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エンディング
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もう、大騒ぎになった。
炎が国境線を越え、隣国の城まで焼き尽くしたのだ。
でも“死者”は出なくて、ヴェアドーリがこつぜんと姿を消したらしい。やがて暴君のいなくなった隣国は絶対王政を廃止し、民主政になったと周辺諸国に通知された。恐怖政治に支配されていた国民が狂喜乱舞しているという風の便りも耳にする。平和条約も色んな所と結びまくっていた。暴君は過去の人なので、今まで好き勝手された報復はしないでね、ということなのだろう。
勝手に突っ込んできた、バカみたいにデカい炎のことは、この際どうでもいいらしい。
「さすがにあれだけの魔力を一度に使うのは、死ぬかと思いましたね」
と、アシュレイは当時のことを涼しげな顔で語ってみせる。あれは、神が起こした自然現象ということになっている。
◇◇◇
森の中の小さな家。私はそこで暮らしていた。いつものように食料を持ってきたアシュレイが、コレットお手製のお菓子をこちらに差し出しながら、明後日の方向を見てもじもじする。
「あの……。どうですか? 公爵令嬢としての生活は、あなたには堅苦しかったりしませんか? いっそのこと、別の人間として生きてみませんか? 全部本当のことを話したら、あなたは第二王子に嫁ぐことになるかもしれないし」
「え?」
「いや。え、じゃなくてですね。……結局、あなたが“処刑”されて良かったと思ってしまう俺は、罪に問われるべきかもしれませんね」
ふぅ~と息を吐き出して、彼は、急に真面目な顔になると、私の前にひざまずいて言った。
「セレナ。もう、あなたに守るべき立場はありません。もしも望んでくれるのなら、俺の妻になっていただけませんか?」
「……!?」
コレットのお菓子だ、わ~い! くらいに思っていたら、突然求婚をされて、素っ頓狂な声をあげてしまう。
「わたっ、私!? えっ、コレットじゃなくて!?」
「俺がいつ彼女を好きだと言ったんですか。処刑場で勝手にお幸せを願われた時は、危うく怒りそうでした」
「でっ、でも……! この、私の、魅了の力が悪さしてるんじゃなくて? アシュレイの本心なの……!?」
「あなたの魅了、言うほど強くないですよ。あんな悪役ごっこで人が離れていくんだから。あのね、そうじゃなくて……」
彼は、じっと私を見つめて、やわらかく微笑んだ。
「俺は、他の誰かのために泣けるほど、優しいあなたが好きなんです」
彼の手には、いつの間にか指輪が握られていた。
「受け取ってくれますか?」
もう、こんなの、嬉しくて天国にのぼるような気持ちで。
「っ……はい……!」
私は、足元を宝石だらけにしながら、とびきりの笑顔でそう答えた。
◇◇◇
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