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第三章
120「ファンタジー要素のある世界の真実③」
しおりを挟む「『朧』⋯⋯か」
「どうした、ソラ君?」
「実は、今回の朧の襲撃でその朧の幹部と話をしたが、個人的には別にそんな嫌な奴らには見えなかった」
「ほう?」
「あいつらの目的は何なんだ?」
「うむ。では、まずはその話をしよう。『朧』の目的は⋯⋯⋯⋯『探索者』と『探索者ギルド』を消滅させることが目的だ」
「「えっ?!」」
賢者の言葉に倉沢と胡桃沢が反応する。
「まず、それについては『朧』という組織の成り立ちを知る必要がある。まず、朧の連中は元探索者たちで構成されているのだが⋯⋯」
「え? 元探索者っ!?」
「ああ。そして、その朧の元々のリーダー『朧辰』という『朧十二衆』の最強⋯⋯第一席にいる男だ」
「た、たしかそれって⋯⋯⋯⋯王明凛さんが言っていた人ですか?」
「ああ、そうだ」
胡桃沢の質問に賢者が肯定を示す。
「しかし、現在は『裁定者』という私と同じ時期⋯⋯2004年にこの世界に転移させられた男が朧のリーダーだ。そして、その『裁定者』は世界支配を目論んでいる」
「な、なあ、前にもそれ聞いたけど、どうして『裁定者』は世界支配をしようとしているんだ?」
唐沢が賢者に質問する。
「それは⋯⋯⋯⋯ロキと世界統一主義者たちを倒すためだ」
「「「ええっ?!」」」
「⋯⋯そして、『裁定者』がロキや世界統一主義者を目の敵にするようになった原因は『転移者同士の殺し合い』で恋人をそいつらに殺されたからだ」
「⋯⋯え?」
「こ、恋人を⋯⋯殺された?」
「⋯⋯ああ」
「賢者。前から気になっていたが、その『転移者同士の殺し合い』っていうのは何なんだ?」
「それは⋯⋯⋯⋯『この世界に送られた転移者は、必ず殺し合う運命にある』というもので、転移者同士は必ずそういう運命にあるというやつだ。それは、転移者同士がどんなにそうならないよう動こうとしても、抗えない『呪い』のようなものだ」
「な、なんだよ⋯⋯それ⋯⋯」
「そして、『裁定者』は、恋人同士だった転移者の一人の女と『転移者同士の殺し合い』を避けようとしたが、しかし、それは叶わなかった」
「ま、まさか⋯⋯」
「⋯⋯最後は『裁定者』の手で彼女を葬ることになった。そして、その時、恋人と戦うことになったのは、ロキや世界統一主義者たちが彼女を操っていたのが原因だった」
「操る⋯⋯?」
「彼女はロキや世界統一主義者たちに『弱み』を握られていたらしい。私もそれ以上のことは知らないが、しかし『裁定者』はその彼女が握られた『弱み』を知った。世界統一主義者の一人を殺して聞き出したのだ」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
「それから、『裁定者』はロキと世界統一主義者を倒すために世界を支配すると宣言した。そして、その裁定者の思いに共鳴したのが、当時、朧辰をリーダーとしていた『朧』だ」
「⋯⋯なるほど。そういうことだったのか。そのロキとか世界統一主義者って、だいぶひでぇ連中じゃなーか」
「本当よ。話を聞いているだけでもムカつくわ」
「⋯⋯ちょっと待て」
「ん? どうしたんだ、ソラ?」
「今の話であれば、朧や裁定者の敵はロキと世界統一主義者たちだ。なのに、何で『探索者』や『探索者ギルド』を消滅させようとしているんだ?」
「⋯⋯それは、『探索者ギルド』は世界統一主義者たちが作ったものだからだ」
「え⋯⋯?」
「探索者ギルドは⋯⋯世界統一主義者が作った⋯⋯?」
「ああ、そうだ。そして、世界統一主義者たちは探索者ギルドに指示を出して、ギルドは腕のある探索者や探索者集団を指名して、朧や裁定者たちを捕えるクエストを出したりしている」
「そ、そんな⋯⋯」
「もしかして、この『天罰』も⋯⋯世界統一主義者の指示で動いているんですか?」
胡桃沢が不安な声を出し、唐沢は『天罰』が世界統一主義者の片棒を担いでいるのか聞いた。
「いや、そうではない。むしろ逆だ。私たち『天罰』は、その世界統一主義者たちの手先とならないために作った組織だ。だから、我々『天罰』は、一般の探索者や探索者ギルドにバレないように動いている」
「な、なんだ。そうなんだ⋯⋯」
「それ聞いて、少しホッとしたわ」
唐沢と胡桃沢が賢者の言葉に安心した仕草を見せたが、俺はまだ賢者のことを信用していない。
「⋯⋯本当にそうなのか?」
「どういうことだ?」
「賢者⋯⋯あんた本当に世界統一主義者とはつながりはないのか? 本当は世界統一主義者側の人間じゃないのか?」
「⋯⋯⋯⋯」
俺は、賢者にずっと抱いている不信感の正体が『世界統一主義者』と裏でつながっていることではないかと思い、そのままド直球に聞いた。
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