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第6章 魔界の姫君
第10話 セルキー
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クロキ達は大亀アスピドケロンに乗り北の海を進む。
北海には霧氷の島という冷たい精霊の力が強い場所がある。
そこから吹く風が中央大陸の北部を寒い地域へと変えている。
その霧氷の島の付近にクラーケン達が多く生息しているのだ。
オークの国であるノソイを発って三日、今のところ何事もなく進んでいる。
アスピドケロンの周囲にはオークのエザサが率いる船団が、アスピドケロンを守るように航行している。
このオークの船には帆も櫓もない。
ではどうやって航行しているかというと、オルカという海の魔物がこの船を引っ張っているからだ。
オルカはいわゆる鯱の事だが、その姿は可愛いほうのシャチではなく、屋根に乗っているシャチホコの方に似ている。
オルカは巨大で、鱗があり、牙と豚のような鼻を持っていて、剛毛が生えている。
そんなオルカは、別名で海オークと呼ばれている。
エザサ達オーク族はこのオルカを飼いならし、漁を行っている。
ノソイのオーク達は漁師でもあるのだ。
クロキはアスピドケロンの背に建造された館の3階の窓から外を眺める。
窓はドワーフが作ったガラスがはめ込まれているので、開けずに外の世界を見る事ができる。
外を眺めると、海に氷が浮かんでいるのが見える。
この館の周りには防寒のための結界が張られているので寒くはない。
もっとも氷竜の力を得たクロキならば結界の外での活動も可能である。
クロキは外を見るのをやめて部屋の中を見る。
「いや~。やっぱ寒い時は鍋にかぎるね。ぷーちゃん」
「全くなのさ、殿下」
クロキのすぐ近くでポレンとプチナがチーズ鍋を食べている。
さっきから食べてばかりであった。
(ちょっと食べすぎじゃないかな……。でもあんなに幸せそうに食べていたら何も言えないな)
ポレンはおいしそうにチーズ鍋を食べている。
鍋にはナルゴルの野菜に豚のハムがたくさん入っていて美味しそうであった。
「クロキ先生~。先生も一緒に食べませんか~」
「いえ、殿下……。さすがにもうお腹一杯ですので、遠慮しておきます」
ポレンがクロキを誘うがさすがにもう食べる事はできないので、やんわりと断る。
実は最初は付き合って食べていたが、ポレンの食べる量は多く、途中で食べるのをやめたのである。
「そうですか……」
ポレンは少し寂しそうにする。
クロキは悪いと思うが、さすがにもう食べる事はできなかった。
「ぬふふふふ。閣下が食べないのなら。代わりに食べるのさ」
「あっ! ずるい! ぷーちゃんそのお肉は私のだよ!!」
ポレンとプチナは楽しそうに食事を続ける。
プチナもポレンに負けず大食らいである。
プチナの正体は巨大な熊であり、人間の少女の時も食べる量は変わらない。
そんなポレンとプチナはとても仲良しである。
クロキは再び外を見る。
すると前方に巨大な氷の塊が浮かんでいるのが見える。
どうやら霧氷の島の近くにたどり着いたようであった。
「殿下。どうやら霧氷の島に近づいたみたいです。自分は少し外を見に行きます」
「はふ~」
クロキがそう言うとポレンは口に物を詰め込んだ状態で返事をする。
館を出てアスピドケロンの頭の方へと行くとハイリザードマンの将軍であるリブルムがいる。
「これは閣下。どういたしました?」
リブルムはクロキに気付くと礼をする。
「いえ、リブルム将軍。霧氷の島に近づいたみたいなので様子を見に来ました。航海は順調ですか?」
「はい。エザサ殿が先導してくれますから」
クロキとリブルムは前を見る。
エザサ率いるオーク船団が先に進み、海に浮かぶ流氷にぶつからないルートを探してくれる。
「なるほど、ところでリブルム将軍。クラーケンはこの辺りに生息していると聞いているのですが、どうやって探すのでしょうか?」
「その事なら大丈夫です閣下。クラーケンの所へはセルキー達に案内させます」
「セルキー? というとあのアザラシの?」
「はい。閣下。クラーケンはセルキーを捕食します。ですからセルキーの居る所にはクラ―ケンがいるのです」
セルキーとはアザラシの姿をした獣人だ。
セルキーは海中ではアザラシとして生活しているが、陸にあがるときは皮を脱いで人間の姿になる。
人間状態のセルキーは非常に美しい姿をとり、人間を誘惑することに長けていると言われている。
そして、セルキーは夫や妻に不満を抱いている人間を探して、誘惑して愛の契りを結ぶ。
ただし、それは一夜だけだ。元々セルキーは海に生きる者なので、朝になると海へと戻ってしまう。
ちなみに人間の方からセルキーと会いたいならば、海に七滴の涙を落とさなければならないと言われている。
また、もしセルキーが脱いだ皮を盗ってしまうと、セルキーは海に帰れなくなり、伴侶になるしかなくなる。
だけど本当の住処は海なので、結婚してからも恋しそうな面持ちで海を眺めていることが多いと言われる。
ただ、盗られた皮を見つけると、海にある本当の家や、時にはセルキーの伴侶の元へと直ちに戻ってしまう。
セルキーは人間とアザラシの間にできた子が偶然両方の性質を持って生まれた種族であり、同じように2つの姿を持つ種族は意外と多い。
「どうやら、セルキーのいる場所へとたどり着いたようです。閣下」
そう言われてクロキはリブルムの指差す方を見る。
そこには氷の上に多数のアザラシがいる。
大亀のアスピドケロンはそのままセルキー達の方向へと進むのだった。
◆
アスピドケロンの背中にある館でポレンはセルキーの代表と会う。
美形の男性達が、ポレンの前で、膝を床に付き頭を下げる。
その光景にポレンは「ぐふふふふ」と笑いそうになってしまう。
美形の男性達は全員セルキー族の若者である。
彼らはポレン達を歓迎しに来てくれているのだ。
そんなセルキーの若者達の格好は自らのアザラシの皮を腰に巻いただけで半裸である。
すらりとした身体が良く見えるので目の保養になっていた。
「よくぞ、いらっしゃいました。偉大なる魔王陛下の御子、ピピポレンナ殿下」
セルキーの若者は涼やかな声でポレンの名を呼ぶ。
名を呼んだのは代表であるイヌル。
イヌルは茶色の髪に漆黒の瞳を持つ凛々しい若者で、おそらくこの中で一番の美形である。
今彼は他のセルキー達同様膝を付いて頭を下げている。
もっと顔を見せて欲しいとポレンは思う。
「皆さん。顔を上げて下さい」
ポレンは顔を上げるように促す。
促されてイヌル達が顔を上げる。
綺麗な瞳がポレンに向けられる。
(ぬふ~、やっぱり美男子は良いな~)
ポレンはお持ち帰りしたくなる気持ちをぐっとこらえる。
過去にポレンはセルキーの若者と会った事がある。
その時、そのセルキーの若者はポレンの父である魔王に貢物を捧げるために来ていた。
ポレンは仲良くなりたくて腕を握った。
するとそのセルキーの若者の腕は簡単に折れてしまったのである。
ポレンとしては軽く握ったつもりだったのだが、セルキーはポレンに比べるとすごく脆弱な体をしている。
そのため、ポレンがちょっと触っただけで大けがをしてしまったのだ。
腕が折れたセルキーの若者は泣き叫び、最後は泡を吹いて気絶してまった。
ポレンはあの時の悲劇を繰り返してはいけないと固く誓っていた。
だから、美形の殿方が目の前にいてもお触りは禁止なのである。
「どうぞ殿下。選りすぐりの海の幸でございます」
そう言うとイヌル達はポレンに何かを差し出す。
海草で作られたお皿には鮭、鱈、ニシン、エビ、牡蠣、アワビ等の海の幸が山盛りなっている。
どれも大きくとても脂がのっていそうで、美味しそうであった。
それを見て、ポレンとプチナは思わず身を乗り出す。
「やったのさ、殿下。クラーケンを獲る前に海鮮鍋で前祝いなのさ」
「そうだね♪ ぷーちゃん♪ ぐふふふ、セルキーさん達を眺めながら海鮮鍋♪ すごく食が進みそう♪」
ポレンとプチナは共に涎を垂らす。
「ところでイヌル殿。クラーケンの居場所なのですが、心当たりはありますか?」
ポレンの隣にいるクロキがイヌルの側に近づき聞く。
(おお! セルキーとクロキ先生がが並ぶと絵になる~!)
両者の姿を見て、ポレンの脳内で色々な妄想が生まれる。
「はい、閣下。その実は最近巨大なクラーケンがこの付近に出没しているのです。奴は僕達に目をつけたみたいで、漁をする僕達の前に何度も現れています」
「そうですか……。クラーケンに目を付けられているのですね……。そのクラーケンの元に案内してくれますか?」
「もちろんです閣下! 僕らの仲間がすでに何名も犠牲になっているのです! どうか我らの同胞の仇を取って下さい」
イヌルは涙を流しながら言う。
(美男子は世界の宝! それを食べるなんて! 許すまじクラーケン!!)
そのイヌルの涙にポレンの心が動く。
「安心して! そのクラーケンはこの私が退治してあげる!」
ポレンは席から立つと力を込めて言う。
周囲から「おおっ!」と声が上がる。
「さすがです! 殿下! 仕えてくれる者達のために動くのは上に立つ者の義務! さすがは魔王陛下の御子です!!」
「えへへへへへ。そうですか?何だか照れちゃうな~」
「ありがとうございます! 殿下! 僕らのために、動いてくれるなんて!!」
周囲から褒められてポレンは身をくねらせる。
(うふふふ、抱き着いてくれても良いのよ~)
ポレンは横で踊る。
「ど!? どうしたのさ!? 殿下!? 喰っちゃあ寝てばかりで、いつものものぐさな殿下らしくないのさ!!」
ただプチナだけは横で余計な事を言う。
「もう~。折角良い気分だったのに……。ぷーちゃんは少し黙っててよ」
「痛い! 痛いのさ! 殿下!」
ポレンはプチナの頭の左右に手を当てるとぐりぐりと締める。
「あの~? 殿下?」
「えっ!? 何? クロキ先生?」
呼ばれてポレンが見ると、クロキとセルキー達がぽかんとした表情でこちらを見ている。
良く見るとセルキー達は少し怯えているようであった。
「あははは! 取りあえず海鮮鍋を食べよう! そして明日から本格的に動きましょう!!」
ポレンは笑ってごまかすのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
昨日は仕事疲れで寝てしまいました。
やはり毎日投稿は厳しいですね( ;∀;)
なろうでは「セルキーの里」でしたが、よく考えたらセルキーの里に行っていない。
そのため「セルキー」に変えました。
実は古代の海鮮料理を調べて書こうと思ったのですが、良いのが見つからず、結局書けませんでした。
北海には霧氷の島という冷たい精霊の力が強い場所がある。
そこから吹く風が中央大陸の北部を寒い地域へと変えている。
その霧氷の島の付近にクラーケン達が多く生息しているのだ。
オークの国であるノソイを発って三日、今のところ何事もなく進んでいる。
アスピドケロンの周囲にはオークのエザサが率いる船団が、アスピドケロンを守るように航行している。
このオークの船には帆も櫓もない。
ではどうやって航行しているかというと、オルカという海の魔物がこの船を引っ張っているからだ。
オルカはいわゆる鯱の事だが、その姿は可愛いほうのシャチではなく、屋根に乗っているシャチホコの方に似ている。
オルカは巨大で、鱗があり、牙と豚のような鼻を持っていて、剛毛が生えている。
そんなオルカは、別名で海オークと呼ばれている。
エザサ達オーク族はこのオルカを飼いならし、漁を行っている。
ノソイのオーク達は漁師でもあるのだ。
クロキはアスピドケロンの背に建造された館の3階の窓から外を眺める。
窓はドワーフが作ったガラスがはめ込まれているので、開けずに外の世界を見る事ができる。
外を眺めると、海に氷が浮かんでいるのが見える。
この館の周りには防寒のための結界が張られているので寒くはない。
もっとも氷竜の力を得たクロキならば結界の外での活動も可能である。
クロキは外を見るのをやめて部屋の中を見る。
「いや~。やっぱ寒い時は鍋にかぎるね。ぷーちゃん」
「全くなのさ、殿下」
クロキのすぐ近くでポレンとプチナがチーズ鍋を食べている。
さっきから食べてばかりであった。
(ちょっと食べすぎじゃないかな……。でもあんなに幸せそうに食べていたら何も言えないな)
ポレンはおいしそうにチーズ鍋を食べている。
鍋にはナルゴルの野菜に豚のハムがたくさん入っていて美味しそうであった。
「クロキ先生~。先生も一緒に食べませんか~」
「いえ、殿下……。さすがにもうお腹一杯ですので、遠慮しておきます」
ポレンがクロキを誘うがさすがにもう食べる事はできないので、やんわりと断る。
実は最初は付き合って食べていたが、ポレンの食べる量は多く、途中で食べるのをやめたのである。
「そうですか……」
ポレンは少し寂しそうにする。
クロキは悪いと思うが、さすがにもう食べる事はできなかった。
「ぬふふふふ。閣下が食べないのなら。代わりに食べるのさ」
「あっ! ずるい! ぷーちゃんそのお肉は私のだよ!!」
ポレンとプチナは楽しそうに食事を続ける。
プチナもポレンに負けず大食らいである。
プチナの正体は巨大な熊であり、人間の少女の時も食べる量は変わらない。
そんなポレンとプチナはとても仲良しである。
クロキは再び外を見る。
すると前方に巨大な氷の塊が浮かんでいるのが見える。
どうやら霧氷の島の近くにたどり着いたようであった。
「殿下。どうやら霧氷の島に近づいたみたいです。自分は少し外を見に行きます」
「はふ~」
クロキがそう言うとポレンは口に物を詰め込んだ状態で返事をする。
館を出てアスピドケロンの頭の方へと行くとハイリザードマンの将軍であるリブルムがいる。
「これは閣下。どういたしました?」
リブルムはクロキに気付くと礼をする。
「いえ、リブルム将軍。霧氷の島に近づいたみたいなので様子を見に来ました。航海は順調ですか?」
「はい。エザサ殿が先導してくれますから」
クロキとリブルムは前を見る。
エザサ率いるオーク船団が先に進み、海に浮かぶ流氷にぶつからないルートを探してくれる。
「なるほど、ところでリブルム将軍。クラーケンはこの辺りに生息していると聞いているのですが、どうやって探すのでしょうか?」
「その事なら大丈夫です閣下。クラーケンの所へはセルキー達に案内させます」
「セルキー? というとあのアザラシの?」
「はい。閣下。クラーケンはセルキーを捕食します。ですからセルキーの居る所にはクラ―ケンがいるのです」
セルキーとはアザラシの姿をした獣人だ。
セルキーは海中ではアザラシとして生活しているが、陸にあがるときは皮を脱いで人間の姿になる。
人間状態のセルキーは非常に美しい姿をとり、人間を誘惑することに長けていると言われている。
そして、セルキーは夫や妻に不満を抱いている人間を探して、誘惑して愛の契りを結ぶ。
ただし、それは一夜だけだ。元々セルキーは海に生きる者なので、朝になると海へと戻ってしまう。
ちなみに人間の方からセルキーと会いたいならば、海に七滴の涙を落とさなければならないと言われている。
また、もしセルキーが脱いだ皮を盗ってしまうと、セルキーは海に帰れなくなり、伴侶になるしかなくなる。
だけど本当の住処は海なので、結婚してからも恋しそうな面持ちで海を眺めていることが多いと言われる。
ただ、盗られた皮を見つけると、海にある本当の家や、時にはセルキーの伴侶の元へと直ちに戻ってしまう。
セルキーは人間とアザラシの間にできた子が偶然両方の性質を持って生まれた種族であり、同じように2つの姿を持つ種族は意外と多い。
「どうやら、セルキーのいる場所へとたどり着いたようです。閣下」
そう言われてクロキはリブルムの指差す方を見る。
そこには氷の上に多数のアザラシがいる。
大亀のアスピドケロンはそのままセルキー達の方向へと進むのだった。
◆
アスピドケロンの背中にある館でポレンはセルキーの代表と会う。
美形の男性達が、ポレンの前で、膝を床に付き頭を下げる。
その光景にポレンは「ぐふふふふ」と笑いそうになってしまう。
美形の男性達は全員セルキー族の若者である。
彼らはポレン達を歓迎しに来てくれているのだ。
そんなセルキーの若者達の格好は自らのアザラシの皮を腰に巻いただけで半裸である。
すらりとした身体が良く見えるので目の保養になっていた。
「よくぞ、いらっしゃいました。偉大なる魔王陛下の御子、ピピポレンナ殿下」
セルキーの若者は涼やかな声でポレンの名を呼ぶ。
名を呼んだのは代表であるイヌル。
イヌルは茶色の髪に漆黒の瞳を持つ凛々しい若者で、おそらくこの中で一番の美形である。
今彼は他のセルキー達同様膝を付いて頭を下げている。
もっと顔を見せて欲しいとポレンは思う。
「皆さん。顔を上げて下さい」
ポレンは顔を上げるように促す。
促されてイヌル達が顔を上げる。
綺麗な瞳がポレンに向けられる。
(ぬふ~、やっぱり美男子は良いな~)
ポレンはお持ち帰りしたくなる気持ちをぐっとこらえる。
過去にポレンはセルキーの若者と会った事がある。
その時、そのセルキーの若者はポレンの父である魔王に貢物を捧げるために来ていた。
ポレンは仲良くなりたくて腕を握った。
するとそのセルキーの若者の腕は簡単に折れてしまったのである。
ポレンとしては軽く握ったつもりだったのだが、セルキーはポレンに比べるとすごく脆弱な体をしている。
そのため、ポレンがちょっと触っただけで大けがをしてしまったのだ。
腕が折れたセルキーの若者は泣き叫び、最後は泡を吹いて気絶してまった。
ポレンはあの時の悲劇を繰り返してはいけないと固く誓っていた。
だから、美形の殿方が目の前にいてもお触りは禁止なのである。
「どうぞ殿下。選りすぐりの海の幸でございます」
そう言うとイヌル達はポレンに何かを差し出す。
海草で作られたお皿には鮭、鱈、ニシン、エビ、牡蠣、アワビ等の海の幸が山盛りなっている。
どれも大きくとても脂がのっていそうで、美味しそうであった。
それを見て、ポレンとプチナは思わず身を乗り出す。
「やったのさ、殿下。クラーケンを獲る前に海鮮鍋で前祝いなのさ」
「そうだね♪ ぷーちゃん♪ ぐふふふ、セルキーさん達を眺めながら海鮮鍋♪ すごく食が進みそう♪」
ポレンとプチナは共に涎を垂らす。
「ところでイヌル殿。クラーケンの居場所なのですが、心当たりはありますか?」
ポレンの隣にいるクロキがイヌルの側に近づき聞く。
(おお! セルキーとクロキ先生がが並ぶと絵になる~!)
両者の姿を見て、ポレンの脳内で色々な妄想が生まれる。
「はい、閣下。その実は最近巨大なクラーケンがこの付近に出没しているのです。奴は僕達に目をつけたみたいで、漁をする僕達の前に何度も現れています」
「そうですか……。クラーケンに目を付けられているのですね……。そのクラーケンの元に案内してくれますか?」
「もちろんです閣下! 僕らの仲間がすでに何名も犠牲になっているのです! どうか我らの同胞の仇を取って下さい」
イヌルは涙を流しながら言う。
(美男子は世界の宝! それを食べるなんて! 許すまじクラーケン!!)
そのイヌルの涙にポレンの心が動く。
「安心して! そのクラーケンはこの私が退治してあげる!」
ポレンは席から立つと力を込めて言う。
周囲から「おおっ!」と声が上がる。
「さすがです! 殿下! 仕えてくれる者達のために動くのは上に立つ者の義務! さすがは魔王陛下の御子です!!」
「えへへへへへ。そうですか?何だか照れちゃうな~」
「ありがとうございます! 殿下! 僕らのために、動いてくれるなんて!!」
周囲から褒められてポレンは身をくねらせる。
(うふふふ、抱き着いてくれても良いのよ~)
ポレンは横で踊る。
「ど!? どうしたのさ!? 殿下!? 喰っちゃあ寝てばかりで、いつものものぐさな殿下らしくないのさ!!」
ただプチナだけは横で余計な事を言う。
「もう~。折角良い気分だったのに……。ぷーちゃんは少し黙っててよ」
「痛い! 痛いのさ! 殿下!」
ポレンはプチナの頭の左右に手を当てるとぐりぐりと締める。
「あの~? 殿下?」
「えっ!? 何? クロキ先生?」
呼ばれてポレンが見ると、クロキとセルキー達がぽかんとした表情でこちらを見ている。
良く見るとセルキー達は少し怯えているようであった。
「あははは! 取りあえず海鮮鍋を食べよう! そして明日から本格的に動きましょう!!」
ポレンは笑ってごまかすのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
昨日は仕事疲れで寝てしまいました。
やはり毎日投稿は厳しいですね( ;∀;)
なろうでは「セルキーの里」でしたが、よく考えたらセルキーの里に行っていない。
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