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第四章
136「スカウト②」
しおりを挟む——関東C24『探索者ギルド・インフィニティ日本本部』
「ど、どうも。お久しぶりです⋯⋯琴音さん」
「あ、ソラ君! ずいぶん久しぶりじゃ⋯⋯な⋯⋯⋯⋯いぃぃぃぃっ!?」
挨拶するや否や、琴音さんが素っ頓狂な声を上げる。その理由はもちろん、
「こんにちわ。インフィニティ日本本部の諸君っ!」
「フフン。ごきげんよう、インフィニティ日本本部の者達⋯⋯」
そこに、インフィニティ中国本部のギルドマスター王明凛と、インフィニティイギリス総本部の副ギルドマスターのメイベル・ホワイトがいたからだ。
「な、ななな⋯⋯なな⋯⋯」
「ふふ⋯⋯慌てすぎだよ、琴音君」
そう言って、ポンっと彼女の肩を叩いたのは、
「炎呪様!」
「やー琴音君。そして、久しぶりだね、ソラ君。あと、明凛もメイベルも久しぶり!」
インフィニティ日本本部のギルドマスター、倶利伽羅炎呪だった。
「えっとねー、君たちちょっとここにいると色々と邪魔だから⋯⋯僕の部屋に来てください」
ごもっともである。
いや~、すまんね。
********************
「で? 何用かな?」
部屋に入ると、すぐに炎呪が本題を聞いてきた。
「何だ、急だな⋯⋯?」
と明凛。
「いやいやいや⋯⋯こっちは業務中で忙しいからね?」
と炎呪。まーそりゃそうだろうなー。
「わかったよ。それじゃあ、早速だけど、実は⋯⋯」
と、明凛が『カメラマンのスカウト』について炎呪に説明をした。
「⋯⋯なるほど。Sランクダンジョンに入っても自分の身を守れる・もしくは危険回避できる探索者か」
「あと、撮影技術の高い奴な! そこも大事だから!」
と明凛がテンション高めに追加条件を言うが、
「ははは⋯⋯そんなのいるわけないじゃん。バカなの?」
と笑いながら、息を吐くように辛辣な言葉を吐く炎呪。
うむ。いつもどおりで安心したぞ。
「相変わらず、言葉悪いですね、炎呪」
「いや、メイベルほどじゃないと思うけどね」
「は?(イラッ)」
で、さらにメイベルにもチクリと辛辣な言葉を吐く炎呪。
「ま、まー、まー⋯⋯二人とも。正直、炎呪のほうが正論だからね?」
「わかってるわよ!」
「わかっているわ、フン!」
すっかり、炎呪の煽りムーブにやられているお二人。
「ちょっと、炎呪も⋯⋯勘弁してくれよ⋯⋯」
「ははは⋯⋯ごめん、ごめん」
ということで、改めて落ち着いて話をすることに。
********************
「な、なー? それなら『カメラマン募集』ということで『クエスト』を発注すればいいのでは?」
一息ついてお茶を飲んでいたとき、俺はふとそんなことを二人に提案した。
「ほう⋯⋯クエスト発注か。いいんじゃないか?」
すると炎呪が意外にも良い反応を示した。
「そうね。たしかに『クエスト発注』をかけて様子を見るのは⋯⋯いいかもね?」
ということで、ギルドの『クエスト掲示板』に『カメラマン募集!』という名のクエスト発注書を貼ってもらった。ちなみに、発注書は明凛プロデュースのもとこんな感じになった。
——————————————————
『カメラマン募集』
「我こそは!」という者、お待ちしております!
<条件>
・Sランクダンジョンで自分の身を守れる者。もしくは危険回避技術を持っている者
・撮影技術がある者
※この2つのうち、いずれかの条件に該当するものであれば面接します
<報酬>
・月給50万円(交通費込み)
・食事提供(現地調達その他)
・王明凛のサイン色紙
・メイベル・ホワイトのサイン色紙
——————————————————
「おい、そこの明凛⋯⋯」
「何よ⋯⋯?」
「色々思うところがあるが、特に気になるところから⋯⋯⋯⋯なんだ、この二人のサイン色紙ってのは?」
「え? そのままよ? 私とメイベルのサイン色紙」
「こんなの誰が欲しいなんて思うんだよぉぉー!」
そう言って、俺が大きな声を上げてツッコミを入れたところ、
「え? 私、欲しいわ⋯⋯」
「ええっ!? 琴音さん!」
と、俺たちと一緒に炎呪の部屋にやってきた琴音さんがそんなことを言ってきた。ちなみに、現在琴音さんは『新屋敷ソラ担当』と役職を賜っており、そのため、俺がギルド本部に来た時はいつも対応してくれる。
「そう⋯⋯なんですか?」
「うん。だって、王明凛さんとメイベル・ホワイトさんのサインなんて誰だって欲しいと思うわよ?」
「えええええええっ!!!!」
し、知らなかった。この二人、そんなに人気があるのかっ!?
「ふふん、わかったかな、ソラくん?」
「やっと⋯⋯私たちの人気の凄さがわかったよーね、新屋敷ソラ?」
「⋯⋯くっ!?」
実に⋯⋯全くもって不愉快だが⋯⋯しかし、琴音さんのこのリアクションを見れば二人が探索者として超有名人なのは間違いないだろう。
「だから、私たち二人のサイン色紙はじゅ~ぶんに需要はあるのよ(ニヤッ!)」
「右に同じよ、新屋敷ソラ(ニッ!)」
この二人が意気投合したら、俺に勝ち目はない。そう悟った俺は⋯⋯、
「僕が悪かったです。すみませんでした」
「「うむ、苦しゅうない」」
素直に謝るのでした。
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