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【第一章 ハズレモノ胎動編】
018「ハズレモノ/理から外れた者」
しおりを挟む——???階層『常世の聖域』(現在)/白い龍と瑛二
<ワシの名は『ハクロ』。『ハズレモノ』をずっと待っておった>
俺は今、三十メートル以上はあるであろう『巨大な白い龍』と下から見上げながら話をしている。
「俺を? どうして?」
「お前が『ハズレモノ』だからじゃ」
「ハ、ハズレ? あ、ああ、称号のことか?⋯⋯ていうか、その前に、俺どうして生きているんですか? たしか3階層の崖から落とされたはず⋯⋯そんな俺がどうやって助かったんだ? それに落とされる前からボロボロだった体が全快している。これは、あなたがやったのですか? あと⋯⋯」
しばらくして記憶が戻った俺は、今の状況がどういう状況なのかを知りたくてハクロに矢継ぎ早に質問をした。すると、
<しばし、待たれよ>
「え⋯⋯?」
すると突然、ハクロの頭部全体が白く発光したかと思うと、その光が俺の体全体に照射された。
カァッ!
「え? あ、あれ? これ⋯⋯は⋯⋯? この⋯⋯知識⋯⋯は⋯⋯?」
<今、お前の質問に対する答えと、それ以外にお前が必要とするであろう知識を与えた。これで、お前の今の状況が理解できたであろう?>
白い龍⋯⋯ハクロの言う通り、俺がさっき質問した答えと、他にもこの状況による疑問や必要となる知識が流れ込んできた。
——————————————————
【ハクロから流れてきた知識】
・ハクロは、このダンジョン最下層100階層にある『常世の聖域』で、千二百年に渡って『ハズレモノ』を待つという使命を受け待ち続けていた
・今から三日前——『ハズレモノ』であるお前が、3階層からこの100階層まで続いている縦穴、通称『口』から光に包まれて舞い降りてきた
・『ハズレモノ』を回収したハクロは『常世の聖域』へ連れていき、治癒魔法で傷を全快させた
・『ハズレモノ』を包んでいた光についてはわからない
——————————————————
「そうか。あんたが俺を助けてくれたんだな⋯⋯ありがとう」
<当然のことをしたまでじゃ>
「とりあえず、状況はわかったよ。でも、そのぉ~なんだ⋯⋯光に包まれて降ってきたって言ってたけど、それは何なの?」
<知らぬ>
「え? 知らない?」
<知らぬ>
なんと⋯⋯この龍でも知らないものがあるのか。
てっきり、すべてこの龍の⋯⋯ハクロの仕業だと思っていたんだが違うのか。すると、その『光』というのは一体何だったのか? なぜ俺を助けたのか?
いや、それは今はいいか。それよりももっと『根本の問題』を聞く必要がある。
「ハクロ! この『ハズレモノ』ってのは何なんだ?」
<⋯⋯>
ハクロは、一度目を閉じてから再び口を開いた。
<『ハズレモノ』とは——『理から外れた者』。唯一、この世界の縛りから外れた者じゃ>
「こ、理から⋯⋯縛りから⋯⋯外れた者?」
どういうことだ?
理? 常識ってこと? 常識から外れた者? わからん。
<この世界の縛りから外れた者。これをすべて理解してようやく『ハズレモノ』は覚醒へと至る>
「すべてを理解? 覚醒?」
<ワシは『きっかけ』を与え導く者。そして『ハズレモノ』と共に歩む者>
「え?⋯⋯『きっかけ』を与え導く? 共に歩む?」
<まずは、お前に『きっかけ』を与える⋯⋯>
「っ!?」
そう言うと、ハクロの体全体が突然光り出す。
その光はさっきの光よりももっとこう、何というか⋯⋯⋯⋯とても神聖な感じがした。そして、目が開けきれないくらいに輝きを増したその光は、俺の体へと一気に流れ込んできた。
「あ、ああああああああ⋯⋯っ!!!!!!」
俺は、思わず声を上げた。
それは感動のような、充実感のような、達成感のような、気概のような、意欲のような、活力のような、覇気のような⋯⋯とにかく、そんなのが、ごちゃ混ぜに⋯⋯だが統一感を伴うという、何とも表現しようのないエネルギーのようなものが俺に流れ込み、そして一気に広がっていった。
ハクロから流れてきたこのエネルギーらしきものをすべて受け取った俺は、ゆっくりと目を開けた。すると、
「⋯⋯終わったようじゃの」
目の前には白のローブというか、羽衣っぽいものを着た金髪の美少女が立っていた。
********************
「あ、あの⋯⋯君は?」
「ワシはハクロじゃ」
まあ、そりゃそうだよな。
こんなところに他に人がいるなんてあり得ないもの。でも、
「な、なんで、その、龍が人間の⋯⋯金髪ロリ美少女の姿になってんの?」
「お前に『きっかけ』を与えたからじゃ」
「きっかけ? さっきも言ってたけど、それって何なの?」
「『ハズレモノ』の力を解放するきっかけじゃ」
「力の解放? お、俺は『ハズレモノ』の力が解放されて、一体どうなったんだ?」
「ステータスを見てみろ」
「あ! そ、そっか⋯⋯。ス、ステータス!」
——————————————————
【ステータス】
名前:エイジ・クサカベ(異世界人)
年齢:16歳
称号:ハズレモノ
レベル:2/20
HP:28/280
MP:19/190
身体能力:21/210
身体硬度:11/110
魔法:なし/なし
固有魔法:なし/なし
固有スキル:なし/理外の加護(Lv1)/ステータス偽装(常時OFF)
体術:なし/なし
——————————————————
「レ、レベル⋯⋯2/20? なんだ、これ?」
「これは、ハズレモノである『理から外れた者』の固有スキル『理外の加護(LV1)』の恩恵によるものじゃ。『/』の左側の数値が『ステータス偽装』の数値で、右側が本来の数値となる。じゃから、瑛二の今のレベルは『20』ということになる」
「レベル⋯⋯20っ!?」
マ、マジかよ。俺はこれまで一週間自主訓練していただけなのに、それでレベル20になっていたなんて⋯⋯。
「こ、この『ステータス偽装』ってのは?」
「ステータスを偽装する固有スキルじゃ。さっきも言った通り、『/』の左側が偽装した数値で右側が本来の数値じゃが、今は『常時OFF』とスキルが発動しておらんから相手も今表示されているステータスと同じ内容で見えている状態じゃ。そこでステータス偽装を『常時ON』にすれば、相手からは『/』の左側の偽装した内容しか見えなくなる」
「ふ~ん。つまり、自分の実力を隠せるということか⋯⋯⋯⋯なかなか『厨二病』をくすぐるスキルだな」
「厨二病?」
「あ! もしかしたら魔法とかスキルのほうも偽装できるっぽい?」
「うむ、できるぞ。というより、さっき瑛二に『きっかけ』を与えてハズレモノの力を解放したから、今話している『ステータス偽装』の内容もちゃんと『知識』として入っているはずじゃぞ」
というので、脳内で知識として調べてみた。
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