137 / 145
第三章 騎士学園/騒乱編
137「第一級特別研究室と古代遺跡」
しおりを挟むちなみに、そんな彼女だが実は『魔法・魔道具業界』では超有名人らしく、学園長だけじゃなく、Aクラスの奴らからも「何でお前はそんな有名人も知らないんだよっ!」とか「もう少し世間一般の常識と自重を勉強しろ!」と大量にツッコまれた。⋯⋯後半部分は言いがかりだよね?
そんな、ソフィア・クインズベルという人は、クラリオン王国のみならず世界でも高く評価されている『魔法・魔道具研究の第一人者』の一人なのだそうだ。
しかも、彼女が『室長』をしている『第一級特別研究室』⋯⋯通称:『ダイイチ』は、クラリオン王国内でも、特に重要な研究を行っている機関のようで、そこの室長をやっているということからも彼女がいかに『すごい人』なのかがわかる。
極め付けは、彼女の出自。⋯⋯そう、苗字からもわかるとおり、彼女は名門『クインズベル家』の長女。つまり、あの『タカラジェンヌ会長』こと、エリナ・クインズベルの姉なのである。
「なるほど⋯⋯あべこべ姉妹枠ですね、わかります」
「??」
「あ、どうぞ、お構いなく」
「は、はあ⋯⋯」
そんなわけで、俺と『かわいい枠優勝候補』のソフィア・クインズベル室長は、以前発狂中のヴェルロイ・ガリウス魔道具科統括長を放置して『第一級特別研究室』へと向かった。
********************
さっきまでいた『統括長室』を出た後、俺はソフィアの案内の元、後ろからついていく。すると、
「え? あ、あの、ソフィアさん?」
ソフィアが突然『用具室』という名札がついた部屋へと入っていく。
「大丈夫ですよ。さ、入って」
「は、はあ⋯⋯」
俺はそう言われて『用具室』に入る。すると、そこには⋯⋯⋯⋯想像通り、モップやほうきなどの掃除用具が乱雑に置かれていた。
「あ、あのー、こんなところに来て、何を?」
「はい! ここから『第一級特別研究室』へ向かいます」
「⋯⋯は? どうやって?」
ニコッ。
ソフィアが笑顔を見せた後、突然、左手で俺の手を握ってきた。
「(ドキ!)⋯⋯えっ?!」
ドキッとする俺だったが、ソフィアは特に気にせず、今度はスッとおもむろに右手を上にかざした。そして、
「⋯⋯こうやって」
「っ!?」
ズワァッ!
——ソフィアが右手を上にかざした瞬間、天井に直径二メートルほどの『魔法陣』が浮かび上がり、その魔法陣から俺とソフィアに光が走った。
「な、なんだ、これ⋯⋯はっ!?」
——全身が光に包まれた瞬間、俺とソフィアがその場から消えた。
********************
「ようこそ、カイト君! ここがクラリオン王国が誇る最先端魔法・魔道具研究の研究室⋯⋯『第一級特別研究室』でーす!」
さっきの『用具室』で『魔法陣』から出た光に包まれた俺とソフィア。そのあまりの眩しさに俺は思わず目を閉じる。そして、光が消えたのを感じた俺が目を開けると、そこは『巨大な空間』が広がっていた。
「な⋯⋯なんだ!? この施設は⋯⋯」
そこは横にも縦にも広がった空間だった。
横はどのくらいあるかわからないが、少なくとも百メートル以上はありそうだ。しかし、それにも増して驚きだったのが、
「な、なんだ、この天井の⋯⋯高さは⋯⋯?」
そう、『天井の高さ』が圧巻だったのだ。
「すごいでしょ? 地面から天井までざっと50メートルはあるからね」
「も、もはや、研究室というより『ドーム型屋内運動場』って感じだな」
ちなみに、こんなにも天井が高い『第一級特別研究室』だが、この施設はなんと⋯⋯⋯⋯地下に存在しているとのこと。
「さっき、『魔道具科』の統括長の部屋を出て『用具室』に行ったよね? ちなみに、あそこは三階になるんだけど、その三階の『用具室』には『転移陣』があってね⋯⋯。カイト君も見たでしょ?」
「あ、あの、天井に書いてあった『魔法陣』のこと?」
「そうそう。あれは『空間から空間へ移動する魔法陣』で、通称『転移陣』というものでね。その『転移陣』はこの『第一級特別研究室』とつなげているんだ。だから、こうして移動したのさ」
「く、空間を移動する魔法陣⋯⋯『転移陣』っ?! そ、そんなものが⋯⋯」
まさか『転移陣』が、この世界に存在していたとは!
「あったらいいな~」くらいには思っていたけど、あるのかよ! すげー!
俺は異世界で『転移陣』で移動するのも『異世界に転生したらやりたいことリスト』の一つだったので、不意打ちではあったものの、また一つ『やりたいこと』を実現した。
それにしても、『転移陣』での移動をした感想としては「何か光に包まれたとき、体がフワッと浮いたと思ったら移動してた」という感じだった。
例えるなら『高層ビルのエレベーターで上階から下階へ降りる時のフワッと浮くあの感じ』にすごく似ていた。
ちなみに、ソフィアに転移陣の移動の際のフワッと浮く感じの話をしたら、「ここは地下になるからたぶんそう感じたのかも。逆にここから『魔道具棟』へ戻るときは『体が引っ張られる感じ』になるよ」と言っていた。そう言われると、あながち俺の『エレベータ理論』はそこまで外していなかったのかもしれない。それにしても、
「こ、ここが地下だなんて⋯⋯信じられない」
「ちなみに、ここは階数でいうと地下10階くらいかな? 地上からおよそ100メートル下くらいになるよ」
「す、すごい⋯⋯」
この世界は『中世時代程度の生活水準』なだけに、第一級特別研究室はかなり異質だった。
というのも、ここの天井や壁、柱などが、すべて⋯⋯⋯⋯コンクリートで出来ていたからだ。
「コ、コンクリート! これって、まるで⋯⋯」
まるで⋯⋯⋯⋯俺のいた地球の『建築技術そのもの』じゃないか!?
「ん? なんだい? こんくりーとって?」
「え? あ、いや、えーと⋯⋯と、特に、意味は⋯⋯」
俺はつい口走った『コンクリート』について聞かれた時、説明するのは『マズイ』と思ったので、何とかごまかした。
「あ、そ? ま、それにしても⋯⋯フフフ、良いリアクションをありがとう、カイト君。驚かした甲斐があったよ」
「い、いやー、ビックリしました。⋯⋯すごい建物ですね。こんなの初めて見ました」
この異世界では。
「うん、うん、そうだろう、そうだろう⋯⋯。ちなみにこの施設ってね、実は⋯⋯⋯⋯『古代遺跡』なんだよ」
「え⋯⋯? こ、古代遺跡⋯⋯?」
「そう! この施設自体は何も手をつけていない。加工していない。今から遠い昔の⋯⋯古代に作られたこの空間をそのまま利用しているだけだよ」
バ、バカなっ!?
そ、そんなの⋯⋯それって⋯⋯、
「不思議だよね? どう見たって、今のボクたちの建築技術水準と比べても⋯⋯⋯⋯はるかに優れた技術で作られているのは明らかだからね」
「そ、そう⋯⋯ですね⋯⋯」
ソフィアのその感想はもっともだが、俺的にはそれ以上に⋯⋯⋯⋯どうして地球と似た構造物がこの世界に存在しているんだ、というところだった。
********************
現在、俺はソフィアさんの部屋⋯⋯『室長室』でお茶をしていた。というのも、
「ごめんなさいね、カイト君。ここの研究室で手伝いをしている生徒たちがまだ授業終わってなくて⋯⋯」
ソフィアさんが「もう少しでその子たちの授業が終わるから⋯⋯」ということで「それまでお茶をして待っていよう」ということになったのだ。
「あ、いえ、大丈夫です。それよりも、さっき言ってた『古代遺跡』の話⋯⋯面白かったです。もっと教えてください!」
俺は今日初めて聞いた、この『古代遺跡』の話をソフィアさんに色々教えて欲しいと懇願する。しかし、
「ごめんね。これは『最重要機密事項』だから、これ以上は教えられないの」
「そう⋯⋯なんですね⋯⋯」
俺ははっきりとがっかりした仕草を見せる。
「まあ、でもカイト君が『特殊な子』というのも『最重要機密事項』の一つだから、後々、『古代遺跡』についての情報公開も許可が下りると思うよ?」
「え? 俺が⋯⋯⋯⋯『最重要機密事項の一つ』?」
「あっ! やばっ! あ、あは、あはははははは⋯⋯⋯⋯今のは忘れて、ね!(テヘペロ)」
この、おっちょこちょいさんめ!
そんな可愛い『テヘペロ室長』と楽しい午後の紅茶時間を過ごしていると、
「「「おつかれーっす!」」」
室長室の外から、数人の声が聞こえた。
1
お気に入りに追加
429
あなたにおすすめの小説
転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる