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第一章 幼少編
004「異世界チート転生を王道で行く者」
しおりを挟む——三歳になった
生後6ヶ月から始めた俺の『夜な夜な書斎訪問』はずっと続いていた。今では書斎にある本の半分ほどを読み終えていた。おかげで三歳の時点でこの国のことや世界のことをある程度は理解することができた。
まず、この国はクラリオン王国という国で、俺の住んでいるこの土地はシュタイナー領という小領地。そして、その領主が父親のベクター・シュタイナーであり、俺はそのシュタイナー家の長男として生まれた。
あと、クラリオン王国はこの大陸の中に存在する五つの国の中では国土は一番小さい国ではあるが、武力である騎士団の力が他の四カ国に比べて優秀であること。また、一年中温暖な土地ということもあり農作物も豊富で、またそれを食べに集まる動物も多いので肉も豊富に獲れる豊かな土地柄であることもわかった。
「恵まれた土地なんだな」と最初は感心しながら地政学の本を読んでいたが、しばらく読み進めると、それだけ豊かな土地ということもあって他の四カ国からは常に『隙あらば』と狙われている土地でもあった⋯⋯と書かれているのを見て「うわー、すげえ立ち位置難しいじゃん」と溜息を吐きながらそんな感想を漏らしていた。
そんな『夜な夜な書斎訪問』で勉強をしている間に、両親がいつの間にか『子供』をもう一人こしらえていたことがわかった。母親のお腹が大きくなるのを見ていたので「子供ができたんだ」と理解してはいたが、しかし、子作りをしていたとは知らなかったので俺は普通に驚いた。わかっていたら覗きに行ったのに。
そして、生まれた子供は女の子だった。そう⋯⋯俺に『妹』ができたのだ。
日本にいた頃も妹がいたが、妹が中学生になってからは一言も話さなくなっていて、気づけばずっと無視され続けていた。まあ『異世界転生を信じ続ける猛者』だった俺など妹からすれば『いい歳して厨二病が治らない家族の恥』くらいには思っていただろう。
まあ、俺自身も自分のことをそう思っていたので別にショックではなかったし、むしろ、兄らしいことを何もしてやれなかった妹には申し訳ないとさえ思っている。あと両親にも親不孝な息子ですまないと。
そんな『いい歳して厨二病が治らない家族の恥』のまま孤独死を迎えていたかもしれない俺だったが、今ではこうして新しい人生を異世界で歩んでいる。しかも『チート能力』を携えて。
日本にいた頃の俺は妹にお兄ちゃんらしいことは何もしてやれなかったし、両親にはただただ不安と心配ばかりかけていた。だから、せめてこの世界では妹にはお兄ちゃんらしいこと、両親には誇らしいと思ってもらえような人物になろうと⋯⋯、
「もう~、カイトはお兄ちゃんになるのにまだまだ甘えん坊さんね~」
ジェーンの『ぷにゅぷにゅマシュマロパイ』に包まれながら、そう心に誓ったのだった。
*********************
さて、めでたくお兄ちゃんになった俺は、妹に尊敬されるかっこいいお兄ちゃんを目指して、今度は本格的に『魔法』に取り組むことを決めた。
まあ、魔法に関しては俺の能力が『魔力膨大』ということもあるので、豊富な魔力量を活かして書斎にある魔法を片っ端から発動させ体に覚えさせた。
ちなみに、この世界で魔法を使うにはまず『魔力を安定させる』必要がある。その為、魔法を学ぶ前に魔力を安定させるための魔力コントロールの訓練から始まる。
目安としては、普通の子でだいたい十歳前後で魔力を何とか安定させるくらいにはコントロールできるようになるので、そこで魔力コントロールの訓練が終わる。ただ、早い子だと八歳くらいで魔力を完全にコントロールできるようになるので、早いうちから魔法を教わるらしい。まあ、そんな魔力コントロールのセンスに恵まれた子はだいたい王族か上級貴族であるが。
ちなみに、魔力コントロールや魔法習得などは王族と貴族が習うものであり、基本、平民の子供たちは教会で魔力コントロールと生活魔法までしか教えてもらえない。理由は魔力が少ない為、生活魔法までしか使えないからだ。
ただし、たまに平民でも魔力の高い子供が生まれることもある。その場合、そういう子供は『冒険者』の道に行くことが多い。理由は冒険者になれば普通の生活よりもお金を稼げるからだ。それに、その稼いだお金があれば教会で魔法を教えてもらえるので、さらに冒険者としてお金が稼げる。冒険者という職業は平民の中では『憧れの職業』となっている⋯⋯⋯⋯まあ、危険と隣り合わせではあるのだが。
さて、ここまで魔力コントロールや魔法習得の一般的な流れを話したが、これを聞いてピンときた『なろう民』も多いだろう。そう⋯⋯⋯⋯俺は三歳の時点ですでに魔力コントロールはもちろん、魔法習得に関しても父の書斎にある魔法書はこの時点でほとんどが習得済みだった。
これこそ、まさにチートっ!
これこそ、俺が望んだ異世界転生っ!
つまり、今の俺は異世界転生もののまさに王道を突き進んでいると言っても過言ではないのだ。
ちなみに両親にこの事は隠している。理由は、どう考えても今の俺が普通じゃないことは明らかだからだ。こんな俺を見て両親が「怖がって捨てるんじゃないか?」「化け物に見えて殺すんじゃないか?」と思ったので今は秘密にしている。
まだ二人がどういう人間かもちゃんとはわからないので、少なくとも、それがわかるまでは黙っていようと思う。
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