異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ

文字の大きさ
上 下
40 / 125
第一章

040「Dストリーマーオメガ2回目配信(もはやツッコミがいない無法地帯となった件)」

しおりを挟む


「えっと⋯⋯こ、こんにちわ。オメガです。今日は衣装をリニューアルしてみました、どうでしょう?⋯⋯つってもチャット機能はオフなのでとりあえず報告ということで」

 そう言って、俺は黒装束の衣装を纏い仮面を付けた姿を視聴者にお披露目した。ちなみに黒装束とはいっても実際はただの黒のスラックスに黒の長袖シャツを着ただけだが。

 あ、それと黒マントも用意した。やっぱマントはマストだよね!

 あと、仮面もつけているのだが、その仮面は『デスマスク』のような白の仮面だ。目・鼻・口に少し穴が空いている。

「フフフ⋯⋯かっこいいでしょ? これがDストリーマーオメガの完全体⋯⋯真の姿です! 先週のオメガは不完全体、仮初かりそめの姿⋯⋯つまりはそういうことです!」

 ビシッ!

 俺は昨夜必死に考えた決めポーズとキメ顔でそう言った!

 フフフ⋯⋯決まった。決まってしまった。

 やっべ!

 これ、たぶん一世を風靡したんじゃないかな?

 あ、もしかしたら明日にも俺の格好をマネしたい探索者シーカーが出てくるかも?

 これはいけない。ちゃんと伝えておかなければ!

「あ、もしこの格好マネしたいのであれば全然構いませんからね!」

 ふぅ~、よしよし。

 まーこの格好は男子なら誰でも憧れるはずだからね。それを俺が独占なんてするわけがあるだろうか、いやない!

 まったく、ここでもまた懐の深さをアピールしてしまったな。

 いや~それにしてもやっぱこの『オメガ完全体』の感想を視聴者さんから直接聞きたいよな~。ちょっとだけチャット機能をオンに⋯⋯い、いやいや、それはダメだ! ちゃんとチャンネル登録者数が加速して増えるタイミングでオンにするって決めたじゃないか!

 まーでも、今回のこの『オメガ完全体』でもしかしたらチャンネル登録者数爆増するかもな(ニチャァ)。


********************


「そんなわけで、衣装もリニューアルして気持ち新たに⋯⋯ダンジョン探索開始ですっ!!」

 そうして、俺は下層の砂漠地帯を歩き出した。

「え~と、ここは現在、新宿御苑ダンジョン30階層『下層入口』で砂漠地帯なのですが、いや~暑いですね~。それにしてもダンジョンの中なのに太陽がギンギンに照りつけているとは何とも不思議な空間ですね~」

 俺は下層の雰囲気を伝えながら、視聴者を意識したナレーションをしていく。フフ⋯⋯昨日の段取りどおりうまくいってるな。

「ここからは『下層』なので今までとは比べ物にならない程の強い魔物が出てくるでしょう。危険と隣り合わせなのは十分承知している。だが、俺は探索者シーカー⋯⋯Dストリーマーオメガ! 危険をかえりみず進んでいく!」

 と、ドローンカメラに向かって真剣な表情で想いを訴える。

 フフフ⋯⋯完璧だ、完璧な演出だ! これだよ、これぇ!

「ここから『下層』は魔物が強くなる」という演出⋯⋯迫真の演技だったのではなかろうか?


********************


「あ、暑ぅぅ~!!!!」

『新宿御苑ダンジョン30F(下層入口)』⋯⋯ダンジョン養成講座で聞いた通りの砂漠地帯。なので、めちゃめちゃ暑い。ちょっと歩いただけでダラダラと汗が出る。

 ちなみに、その前の『中層』は森林地帯だったので涼しかった分、この下層からの砂漠地帯はキツイ。

「しかし、まぁ不思議だよな~現代ここのダンジョンって。こういった砂漠地帯とか森林地帯とかの『エリア環境』? それって新宿御苑だけじゃなく、世界のどこのダンジョンでも階層ごとの『エリア環境』は共通してるんだよな~」

 端的にいうと、例えばこの新宿御苑ダンジョンの下層が『砂漠地帯』というのは、ここだけの話ではなく、世界各地にある『101階層以上のダンジョン』はすべて下層は『砂漠地帯』となっている。つまり共通しているのだ。

 あと『101階層以下のダンジョン』の場合も同じだ。例えば『1階層が中層スタート。最深部が49階層という下層までのダンジョン』でも『エリア環境』自体は『中層なら森林地帯』だし『下層なら砂漠地帯』となる。

「まぁ、共通してる分、覚えやすいし対策もしやすいのはいいよな~。それにしてもこういったエリア環境が共通していたり、転移陣ポータルジャンプなるものまで用意されているのを見ると、改めて異世界あっちよりも現代ここのダンジョンって『イージーモード』だな~って思うよ」

 実際、魔物も異世界あっちと比べると脆弱だし⋯⋯などと考えていると、

「お?」

 通路の奥から5体の魔物が目に入る。見ると、ゾンビ状態のオーク⋯⋯『デスオーク』の群れだった。

「あ、あれは?! デスオーク!!」

 俺は魔物を見つけると、ギリっと唇を噛み締め「強敵が現れた!」をカメラ目線・・・・・で表現する。

「う、うおおおおおおおおっ!!!!」

 俺はガムシャラ必死な感じでデスオークに突っ込み拳で殴る。すると、

 パーーーーン!

 あ、あれ?

 だいぶ手加減したつもりだったのに、また一撃破壊ワンパンしてしまった。

 いかーーん! それ今やっちゃいかんやつ~~~っ!!!!

 すると、周囲のデスオークたちが俺の一撃破壊ワンパンを見て唖然としているようだったが、俺は気にせず、

「ラ、ラッキーだった!? ぐ、偶然デスオークが破裂するとは! き、きっと『破裂する急所』に俺の攻撃が当たったのだろう! いや~本当にラッキーだったなぁ~!」

 ちょっと苦しいか? いや、でもどうせチャット機能はオフにしているんだから誰かに辛辣なツッコミを言われることはない。なので安心。

「ち、ちくしょう⋯⋯強敵のデスオークがまだ残り4体もいるなんてぇ! まさに絶体絶命じゃないかー!」

 などと、俺が危機的状況なセリフを言うや否や、

 ダダダダダっ!

 目の前にいたデスオークの群れが全力でその場から逃げ去った。


********************


「く、苦しい戦い⋯⋯だった」

 俺はデスオークがいきなり全力で逃げたのを無かったことにして・・・・・・・・・、激戦だったような言葉でその場を締めた。

「ふぅ、恐ろしい。これが30階層⋯⋯『下層入口』!」

 俺は一滴も出ていない額の汗をぬぐいながら、下層の恐ろしさを伝える。

「これからは慎重に探索を続けなければ⋯⋯」

 そう言って、俺はさらにダンジョンを慎重に歩く。そして、それからも魔物は頻繁に現れるので俺は全力な気持ち・・・で魔物を苦戦風に屠っていく。しかし、

「何か、疲れたな~」

 俺は先週と同じく魔物の強さに合わせながら戦っていたため、次第に面倒臭くなってきた⋯⋯ので、

「恐ろしい魔物に出くわさないよう、ここからは走っていきます!」

 と、魔物が怖いから急いで突っ切ろうという装いでさっさと下層から出ようとダッシュした。そして、

「49階層⋯⋯下層の終点か」

 俺は下層入口から30分ほど・・・・・で階層ボスのいる49階層へ辿り着いた。

「ふ~ん、下層の最深部って神殿の中になるんだな」

 下層最深部も、てっきりまた砂漠かと思ったが降りていくとそこは神殿の中だった。だいぶ広い。

「つ、ついに階層ボスのいるところまで来ました。怖いですが勇気を振り絞って挑戦したいと思います!」

 俺は必死の形相を作って・・・、49階層を歩き始める。

 さてさて、下層の階層ボスはどれくらいの強さかな~。少しは演技しなくてもいいくらいには強いといいな~。

 そんなことを考えながら、階層ボスの部屋を探していると、

「きゃああああ!」

 女性の悲鳴が聞こえた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...