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第三章

130「風間蓮二《かざまれんじ》」

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「な、何なんだ、こいつら⋯⋯」

 私は炎呪さんから「唐沢君と胡桃沢君の探索者シーカーレベルはB級ランカーに成り立てのレベル50前半程度だから」と聞かされていたが、実際に『新進気鋭アップスタート』の唐沢君と胡桃沢君の実力を見て驚愕した。

 炎呪さんに一杯食われたというのはその通りではあるのだが、しかし、私的にはすごく興奮していた。

 しかし、何より凄かったのが、

「こ、これが⋯⋯新屋敷ソラ」

 あの『探索者世界会議シーカー・ワールド・フォーラム』の事件での活躍で、S級ランカーへと昇格した少年。現在は、唐沢君と胡桃沢君のフォローとして後ろについているだけだが、彼の動きはもちろん彼から漏れ出る『強者オーラ』を知覚するだけで、彼のただ者じゃないことだけではハッキリと理解できる。

「私と同等⋯⋯か? いや、それ以上かもしれんな」

 蓮二はそう言ってニッと笑顔を浮かべる。

「す、素晴らしい⋯⋯! まだ10代の若者でここまでの強さとは! これならこの子たちが成人を迎える頃には、この日本の探索者シーカーも、日本のギルドも、世界に引けを取らないものになっているかもしれない!」

 私たち『乾坤一擲』は、国内で数の少ないS級ランカーの探索者集団シーカー・クランということもあり、海外のギルドから『助っ人』という形で呼ばれることがあった。前回のアメリカの『魔物暴走スタンピード』のときもそうだ。

 一応、私たちは世界のギルドから認められているが、それ以外の日本の探索者シーカー探索者集団シーカー・クランは海外からは『ランク実力不足』と揶揄されてバカにされていた。

 私はこの扱いがとても腹立たしかったが、しかし、悲しいかな日本は良くも悪くも昔から『平和ボケした民族』が理由なのかどうかはわからないが、優秀な⋯⋯というか、『本物の実力を持った探索者シーカー』がほとんど育たなかった。

 唯一、私が認めているのは、ウチの連中以外では『不知火不師斗しらぬいふしと』くらいだ。

 私はずっと日本の現状を変えたいと思っていた。そして、そんなときに知ったのが⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラであり、この『新進気鋭アップスタート』というクランだった。

 そして、今日——この『新進気鋭アップスタート』の力を見た時確信した。


「日本の探索者シーカーの未来は明るい!」


********************


 結局、今日の探索は20階層で終了となった。

「「「ありがとうございましたー!」」」
「どういたしまして」

 三人が私に元気に挨拶をする。⋯⋯ソラ君は、まークールな感じだが。

「じゃあ、明日からよろしく頼むよ。唐沢君、胡桃沢君!」
「「は、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!!」」

 ちなみに、20階層まで探索を行ったがそれまでに我々が『助っ人』で入るようなことは一度もなかった。

 とはいえ、苦戦していなかったというわけではない。実際、唐沢君と胡桃沢君だけでは少し実力不足な場面が何度もあった。しかし、そんな時はソラ君が絶妙なタイミングでフォローに入り、二人の足りない分を完全に補っていた。

「⋯⋯ソラ君の本当の実力を見たい」

 正直、私としてはソラ君の実力をもっと見たかったというのが本音だ。だが、彼は明日からは我々のクランに帯同するのではなく、単独探索者ソロ・シーカーとしてSランクダンジョンに挑戦するらしい。

「フフフ⋯⋯探索者シーカーデビューして1年経たない10代の少年が単独探索者ソロ・シーカーでSランクダンジョンへ⋯⋯か。漫画でももう少し自重・・するぞ?」

 私は新屋敷ソラの規格外の成長を一人ボソッと皮肉る。しかし、

「これは、私も負けてられないな。久しぶりに単独探索者ソロ・シーカーとして修行しちゃおっかな」

 昔、まだC級探索者シーカーでB級昇格に手こずっていた頃、自分の限界を突破するために『単独探索者ソロ・シーカー』になって自分を追い込んだ。そして、一人でいくつもの死線を潜り抜けて強くなった⋯⋯⋯⋯あの頃を思い出す。

「それくらいしないと、ソラ君にはすぐに追いつかれるだろうね。フフフ⋯⋯久しぶりに⋯⋯本当に久しぶりだよ⋯⋯こんな気持ちは!」

 こうして、ソラ君との帯同を終えた。
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