110 / 145
第二章 騎士学園編
110「決勝トーナメント準々決勝(3)」
しおりを挟む「それでは、次に準々決勝二回戦! レイア・クラリオン選手、リュウメイ・ヤマト選手の入場です!」
「「「「「ウォォォォォーーーーー!!!!!!」」」」」
司会のフェリシアがそう告げると、観客が一際大きく声援を送った。
「「「「「うぉぉーーー! レイア姫様ぁぁぁあぁぁあぁーーーー!!!!」」」」」
いわずもがな、レイア姫様のファンたちによるものである。
「す、すごい、人気だな、レイア⋯⋯」
「そりゃ、そうよ。なんてったってこの国の第二王女よ? しかも、成績優秀で、おまけに魔法も武闘術も男性以上に長けている。それどころか、騎士学園入学前から魔獣討伐をするほどの実力よ? 正直、彼女が本気出したら一回生どころか、他の上級生を加えても上位に位置するほどの実力だと思うわ」
レコはレイアのことをかなり認めているのか、スラスラと解説をした。
「レコはレイアのこと、かなり評価しているんだね」
「当たり前でしょ! 第二王女という立場に甘んじないで努力し続けている人だもの! そうじゃないと、いくら王族だからって、十歳であそこまで強くはなれないわ」
ごもっとも。
「だけど、次の対戦相手はあのヤマト皇国の王太子⋯⋯リュウメイ・ヤマト。あの男、相当強いわ」
「レコ?」
「これまで約五年間騎士団にいたけど、あのリュウメイ・ヤマトの実力は、騎士団の中でも上位に食い込むくらいには強いと思うわ⋯⋯」
「ま、まさかっ!?」
「まだ、彼の本気を見ていないからなんとも言えないけど、たぶん、それくらいは強いと⋯⋯思う」
「レコ⋯⋯」
レコが舞台に上がっているリュウメイを見ながら、若干震える声でそう呟く。レコがそこまで言うのは珍しかった。
********************
「はじめまして、レイア姫様。ヤマト皇国王太子、リュウメイ・ヤマトです」
「はじめまして。クラリオン王国第二王女、レイア・クラリオンです」
二人が舞台上で挨拶を交わす。レフリーも二人の立場を察して、そのまま会話を続けさせる。
「レイア姫様のお噂は聞いているよ。騎士学園入学時前⋯⋯八歳の時から魔獣討伐に参加。Bランクの魔獣を単独撃破するほどの腕前⋯⋯と」
「そうですか、よく調べておいでですね。詳し過ぎるほどに⋯⋯」
レイアはそう言って、リュウメイを軽く威嚇する。
「⋯⋯レイア姫様はどうやら誤解しているみたいだね」
「何のことでしょう?」
「ううん、何でもないよ。今はそれで⋯⋯」
「今は⋯⋯?」
「それではっ! 準々決勝第二試合、試合開始ぃぃぃーーーー!!!!!」
ゴーーーン!
「ハッ!」
「むっ!?」
試合開始の合図直後、リュウメイが先に仕掛ける。素早い動きで体を右へ左へステップを踏んだ直後⋯⋯⋯⋯姿が消えた。
「⋯⋯フン!」
「ぐっ!? う、うそ?!」
リュウメイの姿が消えたのはまさに錯覚で、実際は左右のステップから、急激に加速し移動することで相手に姿が消えたように見せる技だった。
しかし、レイアはそれを見破ると、背後からのリュウメイの突きを体を回転させ躱すと同時に、お返しとばかりにリュウメイの後頭部へ肘を打ち込もうとする。
リュウメイはレイアが自分の突きを躱したことに驚きつつも、レイアの繰り出した肘を余裕を持って腕でカバーした。
「今のはヤマト皇国の武闘術『龍拳』の技の一種ですか?」
「うん、そうだよ。龍拳・一位階『疾風』。まさか、初見で躱されるとは⋯⋯⋯⋯驚きだよ!」
リュウメイは今の攻撃を避けたレイアにニッコリと笑顔を返した。
「⋯⋯さっきもそうですが、ヤマト皇国の者たちはどうもクラリオン王国を軽く見ているようですね」
「そ、そんなことないですよっ!?」
そう言って、リュウメイが両手を前に出し、バタバタと振って必死に否定をアピール。
「そうでしょうか? 先程の試合のウキョウ・ヤガミの態度も然り。それ以前の試合においては、お二人ともです」
「ま、ウキョウは負けてしまいましたけどね⋯⋯アハハハ」
「試合ではです。実戦であれば結果はどうなってたかわからないというのが私の見解です」
「!⋯⋯⋯⋯なるほど。レイア姫様は実に達観していらっしゃる。これは本当に驚きです」
「!」
突然、さっきまでの軽い感じだったリュウメイの雰囲気が変わる。
「一つ、誤解しないでいただきたいのは、本当にクラリオン王国の方々を下に見ているというのは違います。それだけは訂正させてください。ただ⋯⋯」
「ただ⋯⋯?」
「ただ⋯⋯⋯⋯我々、ヤマト皇国の個人の力は他国に比べて強大であると自負しているだけです」
「っ!? そ、そんなの⋯⋯言っていることは一緒⋯⋯」
「一緒ではありません! 我々、ヤマト皇国の民はどんな相手にも『敬意』を持って接します。同時に、我々ヤマト皇国の民は自身の国や力を『五大国一』だと『自負』してもいます。それは相手を下に見ているということとは全然違います。聡明なレイア姫様なら⋯⋯⋯⋯わかるでしょ?」
最後、リュウメイは最初の『おちゃらけ』に戻って、ニコッと悪戯な笑みを浮かべる。
「わからないこともないが、あなたの⋯⋯いや、お前の言葉は、いまいち信用⋯⋯⋯⋯できんっ!」
「そりゃ、どう⋯⋯⋯⋯もっ!」
そう言うと、二人は互いに間合いを詰めると接近戦を始めた。先ほどより何倍も早い拳や蹴りを繰り出して戦うその様子に、観客は言葉を失い、ただただ眺めていた。
——しかし、その接近戦は長くは持たなかった。
1
お気に入りに追加
429
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる