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第一章
029「Dストリーマー『オメガ』のオメガちゃんねる配信開始!」
しおりを挟む「よし、いまだ!」
俺はダンジョンの入口から少し離れた大岩と大岩の間にある隙間に入り、そこでサングラスとマスクをかけ『オメガ』の格好に扮する。
「うむ。これで準備はバッチシだな!」
変装が完了し、いよいよ配信の準備に取り掛かる。
「は、初めての配信だから、す、すげえ、緊張するな⋯⋯」
俺は身なりを確認し自分が『結城タケル』とバレないことを確認。そして、Dビジョンのアプリを起動し、同時にドローンカメラも起動。いつでもドローンカメラまたはDビジョンのアプリの『配信開始ボタン』を押せる状態まで準備ができた。
********************
スー、ハー。スー、ハー。
時は満ちた。
俺は二度大きく深呼吸をしたあと、ドローンカメラを浮遊させ、Dビジョンの『配信開始ボタン』をポチッと押す。
「ど、どどど、どうも! ダンジョン配信者のオメガと申します。きょ、今日からダンジョン探索配信を、やっていきますので、応援よろしくお願いしましゅ⋯⋯!」
噛んだ!
俺は自分のチャンネルの第一回配信の冒頭の自己紹介であろうことか盛大に噛んでしまった?!
初回挨拶からいきなり大失敗である。
しかし、俺のダンジョン配信を観ている視聴者は『0人』だったのでホッとするも、「いや、誰も観ていないことにホッとしてどうする、俺?!」とセルフツッコミをする。
「きょ、今日は、ここ、新宿御苑ダンジョンから探索を開始していきます。で、では、いってまいります!」
俺はDビジョンの画面を見るが視聴者は相変わらずの『0人』。
「ぜ、全然、人がいない。やっぱり、最初はこんなもんなのか」
探索者の条件となるレベル2になってからは、Dストリーマーの配信をいろいろ観て自分なりに研究してきたが、やはり人気Dストリーマーでなければすぐには人は集まらない。
「で、でも、一般のYo!Tuberに比べればDストリーマーは数が少ないから観にきてくれる人は割とすぐに出てくると思うんだけど⋯⋯」
「とはいっても、こればっかりは仕方ないか」と俺はすぐに頭を切り替える。
「とりあえず、チャット欄にコメントが上がればリマインド機能があるからそれが鳴るまでは普通に探索続けるか」
ということで、俺は一旦Dビジョンの画面から意識を外した。
********************
現在、俺はマイペースにダンジョン探索をしている。階層を降りるたびにいろんな魔物が出てくるが問題はそこじゃなく、
パーーーン!
パパーーーン!
「ああぁぁあぁぁ⋯⋯どうしようぉぉ~!。これじゃやっぱマズイよなぁ~」
いまだ一撃で倒してしまう『力加減』に悩まされていた。
「お、おかしい。前回の探索者養成ダンジョンではしっかりと制御できたと思っていたのに⋯⋯」
そう、以前ダンジョンで制御できるようになったと思っていた『スキル:身体覚醒(極)』がまた制御できなくなっていたのだ。なぜ?
「あ、もしかしてレベルが上がったからかも⋯⋯?」
現在俺の本当のレベルは『20』。当然、元々の土台である身体能力や魔力もレベルアップにより成長している。しかし、現代のステータスボードには異世界とは違って『体力』や『攻撃力』『魔力』などといった数値化された詳細な項目は存在しないため、どれだけ成長したかは自身の感覚や肌感で確認するしか術がなかった。
「はぁぁ、ステータスボードが『名前』と『レベル』と『スキル』だけって不親切設計にも程があるだろ⋯⋯」
と、俺は一人愚痴をこぼす。とはいえ、現代ではそれでどうにかするしかない。
「ふぅ~間違いない。やっぱレベルアップが原因で元々の身体能力や魔力が上がっているから制御が難しくなってるんだ。現代はただでさえ異世界よりも魔素が濃い世界だから⋯⋯」
いわば、直径10センチの水道の蛇口から直径1センチ以下の水をチョロチョロ出すみたいな⋯⋯。あれ違う?
「とにかく、繊細な制御だろうが何だろうがどうにかしないと⋯⋯」
とはいうものの、
パーーーン! スパパーーーン!!
襲いかかってくる魔物を次から次へと一撃で屠っていく俺。
マズイ。これはヒジョ~にマズイ。
「こ、こんな、パンパンパンパン魔物を一撃で倒したところで、何が面白いってんだよ!」
そう、こんなヌルい映像じゃバズるはずがない! 戦闘シーンは、もっとこう、強い魔物と一進一退の攻防を繰り広げて最後に勝利を掴むみたいな⋯⋯こういうのじゃないと!
「オ、オーケーオーケー⋯⋯まだあせる時間じゃない。まだ視聴者は0人なんだ。今のうちに力を制御できるよう調整しようじゃないか。いや待てよ? それよりももっと階層を降りていけばちょうどいい強さの魔物がいるんじゃなかろうか?」
天啓キタコレ。
「これだ! 階層を降りるペースを上げて、ちょうどいい強さの魔物のいる場所へ行こう。そうしよう」
そう言って、俺は現在いる『21階層』からさらにペースを上げて降りることにした。
「いいぞ、いいぞ。階層降りてくごとに魔物をちょうどいい具合の強さに近づいてきているぞ! あと、もう少しだ」
そう言って、どんどん階層を進んでいく。そのうち『ゾーン』に入ったのか集中し過ぎてしまい、タケルは視聴者がいることにまったく気づかずにいた。
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:ん? 新人か?
:ていうか格好ww
:ただの不審者で草ww
:ところで、ここってどこのダンジョン?
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