51 / 52
【第二章 ハズレモノ旺盛編】
052「ハクロに会いに行ってみた」
しおりを挟む「他にも色々あるけど、でも、それは、今となっては過去の話だけどね」
「ジョルジオ⋯⋯様?」
「⋯⋯かつて偉大な功績を上げ、誰からも尊敬されていた偉大な父は、伯爵家に降格となった今では⋯⋯⋯⋯ただの飲んだくれになった」
「えっ!? の、飲んだくれ⋯⋯!」
「⋯⋯父は、結局今でも『公爵家』というかつての地位が恋しいのさ。だから、今の降爵した現実を受け止めきれないから、こうやって⋯⋯⋯⋯落ちぶれているのさ」
「ジョルジオ様⋯⋯」
ジョルジオからは、すでにさっきまでの笑みは消えていた。⋯⋯聞くと、マッケラン家は処刑は免れたものの『財産九割没収』となった後、父親はろくに働きもせず、わずかに残った財産で家で酒びたりな毎日を送っているらしい。
当然『一家の大黒柱』が仕事をしないので家からはどんどんお金が減っているとのことだった。
「そ、そんな⋯⋯」
ショックだった。最初の部分ではジョルジオの話を聞いて「すごい親父さんだな!」と感動していたのに⋯⋯。でも、それはきっと⋯⋯⋯⋯ジョルジオも同じ気持ちじゃないだろうか。
「は、母親は⋯⋯どうしているの?」
「母は愛想を尽かして家から出ていったよ⋯⋯。今、家にいるのは私と飲んだくれの父と公爵家の頃からずっと我が家で執事をしている『バスティアン』の三人だけだ」
「そ、そんなっ!?」
ヘビー過ぎる⋯⋯だろ⋯⋯。
ジョルジオはまだ16歳なんだぞ?
そんなヘビーな話を軽々しく聞いてしまった俺は、あまりに軽率だった自分の行動に深く反省した。すると、
「ジョ、ジョルジオ様っ!!」
「!⋯⋯⋯⋯ウィル?」
すると、突然ウィルが珍しく大きな声をあげて『ジョルジオ』の名を呼んだことに俺もジョルジオもビックリした。しかし、
「⋯⋯ウィルっ!!」
「(ビクッ!)⋯⋯ご、ごめん⋯⋯なさい⋯⋯」
今度は、そのウィルの行動を見たフェリオがなぜかものすごい剣幕でウィルを叱った。
え? 今、ウィル⋯⋯そこまで怒られるようなことした?
ていうか、フェリオがそこまで怒るなんてビックリなんだけど。
何だろう⋯⋯すごい⋯⋯違和感が⋯⋯。
「すみません、ジョルジオ様、エイジ」
フェリオがウィルの突然の大声にリーダーとして俺とジョルジオに謝る。
「いいよ、フェリオ。別にウィルが何かしたわけじゃないし⋯⋯ね、エイジ?」
「え? あ、うん。そうです⋯⋯ね」
俺はとりあえず、ジョルジオに合わせて返事をする。
何だろう⋯⋯。ジョルジオは気づいていないみたいだが明らかにウィルとフェリオの様子はおかしかった。
しかし、何となくだが⋯⋯⋯⋯この場で真相究明するのはよろしくないと感じた俺は、二人に今のことを問い詰めることはしなかった。
その後、みんなでランチをした後、午後の授業を受け、それから俺は図書館へと向かった。
********************
——放課後/『図書館』
「えーと、ハクロはどこかな⋯⋯と」
授業を終えた俺は、今日あった『四大公爵』や『模擬戦』のことも気になってはいたが、同時に『ハズレモノに関すること』や『世界の歴史』『エルクレーン王国の歴史』など、この世界の情報も知りたかったのでハクロに会いに来た。
ハクロは昨日からずっと図書館にこもって調べ物をしていたのだが、結果だいぶこの世界のことに詳しくなったようだった。そこで、ジョルジオ・マッケランの件も含めてハクロから直接いろいろ教えてもらおうと思った次第である。
「⋯⋯!」
館内に入り、しばらく歩くと窓際のテーブルで一人静かに佇む少女を見つけた。
それは髪を細指でスッとかきあげると、物憂げで儚げな表情を浮かべながら重厚な読み物をしなやかな指先でめくる。そんな少女の姿に俺は一瞬、我を忘れて⋯⋯見惚れた。
「おー、エイジ! こっちじゃ、こっち」
「お前かよっ!?」
そんな『我を忘れるほど見惚れた少女』は⋯⋯⋯⋯ただのハクロだった。
さっきまでの『美しき情景』がガラガラガラと音を立てて崩れていく。
「何だろう⋯⋯⋯⋯すっごい騙された気分っ!!!!」
「いや、どゆことっ!?」
********************
「まったく⋯⋯そんな物憂げで儚げな表情で本なんか読んでんじゃねーよ」
「辛辣っ!? ていうか、お前、だいぶ失礼なこと言っているの⋯⋯自覚ある?」
そんな感じで、俺はハクロに一方的な文句を入れた。
そしたら、ハクロから全力のアイアンクローをお見舞いされた。
「さて、冗談はさておき⋯⋯」
「⋯⋯おい、エイジ。お前、もう少し白龍であるワシに対して『敬意』を持てよ」
「進捗はどうよ?」
「うむ。さすがは王国の学生図書館といったところじゃな。かなりの蔵書量じゃ。じゃが⋯⋯目的の歴史についてはどうも腑に落ちんものばかりじゃ」
「腑に落ちない?」
「この図書館にはワシがあのダンジョンでお主⋯⋯『ハズレモノ』を待つことになった1,200年前の歴史とは全く違った歴史が書かれた書物しかない」
「え? 歴史が?」
「当然、ここにある歴史書にはお前の『ハズレモノ』という称号の記述は存在しない。つまり⋯⋯」
「それって、『ハズレモノ』という称号は存在しないというのが歴史の常識になっているってこと?」
「うむ。まあ、他の図書館の歴史書はどうなっているのかわからぬが、もしどの歴史書も同じ状況であれば、何者かが大規模に歴史を改竄したことになる。また、それは同時に⋯⋯それだけのことができる大きな組織か何かが関わっているということを意味する」
「っ!?」
「まったく⋯⋯何がどうなっておるのじゃ」
そう呟くハクロの顔が真っ青になっていた。それは、出会って今まで見せたことのない初めてのハクロの焦りを感じさせる表情だった。
10
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる