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第二章 騎士学園編

088「登場! クラリオン王国国王・ラディット・クラリオン」

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「な、なんと! 信じられないことですが、この一回生のクラス編成トーナメントに、我がクラリオン王国国王ラディット・クラリオン様がお見えになられ、お言葉をいただくことになりました。皆様、盛大な拍手でお出迎えくださいませ! ラディット・クラリオン国王様と学園長ハンニバル・シーザー様の入場です!」

 ドーーーーン! ドーーーーン! ドーーーーン! ドーーーーン!

 銅羅の音が響くと同時に、護衛の近衛騎士に囲まれながらクラリオン王国ラディット・クラリオン国王と学園長ハンニバル・シーザーが舞台に登場した。

「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」」

 観覧席の皆が大歓声を上げる。⋯⋯が、それと同時に騒つく声も広がっていた。

「す、すげえー! 本当に国王様だーーーっ!」
「で、でも、どうして一回生のクラス編成トーナメントに国王様がっ?!」
「な、なんだ? 何なんだ? 今年の一回生の大会は⋯⋯」

 そんな、異様な雰囲気の中、舞台に現れたラディット国王が言葉を発する。

「皆の者、楽しんでいるか! クラリオン王国第十八代国王ラディット・クラリオン国王だ! さて、今回初めて騎士学園の一回生のクラス編成トーナメントを見させてもらった。近年の騎士団の質が問われる中、正直あまり期待をしていなかったが、蓋を開ければ素晴らしい才能がこんなにもいるのかと知って、驚いた次第だ! さすが『動天世代アストロ・エイジ』と呼ばれるだけのことはある!」

 ラディット国王の独特な相手を惹きつける声色は、騒ついていた周囲の皆を静かにさせただけでなく、ラディット国王の言葉にも魅了されていた。

「⋯⋯さて、これから決勝トーナメントが始まるがその前に皆に伝えておきたいことがある」

 ラディット国王は少し、間をおいてから先ほどよりも低いトーンで話始めた。

「まず、先ほどの予選の最終試合で勝ち上がった『平民の生徒』がいたと思うが、彼は⋯⋯⋯⋯平民ではない」
「「「「「え⋯⋯?」」」」」

 観客は国王の言葉に疑問符を浮かべ言葉を失っているが、ラディット国王は気にせず、さらに話を続ける。

「さらに、今回の予選で決勝トーナメントに勝ち上がった他の平民の生徒もまた平民ではない。つまり、実質『平民の下克上ではなかった』ということだけは私の口から伝えようと思い、この場を設けた次第だ」
「え? あ、あれは平民の生徒じゃ⋯⋯ない?」
「じゃ、じゃあ、何者なんだ?」

 周囲が当然のような疑問にザワザワする。

「その三人の生徒は⋯⋯⋯⋯他国からの留学生である」
「「「「「りゅ、留学生っ!!!!!!!」」」」」

 ラディット国王がそう告げると、その後ろから予選トーナメントで決勝トーナメントに勝ち上がった三人の一回生⋯⋯サラ、ウキョウ、リュウメイが登場する。

「彼女はサラ・ウィンバード。『リーガライド獣国』の者だ」
「リ、リーガライド獣国! ということは⋯⋯獣人!」
「え? で、でも、特に普通の人間みたいだけど⋯⋯」

 観客が国王の言葉に疑問を抱く中、サラ・ウィンバードが⋯⋯⋯⋯『ウィッグ』を外した。

 ぴょこん!

「え? ネ、ネ⋯⋯⋯⋯ネコ耳じゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!!」

 と、カイトが一人絶叫。

「コ、コラ、カイト!」
「も、もごぉ⋯⋯っ!?」

 側にいたレイア姫があたふたしながら、両手でカイトの口を塞ぐ。すると、

「⋯⋯おや? カイト・シュタイナー君? うちの娘と仲が良いようだね?」

 ラディット国王が目を据わらせ氷の微笑を向ける。

「も、もご⋯⋯もごぉぉぉぉ~~~~⋯⋯!?」
「お、お父様!? た、たた、大変失礼致しました。どうぞ、お話を続けてくださいませ⋯⋯オホホホ」
「⋯⋯レイア。話があるから、後でカイト・シュタイナー君を連れてきなさい」
「い、いえ、この後は決勝トーナメントがありますので⋯⋯」
「連れてくるように。⋯⋯これは国王命令です」
「っ!? は、はひ⋯⋯」
「も、もごぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~!!!!!!!!!!」

 観客は、ただでさえ『留学生の話』や『獣人の生徒』に困惑しているというのに、さらにレイア姫とカイトの関係、そしてレイア姫の父親であるラディット国王の言動に、もはや『情報過多』となって頭の中がカオス状態となっていた。

 しかし、そんな観客のことは一切気にせず、さらに『新規の情報』を投下する。

「サラ・ウィンバード君は、見ての通り『獣人族』の者だ。そして、我々クラリオン王国は人間以外の亜人種を受け入れている国ではあるが、これまで、亜人種の入国は『成人』までという制限があったが、今年からその制限を無くした。つまり『成人未満』である者でも入国できるようになったのだ。そして、今回、このサラ・ウィンバードはリーガライド獣国からの初の『留学生』となる。今後、クラリオン王国は他国との交流を積極的に行っていく。これが未来への『栄えある一歩』だ! 皆の者、歓迎せよ!」
「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!!!!!」」」」」

 観客がラディットの言葉に一斉に歓声を上げる。ちなみに『リーガライド獣国』は国名のとおり、獣人の国である。クラリオン王国の西に位置する五大国の一つで、割りと他国との交易は盛んな国である。とはいえ、このヴィクトリア大陸にある五大国のほとんどは『人間族』が多くを占めているということもあり、『獣人族』のような亜人種をすべての人間族が受け入れているわけでもない、という事情もあるため、国によっては獣人族との関係があまり良好ではないといった問題もある。

 ちなみに、クラリオン王国に限っていえば、他国に比べれば比較的受け入れている国と言えるので、国王の今の発表は好意的に受け入れられていた。

「な、なんだか、凄いことになってきたな⋯⋯」
「お、おう。ていうか、今、俺たち、なんでここにいるんだ?」
「いや、一回生のクラス編成トーナメントを見にきたんだろうがっ!」
「いやいや、たかだか『一回生のクラス編成トーナメント』なのに、何だかサプライズが多すぎるわ」
「だな! そもそもラディット国王様がこの大会を見にいらっしゃったのでさえ異常事態なのに、さらに『留学生』の話とか、サプライズが過ぎるだろ!?」

 と、観客は歓声を上げているものの、いつもと違う『一回生のクラス編成トーナメント』の状況に、まだ理解が全然追いついていなかったのだが、しかし、サプライズは⋯⋯⋯⋯これだけでは・・・・・・なかった。
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