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【第二章 ハズレモノ旺盛編】
033「クズはどこまで行ってもクズ」
しおりを挟む——次の日
俺は城からエルクレーン王国総合学園の中庭に向かっていた。
ちなみに、ハクロは今日、城でお留守番だったのだが「せっかくだから、お外ブラブラしてくる~」と言って城を出ていった。⋯⋯ちなみに、ハクロは『姿を消す魔法』を使えるので誰かに見つかるということはない。
さて、そもそもなぜ『救世主を辞退した俺』が学園の中庭にやって来たのは柊木たちに呼ばれたからである。⋯⋯というのも、今朝早くに小山田が俺の部屋にやってきて「あの件で瑛二に謝りたいから、朝、学園の中庭に来て欲しい」と頼まれたからだ。
救世主たちはダンジョンに行く前、必ず一度この中庭に集合し、その日のダンジョンでの活動目的を先生たちから指示をもらって出発する⋯⋯と吾妻と古河が言っていた。なので、恐らくダンジョンへ向かう前に俺との用事を済ませるつもりなのだろう。
もちろん、柊木たちが俺に『謝りたい』なんてこれっぽっちも思っていないことはわかっていたが、俺はあえて「え? 柊木君が謝りたい? わかった、行くよっ!」と、さも謝ってもらえると思わなかったから嬉しいという見事な演出を加味して返事をした。
そんな俺の反応を見ると、小山田は嬉しそうな顔をして、
「お、おう! じゃあ、そういうわけだから、後でな!」
と弾んだ声で返事をすると、軽やかステップで帰っていた。
それを見た俺が「ちょろインかよ!」と心の中でツッコんだのは言うまでもない。そんな『ちょろイン小山田』の態度を見て確信した。
柊木たちは「俺が仕返しを恐れてシャルロットたちに報告しなかったんだな」⋯⋯と。
だとすると、今回俺を呼び出した『本当の理由』はさらなる『脅し』とか『恫喝』とか⋯⋯そんなところか。
あいつら、恐らく「ビビっている俺を、さらにビビらせてチクらせないようにしてやる」とでも、思っているんだろうな。
いや~、実に楽しみだ。⋯⋯これで、あいつらが『どれほどのクズ』かはっきりするな。
ニチャァ。
********************
——エルクレーン王国総合学園/中庭
「よぉ、瑛二」
予定の時間より少し遅れて、柊木、小山田、吉村がやってきた。
ちなみに、俺はいつもの集合時間よりも一時間早くここに呼ばれた。おそらく、柊木たちは他のクラスメートや先生たちに見られたくなかったのだろう。
「⋯⋯柊木」
柊木もいつの間にか『日下部』から『瑛二』へと『名前呼び』していた。⋯⋯もちろん、全くもって嬉しくない。
「あ? 柊木だぁ? てめぇ、何、調子こいてんだ、コラっ!!」
すると、小山田が横から茶々を入れてくる。面倒くさいので俺は無視をする。
「て、てめぇ!? 何、無視してんだ、コラっ!」
小山田が無視した俺に向かって、手を出そうとしてきた。
ガシっ!
すると、柊木が俺を殴ろうとした小山田の腕を掴む。
「やめろ、小山田!⋯⋯少し黙っててくれ」
「た、拓海君っ!?⋯⋯⋯⋯チッ!」
俺は、小山田に対して、1ミリも脅威を感じなかったので、手を出そうが出すまいがどっちでも良かったのだが⋯⋯。それにしても、
「ふ~ん、小山田のその態度を見ると、やっぱ俺に『謝罪する』つもりで呼び出したわけじゃないようだな」
「⋯⋯」
柊木が俺のセリフを聞いて、なぜか黙る。
「?⋯⋯拓海君?」
小山田もそんな柊木のいつもと違う態度に思わず声をかけた。
「瑛二、お前、ダンジョンで何があった?」
「何?」
柊木の表情には、明らかに『焦り』のようなものが見て取れた。
「ステータスを見せろ、瑛二っ!」
おそらく、柊木は『俺の何に不安がっているのかわからない』という状態なのだろう。あいつの身になれば、そりゃ~⋯⋯俺のステータスを見たくなるよな。
「ああ、いいぜ。⋯⋯ステータス!」
ということで、俺は素直にステータスを表示した。
——————————————————
【ステータス】
名前:エイジ・クサカベ(異世界人)
称号:ハズレモノ
レベル:2
HP:28
MP:19
身体能力:21
身体硬度:11
魔法:なし
固有魔法:なし
固有スキル:なし
体術:なし
——————————————————
⋯⋯もちろん『偽装したステータス』だけどな。
「な、なんだよ、相変わらずのクズステータスじゃねーか! さっきまでの生意気な態度でてっきり少しは強くなったのかと思ったが一週間前と全然変わってねーじゃねーか! こんなんで、よく俺たちにタメ口聞いたな、瑛二っ! てめー殺すぞっ!!」
「何っ?! い、一週間前と変わっていない⋯⋯だとっ?!」
「⋯⋯どういう⋯⋯ことだ?」
小山田は、俺の生意気な態度の割にほとんど成長していない低レベルなステータスを見て、一瞬ホッとした後、すぐに威勢よく恫喝し出した。
しかし、小山田とは逆に柊木と吉村の二人は意外そうな表情とリアクションを見せた。それはまるで、予想が外れたように⋯⋯。
ということは、柊木と吉村は俺のこのステータスは『おかしい』と思っているということになる。⋯⋯なぜだ?
「お、おかしい⋯⋯。確かにステータスは一週間前と変わっていないが、今のお前のその口調や態度は、ただイキがっているだけとは思えないっ! もっと、こう⋯⋯⋯⋯確固たる力を持つ余裕のソレに感じる。おい、瑛二! どういうことだ、説明しろ!」
さっきまで冷静を装っていた柊木だったが、痺れを切らしたのか『ネタバラシしろ!』と半ば強引な言い草で要求してきた。⋯⋯にしても、柊木の言葉を聞く限り、どうやら俺に対して『力のような何か』を感じ取っていたようだ。
さて、この場合、普通なら「そんなの教えるわけないだろ!」などと言いたいところだが、俺は柊木のこういう反応を待っていたので、それに便乗する。
「ふーん、それってつまり、柊木は俺から『何か特別な力』を感じ取ったわけね? くっくっく⋯⋯⋯⋯なら話が早い」
「何っ?!」
俺はクツクツと三人を見ながら嘲笑する。
「⋯⋯ビンゴだよ、柊木。お前の言うとおり俺は『特別な力』を手に入れた。だから、ダンジョンから生還できた。このステータスに惑わされないなんて⋯⋯さすがだよ」
「と、特別な力? 惑わされない? そ、それって、どういう⋯⋯」
柊木は俺の言葉に明らかに動揺していた。⋯⋯そりゃ、そうだろう。俺が「特別な力を手に入れてダンジョンを脱出した」とか「このステータスに惑わされないとは⋯⋯」などと『気になるワード』を散りばめたからな。
相手が『どのくらい強いのか』がわからないってのは⋯⋯一番の恐怖だよね?
「おい、瑛二っ!」
次に、さっきまでずっとお黙っていた吉村が声をかけてきた。
「おお、吉村君じゃないっすか! 俺をさんざん騙した挙句、最後は俺を崖に放り投げたサイコパス野郎じゃないっすか。サイコパス先輩、チーッス!」
俺は声をかけてきた吉村に対し、これでもかというほどに煽る。そして、
ズズズズズズズ⋯⋯っ!
「ぐっ?! な、なん⋯⋯だ!? こ、この体の⋯⋯震えは⋯⋯っ!!!!」
同時に、吉村に軽い『威圧』をかけた。すると、俺の『威圧』をまともに受けた吉村の顔が一瞬で真っ青になり、全身から汗を吹き出しながらガタガタと震え出した。
「へ~、『威圧』って出るかな~と思ってやってみたけどちゃんと出るんだな。⋯⋯いいね、これ!」
「うぐぐ⋯⋯ぐぎぎぎぎぎ⋯⋯」
ガクン⋯⋯。
俺の『威圧』を受け続けて、ついに立てなくなったのか吉村は苦しみながら膝をついた。
俺はそんな吉村を上から見下ろす。
「だ、だず⋯⋯け⋯⋯で。ぐる⋯⋯じぃいいぃぃ⋯⋯ぃぃぃ~~~⋯⋯」
吉村が目に涙を浮かべながら俺に懇願する。
「え、瑛二! や、やめろよ、この野郎っ!」
「お、おい、瑛二っ!? やめろ、コラっ!」
すると、小山田と柊木が俺に『威圧』をやめるよう⋯⋯⋯⋯恫喝してきた。
「うん? 何言ってんの? 助けないよ? バカなの、お前ら?」
「「「っ!!!!!!」」」
二人は俺がビビって言うことを聞くと思っていたのか、俺が否定するとひどく驚いたリアクションを見せた。⋯⋯いや、ビビるわけないじゃん! 今の俺からしたらお前らなんて『雑魚』過ぎんだから(笑)。
「なっ?! ざ、ざざざ、雑魚だとぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~!!!!!!」
おっと。⋯⋯『心の声』が漏れてたようだ(テヘペロ)。
すると、柊木が俺の言葉にブチギレたようだ。
「死ねぇぇぇぇぇ~~~!! 瑛二ぃぃぃ~~~~!!!!!!!」
そんな雄叫びを上げながら、柊木が急加速して俺に拳を叩きつけようとしてきた。⋯⋯しかし、
ガシっ!
「ん? 何、柊木君?」
「っ!!!!!! そ、そん⋯⋯な⋯⋯バカ⋯⋯な⋯⋯っ?!」
俺は殴ってきた柊木の右拳をしっかりと掴み、そして、
メキメキメキメキメキメキメキメキメキメキメキメキ⋯⋯!!!!!
「ぐぅあぁぁあぁぁぁあぁぁぁあああぁあぁ~~~~っ!!!!!!!」
俺はその柊木の拳をりんごを握りつぶすようにゆっくりと締め上げる。
え? 手加減?
そりゃもちろん、ちゃんと手加減し⋯⋯⋯⋯あ、あれ? あれれ?
⋯⋯やっべw
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