暗黒騎士物語

根崎タケル

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第5章 黒い嵐

第4話 カルキノスの襲撃1

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 光の勇者レイジを讃える宴会は昼過ぎに始まった。
 だから、まだ外は明るい。
 クロキは薄絹で覆われた天蓋の中から外の様子を見る。
 クロキ達がいる船から少し離れた繋がれた大船の上では多くの人が行き交っている。

「む~~~~」

 クロキの左隣ではクーナが唸っている。

「どうしたのクーナ? 料理が美味しくないの?」

 クロキ達の前には沢山の料理が並べられている。
 全て宴会で出されている料理だ。
 確かに料理の中にはあまり美味しくないものもあった。
 例えばこのハギースの肉ははっきり言って美味しくない。
 ハギースは高地に生息するくちばしを持ち全身が毛で覆われて丸っこいカモノハシのような姿の動物だ。
 ハギースは長い3本足ですばやく動き回ったりして捕えるのが大変である。
 このハギースの肉が宴会に出されているのは単純に珍しいからだ。
 ちなみにこのハギースを食べる者は信用されないと言われている。
 だけどクーナが不機嫌なのは不味い料理があるからではない。

「そうではないぞクロキ! なぜそこにシロネがいるのだ!!」

 クーナがクロキの右隣にいるシロネを見て言う。
 シロネはクロキの右腕にしがみ付いている。
 クーナはそれが気に食わないのだ。

「申し訳ありませんクーナ様……。チユキ様にシロネ様の事を頼まれたので仕方がなくこちらにお連れしました」

 リジェナは申し訳なさそうに頭を下げる。
 そもそも、なぜここにクロキ達がいるのかと言えばリジェナが宴会に誘ったからだ。
 クロキは折角ただで美味しい物を食べられるのだからと、クーナと一緒にここに来たのである。
 予定ではリジェナはレイジ達と共にこの国の偉い人達に挨拶をすませたらこちらに来る事になっていた。
 しかし、シロネが酔いつぶれるというアクシデントが有り、またシロネをレイジ達から頼まれたので仕方がなくここに連れて来たのである。

「クロキのバカ……。どこ行ってたの~。心配したんだよ~」

 シロネが酒臭い息を吹きかける。

(すごく酒臭い。どんだけ飲んだのだよ)

 クロキはできる限りシロネの息を嗅がないようにする。
 ちなみにクロキはお酒を飲まない。
 クロキの目の前の杯に入っているのは果実水だ。
 一応前にはナツメヤシから造られた蒸留酒が置かれているが飲む気はない。
 この世界でも蒸留酒がある。
 蒸留酒は酒の神であるネクトルの信徒が作る事が多いが、医と薬草の女神であるファナケアの神殿でも命の水として作られる。
 なぜなら蒸留酒は薬としても用いられる事もあるからだ。
 この世界でも医と食は密接な関係がある。
 なにしろ薬草は料理にも酒にも使われるからだ。
 しかし、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、酒が百薬の長といえども飲み過ぎてはいけない。

「こら! シロネ! クロキから離れろ! クロキが困っているだろうが!!」

 クーナはシロネを冷たい目で見る。
 実はクーナはシロネが運ばれて来た時に寝首を掻こうとしたのだ。
 クロキはそれを止めるのが大変だった事を思い出す。
 何とか頼み込んで勘弁してもらったが、クーナは不機嫌なままである。
 もっともクロキはシロネがくっ付いているのは別に困ってなかったりする。
 シロネの柔らかい感触が右腕に感じるのでむしろこのままでと思う。
 だけど、さすがにこのままだとクーナが不機嫌になりそうなのでシロネを離す事にする。

「ほらほら、シロネ離れて。折角の綺麗なドレスが皺になるよ」

 クロキはシロネをなんとか離そうとする。

「う~ん……。ドレスが……わかった……。脱ぐね」

 そう言ってシロネは服を脱ぎ出す。

「駄目だよシロネ! ここで脱いだら!!」

 クロキはシロネを止める。
 すごく見たいとクロキは思うが、さすがにそれは悪い。
 酔っている事を利用して女の子を辱める事はしてはいけない。だから止める。

「何~。クロキ」

 シロネは止められて不機嫌な顔をする。

「ほらシロネ。横になって。飲み過ぎで気持ち悪いだろ」

 クロキはシロネを柔らかいソファーの上に寝かす。
 寝にくいだろうから髪留めを外す。

「あれ、この髪留め……」

 髪留めを見る。
 この髪留めはシロネが身に付けていた物であった。
 そして、この髪留めは前の世界で自分がシロネにプレゼントした物である。
 大事に使ってくれているみたいだ。
 そこで、クロキは疑問に思う。

(おかしいな。自分の時は裸で何も持ち込めなかったはずなのに、シロネ達とで召喚の状況が違うのだろうか?)

 クロキは首を傾げるが現時点では何もわからなかった。

「うう~ん」

 シロネが大きく足を開く。
 そのため青色の下着が丸見えだったりする。
 ちなみに下着はこの世界でもある。しかもブラまである。
 ただし、地域によっては下着がない所もあるらしい。
 そして下着がある場所ではふんどし型や腰巻型、また紐パン型を履くみたいだ。他にもあるみたいだけど一般的ではない。
 男性はふんどし型が多く、女性は紐パン型が多い。
 ただし紐パン型は横で結ぶタイプ以外にも留め金で留めるタイプもある。
 レーナが落したと思われる下着は留め金タイプだった。
 それはクロキが今でも大切に保管している宝物だ。
 そして、シロネが履いているのは横を紐で留めるタイプだ。
 シロネは惜しげもなく足を開いてその下着を見せてくれる。
 クロキはその三角形にダイビングしたくなるが我慢する。
 それにしても折角綺麗なドレスを着ているのに台無しであった。
 口もだらしなく開いている。
 元の世界でシロネの事を気にしていた男達にはこの姿は見せられないだろう。
 クロキは元の世界でもシロネはだらしない所があった事を思い出す。
 この世界でもその生活態度は変わっていないようであった。

「ごめんリジェナ。シロネに何か被せてあげて」
「はい旦那様」

 リジェナはシロネに首から下の部分に白い布を被せる。
 これで下着は見えないだろう。

「むー! 何なのだ! こいつは!!」

 クーナは怒った顔でシロネを見る。
 怒った顔も可愛いと思い、クロキはクーナを抱きかかえる。

「ごめんね、クーナ。シロネに攻撃する事を我慢させて」

 クロキはクーナに我慢させてしまって申し訳ないと思う。

「クーナは別に……。シロネが側にいても構わない。ただ、クロキがずっと側に居てくれるなら……」

 クーナが背中を預けて言う。

(ええ娘や。思わず涙が出そうになる)

 クロキが頭を撫でるとクーナは嬉しそうにする。

「きゃあああああああああああああ!!」

 その時だった。大きな悲鳴が少し離れた所から上がる。

「何? 今の悲鳴は……」

 場所は外からである。何かが起こったみたいであった。






 チユキ達が悲鳴が上がった所に駆けつけるとサテュロスの格好した男達がパニックを起こしていた。
 彼らはこの饗宴を盛り上げるために呼ばれた芸人達である。
 劇を行う時に後ろで音楽を奏でる人もこんな格好をする。
 何故彼らがこんな格好をするかと言えば、元々この世界の演劇はサテュロスが始めたとされているからだ。
 サテュロスの格好をしているのもその名残だろう。
 サテュロスは陽気で歌と踊りが好きな種族と言われている。
 彼らは力こそミノタウロスに敵わないが強力な魔法と呪歌を使う。
 そして種族全員が好色で美女と美少年をこよなく愛する。
 楽しげに女性を誘っては魔法を使い襲って来るので注意が必要だ。
 また、ナルゴルに生息する黒いサテュロス族はかなり恐ろしい存在である。
 その姿は他のサテュロスよりも山羊に近い姿をしていて魔力も高い。
 彼らは魔王に仕え、時々人間の世界に来ては人間の女性達を誘惑して望みを叶える。
 その様子はまるでサバトのようだと聞く。
 そして黒いサテュロスに愛された女性は霊感を得て魔女になると言われている。
 もっともここにいるのはサテュロスに扮したただの人間なので女性を魔女にしたりはしないだろう。

「チユキ! 蟹だ! 巨大な蟹がいる!!」

 レイジが叫ぶ。
 チユキはレイジが指した方向を見ると巨大な蟹が船の甲板へと這い上がって来ていた。
 蟹は横幅が5メートル程もある巨大さで、左右のハサミも1メートル近くある。
 カルキノスと呼ばれる化蟹だ。
 そのカルキノス達が人間に向けて泡を吐き出している。
 その泡は強力な粘性が有るみたいで、何人かがその泡に捕らわれ動けなくなっているみたいだ。

「はっ!!!!」

 レイジは自分の剣を呼び出すとカルキノスの1匹を斬る。
 しかし、カルキノスは全部で5匹。
 それぞれが違う船を襲おうとしている。

「誰か助けて!!」

 突然女性の声が聞こえる。
 チユキが声のした方を見るとそこには踊り子らしき娘がいる。
 その踊り子は船べりから海を見ている。

「どうした?!!」

 チユキとレイジは踊り子に駆け寄る。

「仲間が海に!!」

 チユキは海を見るとサテュロスの姿をした男が海に落ちている。

「何だ、男か……。チユキ、そいつは任せた。俺は他の蟹を当たる」

 そう言うとレイジは他の蟹へと向かう。

「もう……。選り好みしないでよね」

 チユキは文句を言いながら魔法の手マジックハンドで男を引き上げる。
 サテュロスの格好をした男は気絶している。甲板に寝かせると海水をぐえっと吐き出す。

「ちょっと! マルシャスしっかりしなさい!!」

 踊り子は男に駆け寄る。

「シェンナ! 無事か!!」

 後から駆けつけてきたデキウスが踊り子に駆け寄る。

「兄さん!!」

 踊り子がデキウスを兄と呼ぶ。
 その言葉を聞いてチユキは意外に思う。
 オーディスの信徒の家に生まれた娘はフェリア信徒になるのが普通だからだ。
 踊り子はフェリア信徒ではなく、イシュティア信徒がなる職業である。
 また、踊り子は由緒正しい貴族から見たら卑しい職業で、貴族の子女がなる事はまずない。

(オーディスの騎士と踊り子の兄妹とは珍しいわね。複雑な事情でもあるのかしら)

 チユキはそんな事を考えるが、他人の家庭の事情に首を突っ込むのは良くないので何も言わない事にする。

「チユキさん、怪我人なの?」

 何かあった事を察したサホコがチユキの方へと来てくれる。

「ええ、大丈夫そうだけど一応癒しの魔法をお願い」

 チユキに頼まれサホコはマルシャスに魔法をかける。
 マルシャスは顔が穏やかになる。
 チユキは周囲を見る。
 カルキノスはレイジ達によって全て倒されたようだ。

「それにしてもどうしてカルキノスが……?」

 デキウスはカルキノスを見て呟く。

「わからないわデキウス卿……。でも1つだけ言える事があるわ」

 チユキがそう言うとその場にいた全員がチユキを見る。

「沢山の蟹料理が食べられそうね」

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