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第一章 幼少編
014「想定外の調査報告」
しおりを挟む「ベクター殿。まずは私から謝罪を。ご子息のカイト・シュタイナーですが、まず今回⋯⋯私が家庭教師として赴任してきたのは『カイト・シュタイナーの魔法習得の有無』という調査が本来の目的だったとカイトには伝えております。そして、その事を知った上で、ここにカイトと一緒にやってきました。先に調査依頼の話をしてしまい申し訳ございません」
「良い。レコ君の裁量での判断なら構わん」
「ありがとうございます」
「カイト、お前を騙したような形になってしまい⋯⋯すまなかった」
「私からも謝るわ。ごめんなさい、カイト」
ベクターとジェーンが立ち上がり、俺に頭を下げる。
「頭をお上げください、お父様、お母様。むしろ、謝らなきゃいけないのは僕のほうなんですから」
「カイト⋯⋯お前」
「カイト⋯⋯それじゃあ、やっぱり⋯⋯」
俺は、一度深く息を吸って覚悟を決める。
(大丈夫。もし二人が俺を恐れて追い出すようなことになっても⋯⋯⋯⋯俺は一人でやっていける)
「お父様、お母様。僕は⋯⋯⋯⋯魔法が使えます」
「っ!? そ、そうか。やはりそうだったか」」
「やっぱり魔法⋯⋯使えるのね、カイト」
「⋯⋯はい。これまで黙っていてすみません」
「「カイト⋯⋯」」
俺が「魔法を使える」ことを伝えると、二人が顔をゆっくりと沈ませた。よく見ると体も震えている。やはり「五歳の子供が魔法を使える」というのは二人には恐怖の対象でしかな⋯⋯、
「すごいじゃないか、カイトっ! さすが、我が息子だっ!!!!!!!」
「すごい! すごい! カイト、超すごーーーーーーーーいっ!!!!!」
「⋯⋯へ?」
なんか、二人とも⋯⋯⋯⋯超喜んでるんですけど。
「やはり、そうだったか~。まったく! 魔法が使えるならちゃんと言いなさい、この馬鹿もんが!」
「え? え? あ、はい⋯⋯ごめんな⋯⋯さい」
「何? 何? 超天才じゃない、ウチの子! やだ! 超自慢したいんですけど!」
「あ? え? あの⋯⋯えーと⋯⋯う、うん」
どうやら、二人は俺が「五歳で魔法が使えること」に、恐怖どころか鼻高々に俺をほめ殺した。
「ところでカイト⋯⋯一つ聞いてもいいか!」
「あ、はい。お父様」
「お前が魔法を使えるようになったのは⋯⋯あの三歳の時、私の書斎のベランダで倒れた時か?」
「いえ、違います。生後六ヶ月です」
「⋯⋯へ? 生後⋯⋯六ヶ月?」
「はい。生後六ヶ月」
「「「生後⋯⋯六ヶ月ぅぅぅぅぅぅーーーっ!!!!!!!!!!!!」」」
ベクターとジェーンに加えてレコも一緒に見事にハモった。
*********************
俺は三人にこれまでの話をした。こんな感じで。
——————————————————
・生後六ヶ月のときに魔力コントロールができるようになったので魔法が使えるようになりました
・生後六ヶ月の体を身体強化で歩けるようにして、深夜、父の書斎に忍び込んで勉強を始めました
・それから毎日そこにあった学問書や魔法書を勉強。五歳になった今、父の書斎の本はすべて読み尽くしました
・父の書斎にあった魔法書の魔法もすべて習得しました ←いまここ
——————————————————
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
「? おーい⋯⋯」
三人とも俺の話を聞いて目を点にして固まっていた。
うーむ、これは困った。もう少し段階を踏んだほうがよかったか?
「カ、カカカ、カイト⋯⋯?」
「お? レコ! なんだ、ちゃんと意識あるじゃないか!」
「そ、そうね。ほ、ほら、私も一応⋯⋯規格外の天才って言われているから。耐性⋯⋯あるから。ていうかさ、カイト⋯⋯」
「何?」
「そ、それ、どこまでが本当の話?」
「え? いや全部、本当の話」
「へ、へー⋯⋯」
カッチーン。
おや? またレコが固まってしまった。
ふー。どうやら、もう少し時間が必要なようだな。
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