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第三章 騎士学園/騒乱編

138「第一級特別研究室の研究員」

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「「「おつかれーっす!」」」

 室長室の外から、数人の声が聞こえた。

「あ! みんな、授業終わって帰ってきたみたいね」

 そう言うと、ソフィア・クインズベルこのかわいい生き物が俺の手をパシっと掴むと、室長室を出て、研究所の入口へと向かった。

「みんな、授業おつかれー!」

 俺の手を掴んだ状態のまま、研究所に入ってきた生徒たちに声を掛けるソフィア。

「「「え⋯⋯誰っ?!」」」

 三人が俺を見て当然のリアクションをする。

「はーい、ちゅうも~く! 彼の名はカイト・シュタイナー君。『騎士団科』から来た一回生の生徒さんで~す! はい、あいさつ!」
「あ、は、はい。ど、どうも、はじめまして⋯⋯カイト・シュタイナーと申します。今回はこの研究室で魔法開発でやってきました。短い間ですが、よろしくお願いします⋯⋯」

 俺はソフィアのテンションに圧倒されたこともあって、辿々しい挨拶となってしまった。

「ん? カイト・シュタイナー?」
「あれ? その名前⋯⋯」
「どっかで⋯⋯聞いたことあるような⋯⋯」

 三人が俺の名前を聞いて一度首を傾げる。⋯⋯そして、

「「「あーーーーーーー! 思い⋯⋯出したっ!!!!!」」」

 どっかで聞いたことのある『思い⋯⋯出したネタ』を一拍入れると、

「カ、カイト・シュタイナーっ!? 今年の一回生クラス編成トーナメントの優勝者っ!!!!」
「最後まで、他を寄せつけない圧倒的な強さで優勝したっていう、あの⋯⋯一回生っ!!!!」
「両親が元騎士団長と副団長のベクター・シュタイナー様とジェーン・シュタイナー様っていう、サラブレッド中のサラブレッドっ!!!!」

 男子生徒1名、女子生徒2名は俺のことを知っていたようで、手放しで大絶賛してくれた。

 あら、気持ちいい。

「え? みんな、知ってたの?! なーんだ⋯⋯ボクが驚かそうと思ってたのにぃぃ~」
「「「いやいやいや、そんなの生徒なら誰だって知ってますよっ!!」」」
「一回生のクラス編成トーナメントにも関わらず、ラディット国王がお見えになっていたとか!」
「あ、あと、『動天世代アストロ・エイジ』という、騎士学園史上、多くの実力者が集ったと言われていた今期の一回生の中で圧倒的な実力差を見せつけたとか!」
「観客席にはジャガー財閥やカスティーノ総合商社といった超有名どころの家の人たちもいて、一回生のクラス編成トーナメントとしては異例の超満員だったとか!」
「あ、あはは⋯⋯」

 三人は最初の薄いリアクションとは違って、だいぶ興奮した様子で俺に近づき話しかけてきた。

「コラコラ、君たち。そんながっついたらカイト君がビックリするでしょ! その前にまずは自己紹介したら?」
「あ、そうでしたっ!」
「ご、ごめんなさい⋯⋯!」
「し、失礼しました⋯⋯っ!?」

 三人はソフィアに言われハッとすると、一人一人自己紹介してくれた。

「初めまして! 俺はマイルズ・ジュリアーノ⋯⋯『魔道具科』一回生だ! よろしく、カイト・シュタイナー!」
「よろしく!」

 マイルズ・ジュリアーノ⋯⋯175の俺より少し身長が高い爽やかイケメン男子。しかも髪がライトブルーなので、その『イケメン』により拍車をかけている外見(うらやま)。

「あ! 俺の姉貴がさ、騎士団科の三回生にいるんだけど知ってる? セリーヌ・ジュリアーノってんだけど⋯⋯」
「ん? セリーヌ・ジュリアーノ?」

 何か聞いたことが⋯⋯ある⋯⋯ような⋯⋯、

「わかるかな~⋯⋯⋯⋯副会長・・・やっているんだけど⋯⋯」
「副会長っ!? いや、わかるわっ!」

 副会長⋯⋯セリーヌ・ジュリアーノ。

 前にレイアから聞いたことがあるが、たしか、生徒会長エリナ・クインズベルを裏で支える人で『頭脳明晰』かつ『優れた美貌』を兼ね備えた『才色兼備が服着て歩いている人』と言わしめた人物。

 その弟ということだが、『高スペック姉』に負けないくらいの外見であるのはもちろん、一見『軽い感じ』はあるが、しかし、それが『演技っぽい』のを感じるので、おそらくこいつの行動や言動はいろいろと『計算』の元だろうなと感じる。

 まあ、『油断ならない奴』ということである。

 そして、次に自己紹介してくれたのは、

「は、初めまして⋯⋯。『魔道具科』一回生のシーファ・オルドリッチと申します」
「よ、よろしくお願いします」

 シーファ・オルドリッチ⋯⋯身長はだいたい150センチ後半くらいなのか、ソフィア・クインズベルさんより少し背が高いが、まあ小柄で可愛らしい感じだ。あと可愛らしいといえば、淡い桃色の髪色で『おさげ』というヘアースタイルなので、ソフィア先生以上に見た目幼い感じだ。

 あと、人見知りなのか、少しおどおどしながら挨拶をする彼女は、さっきの『チャラ男マイルズ』とは大違いである。

 そんな可愛らしい彼女に一人、ムフフ・・・としていると、

「カイト、シーファはすごいんだぞ! なんせ、この『第一級特別研究室ダイイチの研究員』の中で、唯一の下級貴族出身の生徒・・・・・・・・・・・・なんだからな!」
「ちょっ!? セ、セイラ様⋯⋯やめてください!」
「そうそう! シーファちゃん、かわいいよな~」
「別に今、そんな話していないでしょ、バカマイルズ! ちょっと黙っててくれる?」
「えー? 釣れないな~⋯⋯セイラちゃん」
「うっさい! 私はチャラ男が嫌いなんだ! しっしっ!」
「あ、あわわ⋯⋯!? や、やめてください、二人ともぉぉ~~!!」

 真っ赤なポニーテールと派手・・な髪色をした『セイラ』が、マイルズと共にシーファに絡んでくる。『いつもの光景』という感じだ。それにしても、

「下級貴族の生徒が『第一級特別研究室ダイイチの研究員』というのはすごいことなのか?」

 と、俺は『セイラ』という子が言っていた『唯一の下級貴族出身』というところに引っかかったので質問をした。

「そうよ。普通、この『第一級特別研究室ダイイチ』の研究員に選ばれるのは魔力量の多い上級貴族の生徒が選ばれるのが多いのだけれど、彼女は下級貴族出身でも『魔力量』が多くて、しかも『魔力コントロール』もうまいのよ。おまけに『魔法』や『魔法具』の知識にも長けているから大抜擢されたの! すごいでしょ!」
「へ~、それはすごいな。ちなみに俺も下級貴族・・・・だから、何か親近感を感じるよ」
「「「⋯⋯へっ?」」」
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