上 下
42 / 157
第二章

042「二人の高校生探索者《シーカー》の誕生」

しおりを挟む


 ギルドマスター倶利伽羅炎呪との初対面から三日後のお昼——いつものように屋上で唐沢と胡桃沢三人で食事をしている時、俺はふとある話を切り出した。

「あのさ⋯⋯二人とも探索者シーカー資格試験はどんな感じだ?」
「ん? なんだ? 藪から棒に?⋯⋯⋯⋯まあ、いつも通りだよ。いつも通り、体鍛えて魔法やスキルの勉強とか、まあ、そんな感じ」
「そうね。私も唐沢と似たような感じね」
「⋯⋯てことは、今でも探索者シーカーになりたいって思ってるんだよな?」
「「当たり前だ(よ)!」」

 綺麗にハモッたね。

「⋯⋯よかった」
「ん? よかった?」
「⋯⋯実は、今度探索者シーカー資格試験が大幅に変わるんだけど⋯⋯」
「「え?」」

 俺は二人に探索者シーカー資格試験が面接と筆記試験だけになる話を切り出した。

「え? で、でも、それじゃあ、今までの初級魔法と初級スキル獲得って条件はどうなるんだ?」
「それなんだけど⋯⋯実は最近あるレア物から『魔力洗浄マナクリーン』というスキル書を獲得した探索者シーカーがいてな? で、その『魔力洗浄マナクリーン』というスキルの効果ってのが体内魔力の澱みを解消するっていう効果なんだが、これをすると⋯⋯⋯⋯魔法やスキルを100%・・・・獲得できるようになるんだ」
「「⋯⋯へ? 100%?」」
「ああ。だから、これまで自力で魔法とスキルを獲得できなかった人も、誰でも魔法とスキルが獲得できるようになる。そのため、今後は探索者シーカー資格試験は面接と知識の筆記試験⋯⋯⋯⋯特に面接が重視されるようになるらしい。何でも探索者シーカーの質の向上を目指すとか何とか⋯⋯」
「い、いや、ちょっと待て⋯⋯」
「ん? どうした唐沢?」
「ソ、ソラ君、ちょっと⋯⋯いい?」
「ん? どうした胡桃沢?」


「「誰でも魔法とスキルが獲得できるぅぅぅぅぅ~~~~~っ!!!!!!!」」


 綺麗にハモッたね。


********************


「す、すごい!? じゃ、じゃあ⋯⋯その面接と筆記試験に合格すれば俺でも探索者シーカーに⋯⋯」
「あ、ちなみに筆記試験を合格して1年以内なら筆記試験は免除らしい。だからすでに合格している唐沢と胡桃沢は筆記試験免除だと思うぞ?」
「「おお!」」
「あとは面接か~⋯⋯大丈夫かな~⋯⋯」
「何言ってんの、唐沢!」
「胡桃沢⋯⋯?」
「いいじゃない、面接だけなら! 魔法とスキルを自力で獲得することに比べれば!」
「お、おお! そうだなっ!!」

 唐沢と胡桃沢⋯⋯二人とも同じ目標に向かって頑張ってきたからか、最初よりもかなり仲良くなっているようだ。そんな二人にここでさらに今回の『主旨』となる話を投下した。

「あ、ちなみに、今言ったレア物倒してスキル『魔力洗浄マナクリーン』をゲットした探索者シーカーって⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯俺だから」
「「え? えええええええええええ~~~~~~っ!!!!!!」」

 綺麗にハモッたね。

「マ、マママ、マジぃぃぃぃぃぃ!?」
「大マジ。しかも二人に『魔力洗浄マナクリーン』をかけてすぐに初級魔法と初級スキルである『ファイヤバレット』と『身体強化』の魔法書・スキル書も借りてある」

 と言って、俺は二人分の魔法書とスキル書を見せた。

「え? そ、それって、つまり⋯⋯」
「ああ。放課後にでも二人に直接俺が『魔力洗浄マナクリーン』をかけたら、魔法書とスキル書を渡すよ。あ、ちなみに面接のほうも免除になったから魔法とスキルを獲得してギルドに行けばすぐに探索者シーカーの身分証を発行してくれるぞ」
「「え? 面接免除?⋯⋯何で?」」
「ああ⋯⋯実は『魔力洗浄マナクリーン』をゲットした後、ギルドに報告するよう言われてたから行ったらギルドマスターに会うことができてさ⋯⋯」
「ええっ! ギ、ギルドマスターっ!? そ、そそ、それって⋯⋯⋯⋯⋯⋯倶利伽羅炎呪に会ったってことか?!」
「ああ、会った。で、その時に二人の話もしてな⋯⋯」
「「ええっ?!」」

 そう。実はあの日、部屋から退出する直前、ギルドマスターである倶利伽羅炎呪に二人の話をして、その二人に個人的に魔力洗浄マナクリーンをしていいか確認をした。すると、

——————————————————

「ん? 別にいいよ? ていうか、二人分の初級の魔法書とスキル書も持っていきなよ?」
「ええっ! い、いいんですか?!」
「ああ、問題ないよ。だってソラ君が一緒に組もうと思っている人物なんでしょ? だったら、その二人の人柄は問題ないと僕が判断するよ。⋯⋯そもそも今日のソラ君への『勧誘』の話もソラ君の人柄を見て判断したわけだし。そんなソラ君が一緒に組みたいっていう奴なら問題ないさ。⋯⋯まー下心・・がないってわけじゃないけどね?(ニッ)」
「あ、ありがとうございます!」

——————————————————

 といった感じで、初級魔法書とスキル書を二人分もらえたのだ。

「ソ、ソラ君⋯⋯それってつまり、私たちすぐにでも探索者シーカーになれるってこと?」
「ああ、そういうことだ。今日の放課後にでもやろうかと思ってるよ」
「マ、マジ? 夢じゃ⋯⋯ないよな?」
「現実だ」
「す、すげえ⋯⋯! お、俺が⋯⋯探索者シーカーに⋯⋯」
「わ、私も⋯⋯探索者シーカーに⋯⋯なれる⋯⋯のよね?」
「ああ、なれる」
「はは⋯⋯やった⋯⋯やったぁぁぁぁぁ!!!!!」
「グス⋯⋯こんな早くに⋯⋯本当に探索者シーカーになれるなんて⋯⋯」

 唐沢と胡桃沢は各々で喜びを実感しているようだ。⋯⋯よかった。



——放課後

 俺は二人に『魔力洗浄マナクリーン』をかけた後、初級の魔法書とスキル書を渡す。そして、

「おおおおお! やった、やったぁぁ!! ステータスに魔法とスキルが出てるぅぅ~~~っ!!!!」
「わ、わたしも! ステータスにちゃんと『ファイヤバレット』『身体強化』って⋯⋯⋯⋯やったわっ!!!!」

 その後、二人に急かされながらギルド本部へ行き、

「はい、これが二人の探索者シーカー身分証よ。無くさないでね」
「「は、はい!」」
「ウフフ⋯⋯。二人とも探索者シーカー合格おめでとうっ!!」
「「あ、ありがとうございますっ!!」」

 こうして、二人の高校生探索者シーカーが誕生した。


——————————————————

名前:唐沢利樹

レベル:1

魔法:<初級>ファイヤバレット
スキル:<初級>身体強化

——————————————————


——————————————————

名前:胡桃沢星蘭

レベル:1

魔法:<初級>ファイヤバレット
スキル:<初級>身体強化

——————————————————
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します

カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。 そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。 それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。 これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。 更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。 ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。 しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い…… これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...