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女子高生と彼女②
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「おーっす、JKちゃんいるんでしょ? 開けてよ」
なんで来たんだよ。もう少し二人の空間を楽しませてくれよ。
まあ、タイミングはバッチリなんだけどね。
あまり待たせるわけにもいかないので、さっさと扉を開け中に入ってもらう。
「おじゃましまーす。お、いるじゃん」
遠慮なんてあったもんじゃない。
ありさの靴を確認するとそのままリビングに進んでいく。
「絢香さんじゃないですか、どうしてここに?」
「幸樹がエロいことしないか見張りに来た」
勝手に俺を巻き込むな。
だいたい行きたいと言ったのは、ありさの方だぞ。
「大丈夫です、まだ何もされてないですよ」
「今後なにかされる予定でも?」
「それは······まあ、少しは覚悟してますよ」
「おいおい、俺がそういうことをしようとする前提で話を進めるな」
「大丈夫だよありさちゃん、あいつ童貞だからそんな根性ないよ」
そこ、余計なことを言うんじゃない。
というかいつの間にか主導権が奪われている。
いや、そもそも主導権以前の問題だった。
結局ありさが言おうとしていたことを聞くことが出来なかった。
「ねえ幸樹 、結局何する予定だったの?」
「何も考えてない······」
「いやいや、何か考えとこうよ。さすがにそういう男はモテないぞ」
「うっせえ」
別に絢香には関係ない事だ。
まあ、たしかに何も考えてないのも良くないか。
「ありさは結局何しに来たんだ? 何も無いことないだろ?」
「実は、お願いがあってきました······」
息を飲む、改まって何をお願いされるのだろうか。
告白? いや、それは自惚れだ。
それ以外は······全く検討がつかない。
「あの······私のパートナーになってください!」
思わず吹き出す。
え? パートナー? どういうこと?
「やっぱありさちゃんは幸樹の事狙ってたのか」
「はい! もう2年前くらいから」
いや、2年前とか会ったことないから。
運命の再会とか、そんな展開もあるわけない。
忘れているとかそういう訳でもなく本当に接点がない。
「うーん、どうしようか」
「いやいや、どうしようかじゃないでしょ。こういうのはすぐに答えてあげないと」
「そんな事言われても、結構重要な事だし······」
いきなり「ごめんなさい」なんて言って関係を壊したくない。
かと言って、このまま「いいよ」なんて言っても彼女に悪いし。
「私じゃだめですか?」
「ダメじゃないけど、まだお互いのことあんまり知らないし」
「私は知ってますよ!」
「知ってるって言っても、小説書いてるってだけでしょ」
ん? ······小説?
「ひとつ聞いていい?」
「大丈夫ですよ」
「もしかして、小説のイラスト?」
「バレましたか?」
やっぱりそうだったのか。
やたらと「パートナー」なんて回りくどい言い方をすると思った。
これには俺も絢香も完全に騙された。
「騙されたって顔してますけど、別に騙したわけじゃないですよ。そっちの解釈が違っただけですから」
「別にパートナーなんて言い方しなくてもいいだろ······」
「いやー、日本語って難しいですね」
「わざわざ、難しくする必要は無い」
「すいません。で、どうですか?」
どうと言われても、彼女の実力を知らない。
小説はあくまで文章で伝える作品だ。
ただ、文章が上手いだけでは手に取って貰えない可能性もある。
例えば、全く本を読んだことがない人が同じような内容の、ライトノベルが2冊あると仮定しよう。
1つはタイトルと作者のみが書かれている本。もう1つが可愛い表紙が描かれている本。
さて、どちらを選ぶだろうか。正解は後者だ。
これは大袈裟な例ではあるが、実際に表紙や挿絵を入れている作品は、人物像が想像しやすかったり目立ったりするため、手に取る読者が多い。
そのためイラストの実力で左右される面もある。
「ありさはどのくらい描けるんだ?」
「品定めですか、まあこのくらいです」
スマホの画面を見せる。
「こ、これは······」
そこに映っていたのは、可憐で繊細なイラストだった。
細部までこだわり抜き、曲線がなめらかで美しい。
しかもこの作品に既視感がある。
「もしかして、ナカサさん?」
「はい、そうですよ」
ナカサとは、SNSでフォロワーが5万人を超える人気イラストレーターだ。
数々のゲームイラストや小説の挿絵を描いており、その知名度は今や日本のみならず世界中でも認知されている。
「まさかありさがあのナカサだったとは······」
「どうですか? びっくりしました?」
「びっくりしたな。というかそんな有名人が、俺の小説のイラストなんか描いてていいのか?」
「余裕です」
たしかにあのナカサが描いたイラストだったら、多くの人に注目を浴びるだろう。だが······。
「悪い、せっかくの話だけど今回はパスするよ」
「え? なんでですか?」
当然受けてもらえると思っていたのだろう。
顔が少しだけ曇っていた。
「ありさの申し出はすごく嬉しいし、こんな俺みたいな小説家のためにイラストを描いてくれるなんてものすごく嬉しいよ」
もちろん嘘ではない、心からの本心だ。
「ただ、今ありさのイラストを小説に載せるとすぐに注目を受けるだろう。でも内容が着いて来れなかったら読者はきっとすぐに離れる。それだけならいい、ありさの評価にも関わるかもしれない。だから俺はありさにイラストを描いてもらう資格はないんだ」
「なんですかそれ、別にいじゃないですか! 描かせてくださいよ!」
ありさはついに自分の感情を抑えきれなくなった。
「私には周りの評価なんて関係ないことです。コーキさんの小説のイラストを描きたくて今まで頑張ってきたんですよ!」
「なんで俺なんだよ······」
「それは当然コーキさんのファンだからです! あと一目惚れしました!」
いやいや、そんなわけないだろ。
他にも上手い人なんていっぱいいるじゃないか。
「それでもダメだ、やっぱりお願いする資格は俺にはない」
「いいじゃないですかー」
肩を掴み前後に揺らす。
頭がグラグラして気持ち悪い。
「まあまあ、ありさちゃんもその辺に」
絢香が止める。もっと早く助け舟を出しても良かったんじゃないか?
「コーキさん、私は諦めませんよ」
「いや、諦めるも何も今後もしかしたらお願いするかもしれないぞ? 今は作品がイラストに追いついてないってだけだ」
「わかりました、今はそれでいいです。じゃあどうしたら納得いく作品ができるんですか?」
「それは······」
自分でも分からない部分がある。
読者が増えたら? 確かに一番明確ではある。
ただ、その内容が自分にとって満足できるものでなかったら、きっと書き直してしまうだろう。
結局のところ何が正解か分からない。
「ありさちゃんさ、幸樹のこと好きなん?」
「そうですね」
おい、照れるからそんなこと聞くんじゃない。
ありさの方を見ると、わかりやすいくらいに真っ赤だった。
「じゃあ幸樹と遊んできなよ」
「「え?」」
「幸樹はとりあえず恋愛描写が苦手らしいから、遊びに行って女心を教えてあげなよ」
「それはさすがに──」
「分かりました。コーキさん、デートしに行きましょう」
突然の申し出に戸惑ったが、断る理由もない。
「わかった、いいよ」
そうして、ありさとデートすることになった。
言い出した当の本人は、こちらを見てニヤニヤしていた。
なんでこんな事になってるんだ。
なんで来たんだよ。もう少し二人の空間を楽しませてくれよ。
まあ、タイミングはバッチリなんだけどね。
あまり待たせるわけにもいかないので、さっさと扉を開け中に入ってもらう。
「おじゃましまーす。お、いるじゃん」
遠慮なんてあったもんじゃない。
ありさの靴を確認するとそのままリビングに進んでいく。
「絢香さんじゃないですか、どうしてここに?」
「幸樹がエロいことしないか見張りに来た」
勝手に俺を巻き込むな。
だいたい行きたいと言ったのは、ありさの方だぞ。
「大丈夫です、まだ何もされてないですよ」
「今後なにかされる予定でも?」
「それは······まあ、少しは覚悟してますよ」
「おいおい、俺がそういうことをしようとする前提で話を進めるな」
「大丈夫だよありさちゃん、あいつ童貞だからそんな根性ないよ」
そこ、余計なことを言うんじゃない。
というかいつの間にか主導権が奪われている。
いや、そもそも主導権以前の問題だった。
結局ありさが言おうとしていたことを聞くことが出来なかった。
「ねえ幸樹 、結局何する予定だったの?」
「何も考えてない······」
「いやいや、何か考えとこうよ。さすがにそういう男はモテないぞ」
「うっせえ」
別に絢香には関係ない事だ。
まあ、たしかに何も考えてないのも良くないか。
「ありさは結局何しに来たんだ? 何も無いことないだろ?」
「実は、お願いがあってきました······」
息を飲む、改まって何をお願いされるのだろうか。
告白? いや、それは自惚れだ。
それ以外は······全く検討がつかない。
「あの······私のパートナーになってください!」
思わず吹き出す。
え? パートナー? どういうこと?
「やっぱありさちゃんは幸樹の事狙ってたのか」
「はい! もう2年前くらいから」
いや、2年前とか会ったことないから。
運命の再会とか、そんな展開もあるわけない。
忘れているとかそういう訳でもなく本当に接点がない。
「うーん、どうしようか」
「いやいや、どうしようかじゃないでしょ。こういうのはすぐに答えてあげないと」
「そんな事言われても、結構重要な事だし······」
いきなり「ごめんなさい」なんて言って関係を壊したくない。
かと言って、このまま「いいよ」なんて言っても彼女に悪いし。
「私じゃだめですか?」
「ダメじゃないけど、まだお互いのことあんまり知らないし」
「私は知ってますよ!」
「知ってるって言っても、小説書いてるってだけでしょ」
ん? ······小説?
「ひとつ聞いていい?」
「大丈夫ですよ」
「もしかして、小説のイラスト?」
「バレましたか?」
やっぱりそうだったのか。
やたらと「パートナー」なんて回りくどい言い方をすると思った。
これには俺も絢香も完全に騙された。
「騙されたって顔してますけど、別に騙したわけじゃないですよ。そっちの解釈が違っただけですから」
「別にパートナーなんて言い方しなくてもいいだろ······」
「いやー、日本語って難しいですね」
「わざわざ、難しくする必要は無い」
「すいません。で、どうですか?」
どうと言われても、彼女の実力を知らない。
小説はあくまで文章で伝える作品だ。
ただ、文章が上手いだけでは手に取って貰えない可能性もある。
例えば、全く本を読んだことがない人が同じような内容の、ライトノベルが2冊あると仮定しよう。
1つはタイトルと作者のみが書かれている本。もう1つが可愛い表紙が描かれている本。
さて、どちらを選ぶだろうか。正解は後者だ。
これは大袈裟な例ではあるが、実際に表紙や挿絵を入れている作品は、人物像が想像しやすかったり目立ったりするため、手に取る読者が多い。
そのためイラストの実力で左右される面もある。
「ありさはどのくらい描けるんだ?」
「品定めですか、まあこのくらいです」
スマホの画面を見せる。
「こ、これは······」
そこに映っていたのは、可憐で繊細なイラストだった。
細部までこだわり抜き、曲線がなめらかで美しい。
しかもこの作品に既視感がある。
「もしかして、ナカサさん?」
「はい、そうですよ」
ナカサとは、SNSでフォロワーが5万人を超える人気イラストレーターだ。
数々のゲームイラストや小説の挿絵を描いており、その知名度は今や日本のみならず世界中でも認知されている。
「まさかありさがあのナカサだったとは······」
「どうですか? びっくりしました?」
「びっくりしたな。というかそんな有名人が、俺の小説のイラストなんか描いてていいのか?」
「余裕です」
たしかにあのナカサが描いたイラストだったら、多くの人に注目を浴びるだろう。だが······。
「悪い、せっかくの話だけど今回はパスするよ」
「え? なんでですか?」
当然受けてもらえると思っていたのだろう。
顔が少しだけ曇っていた。
「ありさの申し出はすごく嬉しいし、こんな俺みたいな小説家のためにイラストを描いてくれるなんてものすごく嬉しいよ」
もちろん嘘ではない、心からの本心だ。
「ただ、今ありさのイラストを小説に載せるとすぐに注目を受けるだろう。でも内容が着いて来れなかったら読者はきっとすぐに離れる。それだけならいい、ありさの評価にも関わるかもしれない。だから俺はありさにイラストを描いてもらう資格はないんだ」
「なんですかそれ、別にいじゃないですか! 描かせてくださいよ!」
ありさはついに自分の感情を抑えきれなくなった。
「私には周りの評価なんて関係ないことです。コーキさんの小説のイラストを描きたくて今まで頑張ってきたんですよ!」
「なんで俺なんだよ······」
「それは当然コーキさんのファンだからです! あと一目惚れしました!」
いやいや、そんなわけないだろ。
他にも上手い人なんていっぱいいるじゃないか。
「それでもダメだ、やっぱりお願いする資格は俺にはない」
「いいじゃないですかー」
肩を掴み前後に揺らす。
頭がグラグラして気持ち悪い。
「まあまあ、ありさちゃんもその辺に」
絢香が止める。もっと早く助け舟を出しても良かったんじゃないか?
「コーキさん、私は諦めませんよ」
「いや、諦めるも何も今後もしかしたらお願いするかもしれないぞ? 今は作品がイラストに追いついてないってだけだ」
「わかりました、今はそれでいいです。じゃあどうしたら納得いく作品ができるんですか?」
「それは······」
自分でも分からない部分がある。
読者が増えたら? 確かに一番明確ではある。
ただ、その内容が自分にとって満足できるものでなかったら、きっと書き直してしまうだろう。
結局のところ何が正解か分からない。
「ありさちゃんさ、幸樹のこと好きなん?」
「そうですね」
おい、照れるからそんなこと聞くんじゃない。
ありさの方を見ると、わかりやすいくらいに真っ赤だった。
「じゃあ幸樹と遊んできなよ」
「「え?」」
「幸樹はとりあえず恋愛描写が苦手らしいから、遊びに行って女心を教えてあげなよ」
「それはさすがに──」
「分かりました。コーキさん、デートしに行きましょう」
突然の申し出に戸惑ったが、断る理由もない。
「わかった、いいよ」
そうして、ありさとデートすることになった。
言い出した当の本人は、こちらを見てニヤニヤしていた。
なんでこんな事になってるんだ。
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