68 / 145
第二章 騎士学園編
068「結束」
しおりを挟む「⋯⋯なるほど。あなたはやはりとんでもないお人だ」
そう言って、ディーノがニコッと笑みを浮かべる。すると「ガス様」と言って、ガスを俺の目の前に手引きした。手引きされたガスはカイトの前に出るとニカッと笑い、
「乗ったぜ、カイトっ!」
と、何とも頼もしい野太い声で第一声を上げた。
「いいのか、お前?」
「あたぼーよ! ていうか、俺だけじゃねー。ディーノもカートも問題ねー!」
「え? それって、どういう⋯⋯?」
ガスはもう一度、ニカッと笑って一拍、間を置いてから話し始めた。
「⋯⋯さっきディーノはお前を試したのさ。お前がどれほどの覚悟でその言葉を言っているのかをな」
「試す? なぜ?」
「俺たちもカイトに似たことを考えていたからだ」
「え!?」
「俺たちは⋯⋯⋯⋯『クラリオン王国を変革したい』」
上級貴族、しかもジャガー財閥の子供であるガスから、とんでもない爆弾発言が飛び出した。すると、
「お、おい、ガス。お前⋯⋯それ、ガキの頃に言ってたやつ⋯⋯本気で考えていたのか?」
イグナスが驚くような顔でガスに問いかける。
「ああ。ガキの頃にお前に話したときからずっとな⋯⋯」
話によると、ガスはまだイグナスと仲が良かった頃からこの『クラリオン王国の変革』を考えていたという。その想いはイグナスが理不尽な処遇に追い込まれた『魔力偏重主義』や『一部の王族・貴族の堕落』への怒りから来ているらしい。
「俺はそのことを考えて、将来の基盤作りの目的でこの騎士学園にやってきた。それはディーノやカートも一緒だ。しかし、国の変革なんて簡単なことじゃねー。絵空事のようなものだ。でも、騎士学園で一番になり、同時に自分の配下を作り、その後騎士団に入ってそこでもトップになればそれは大きな力となる。そうなれば、ジャガー財閥関係なく俺個人で権力が手に入り、『絵空事が現実味を帯びる』と俺は考えた。まあ、俺たちの中での『十年計画』みたいなもんだ」
「「⋯⋯ガス様」」
「そんなときにカイト・シュタイナーに出会った。お前のその圧倒的な力に俺は驚愕と同時に、可能性を感じたよ。こいつと一緒なら⋯⋯とな」
「⋯⋯ガス」
「そして今、お前から『騎士団新設』の話を聞いた時、武者振るいしたよ、へへ⋯⋯」
そう言って、ガスが鼻をこすりながら照れ笑いする。
「望むところだぜ、カイト。俺はお前と一緒にとことんついて行く!」
「ガス⋯⋯」
ガスが差し出した手を俺はしっかりと握り締めた。
「⋯⋯イグナス」
「⋯⋯ガス」
「俺はお前とは似たような境遇だ。だから家の事情は少しはわかっているつもりだ」
「⋯⋯」
「俺もお前の家族も強大な力を持つ百戦錬磨の存在だ。そこに楯突くようなことがどういうことかくらいはわかっている。だが⋯⋯このままじゃこの国はダメなことくらいわかるだろ?」
「⋯⋯」
「お前も一緒に暴れよーぜ? カイトと一緒によ? カイトとならできると思わねーか? あの時の夢の実現をよ!」
「⋯⋯あの時の⋯⋯夢」
——————————————————
「俺はこの国が魔力で差別されない国を作る! そしたらイグナスの問題なんてすぐに解決だ!」
「⋯⋯ガス」
「こんなアホらしい国は俺が変えてやる!」
「⋯⋯へっ! 調子に乗るなよ、ガス! お前だけでできるわけねーだろ! あーあ、何でお前はこう猪突猛進のバカなんだ」
「なんだと!」
「こりゃ、俺がサポートしねーとどうしようもねーな」
「!? イグナス⋯⋯お前」
「仕方ねーから俺も手伝ってやんよ! ちゃんと俺の言うことを聞けよ、ガス。お前、バカなんだから」
「へ! 言ってろ!」
「ふん。⋯⋯⋯⋯絶対に実現させような、ガス」
「ああ、もちろんだ」
——————————————————
「⋯⋯ふっ。相変わらずお前のバカさ加減は治ってねーな、ガス」
「へ! 言ってろ!」
そうして、イグナスもまた俺の計画に付き合うとツンデレ成分多めに言ってくれた。そして、
「カイト! 俺も付き合う!」
「ザック」
「正直、大それたことで、荒唐無稽で、絵空事で、突拍子もない話に俺は全くついていけてないというのが本音だ。でも、カイトやイグナス、ガス様が言っていることは将来の俺にとって大事なことだってことはわかっている。だから、俺も協力する! 俺も⋯⋯自分の未来は自分で掴み取る!」
「ザック⋯⋯ありがとう」
「まあ、俺程度がどれだけみんなに貢献できるかわからないけどね」
「いや、俺の中ではザックがこのチームの一番の『要』だと思ってるよ」
「え⋯⋯それってどういう⋯⋯?」
「ま、それはまた今度話すよ。ありがとうな、ザック!」
「あ、ああ」
(俺みたいな下級貴族にカイトは期待⋯⋯してくれてるんだ)
ザックはカイトの意外な言葉に困惑しつつも、信頼されていると感じ、一人密かにグッと力強く拳を握り締めた。
「とりあえず、そういうことだ。だから、何も気にせず大会では⋯⋯⋯⋯大いに暴れてくれ」
「「「「「おうっ!!!!!!!!!!!!!」」」」」
こうして、俺たちは初めてチームとして一つになった。
1
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる