「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

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第一章 幼少編

003「俺のチート能力」

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「じゃあね、カイトちゃん。おやすみなさい」
「ば、ばぶぅぅ! ばぶぅぅ!」
「もう! ダメよ、カイトちゃん! 今日はおしまい!」

 母親であるジェーンの豊満なマシュマロカップを抱き枕にして寝ようとしがみついていたが、さすがに二時間もジェーンの胸にしがみついていた俺は無理矢理引き剥がされ、ベビーベッドに戻された。

 魔法で身体強化をすればジェーンに引き剥がされることはなかったが、生後六ヶ月の赤ちゃんが魔法を行使するというのはいかがなものかと冷静な判断ができた俺はジェーンの胸を諦めた。なるほど、これが力を持つ者の余裕ということか。

 そんなわけで、今日も一日が終わりを告げる⋯⋯⋯⋯おっと! その前に俺が神様からどうやってチート能力を得たのかというのと異世界へどうやって転生したかの話がまだだったな。

 一応、能力をもらった方法はあの『異世界に行ったかもしれないスレ』で『異世界に転生する方法』に書いてあった通り、神様がルーレットを回して決めた⋯⋯⋯⋯こんな感じで。


*********************


 神様が「じゃあルーレット回すぞー」と「異世界転生に未練を持った魂がこの部屋に来るのは久しぶりだ」と言ってた割には、だいぶ低いテンションでルーレットを回し始めた。

「な・に・が・出るかな! な・に・が・出るかな!⋯⋯」

 だいぶ、ジャパニーズ・カルチャーに染まっているようだ。そして、しばらくするとルーレットがピタッと止まる。

「チート能力の名前は⋯⋯⋯⋯魔力膨大インフレーションっ! はー、魔力いっぱいあって困っちゃう~。ウソウソ、あり過ぎてもうなんでもありや~ん! はいっ!」
「え?」
「いや、わかるやろ? あんた、日本人やろ? コサカイさん、お茶の間、お昼台⋯⋯⋯⋯せーのっ!」
「⋯⋯は~、魔力いっぱいあって困っちゃう~、ウソウソ、あり過ぎてもうなんでもありや~ん!」
「せやっ! そういうことっ! 頼むよ~、テンポ崩さないで~! テンポ大事やから~!」
「⋯⋯」

 どうやら、ジャパニーズ・カルチャーの中でもお笑いに精通しているようだ。ただ、コサカイさんはルーレットじゃなくてサイコロだけどな。

 そんなわけで、俺には『魔力膨大インフレーション』というチート能力が備わりました。何となく能力名を見る限り「魔力がいっぱいあるってこと?」と予想したが、ただ何となくしっくりこなかったので、神様にこの能力はどういう能力なのか聞いてみた。しかし、

「は? 自分なんなん? まんまやん? 能力名まんまやん!?」

 と、さっきから鼻につく『エセ関西弁』を交えた返事を返された。

 神様が「能力名まんまやん」と言っていたので、俺は「魔力がいっぱいある能力」ということでいいのかなと思ったが、でも、能力はちゃんと知っておいた方がいいと思い、もう一度神様に能力について質問してみようと思った⋯⋯その時だった。

「はい、じゃあ異世界飛ばすから。ちょっと目閉じて~⋯⋯」
「えっ?! ちょ、ちょっと⋯⋯待て! タ、タイムっ!!!!!!」

 神様は本当に⋯⋯本当に軽いノリで異世界に飛ばそうとしたので俺は必死になって止めた。

「⋯⋯なに?」
「い、いえ⋯⋯あ、あの俺⋯⋯もう異世界に行くんですか?」
「そうだよ」
「じゃ、じゃあ⋯⋯せめて、もう少し心の準備とか⋯⋯⋯⋯あ! あと、自分がこれから行く異世界がどういう世界なのか教えてもらっても⋯⋯」
「ああ、ダメダメ。ウチ、そういうのやってないから! はい、じゃいくよー、目閉じてー」
「い、いやいやいやいやいやいやっ!!!!!!!!! 待って! 待って! 待ってくださ⋯⋯待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 プツン!

 そこで俺の視界が真っ暗になった。

 こうして俺は、神様から能力を貰うと問答無用ですぐに異世界へと飛ばされた。

 そして、次に目を開けるとそこには⋯⋯⋯⋯母親ジェーンの豊満な胸に包まれる赤ん坊の俺でした。

 ムフ。


*********************


 まあ、そんなこんなで俺のチート能力は『魔力膨大インフレーション』というものだ。

 効果は⋯⋯特に何も言われなかったが、まあ、神様に聞いたら「能力名まんまやん」と言っていたので、おそらく『魔力量が豊富』といったところだろう。

 最初は「魔力がいっぱいあったとしても果たしてそれはチート足り得るのだろうか?」と思っていたが、この世界のことを勉強していくにつれ(父親の書斎で)、この世界で『魔力が豊富であること』はかなりのアドバンテージになるとわかったので心配事は杞憂に終わった。
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