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第二章 騎士学園編

039「すれ違いの純情?」

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——————————————————

『イグナス様の御心みこころ

・ザックは俺のことを親友だと思っているし尊敬もしている
・ザックの家のカーマイン商会はウチが後ろ盾になっているから今後も関係は続く
・ザックは俺の親友だから将来俺の右腕となって支えてくれるに違いない
・ザックは俺の右腕になるから、今のうちから汚れ仕事を慣れるようにしてあげよう
・ザックは死ぬまでずっと友達(ズッ友だよ)

——————————————————

「え? え? え? イグナス⋯⋯様? そ、それって⋯⋯」
「あ、ああ。俺はお前のことを⋯⋯親友だと思ってる」

 そう言って、鼻をこすりながら頬を染めるイグナス。

「イグナス、こえーよ! 最後の『ズッ友』特にこえーよ! あと、頬染めんなっ!」
「う、うううう、うるせー! 俺はザックのズッ友なんだよ! 外野はスッ込んでろっ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 二人ともっ!!!!」
「「あぁっ!!!!」」
「あ、いや、その⋯⋯ご、ごめん⋯⋯なさい」


********************


「つ・ま・り⋯⋯だ。まず、イグナスはザックのことを親友だと思ってて、それで、よかれ・・・と思ってザックに色々、かまっていたと?」
「あ、ああ、そうだ」
「でも、それに対してザックは、イグナスが嫌なことばかり押し付けてくるから、てっきりイジめられていると思っていた。そして、これからもイグナスの奴隷として生きていくのだと思って絶望した。これであってるか?」
「あ、ああ⋯⋯」
「何? ザック、お前、そんなこと考えていたのか!」
「は、はい⋯⋯」
「馬鹿野郎! それならそうと早く言えよっ!」
「いや、言いましたよ! カイトをリンチするときに嫌だって! でも、イグナス様はあの時、俺の命令に逆らうことは許さん⋯⋯と」
「あ、あれは⋯⋯っ! お前がだな⋯⋯その⋯⋯いつもと違って俺に反抗するから⋯⋯つい意地になって⋯⋯」
「え?」
「ああああああ~~~~~~~!!!! うるせ~~~~~~~~!!!!『BLフィールド全開!』してんじゃねぇぇぇぇ~~~~~~!!!!」

——三分後

 俺はとりあえず、ザックとイグナスを正座させた(とりま正座)。

「おい! なんで俺たちが正座させられてんだよ!」
「カ、カイト! なんでこんなことを⋯⋯」
「うるさい、だまれ」

 俺は二人の抗議を一切受け付けなかった。

「結局、イグナスはこれまで勝手に『勘違い』して、ザックの気持ちを何も確認しなかった。そうだな?」
「あ、ああ⋯⋯」
「で、ザックはイグナスの言動や命令を『勘違い』して、さらには、その『勘違い』を『妄想』へと昇華させ、一人勝手に自分を追い込んでいた。そうだな?」
「え? あ、いや、その⋯⋯⋯⋯はい」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~⋯⋯」

 しょうもない。実にしょうもない。

 要するに、こいつら『相思相愛』じゃねーか!

 ていうか、イグナスに至っては親友の垣根・・を越えて、『BLフィールド』に踏み込んでいるフシさえある。

 ふざけんじゃねー! 俺の物語なろう作品に『BLタグ』なんて入れてねーし! 今後もそんな予定なんかねーよ! え? 予定⋯⋯ないよね?

「と、とりあえず、じゃあ、もういいじゃん。結局、お前らの勘違いだったんだ。イグナスはもうザックにそんな命令とかすんなよ。ていうか、そういう上下関係はやめろ。面倒くせー」
「く⋯⋯っ!? お、俺はそんなつもりは元々もなかったからな! ザック、すまん。何だかお前にすごく嫌な思いをさせてしまったみたいだな」
「⋯⋯イグナス様」
「よせよ。イグナス・・・・でいい! だ、だって、俺とお前はその⋯⋯これからは対等・・⋯⋯なんだから⋯⋯な」
「は、はい! イグナス様!」
「ば、馬鹿野郎。イグナスでいいつったろ!」
「は、はは、すみません。あ、いや⋯⋯⋯⋯ごめん、イグナス」
「! あ、ああ。気にすんな、ザック!」
「イグナス様⋯⋯」
「坊っちゃま⋯⋯」

 見つめ合い、微笑む二人。そして、その二人を微笑ましく見守る手下連中。

 いらねー。そういうの求めてねー。

 あと、手下連中がなんで母性発揮して二人を見守ってんだよ! あ! そう言えば、さっき俺の肩押した奴見つけて殺さなきゃ!

