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第二章 騎士学園編
090「学園長のあいさつ」
しおりを挟む「ご来場の皆さん、どうも、学園長のハンニバル・シーザーです。今回、突然の『留学生誘致』や『他国との外交強化政策』そして、その第一歩となる『リーガライド獣国とヤマト皇国との友好政策』は衝撃的な内容だったと思いますが、これは現状のクラリオン王国の『政治的課題』を一気に解決するものであります」
学園長の話に会場の皆が、聞き逃すまいと耳を澄まして聞いている。
「そして、今回の一回生は皆もご存知の通り、『動天世代』と言われる、いわゆる多くの才能ある子供たちが集中している世代。⋯⋯我々はこの『動天世代』が将来のクラリオン王国の強固な礎となると確信し、その上でこのような発表となった。まあ、少しサプライズ気味になったのは、まあ⋯⋯ご愛嬌じゃ」
「いやいや、サプライズにも程があるだろ」と、会場の観客全員が心の中でツッコんだ顔をする。
「そして、今回の一回生のクラス編成トーナメントの予選結果を見ればわかるが、他国の同年代の生徒全員が決勝トーナメントへと勝ち進んでいる。これは、この三名の生徒が才能あふれる若者であるということを示していると同時に⋯⋯⋯⋯我が国の現在の武力レベルを示唆している結果とも言える」
学園長はそう言って、少し厳しい物言いと表情で周囲に圧をかけた。
「しかし、見方を変えれば世界は広く、多くの実力者がいることがわかったことは学園の生徒はもちろん、来場した多くの大人たちにも刺激的な発見になったじゃろう。ただ同時に、我が国の生徒⋯⋯しかも、まだ一回生にも関わらず、すぐにでも即戦力になるレベルの者たちがいることがわかったのは頼もしい発見となったと思っておる」
学園長の言葉に、ほとんどの観客が納得したような態度を示す。
「これから本選⋯⋯決勝トーナメントが始まる。ああ、ちなみにこの三名の留学生の生徒は他国の王族や上級貴族にあたる者たちじゃ。なので『平民の下克上』というのは誤りであることをまず報告しておく。そして⋯⋯」
学園長は一度、間をおいて再び話を続ける。
「今回の予選トーナメントでの事実上の『下克上』は、下級貴族のザック・カーマイン君ただ一人となる。まあ、完全なる勝利ではなく『引き分け』という形での両者決勝トーナメント進出というものではあったが、あれはザック・カーマイン君が『下克上』果たしたとして『大きな勝利』であったと私は評価する」
「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」」
ザックの『引き分けによる決勝トーナメント進出』を学園長が全肯定し賛辞を送ると、観客から大きな歓声が響き渡った。
「さて、これでワシからの話は終わりじゃ。この後はいよいよ決勝トーナメントとなる。ワシもそうじゃが、今年の一回生⋯⋯『動天世代』は皆、近年稀に見る実力者揃いであるから、ワシも非常に期待を持って試合を観戦したいと思う。皆もこれからのクラリオン王国を支えていくである若き才能たちの試合をどうか楽しんでくれたまえ。以上じゃ」
「「「「「わぁぁぁぁ!!!! いいぞぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
学園長の決勝トーナメントへの期待の言葉に観客から大きな歓声が上がった。
こうして、決勝トーナメント前の『サプライズ発表』は幕を閉じた。
********************
【舞台裏side】
「本日は、クラリオン王国へ足を運んでいただき、また、お言葉をいただきまして誠にありがとうございました。皇リュウカイ・ヤマト」
「いやいやいや! 私もすごく楽しかったですよ、ラディット国王。会場にいたクラリオン国民の皆さんもノリがよかったので、改めて、クラリオン王国と友好を結ぶことにこれからも尽力させていただきたいと思います」
「そう言って頂けてよかったです」
舞台裏に戻ったラディットとリュウカイが共に和やかな雰囲気で言葉を交わしていた。
「それにしても⋯⋯」
と、ここでリュウカイが学園長ハンニバル・シーザーに顔を向ける。
「『悪虐』の二つ名を持つあのハンニバル・シーザーが『いよいよ本気になる』のですね」
「ふぉふぉふぉ。いやいや、そんな、大したことではありませんよ」
そう言って、ハンニバルは笑いながらのらりくらりとはぐらかす。
「ふ⋯⋯。相変わらずの狸で安心しました。まあ、我がヤマト皇国としてもクラリオン王国との友好関係の構築は必要でしたし、そちらのこれからの計画は我々にとっても『好都合』なので全面協力させてもらいますよ」
「ふぉふぉふぉ。ところでリュウカイ様⋯⋯⋯⋯そちらの我が国との友好関係が必要であると言っていた本当の理由というのは何でしょう?」
「はっはっは。⋯⋯それはまだ言えぬ!」
リュウカイはハンニバルの質問に明確に『言えない』と伝える。しかし、その言葉にハンニバルもラディットも特に嫌な顔はしない。
「ふぉふぉふぉ、そうですか。じゃが、いずれはぜひ伺いたいですな」
「うむ。時期がくればちゃんと話すと約束しよう」
「お願いしますよ、リュウカイ様?」
そう言って、リュウカイとハンニバルの『腹探りの会話』が終わる。
「さて、と、それじゃあ、次はこっちの話だが⋯⋯」
ラディットがそう言って、カイトとレイアに顔を向ける。
「あ、あの、お父様。こ、これからすぐに試合が終わるので、話は試合が終わってからでよろしいでしょうか?」
レイアがダメ元でラディットにそう告げるが、
「何、大して時間は取らぬ。なあ、カイト・シュタイナー君?」
「っ!? あ、あの、えーと⋯⋯は、はい」
ラディットはレイアからすぐに視線を外して、カイトにロックオンする。
「やあ、カイト・シュタイナー君。はじめまして」
「は、ははは、初め⋯⋯まして⋯⋯」
いやいやいや! 国王、めっちゃ『圧』かけてくるんですけどぉぉぉ!!!!
「さっきは『レイアが君の口を手で塞ぐ』なんて行為を見たけど、レイアがここまで異性の友達と接触するのは珍しいなと思ってね。どうやらウチのレイアと随分仲が良いようだね、カイト・シュタイナー君?」
「⋯⋯は、はい」
国王の圧がどんどん増していく。
「父としても君がレイアと仲良くしてもらってありがたいと思うよ。でもね、もっと学生らしい、慎ましいスキンシップを私としては望むかな?」
「っ!? い、いえいえいえ! べ、別に、そこまでレイア姫様とは仲が良いわけでは⋯⋯」
「あれ? ウチの娘に不満でも?」
「え? いやいやいやいや! そ、そうではないです! そんなことはないです!!!!」
「そうだろ、そうだろ? というわけで、今後も娘とは仲良くしていってほしいが、いろいろ⋯⋯⋯⋯学生相応のスキンシップを頼むよ?」
「わ、わわわ、わかりましたぁぁぁーーーーー!!!!!」
俺は、この親バカ国王には『レイア姫と付き合っているとかそういった関係ではない』ということを言うのを諦め、そのまま返事を返した。だって、本当のことを言っても通じない相手だって言動を見ればわかるもの。
そんなこんなで、俺とレイア姫は何とか国王にその場から離れることを許してもらったので、そそくさと選手控室へ退散した。
(あれが、あのカイト・シュタイナーか⋯⋯)
その時の俺は国王のことで頭がいっぱいだったこともあり、その場から立ち去る際、リュウカイとその側近のような男からの見定めるような視線に気づけなかった。
——そして、いよいよ決勝トーナメントがはじまる
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