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第三章

086「2004年の真相①」

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「っ!!!! ちょ、ちょっと待てっ!?」
「ん? どうした?」
「い、いや、どうしたも何も! 我々・・って、あんたも敵も『転移者』なのかっ?!」
「あれ、言ってなかったか? ああ⋯⋯言ってなかったな。すまない、すまない。そうだ、私も敵も転移者だ⋯⋯⋯⋯⋯⋯20年前のな?」
「に、20年前ぇぇ~~~っ?!!!!」



 いきなり、サラッととんでもない情報をぶっ込んできた賢者ワイズマンであった。

「20年前って⋯⋯⋯⋯ダンジョンが出現したあとすぐってことか?」
「ああ、そうだ。2004年にここに来て、それから今は2025年になったから正確には21年前になる。⋯⋯まったく、元いた地球では『ノストラダムスの大予言』なんて外れたくせにな! おかげで、その当時の元いた地球の俺は大変だったんだぞ! 借金してもどうせ地球滅亡するから返さなくても大丈夫だっていうもんだから、つい⋯⋯ぶつぶつ」
「⋯⋯⋯⋯」

 賢者ワイズマンが何やら2004年当時の元いた地球での愚痴を言い始めた。それを見たソラは「面倒臭い」と感じ、その話は全力でスルーする。ていうか、だいぶ喋りがくだけているな。これが賢者ワイズマンの本来の『素』なのだろうか。

「で? その20年前の転移者であるあんたはどうしてこんな組織を使って活動しているんだ?」
「言ったろ?『おぼろ』という秘密結社とその首領ドンである『不穏因子』を止めるためだって。ちなみにその『おぼろ』の首領ドンというのは転移者で、そいつは私と同じ前回⋯⋯2004年の転移者の生き残り・・・・だ」
「生き残り?」

 ソラが賢者ワイズマンの「生き残り」という言葉に違和感を感じる。

「⋯⋯と、とりあえず、そもそも2004年に来た転移者ってのは何人いたんだ?」
「元々は七人だ」
「な、七人もっ?! でも、あんたの『生き残り』って言い方からはまるで⋯⋯⋯⋯残りの五人はすでに死んだと言っているように聞こえるんだが⋯⋯?」
「ああ、死んでる」
「!」

 すると、賢者ワイズマンの顔が能面のように一切の感情が消えた表情を浮かべる。

「な、何が、あったんだ?」
「⋯⋯『殺し合いバトル・ロワイヤル』だ」
「っ!?」


——————————————————


——21年前/2004年7月

 我々は『並行世界線イフラインの地球』へと『ロキ』という自称神様に転移させられた。そして「ここは君たちが望んだ理想的な世界だよ」と言われた。実際、そこは以前いた地球とほとんど変わらないがダンジョンや魔法・スキルといったものが存在するファンタジー世界だった。

 私は当時19歳で普通の大学生だった。そんな大学の講義中にノートPCでレポートの調べ物をしていたらいきなり『ポップアップ画面』が出てきた。そこには、

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<< イフライン・レコード ~ 現代ファンタジー ~ >>

 参加(転移)しますか?

 Yes/No

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「フン。フィッシングか? いいだろう、暇つぶしにこっちからクラッキングしてやる!」

 当時の私は、セキュリティソフトの開発者を目指していたこともあり、こういったポップアップ系やメール系のフィッシングサイトなどを逆クラッキングしてその出所を掴んで警察に報告するといった遊びをよくしていた。

 そんなこともあり、このポップアップメニューも『Yes』のボタンを押したのだが、それが原因でこの世界へとやってきた。ただすぐにはこの世界が『並行世界線イフラインの地球』とはわからなかった。しかし、夢に『ロキ』という神様を自称する奴が現れ、この世界が『ファンタジー世界どういう世界』かの説明を受けた。

 私は若干戸惑いながらもこんな世界を夢見ていたので、それなりにすぐに受け入れることができた。

 その後、私は君と同じようにここでの生活を始める。家族との関係や友人との関係、そしてこの世界での私の境遇も同じだったので、私は以前と同じように大学に通うことになる。

 ちなみに、さっきお前が言ったような『違和感』はしばらく付き纏っていた。⋯⋯が、一年もすればこの世界に慣れていき、徐々に違和感もなくなったがな。

 さて、そんな中、ロキが与えたという『恩寵ギフト』について調べた。まーこういった話の『定番』を試すような感じだな。

 程なくして、私は『ステータス画面』を開くことができるようになると、その中身を見て興奮したよ。何せ、この『恩寵ギフト』という能力がこの世界の魔法やスキルよりも強力だったからな。

 いわゆる『チート』というやつだとわかると、それから私は『異世界転移の主人公になったんだ!』と舞い上がった。それからさらに自分の能力を調べ、それを理解すると今度はレベルアップを目指して『ダンジョン』へと入った。⋯⋯今のお前がそんな状態じゃないか?

 当時の世界は『探索者シーカーギルド』は誕生してから四年とまだ十全には機能しておらず、さらに探索者シーカーのレベルも今とはだいぶ異なりかなり貧弱だった。

 そういうこともあり、私は程なくして『強者』として世界にその名を轟かすようになる。まさに私の夢が実現した瞬間でもあった。



——しかし、そんな至福の時は長くは続かなかった。
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