上 下
96 / 157
第三章

096「質疑応答①ジョー・ウェイン/王明凛」

しおりを挟む


「さて、早速だが⋯⋯ソラ。君がたった一人で鎮圧した『魔物暴走スタンピード』はBランクダンジョンだ。当然、ダンジョンボスもいたと思うがそれらさえも一人でやっつけたというのはとても信じられないが、君的にはそれは⋯⋯⋯⋯特に難しいとは思っていなかったというのは本当かね?」

 ジョーはのっけからソラに質疑する。

「イエス⋯⋯そうですね。問題ないと思ったので一人で行いました」

 すると、ソラの即答とその肯定する内容に会場が軽くざわつく。

「ふむ。あと君は緊急生ライブでの記者会見で『レベリングのボーナスステージかと思ってました』と発言しているが⋯⋯あれはやはり真実ということかい?」
「はい、そうです。あれだけの魔物が向こうからやってくるなんてそんなのモンスターボックスでもなかなかないですからね。チャンスだ~!⋯⋯って」
「は、はは⋯⋯チャンス⋯⋯」

 アメリカでこれまで数々の武勇伝を残す、探索者シーカー世界ランキング3位のジョーでさえも、ソラのこの発言には明らかな失笑をした。

「クレイジー。クレイジーだよ、ソラ。そして、悪いが君のその強さの秘密を知りたいと思っている。この質問もおそらくここにいる探索者シーカー全員に真意だと思うが⋯⋯⋯⋯君はどうしてそんな強いんだ? 本当に君は何者なんだい?」
「⋯⋯⋯⋯」
「我々だってバカじゃない。各国のギルドの動きは把握しているし、実力ある探索者シーカーは常にチェックしている。しかし、そんな中、君は突如⋯⋯彗星の如く現れ、そして、圧倒的な成長スピードで強くなった。⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ、君は一体何者なんだっ?!」
「⋯⋯⋯⋯」

 最初、余裕を見せていたジョーだったが、今はかなり気持ちが入った物言いになっている。そして、ソラはその質問に対し、しばらく無言を貫き、そして、

「企業秘密ですね!(ニッコリ)」
「⋯⋯え?」

 ここでまさかの満面の笑顔でそんなことを言うとは思わなかったジョーは毒気を抜かれ放心状態となる。

「いや~、さすがに強さの秘密を明かすのは弱点を曝け出すようなものじゃないですか~。それはさすがに答えられませんよ~⋯⋯はっはっは」

 壇上に上がった当初は、レヴィアスのときみたく基本クールな表情で対応していたソラの顔が一点、ニコニコして愛想よくジョーの質問に堂々と答えるその様は、ジョー本人や会場の者たちからは逆に異様な光景に映り、誰もがソラの言葉にある種『不気味さ』を感じていた。

「な、なる⋯⋯ほど。これが⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラか」


********************


 毒気を完全に抜かれたジョーはそのまま壇上を降りた。

 そして、次に上がってきたのは、

「中国本部ギルマスの王明凛ワン・メイリンです。初めまして、新屋敷ソラ」
「ど、どう⋯⋯も⋯⋯」

 中国本部ギルドマスター『王明凛ワン・メイリン』。S級ランカーはもちろん、世界ランキング5位の実力者であるが、ソラはそんなことよりも、

(めっちゃ、美人べっぴんさんやないかーい!)

 と、関西弁になるほどには王明凛に見惚れていた。

 実際、水色のロングヘアーの彼女の髪色は透明感と気品に溢れ、顔もはかなげな美しさを感じさせるほどの美少女。

(めっちゃ、ストライクやん)

 だそうだ。

「さて、いくつか質問させていただきます⋯⋯」

 そんな彼女は、ソラのそんな自分への印象に気づいているのかどうかはわからないが、舞台に上がるとすぐに話し始めた。

「ソラ。君は元高校生で現在は独立していると聞くがそうなんですか?」
「はい、そうです」

 ソラは探索者集団シーカー・クラン新進気鋭アップスタート』のメンバーである唐沢と胡桃沢でマンションを借りて、そこで『探索者シーカー所属事務所』という形で起業したことを伝える。

「そうなんですね! では、ちょうどいいですね」
「え? ちょうど⋯⋯いい?」
「ええ。私とビジネスパートナーになりましょう」
「え? えええええええっ?!」

 ソラは王明凛の突然の『ビジネスパートナー発言』に度肝を抜かれた。

「今、ソラは事務所立ち上げたばかりなんでしょ?⋯⋯ってことは探索者シーカー以外の仕事とかもやっていきたいと思っているんじゃないの?」
「お、仰る通り⋯⋯です」
「でしょー? じゃあ、私たちといろいろビジネス面で組みましょう!」
「え? あ、いや~、え~と⋯⋯俺一人では判断が⋯⋯その⋯⋯⋯⋯い、いいのかなぁ~?」

 ソラは舞台袖にいる唐沢と胡桃沢を見る。すると、二人が「大物だぞ、ソラ!」「色良い返事を! ソラっ!!」などとゼスチャーで必死に「約束を取り付けろ!」とアピールしている。それを悟ったソラは、

「あ、えーと、仲間も了承のようなので⋯⋯ぜひ、よろしくお願いしま⋯⋯」

 そのまま王明凛とビジネスパートナーとしての約束をしようとした、その瞬間——、

「意義あり! 中国の王明凛のソレは質疑とは関係ないもの! 質疑は中止させろー!!」
「そうだ、そうだ! 関係ない話をこんなところでするなー!」
「王明凛っ! 品がないぞぉー!!」

 会場の数人が立ち上がり、「王明凛を退場させろー!」と声を上げる。すると、


「だーーーーらっしゃい!! このヘチマどもがぁぁ~~っ!!!!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します

カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。 そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。 それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。 これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。 更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。 ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。 しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い…… これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...