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第二章 騎士学園編

082「予選トーナメント三回戦(6)」

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「さて、彼の実力自体は本物だ。ザック君が彼に勝つのはかなり苦しいと思うよ?」

 レイア姫が少し挑発気味に俺に視線と笑みを送る。

「ザックも強いです。このままでは終わりません」

 俺はレイア姫の煽りを正面から受け止めた。


********************


「入ったー! ドレイク選手の鞭のような右足ハイキックが綺麗に入ったーーー! これにはザック選手も耐えられず場外へと吹っ飛んだーーーーっ!!!!」

「うぐぅ⋯⋯な、なんて蹴りだ」

 ザックは立ち上がるが、かなりダメージを受けているようでヨロヨロと弱々しい足取りで舞台へと戻る。

「ふむ? てっきり今ので決まったと思ったが、見た目に比べて根性はあるようだな。だが⋯⋯」

 そう言うと、舞台に戻ったタイミングでザックにドレイクの技が迫る。

「これで終わりだ。破拳・一ノ型『直烈破ちょくれつは』!」

 ドン⋯⋯っ!!!!

「うぐ⋯⋯っ!」

 ザックの鳩尾みぞおちにドレイクの破拳・一ノ型『直烈破ちょくれつは』が綺麗に入った。

「ザック!」
「決まったか?!」

 誰もがザックの敗北が決まったと思った。しかし、

「へへ⋯⋯つかまえた・・・・・
「バ、バカな!? なぜ、今ので立っていられるっ!!!!」

 ドレイクも手応えがあっただけにザックが倒れないでいる目の前の光景に、ただただ驚いている。

「へ、へん⋯⋯! ま、魔力操作で⋯⋯身体強化ビルド鳩尾みぞおちに集中させて⋯⋯ガチガチに防御を固め⋯⋯た⋯⋯のさ」
「ま、魔力操作で、身体強化ビルドをコントロールしただとぉ!? そんなの聞いたことなど⋯⋯」
「ああ、だろうね。これまでの・・・・・魔力コントロールしか知らないの⋯⋯ならね⋯⋯」
「これまでの⋯⋯だと?! き、貴様、いったい何を言って⋯⋯」
「ち、ちなみに言っておくけど、俺は⋯⋯⋯⋯魔法得意だから」
「な⋯⋯っ?!」
「火属性中級魔法『火炎弾ファイヤー・バレット』!」

 ドドドドドドドド!!!!

 ザックはドレイクの手を掴みながら、近距離・・・で魔法を発動。

「ががががががががはぁぁぁぁぁ~~~っ!!!!!!!!」

 ザックに手を掴まれ逃げられない状態のドレイクは、無数の炎球を近距離ですべて食らった。

「バ、バカな⋯⋯こんな⋯⋯威力の火炎弾ファイヤー・バレットは⋯⋯初め⋯⋯て⋯⋯」

 ガク⋯⋯。

 ドレイクがそのまま膝をつき、地面に倒れた。

「や、やった⋯⋯勝っ⋯⋯た⋯⋯」

 ⋯⋯ドシャ。

「ザックーーーーーっ!!!!!!」

 ドレイクが倒れるのと、ほぼ同時にザックも倒れた。

「ワーン、トゥー、スリー⋯⋯」
「おーーと! これはザック選手の勝ちと思ったが、同時ダウンとなったーーーー!!!!!」

 ここで、司会のフェリシア・ジャスミンが「同時ダウン」のアナウンスをする。

「っ!? ザックの勝ち⋯⋯じゃないの?」
「レフリーは同時ダウンと判断したか。ということは、テンカウント以内にどっちかが立ち上がれば勝ちということだな」
「フォー、ファーイブ、シックス⋯⋯」
「ザックー! 立て! 立つんだ、ジョー!」

 おっと、つい。

「ナーイン⋯⋯⋯⋯テン!」

 すると、レフリーがテンカウント判定でレフリーストップを宣言。

「おーーーと! ここでテンカウント試合終了となったぁぁぁぁーーーー!!!!」

 フェリシアが試合終了の宣言をする。

「え? この場合、どう⋯⋯なるの?」
「うむ。恐らく『審議』だろうな」
「『審議』?」
「さあ、ここでレフリーが本部に確認を取っています! どうやら『審議』のようです。尚、この場合の最終判断は学園長判断となります!」

 そう。あまりないことではあるが、『同時ダウンでテンカウントで両者立ち上がれない場合』といったイレギュラーなものはすべて『審議』という名の『学園長判断』となるらしい。

——三分後

「えー⋯⋯ただいま、こちらに『審議の結果』が届きましたので発表しますー。キャピキャピーン!」

 おい。さすがに空気読めよ、自称アイドル。

「えー⋯⋯勝者は⋯⋯⋯⋯ドレイク選手とザック選手、両方の勝ちとなりましたーーーーーっ!!!!!!」
「「「「「おおおお⋯⋯え? えええええええええええっ!!!!!!!!」」」」」

 観客が『審議の結果』に一度ノリで歓声を上げるも、「両方の勝ち」に疑問を思ったのか、すぐに大きなどよめきの反応に変わる。器用だな、観客。

「えーと⋯⋯つまり⋯⋯どう言うことだってばよ!?」
「うむ。ドレイク・ガリウスも、カイトの友人のザック・カーマインも、二人とも決勝トーナメント進出⋯⋯Aクラス決定ということだな!」
「え⋯⋯? お、おお、うおおおおーーーっ!!!! やったな、ザッきゅんっ!」

 学園長は二人とも『勝者』という判断をしたのだ。

「まあ、今の『審議結果』には納得だな」
「え? そうなの?」

 レイア姫が今の審議結果は「妥当」だということを告げる。

「もちろんだ。ドレイク・ガリウスという男は、Aクラス配属の生徒の中でも実力者として一目置かれる男だぞ? その男に対して下級貴族であるザック・カーマインは『引き分け』に持ち込んだのだ。そんな実力を持つザック・カーマインを学園長が『Aクラス妥当』と判断されたのは当然の結果だと思うぞ」

 レイア姫は、ザックに「一度対戦してみたいものだ」と呟きながらニッコリと笑みを浮かべる。とても嬉しそうな笑顔だ。

 たしかに、レイア姫の言ったことをよくよく考えてみれば「そうだな」と改めて俺も納得した。それにしても俺と出会う前⋯⋯一ヶ月前のザックは『騎士団に憧れるどこにでもいる下級貴族のイチ生徒』に過ぎなかった。

 それが今や、上級貴族で優勝候補の一人と目されていたドレイク・ガリウスと引き分けたのだ。誰もザックのAクラス入りに文句を言う奴はいないだろう。もちろん、そんな奴がいたら俺が生かしてはおかない。お話し合い鉄拳制裁だ。

 こうして、ザックも決勝トーナメント行きが決まり、同時にAクラス入りも決定した。
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