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第3章 神への研究と代償

43 超前震

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 彼は私の頭をポンポンと軽く撫でている。私は彼の肩に自分の頭を預け、涙を流している。

「えーと。色恋沙汰は別でやってくれ。とにかく、急ぎ撤収するぞ。報告も要るんだ」そんな声が後ろから聞こえ、私の脳は状況を完全に理解してショートするのだった。


 その翌日、猛暑の真昼に俺達は無事に学園に戻ってきていた。出迎えてくれたのは先生ではなく、ある一人の生徒だった。
「お~!カスミと次郎じゃん!お疲れ様!話を聞くとやばいやつがいたんだって?」赤色の眼をした明るい少女。少なくともカスミとは対照的な人物。
「洞戸なつ。俺は次郎じゃない。三郎だ」いくら俺の名前がモブだからといっても忘れないで欲しい。それに、“やばいやつ”がいたから俺達が呼び出されたわけだ。話を聞かなくてもそこは理解して欲しい。
「なつ。家。戻らない?」カスミが俺の右横で左手を落ち着かないのかそわそわさせながら尋ねる。
「あたしもついさっき仕事から戻ってきたんだよね。でもさ~。聞いてよ~。澄玲と霰は桜の監視でしょ?カスミと三郎は行方不明事件でしょ?あたし、なんか小学校に行って講習会しただけなんだけど~!なんか、しょぼいって!」ちょっとした不満を爆発させたなつはすぐに落ち着き、
「まあ、二人とも学園来なよ。もう全員戻ってきてるよ」そう言うわけで俺達は約四日ぶりに学園に戻ることになったのであった。



 なつに着いていくと先生、澄玲、霰の3人が閑散とした食堂にいて何か話していた。全員、険しそうな表情をしている。それに、澄玲と霰は傷を負っているのかガーゼが貼られていた。再生能力は、使わないのだろうか。
「先生。連れてきました」なつが声を上げ、
「ああ、少し来てくれ」即座に呼ばれる。
 そして、俺達は先生からそこで起こっていた桜についての話を聞くのだった。

「とんでもないな」俺はその話を聞いたときの第一感想はそれだった。
「とにかく、僕が思ってるのとお前達が思ってるのはきっと同じ事だと思う。まだ、前震の更に前、超前震。そんな段階だが、それでも今まで以上に警戒を強めないといけない。本当に申し訳ないが、休暇を切らないといけない。クラスX、S、Aの3クラスはこれから一週間の間に全員呼び戻す。頼むから理解してくれ」なんか、大変だな、と、そんなことを考えるのだった。

「私は親に連絡すれば大丈夫ですけれど。皆はどうかしら?」澄玲のその発言に意外なことに不服の意を示したのは霰だった。少し、やりようのない怒りと悲しみの気配に俺達は驚いたが、澄玲は何か理解しているのか、
「そうね。霰ちゃんはアレをしないといけないからね」先生も知っていたのか
「分かった。今は時間が取れないが、霰の場合10月末がそれだろう?その日に時間は取るから、安心しろ」なんか、凄く事情に理解を示してくれる学園だ。すると、霰は顔をぱあっと輝かせながら
「ありがとうございます!」深々と頭を下げた。
「ほらほら霰。落ち着きなさい」澄玲が窘めるが、
「霰はわちゃわちゃしてる方が好きだけどな~」なつがそう言い
「そうだよ!皆が皆澄玲ちゃんみたいにお嬢様みたいな感じじゃないんだから!」霰が乗っかる。
「澄玲。賑やか。楽しい」カスミもぼそりと呟く。先生は知らぬ間に立ち去り、そこからは女子組がずっと笑っていた。
 澄玲の顔を見ると困ったような笑っているようなそんな表情をしていた。視線に気付かれたのか澄玲は少し俺の方を見て、すぐに逸らした。俺が何したんだよ。そんなことを考えながら、
 俺は束の間の最期の休息を楽しむのだった。
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