見る。
クーナはグロリアスからゆっくりと降り、今来たところだ。
「うむ、知っていたぞ。だが、ナルゴルの者達は特に動くつもりはないようだ。そのため、クロキにも報告が行かなかったようだぞ。クーナはレーナの動きから知っていたがな」
クーナは悪びれる様子もなく言う。
特に重要な情報だとは思っていなかったようだ。
「まあ、ワルキアで何が起きているのか、もっと確かな情報を得てから暗黒騎士殿に報告しようとしていたのかもしれませんね」
サジュタリスはそう補足する。
「その通りだぞ、クロキ。暗黒騎士団の一部がこのキソニアに来ている。情報を集めているようだぞ。合流するか?」
クーナがそう言って西を見る。
「暗黒騎士団の一部が? ランフェルド卿じゃないだろうし、誰だろう?」
クロキは首を傾げる。
騎士団長のランフェルドが動くとは思えない。
だから、おそらく部下の誰かだろう。
「まあ、少し話を聞くぐらいはした方が良いかもしれないな」
クロキは移動する事にするのだった。
◆
クロキはサジュタリスと別れクーナと共にグロリアスに乗りキソニア平原の西側へと来る。
キソニア平原は広大であり、様々な地域がある。
キソニアの西側は中央山脈に近いためかより標高が高い。
草原が広がり山羊等の動物の姿が見える。
この辺りはキソニアではあるがケンタウロスの数は少ない。
なぜなら中央山脈に住む鷲獅子グリフォンを恐れているからだ。
グリフォンは馬を捕食する魔獣であり、ケンタウロスにとっても天敵だ。
そのためケンタウロスは出来るだけ近づかないのである。
代わりに多いのが山羊男サテュロスだ。
彼らは酒と音楽の神ファヌンを信仰する、酒と踊りが好きな種族である。
酒と音楽の神ファヌンはナルゴルにいる魔宰相ルーガスの兄であるが、好色で自由奔放な性格をしている。
ルーガスの兄であるためか、その眷属もファヌンを信仰する者がいて、好色だったりする。
特に幻魔将軍ヴァーメッドはその傾向が強かったりする。
クロキは一度会った事があるが、泥酔していて話にもならなかった。
この辺りを本拠地にしているらしいが、普段から留守にしているらしい。
本当に自由気ままでクロキは少し羨ましくなる。
クロキ達が上空を飛ぶとグロリアスを恐れてサテュロス達が離れていくのが見える、ナルゴルにいるダークサテュロスとは違いかなり臆病のようだ。
この先に暗黒騎士達がいるはずであった。
しばらくすると巨大なグリフォンが近づいて来るのが見える。
そのグリフォンには黒い鎧を着た者が乗っている。
「これは、これは。まさか閣下が来られるとは……」
グリフォンに乗った黒い鎧の者は近くまで来ると頭を下げる。
「ノースモール卿。貴方でしたか」
クロキはこちらに来た暗黒騎士を見る。
暗黒騎士ノースモール。
デイモン族出身でランフェルドの副官であり、暗黒騎士団の副団長である。
他の暗黒騎士と違い巨大なグリフォンに騎乗する。
デイモン族でもっとも巨大な体躯をして頑丈で腕力ももっとも強い。
レイジ達と戦って敗れはしたが、頑丈な肉体なので何とか命は助かった。
その恵まれた体躯から暗黒騎士団に入団させられたが、本人は学者になりたかったらしい。
望んで入ったわけではないが、真面目な性格なので、任務は確実にこなすらしい
今ではランフェルドに信頼されている忠実な副官といったところだ。
「はい。閣下もかの地での事でここに来たのですか? あの死神が支配する地において瘴気があふれ出しているようですので……」
「そうです。ノースモール卿。どうなっているのですか」
「それが、エリオスの天使達が活発に動きすぎて、彼の地に近づく事ができず情報が入って来ないのです。ですので配下に奴らの様子を探らせていますが、さすがに奴らも中に入れないようなので結局わからずじまいです」
ノースモールは首を振る。
兜を被っているので表情は見えないが困っているようだ。
「ああ、向こうもかなり困っているようだぞ、クロキ。そして、レーナが来るようだ」
そう答えたのはクロキの後ろにいるクーナである。
「えっ、レーナが? 来るの?」
クロキが振り向いて言うとクーナが首を縦に振る。
「ああ、そうだぞ、クロキ。おそらくもうすぐキソニアに入るのではないかな?」
クーナは特に感情を込めずに言う。
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