132 / 145
第三章 騎士学園/騒乱編
132「学園長VSカイト・シュタイナー(1)」
しおりを挟む「それでは模擬戦⋯⋯⋯⋯開始っ!」
アルフレッドの掛け声がかかった。しかし、
シーーーン。
「ふ、二人とも⋯⋯」
「動⋯⋯かない?」
学園長ハンニバル・シーザーもカイトも対峙したままで動きがない。しかし、よく見ると二人が何か会話をしていることに皆が気づく。
「ふぉふぉふぉ、カイト君⋯⋯来ないのかね?」
「いや~、学園長にどこまで本気を出せばいいのか、悩んでいまして⋯⋯」
「⋯⋯ほう?」
さっきまで好々爺然としていたハンニバルの顔から笑みが消える。
「おまっ?! バ、バカカイトっ! お前何を言っているんだ! 謝れ、バカ!」
「そうよ、カイト! あんた学園長になんて言葉吐いてんの! 殺されるわよ!」
「いや~カイト君、すごいね~。⋯⋯正直、彼の命が心配になってきたよ」
外野では生徒や騎士団の面々が、カイトの言葉に真っ青になりながら謝罪するよう促す。ちなみに最後に心配の言葉を投げかけたのはイグナスの兄貴のケビン。
「なるほど。カイト君が猫かぶりをやめると、こんな感じになるんじゃな~」
「幻滅しましたか?」
「い~や、血が⋯⋯⋯⋯滾るわいっ!」
「!」
ボゴン、ボゴン、ボゴン⋯⋯っ!!
突如、ハンニバルの体に異変が起きた。
というのも⋯⋯⋯⋯ハンニバルの筋肉がボコボコと隆起し膨らんだからである。
「キャーーーーーーー!!!!!!」
ハンニバルの急な変化に悲鳴を上げたのはリリアナ・ハルカラニ。
「き、筋肉だけじゃない! 筋肉と同時に魔力が凄い勢いで膨らんでいってる!これが父上が言っていたクラリオン王国最強の男『悪虐』⋯⋯⋯⋯ハンニバル・シーザー」
「う、嘘でしょ? 何という魔力なの⋯⋯っ!? こ、こんなの⋯⋯もしかして、アン女王様よりも⋯⋯」
ハンニバルの魔力が噂以上だと激しく動揺するのは、ヤマト皇国王太子リュウメイ・ヤマトとリーガライド獣国サラ・ウィンバード。
「はぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁっっーーーーーー!!!!!!」
ボゴン、ボゴン、ボゴン、ボゴン、ボゴン、ボゴン⋯⋯!
「⋯⋯ハ、ハンニバル様が、最初からいきなり、本気モードに⋯⋯」
「さ、最初から完全体スタートっ!? ま、まさか、カイト君をそこまで評価しているということですか⋯⋯⋯⋯学園長っ!」
「⋯⋯ハンニバル様。カイト君とはそれほどの人物⋯⋯そういうことですか」
ゼノ、アルフレッド、ケビンが学園長の姿を見て、嫌な汗をかきながら心情を吐露する。
「ふぃ~⋯⋯⋯⋯待たせたの」
今、目の前のハンニバルの姿は通常の体型(175cm)から、約1.5倍ほどデカくなっていた。カイトを見下すその姿はもはや『大人と子供』以上の身長差、しかも大幅に膨れ上がった魔力が体から漏れ出しており、それはハンニバルの体の周囲を『蜃気楼』のようにユラユラ揺らしていた。
「戸○呂(弟)かよっ!?」
カイトが読者代表でツッコミを入れる。
「トグロオトウト? ふむ、よくわからんが、とりあえずワシのこの姿を見て動じないどころか、ふざける余裕さえあるとはな。⋯⋯⋯⋯強がり、ではないんじゃな?」
「ん? 強がり? まさか~! 別にそんなつもりは⋯⋯⋯⋯⋯⋯ないですよ?」
ドン!
