130 / 157
第三章
130「風間蓮二《かざまれんじ》」
しおりを挟む「な、何なんだ、こいつら⋯⋯」
私は炎呪さんから「唐沢君と胡桃沢君の探索者レベルはB級ランカーに成り立てのレベル50前半程度だから」と聞かされていたが、実際に『新進気鋭』の唐沢君と胡桃沢君の実力を見て驚愕した。
炎呪さんに一杯食われたというのはその通りではあるのだが、しかし、私的にはすごく興奮していた。
しかし、何より凄かったのが、
「こ、これが⋯⋯新屋敷ソラ」
あの『探索者世界会議』の事件での活躍で、S級ランカーへと昇格した少年。現在は、唐沢君と胡桃沢君のフォローとして後ろについているだけだが、彼の動きはもちろん彼から漏れ出る『強者オーラ』を知覚するだけで、彼のただ者じゃないことだけではハッキリと理解できる。
「私と同等⋯⋯か? いや、それ以上かもしれんな」
蓮二はそう言ってニッと笑顔を浮かべる。
「す、素晴らしい⋯⋯! まだ10代の若者でここまでの強さとは! これならこの子たちが成人を迎える頃には、この日本の探索者も、日本のギルドも、世界に引けを取らないものになっているかもしれない!」
私たち『乾坤一擲』は、国内で数の少ないS級ランカーの探索者集団ということもあり、海外のギルドから『助っ人』という形で呼ばれることがあった。前回のアメリカの『魔物暴走』のときもそうだ。
一応、私たちは世界のギルドから認められているが、それ以外の日本の探索者や探索者集団は海外からは『ランク実力不足』と揶揄されてバカにされていた。
私はこの扱いがとても腹立たしかったが、しかし、悲しいかな日本は良くも悪くも昔から『平和ボケした民族』が理由なのかどうかはわからないが、優秀な⋯⋯というか、『本物の実力を持った探索者』がほとんど育たなかった。
唯一、私が認めているのは、ウチの連中以外では『不知火不師斗』くらいだ。
私はずっと日本の現状を変えたいと思っていた。そして、そんなときに知ったのが⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラであり、この『新進気鋭』というクランだった。
そして、今日——この『新進気鋭』の力を見た時確信した。
「日本の探索者の未来は明るい!」
********************
結局、今日の探索は20階層で終了となった。
「「「ありがとうございましたー!」」」
「どういたしまして」
三人が私に元気に挨拶をする。⋯⋯ソラ君は、まークールな感じだが。
「じゃあ、明日からよろしく頼むよ。唐沢君、胡桃沢君!」
「「は、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!!」」
ちなみに、20階層まで探索を行ったがそれまでに我々が『助っ人』で入るようなことは一度もなかった。
とはいえ、苦戦していなかったというわけではない。実際、唐沢君と胡桃沢君だけでは少し実力不足な場面が何度もあった。しかし、そんな時はソラ君が絶妙なタイミングでフォローに入り、二人の足りない分を完全に補っていた。
「⋯⋯ソラ君の本当の実力を見たい」
正直、私としてはソラ君の実力をもっと見たかったというのが本音だ。だが、彼は明日からは我々のクランに帯同するのではなく、単独探索者としてSランクダンジョンに挑戦するらしい。
「フフフ⋯⋯探索者デビューして1年経たない10代の少年が単独探索者でSランクダンジョンへ⋯⋯か。漫画でももう少し自重するぞ?」
私は新屋敷ソラの規格外の成長を一人ボソッと皮肉る。しかし、
「これは、私も負けてられないな。久しぶりに単独探索者として修行しちゃおっかな」
昔、まだC級探索者でB級昇格に手こずっていた頃、自分の限界を突破するために『単独探索者』になって自分を追い込んだ。そして、一人でいくつもの死線を潜り抜けて強くなった⋯⋯⋯⋯あの頃を思い出す。
「それくらいしないと、ソラ君にはすぐに追いつかれるだろうね。フフフ⋯⋯久しぶりに⋯⋯本当に久しぶりだよ⋯⋯こんな気持ちは!」
こうして、ソラ君との帯同を終えた。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる