上 下
14 / 127
第2章 裏切りという名の誠実

13 逃げろ!

しおりを挟む
「一応言っておくが、俺じゃないからな」しかし、さすがに怪しまれているらしく、
「何が目的なの?」クラスSの連中は完全に俺がやったと思っているらしく、話したことのない黄緑の目の男が
「今なら理由を聞いてやる。だが、抵抗するようなら僕達を敵に回すことになるぞ」既にその男は腕に風を纏わせ、すぐに攻撃する態勢を取っている。仕方ないから説明しておこう。

「なるほどね」泡沫澄玲は考えているが、先ほどの男は
「お前にあの気配を放てる深層生物アンダーアイズを倒せるわけがないだろ」そうだった。俺は黒眼の落ちこぼれと言われているのだ。さっきの事実を言っても信じられる訳ないか。
「まあ、そうね。貴方。覚悟は出来ているかしら?」泡沫澄玲も掌に紫の焰を作り出し、それに続くように他のやつらも各々の能力を発動させた。マズいことになったな。ここで攻撃を仕掛けてたり逃げても良いのだが、それをすると完全に黒だと認識されてしまう。しかし、話し合いで解決できそうではないし、
「その女子は僕の友人だ。お前も嫌だろ?友人が傷つけられるのは!」その声と共に風の刃が飛んでくる。生半可なものではない。
高圧水柱チャージドアクア!」もう一人青目の男が腕を下から上に振り上げた途端、地面から数本の太い水柱が立ち上がった。風の刃も一緒に避けつつすると、
地裂クエーク!」足元が割れ、躓かないように飛び上がり、追撃で飛んできた風の刃を躱す。
「あら、貴方。思ったよりも動けるのね」真下から呑気な声が聞こえた。
「お前も速すぎるだろうが!泡沫!」下から飛んできた紫の焰を身を捻って避け、着地と同時に俺は飛んできた華奢な拳を避けた。しかし、段差に躓き、直後に飛んできた風の刃で皮膚を切られ、水柱で打ち上げられた。
「ちっ」舌打ちをしながらも思考をめぐらせる。ここで俺が取るべき最適解は、
 打ち落とされた瞬間に俺は受け身を最小限の動きでとり、後方に飛び退き、知らない間に出来た竜巻を避ける。そして、炎を生み出し、陽炎を利用して避ける。さっきからずっと避けてばかりだが、俺には彼らを傷つけることが出来ないのでしないのだ。だから、逃げるしかない。
 俺は一際大きな炎を作り出し、自分と彼らの間に壁を作る。すぐに破られるだろうが、時間稼ぎだ。俺は本気で走り去った。


「逃げられたわね」私は思ったよりもあっさり消えたその炎の壁を見た。少しくすぶっているが、強い能力ではなかったのか大して脅威ではなかった。それでも気になるのが、
「なあ、あいつ黒眼だろ?なんで能力放てたんだ?」その疑問は全員持っているが、すべきことはある。私は振り返ってクラスメイト達を見て言う。
「貴方は彼女を医務室に。あと、君は先生に事情報告しておいて。私と霰(あられ)ちゃんは彼を追ってくる」霰ちゃんの名字は九十九(つくも)で、少し堅そうな名字だが、実際はかなり明るい子だ。眼の色は蒼と紫のオッドアイだ。さっきの戦いでは全く手を出していなかったが、かなりの実力者だ。
「で、澄玲ちゃん。あいつどこに行ったと思う?」霰ちゃんが私に声をかけてくる。
「仮に彼が本気で逃げたとしてもこの学校の設備的に逃げるのは難しいから、そこまで必死に探す必要は無いと思うわ」しかし、彼なら逃げれそうな予感が少ししている。私は天高く昇った満月を見て、そして、走り出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...