「「「うおっ!!!!!!!!」」」
「「「キャアアアアアアアアアーーーーーーーーっ!!!!!!!」」」
今度はカイトが一瞬で魔力を急増幅させる。すると、ハンニバルと同じようにカイトの体の周囲を『蜃気楼』のような透明のモヤが包み込む
「ぬ、ぬぅぅぅ~~~~⋯⋯!? こ、これが、『カイト式魔力コントロール』⋯⋯っ! な、何という魔力じゃ⋯⋯」
ハンニバルは、圧倒的な魔力を宿す目の前の少年を見て⋯⋯⋯⋯嬉しそうに顔を綻ばせた。
********************
「おい、カイト⋯⋯」
「え? は、はい?」
いつの間にか、学園長の口調が『カイト君』ではなく『カイト』に変わったので俺は軽く驚く。
「お主⋯⋯まだ、もう一段階魔力を跳ね上げられるじゃろ?」
「え? ま、まあ⋯⋯⋯⋯でも」
「でも、なんじゃ?」
「えーと、とりあえず⋯⋯⋯⋯この状態で勝てないと判断したら、その時にお見せしますね?」
「⋯⋯え?」
「⋯⋯は?」
「⋯⋯お、おいっ!!!!」
俺の言葉を聞いた瞬間、まさにこの場にいた全員が⋯⋯⋯⋯言葉を失った。
ん? 俺、なんか今、変なこと言った?
いや、だって危ないよ? 学園長、もう歳なんだから?
ピキ⋯⋯っ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ⋯⋯!!!!!!!!
突如——学園長が顔を紅潮させながら、魔力による『威圧』を放出する。
「っ!? が、学園⋯⋯長⋯⋯!」
「くっ!? な、なんという『威圧』っ!!!!」
「く、苦し⋯⋯い⋯⋯」
あ、あの、学園長?
皆さん、苦しんでいますので、その『威圧』⋯⋯抑えた方がよろしいかと?
「ふぉふぉふぉ⋯⋯まさか、このこのワシが試される日が来ようとはのぉ⋯⋯」
「あ、いや、やっぱり、学園長もお歳ですか⋯⋯⋯⋯らっ!?」
ドン⋯⋯っ!
カイトが学園長の言葉に返事をするタイミングで、学園長がカイトに突っ込んできた。
「はぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!!」
「っ!?」
ドゴンっ!
急接近した学園長が全体重を乗せた正拳突きをカイトの胸に放ち、それをカイトが反応し腕をクロスさせブロック。すると、とてつもない重く鈍い音が周囲に響いた。
シュウゥゥゥ⋯⋯。
「お、お⋯⋯⋯⋯重っも!」
「バ、バカなっ?! このワシの全力の正拳突きを受けて⋯⋯⋯⋯微動だにしない、だとっ!?」
カイトは学園長の『全力の正拳突き』をその場から一歩も動かず完璧に受け止めた。
「ば、化け物め⋯⋯」
1
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
悪魔転生奇譚Ω
草間保浩
ファンタジー
ある高校で突然起こった1クラス丸々異世界召喚事件。
異世界の国を救う勇者として召喚された彼らは、元の世界に帰るために様々な苦難を乗り越えていく。
陰謀渦巻く世界の動乱に巻き込まれながら、生徒たちは強くなっていく。
その中の1人、鬼神龍虎には人とは違う秘密があって―――
これは悪魔の物語。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

『俺だけが知っている「隠しクラス」で無双した結果、女神に愛され続けた!』
ソコニ
ファンタジー
勇者パーティから「役立たず」として追放された冒険者レオン・グレイ。彼のクラスは「一般職」――この世界で最も弱く、平凡なクラスだった。
絶望の淵で彼が出会ったのは、青い髪を持つ美しき女神アステリア。彼女は驚くべき事実を告げる。
かつて「役立たず」と蔑まれた青年が、隠されたクラスの力で世界を救う英雄へと成長する物語。そして彼を導く女神の心には、ある特別な感情が芽生え始めていた……。
爽快バトル、秘められた世界の真実、そして禁断の恋。すべてが詰まった本格ファンタジー小説、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる