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第三章 騎士学園/騒乱編
132「学園長VSカイト・シュタイナー(1)」
しおりを挟む「それでは模擬戦⋯⋯⋯⋯開始っ!」
アルフレッドの掛け声がかかった。しかし、
シーーーン。
「ふ、二人とも⋯⋯」
「動⋯⋯かない?」
学園長ハンニバル・シーザーもカイトも対峙したままで動きがない。しかし、よく見ると二人が何か会話をしていることに皆が気づく。
「ふぉふぉふぉ、カイト君⋯⋯来ないのかね?」
「いや~、学園長にどこまで本気を出せばいいのか、悩んでいまして⋯⋯」
「⋯⋯ほう?」
さっきまで好々爺然としていたハンニバルの顔から笑みが消える。
「おまっ?! バ、バカカイトっ! お前何を言っているんだ! 謝れ、バカ!」
「そうよ、カイト! あんた学園長になんて言葉吐いてんの! 殺されるわよ!」
「いや~カイト君、すごいね~。⋯⋯正直、彼の命が心配になってきたよ」
外野では生徒や騎士団の面々が、カイトの言葉に真っ青になりながら謝罪するよう促す。ちなみに最後に心配の言葉を投げかけたのはイグナスの兄貴のケビン。
「なるほど。カイト君が猫かぶりをやめると、こんな感じになるんじゃな~」
「幻滅しましたか?」
「い~や、血が⋯⋯⋯⋯滾るわいっ!」
「!」
ボゴン、ボゴン、ボゴン⋯⋯っ!!
突如、ハンニバルの体に異変が起きた。
というのも⋯⋯⋯⋯ハンニバルの筋肉がボコボコと隆起し膨らんだからである。
「キャーーーーーーー!!!!!!」
ハンニバルの急な変化に悲鳴を上げたのはリリアナ・ハルカラニ。
「き、筋肉だけじゃない! 筋肉と同時に魔力が凄い勢いで膨らんでいってる!これが父上が言っていたクラリオン王国最強の男『悪虐』⋯⋯⋯⋯ハンニバル・シーザー」
「う、嘘でしょ? 何という魔力なの⋯⋯っ!? こ、こんなの⋯⋯もしかして、アン女王様よりも⋯⋯」
ハンニバルの魔力が噂以上だと激しく動揺するのは、ヤマト皇国王太子リュウメイ・ヤマトとリーガライド獣国サラ・ウィンバード。
「はぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁっっーーーーーー!!!!!!」
ボゴン、ボゴン、ボゴン、ボゴン、ボゴン、ボゴン⋯⋯!
「⋯⋯ハ、ハンニバル様が、最初からいきなり、本気モードに⋯⋯」
「さ、最初から完全体スタートっ!? ま、まさか、カイト君をそこまで評価しているということですか⋯⋯⋯⋯学園長っ!」
「⋯⋯ハンニバル様。カイト君とはそれほどの人物⋯⋯そういうことですか」
ゼノ、アルフレッド、ケビンが学園長の姿を見て、嫌な汗をかきながら心情を吐露する。
「ふぃ~⋯⋯⋯⋯待たせたの」
今、目の前のハンニバルの姿は通常の体型(175cm)から、約1.5倍ほどデカくなっていた。カイトを見下すその姿はもはや『大人と子供』以上の身長差、しかも大幅に膨れ上がった魔力が体から漏れ出しており、それはハンニバルの体の周囲を『蜃気楼』のようにユラユラ揺らしていた。
「戸○呂(弟)かよっ!?」
カイトが読者代表でツッコミを入れる。
「トグロオトウト? ふむ、よくわからんが、とりあえずワシのこの姿を見て動じないどころか、ふざける余裕さえあるとはな。⋯⋯⋯⋯強がり、ではないんじゃな?」
「ん? 強がり? まさか~! 別にそんなつもりは⋯⋯⋯⋯⋯⋯ないですよ?」
ドン!
「「「うおっ!!!!!!!!」」」
「「「キャアアアアアアアアアーーーーーーーーっ!!!!!!!」」」
今度はカイトが一瞬で魔力を急増幅させる。すると、ハンニバルと同じようにカイトの体の周囲を『蜃気楼』のような透明のモヤが包み込む
「ぬ、ぬぅぅぅ~~~~⋯⋯!? こ、これが、『カイト式魔力コントロール』⋯⋯っ! な、何という魔力じゃ⋯⋯」
ハンニバルは、圧倒的な魔力を宿す目の前の少年を見て⋯⋯⋯⋯嬉しそうに顔を綻ばせた。
********************
「おい、カイト⋯⋯」
「え? は、はい?」
いつの間にか、学園長の口調が『カイト君』ではなく『カイト』に変わったので俺は軽く驚く。
「お主⋯⋯まだ、もう一段階魔力を跳ね上げられるじゃろ?」
「え? ま、まあ⋯⋯⋯⋯でも」
「でも、なんじゃ?」
「えーと、とりあえず⋯⋯⋯⋯この状態で勝てないと判断したら、その時にお見せしますね?」
「⋯⋯え?」
「⋯⋯は?」
「⋯⋯お、おいっ!!!!」
俺の言葉を聞いた瞬間、まさにこの場にいた全員が⋯⋯⋯⋯言葉を失った。
ん? 俺、なんか今、変なこと言った?
いや、だって危ないよ? 学園長、もう歳なんだから?
ピキ⋯⋯っ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ⋯⋯!!!!!!!!
突如——学園長が顔を紅潮させながら、魔力による『威圧』を放出する。
「っ!? が、学園⋯⋯長⋯⋯!」
「くっ!? な、なんという『威圧』っ!!!!」
「く、苦し⋯⋯い⋯⋯」
あ、あの、学園長?
皆さん、苦しんでいますので、その『威圧』⋯⋯抑えた方がよろしいかと?
「ふぉふぉふぉ⋯⋯まさか、このこのワシが試される日が来ようとはのぉ⋯⋯」
「あ、いや、やっぱり、学園長もお歳ですか⋯⋯⋯⋯らっ!?」
ドン⋯⋯っ!
カイトが学園長の言葉に返事をするタイミングで、学園長がカイトに突っ込んできた。
「はぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!!」
「っ!?」
ドゴンっ!
急接近した学園長が全体重を乗せた正拳突きをカイトの胸に放ち、それをカイトが反応し腕をクロスさせブロック。すると、とてつもない重く鈍い音が周囲に響いた。
シュウゥゥゥ⋯⋯。
「お、お⋯⋯⋯⋯重っも!」
「バ、バカなっ?! このワシの全力の正拳突きを受けて⋯⋯⋯⋯微動だにしない、だとっ!?」
カイトは学園長の『全力の正拳突き』をその場から一歩も動かず完璧に受け止めた。
「ば、化け物め⋯⋯」
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