上 下
90 / 145
第二章 騎士学園編

090「学園長のあいさつ」

しおりを挟む


「ご来場の皆さん、どうも、学園長のハンニバル・シーザーです。今回、突然の『留学生誘致』や『他国との外交強化政策』そして、その第一歩となる『リーガライド獣国とヤマト皇国との友好政策』は衝撃的な内容だったと思いますが、これは現状のクラリオン王国の『政治的課題』を一気に解決するものであります」

 学園長の話に会場の皆が、聞き逃すまいと耳を澄まして聞いている。

「そして、今回の一回生は皆もご存知の通り、『動天世代アストロ・エイジ』と言われる、いわゆる多くの才能ある子供たちが集中している世代。⋯⋯我々はこの『動天世代アストロ・エイジ』が将来のクラリオン王国の強固な礎となると確信し、その上でこのような発表となった。まあ、少しサプライズ気味になったのは、まあ⋯⋯ご愛嬌じゃ」

「いやいや、サプライズにも程があるだろ」と、会場の観客全員が心の中でツッコんだ顔をする。

「そして、今回の一回生のクラス編成トーナメントの予選結果を見ればわかるが、他国の同年代の生徒全員が決勝トーナメントへと勝ち進んでいる。これは、この三名の生徒が才能あふれる若者であるということを示していると同時に⋯⋯⋯⋯我が国の現在の武力レベルを示唆している結果とも言える」

 学園長はそう言って、少し厳しい物言いと表情で周囲に圧をかけた。

「しかし、見方を変えれば世界は広く、多くの実力者がいることがわかったことは学園の生徒はもちろん、来場した多くの大人・・たちにも刺激的な発見・・・・・・になったじゃろう。ただ同時に、我が国の生徒⋯⋯しかも、まだ一回生にも関わらず、すぐにでも即戦力になるレベルの者たちがいることがわかったのは頼もしい発見・・・・・・となったと思っておる」

 学園長の言葉に、ほとんどの観客が納得したような態度を示す。

「これから本選⋯⋯決勝トーナメントが始まる。ああ、ちなみにこの三名の留学生の生徒は他国の王族や上級貴族にあたる者たちじゃ。なので『平民の下克上』というのは誤りであることをまず報告しておく。そして⋯⋯」

 学園長は一度、間をおいて再び話を続ける。

「今回の予選トーナメントでの事実上の『下克上』は、下級貴族のザック・カーマイン君ただ一人となる。まあ、完全なる勝利ではなく『引き分け』という形での両者決勝トーナメント進出というものではあったが、あれはザック・カーマイン君が『下克上』果たしたとして『大きな勝利』であったと私は評価する」
「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」」

 ザックの『引き分けによる決勝トーナメント進出』を学園長が全肯定し賛辞を送ると、観客から大きな歓声が響き渡った。

「さて、これでワシからの話は終わりじゃ。この後はいよいよ決勝トーナメントとなる。ワシもそうじゃが、今年の一回生⋯⋯『動天世代アストロ・エイジ』は皆、近年稀に見る実力者揃いであるから、ワシも非常に期待を持って試合を観戦したいと思う。皆もこれからのクラリオン王国を支えていくである若き才能たちの試合をどうか楽しんでくれたまえ。以上じゃ」
「「「「「わぁぁぁぁ!!!! いいぞぉぉぉぉ!!!!!」」」」」

 学園長の決勝トーナメントへの期待の言葉に観客から大きな歓声が上がった。

 こうして、決勝トーナメント前の『サプライズ発表』は幕を閉じた。


********************


【舞台裏side】

「本日は、クラリオン王国へ足を運んでいただき、また、お言葉をいただきまして誠にありがとうございました。すめらぎリュウカイ・ヤマト」
「いやいやいや! 私もすごく楽しかったですよ、ラディット国王。会場にいたクラリオン国民の皆さんもノリがよかったので、改めて、クラリオン王国と友好を結ぶことにこれからも尽力させていただきたいと思います」
「そう言って頂けてよかったです」

 舞台裏に戻ったラディットとリュウカイが共に和やかな雰囲気で言葉を交わしていた。

「それにしても⋯⋯」

 と、ここでリュウカイが学園長ハンニバル・シーザーに顔を向ける。

「『悪虐バーバリアン』の二つ名を持つあのハンニバル・シーザーが『いよいよ本気になる・・・・・・・・・』のですね」
「ふぉふぉふぉ。いやいや、そんな、大したことではありませんよ」

 そう言って、ハンニバルは笑いながらのらりくらりとはぐらかす。

「ふ⋯⋯。相変わらずので安心しました。まあ、我がヤマト皇国としてもクラリオン王国との友好関係の構築は必要・・でしたし、そちらのこれからの計画・・は我々にとっても『好都合』なので全面協力させてもらいますよ」
「ふぉふぉふぉ。ところでリュウカイ様⋯⋯⋯⋯そちらの我が国との友好関係が必要・・であると言っていた本当の理由・・・・・というのは何でしょう?」
「はっはっは。⋯⋯それはまだ言えぬ!」

 リュウカイはハンニバルの質問に明確に『言えない』と伝える。しかし、その言葉にハンニバルもラディットも特に嫌な顔はしない。

「ふぉふぉふぉ、そうですか。じゃが、いずれ・・・はぜひ伺いたいですな」
「うむ。時期・・がくればちゃんと話すと約束しよう」
「お願いしますよ、リュウカイ様?」

 そう言って、リュウカイとハンニバルの『腹探りの会話』が終わる。

「さて、と、それじゃあ、次はこっち・・・の話だが⋯⋯」

 ラディットがそう言って、カイトとレイアに顔を向ける。

「あ、あの、お父様。こ、これからすぐに試合が終わるので、話は試合が終わってからでよろしいでしょうか?」

 レイアがダメ元でラディットにそう告げるが、

「何、大して時間は取らぬ。なあ、カイト・シュタイナー君?」
「っ!? あ、あの、えーと⋯⋯は、はい」

 ラディットはレイアからすぐに視線を外して、カイトにロックオンする。

「やあ、カイト・シュタイナー君。はじめまして」
「は、ははは、初め⋯⋯まして⋯⋯」

 いやいやいや! 国王、めっちゃ『圧』かけてくるんですけどぉぉぉ!!!!

「さっきは『レイアが君の口を手で塞ぐ』なんて行為を見たけど、レイアがここまで異性の友達と接触するのは珍しいなと思ってね。どうやらウチのレイアと随分・・仲が良いようだね、カイト・シュタイナー君?」
「⋯⋯は、はい」

 国王の圧がどんどん増していく。

「父としても君がレイアと仲良くしてもらってありがたいと思うよ。でもね、もっと学生らしい、慎ましいスキンシップを私としては望むかな?」
「っ!? い、いえいえいえ! べ、別に、そこまでレイア姫様とは仲が良いわけでは⋯⋯」
「あれ? ウチの娘に不満でも?」
「え? いやいやいやいや! そ、そうではないです! そんなことはないです!!!!」
「そうだろ、そうだろ? というわけで、今後も娘とは仲良くしていってほしいが、いろいろ⋯⋯⋯⋯学生相応・・・・のスキンシップを頼むよ?」
「わ、わわわ、わかりましたぁぁぁーーーーー!!!!!」

 俺は、この親バカ国王には『レイア姫と付き合っているとかそういった関係ではない』ということを言うのを諦め、そのまま返事を返した。だって、本当のことを言っても通じない相手だって言動を見ればわかるもの。

 そんなこんなで、俺とレイア姫は何とか国王にその場から離れることを許してもらったので、そそくさと選手控室へ退散した。

(あれが、あの・・カイト・シュタイナーか⋯⋯)

 その時の俺は国王のことで頭がいっぱいだったこともあり、その場から立ち去る際、リュウカイとその側近のような男からの見定めるような視線・・・・・・・・・に気づけなかった。

——そして、いよいよ決勝トーナメントがはじまる
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

愛情を注ぐ兄は愛される

ゆうな
ファンタジー
可愛い弟たちを甘やかしながら過ごす2回目の人生。

転生貴族の異世界無双生活

guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。 彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。 その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか! ハーレム弱めです。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

処理中です...