 そんなわけで、イグナスの件はBL要素を含みつつ丸く収まった。


********************


「ということで、イグナス。お前、これから俺の舎弟な?」
「おい、いきなり雑だな。ていうか『シャテー』? なんだ、そりゃ?」
「イグナス。舎弟っていうのは⋯⋯」

 ザックきゅんが仲良しこよしとなったイグナスたんに、丁寧に『舎弟』のレクチャーをしている。

「はぁ?! 俺がお前の手下だと! ふざけんじゃねぇぇぇーーーーっ!!!!」

 イグナスがテンプレよろしく、わかりやすくキレる。

「まあまあ、聞けよ、イグナス。俺の舎弟になるメリットを今から教えてやるから」
「メリット?」
「うむ。まず、俺の舎弟になるということは、お前は俺の家族ファミリーになるということだ。そして、家族ファミリーということは、お前が今、悩んでいることや困っていること、はたまた、今後、何かトラブルが起こった時は俺が守ってやるということだ」
「は~? お前が~? いくらなんでも、そんなのできるわけ⋯⋯」
「できる! なんたって俺は、目的ハーレムの為なら、全力を尽くす所存だからな」
「ア、アホだろ、お前? 確かにお前はムカつくが強い。それは認める。だがな、カイト・シュタイナー⋯⋯」
「カイトでいい」
「っ!? カ、カイト⋯⋯いくらお前が強くても上には上がいる。お前程度の奴なんて上にはいくらでもいるんだよ! それに、俺を助けてやるなんて言っているけどな、それは絶対に無理だ! それこそ、俺たちみたいな何の特権も権力も持っていない学生程度じゃ⋯⋯俺の悩みなんて⋯⋯」
「は~⋯⋯まったく。相変わらず学習能力のない奴⋯⋯」
「な、何だとぉぉぉ!」
「まずだな⋯⋯⋯⋯お前、今『俺程度の奴なんて上にはいくらでもいる』て言ったよな?」
「あ、ああ」
「お前、俺の全力知らねーじゃん」
「え?」
「おいおい、あれが俺の全力とでも思ったのか? 舐めんな、ツンデレBLボーイ!」
「な⋯⋯っ!? ん? 最後の『ツンデレBLボーイ』ってなんだ?」
「とにかく! 現状、俺がどれだけ上に通用するかまだわからない状態なのに勝手にお前の尺度で判断してんじゃねー! そういう独断と偏見はすぐに直せ! いいな、イグナス・カスティーノぉぉぉ!!!!」
「うっ! わ、わかったよ⋯⋯っ!」

 イグナスはカイトの迫力に思わず、返事をした。カイトが強引に大声を張り上げ、力技で誤魔化した瞬間である。

「それと確かにお前の言う通り、俺たちはまだ学生で何の権力もないが、そんなの⋯⋯⋯⋯今から自分で作っていけばいいだろ?」
「なっ!? い、今から、自分で作っていく⋯⋯だとっ?!」
「まあ、すぐにどうこうという話じゃないし、うまくいくかどうかもわからんがな。ま、とりあえず、いろいろ構想はある。だから、お前は俺の舎弟である以上、悩みがあったらちゃんと言え! お前ももう少し俺を信用しろ!」
「っ!? カ、カイト⋯⋯お前⋯⋯」

 イグナスがカイトの言葉に思わず感動する。そして頬染める。

「お、おい! 俺に惚れるんじゃねーぞ! BL展開とかマジいらねーからっ!!!!」
「は、はぁっ!???? ふ、ふざけんなっ! 惚れるわけねーだろ! ていうか、なんだよ『BL展開』って! 死ね! お前みたいな奴は魔獣に食われて死んじまえっ!」

 こうして、イグナス・カスティーノがカイトの舎弟となった。


********************


「ふぉふぉふぉ⋯⋯やはり、猫をかぶっておったか、カイト・シュタイナー君」

 カイトたちのやり取りを完全に気配を消して観察する者が楽しそう・・・・に言葉を吐く。

「さて、よもやよもや、イグナス・カスティーノを仲間に引き入れるとはな。まったく、こっちの予想の斜め上を鋭角に刻んでいくな、この子は」

 その男は、またそう言いながらも愉快な表情を浮かべている。

「しかし、カイト・シュタイナー君の力は想像以上のようじゃな。疼く⋯⋯疼くわい⋯⋯」

 すると、さっきまでの愉快な表情が一変。獰猛な捕食者のそれ・・に変わる。

「私の⋯⋯ハンニバル・シーザーの一度沈んだ闘争心をこうも再び激しく揺れ動かすとはのぉ~。カイト・シュタイナー⋯⋯いずれ一戦交えたいものだ」

 そう言うと、学園長ハンニバル・シーザーはフッと闇に姿を消した。
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