108 / 145
第二章 騎士学園編
108「決勝トーナメント準々決勝(1)」
しおりを挟む「これより、決勝トーナメント準々決勝をはじめますっ! 準々決勝第一試合は⋯⋯⋯⋯イグナス・カスティーノ選手対ウキョウ・ヤガミ選手!」
「「「「「ワァァァァーーーーー!!!!」」」」」
三十分休憩の後、早々に準々決勝が始まった。
「出た! ヤマト皇国の留学生!」
「ウキョウ・ヤガミか。あいつ、やばいよな!?」
「どっちも頑張れー!」
観客や観覧の生徒たちからも大きな声援が送られる。その中に、
「あれが、ヤマト皇国の⋯⋯留学生。強いのか?」
「はい。予選も決勝トーナメント一回戦も相手を圧倒しての勝利でした。というよりも、まだ本気を出していないようなので、どれだけ強いかは未知数です」
「ふむ。そうか⋯⋯」
「ただ、次の試合、快進撃を続けている、あのイグナス・カスティーノですからね。ウキョウ・ヤガミも片手間で対処できるような相手ではないでしょう」
「イグナス・カスティーノか⋯⋯見違えたな。上級貴族にも関わらず魔力量が極小だった男が、いつの間にかここからでもわかるくらいに魔力量が激増している⋯⋯」
「はい。それにイグナス・カスティーノは元々魔力コントロールや魔法センスが突出していた男です。そこに原因は不明ですが魔力量が大幅に増加したことで、その能力をフルに発揮しています」
「ヤマト皇国の強者と影の実力者の対決か⋯⋯見ものだな」
ヤマト皇国のウキョウとイグナス双方について冷静に分析する男が二人。『二回生序列1位』であり『学園最強の一人』といわれる『アレックス・ストラクチャ』とその従者。他にも、周囲には有名どころの上級生たちがアレックスたちと同様、冷静に試合を分析していた。
********************
舞台上、イグナスとウキョウの二人は試合開始の合図を待っていた。すると、
「よう、イグナス・カスティーノ君! 君のこと知っているぜ?」
「何?」
突然、ウキョウがイグナスに話しかけた。
「あんた、学園に入るまでは魔力が少なかったのに、入学してから魔力が増大したんだって? そんなの初めて聞いたんだけど本当なのか?」
「⋯⋯フン。だからどうした?」
イグナスは、グイグイ来るウキョウに対し、少しイラついた表情で反応する。
「いや、普通に凄すぎでしょ? もしかして魔力が増えたのって⋯⋯⋯⋯カイト・シュタイナーから何か教えてもらったの?」
「! どういう⋯⋯ことだ?」
「お? やっと俺に興味持ってくれた?」
「おい! 今の言い方はどういうことだ! お前、何を知っている?!」
「さ~て、どうですかね~」
「⋯⋯こいつ」
イグナスが右京に最大級の警戒を図る。対するウキョウはニッと子供のような笑顔を向ける。
「では、準々決勝第一試合、はじめぇぇぇーーー!!!!」
ゴーーーン!
「がっかりさせないで⋯⋯⋯⋯くれよっ!」
「っ!?」
開始直後、ウキョウは一瞬でイグナスの懐へと入り、すでに準備していたのであろう身体強化状態でイグナスの腹部に掌底を放つ。しかし、
ガシッ!!!!!
「何っ!?」
イグナスは、ウキョウの掌底が当たる寸前に両の手の平で挟むようにして止めた。しかも、それだけでなく、
「⋯⋯『氷結凝固』」
「うおっ!?」
パキパキパキパキパキパキパキ⋯⋯!
イグナスはウキョウの右拳を挟んだまま、氷属性中級魔法『氷結凝固』を展開。ウキョウの右手が瞬時に氷結していく。
「ぐっ⋯⋯この⋯⋯っ!?」
これまで、いつも余裕の笑みを浮かべていたウキョウの顔が初めて苦悶で歪む。
「オラァァァーーー!!!!」
「ぐはっ!?」
イグナスはウキョウの手を離すと同時に、ウキョウの顎を下から蹴り上げる。すると、イグナスももちろん身体強化状態であったため、ウキョウの体が五メートルほど浮いた。
「うぐ⋯⋯っ!?」
「どうだ? これまでの舐めた態度を改めるくらいには驚いたか?」
「っ!?⋯⋯お、お前⋯⋯」
「お前ら、ヤマト皇国がどれほどの者か知らんが、このクラリオン王国で舐めたマネされるのは⋯⋯⋯⋯ムカつくんだよ」
「⋯⋯フッ、なるほど。お前ほどの男が同年代にいるとはな。クラリオン王国も噂よりやるじゃん。ビックリしたよ」
「⋯⋯」
「ちなみに、俺たちはクラリオン王国を舐めてはいない。ただ、現実を、現状を、きちんと把握しているだけだ⋯⋯⋯⋯炎陣防壁」
「っ!?」
ウキョウが火属性中級の防御魔法『炎陣防壁』を展開。イグナスの氷魔法で凍った右腕を一瞬で氷解させると同時に、自身の体を激しい炎が守るように覆い被さる。
「チッ! 流石⋯⋯といったところか」
ウキョウのデタラメな『炎陣防壁』の威力を見て、イグナスが小さく悪態をつきながら、しかし、
(⋯⋯だがな、俺はこんなところで負けるわけにはいかねーんだよ!)
イグナスは表情とは裏腹に、心の中で激しい口調で気合いを入れた。
1
お気に入りに追加
429
あなたにおすすめの小説
転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる