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番外小話 3
帰還~文句のひとつも言ってやります。②
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王都にあるレヴィナス家に置いてきた、セージ色のドレス……を持って来てくださったとばかり思っていました。ですがアンジェさんによって私が着せられたのは、全く違う色の、違うデザインです。
淡いアプリコットをベースにした生地は、とても上質なのでしょう、とても艶やかな肌触り。同じ生地で作られたバラを象ったコサージュが広めに開いた胸元と、背中の中央を飾っています。切り返しに入るドレープには、アルベリックさんの瞳を思い出させるような碧が入っています。これはもしかして……
「まさか、これってわざわざ作ったのですか?」
「さっき新しいドレスって言ったわよ、聞いてなかったのね。あら、カズハの肌にはやっぱりこの色も映えるわね、私の見立て通りだったわ」
「で、でもアンジェさん、この前に作ったドレスだって、まだ一度しか袖を通していませんよ、どうして……」
私の疑問など考えてもみなかったと言わんばかりに、アンジェさんがキョトンとしています。
しかし少しの間をおいて、笑い出すアンジェさん。
「それは昼間用ね、これはイブニングドレス。面倒だけど、時間によって衣装には決まりがあるのよ。もとの世界では違ったかしら?」
「イブニング……いえ確かに違いありません。だけど、これ」
見下ろすと貧相とはいえ、懸命に寄せられた胸の谷間。己の未熟さに、思わず目を背けながらアンジェさんに訴えます。
「こんなものを人目に晒してはいけないと思います……いやいや、ましてやアルベリックさんに見られるわけには」
「あら、アルの目を気にしちゃうなんて、可愛いわねカズハ」
「だって寄せて上げたのにこの貧相さでは、ガッカリするに決まって……」
そこまで言って、ハッとします。
嫌~な予感がしてアンジェさんを見上げれば、目が、目が据わっているのですよ。怖いです!
「ガッカリするはずなんてないわよ、でも……」
「でも……?」
目が据わっているにもかかわらず、口許は美しい弧を描いていますよ、お義姉さん!
そして勢いよくガシリと肩を掴まれました。
「……そうね、万が一でもそんな失礼な反応をする者がいたら、私がきっちり絞り上げてあげる。たとえそれがアルであろうとも!」
「いえ、あの……あはははは」
アンジェさんの迫力に圧され、フォローの言葉が見つかりませんでした。
ごめんなさい、アンジェさんに絞られる誰かさん……というか、アルベリックさん?
これからお会いする国王陛下は、さすがに除外されますよね。
それから時間がないということで、大急ぎで支度を終えた私は、アンジェさんに引きずられるようにして長い廊下を歩きます。彼女の手に掴まれている私の腕、そして女性ながらに颯爽と歩くその後ろ姿に、かつて見たアルベリックさんの姿が重なります。
さすが姉弟。世話焼きなところなど、本当にそっくりなのです。
やがて長い通路の終いには、大きな扉が現れました。
両脇に立つ衛兵が、重そうな扉を開けると、そこには……
「凄い……まるでお伽噺の世界みたい」
まるで映画などで見る、王公貴族の舞踏会ホール……ええ
と、ここってお城でした。忘れていましたが、こちらがリアル。
高い天井には装飾の施された梁がアーチ型に連なり、巨大なシャンデリアを吊るしています。壁はジルベルドが得意とする植物の紋様を織り込んだタペストリーが飾られ、その合間には大きな鏡。バルコニーに張り出すようにして作られた窓は、見たこともないくらい大きくて、精巧です。
その広間には正装をした方々が、歓談を楽しんでいるようです。奥の一角には、小さな楽団がいて落ち着いた音楽を奏でていました。
「そう畏まった会ではないわ。たまたま今日は、地方から戻った官吏たちを労う催しが開かれていたの。特に秋は盛大で……ああ、いたわ」
「あ、アルベリックさん……と、ヴィクトールさん!」
「やあ、カズハ。今回は災難だったね、話は一通り聞いているよ」
レヴィナス家の長子、ヴィクトールさんです。いつも通りビシッとスーツ姿が凛々しいお兄さん。にこやかに微笑みながら、私たちを迎えてくれました。
「お久しぶりです、ヴィクトールさん。このような形になりましたけれど、またみなさんに会えて嬉しいです」
「僕もだよ、ルイーズと子供たちに会わせるのは、まだまだ先になるかと思っていたからね」
「はい、楽しみにしてます!」
そしてアルベリックさんはというと、この後陛下に謁見するために、警備隊隊長服に着替えていました。すっと自然に手を出してくれて、私を引き寄せてくれました。
「似合っている」
「……ひえ……そ、そそそういうのは、後でお願いします」
恐らく、真っ赤になっている私を、困ったように微笑んで見てると思うのですよ、アルベリックさんってば。
ええ、うつむいていますからね、予想の範囲を越えませんけれど。
そんな私の後ろでクスクスと笑う、アンジェさんの声がします。
「今日は、領事つきの補佐官が召喚されて、その労をねぎらう催しなんだよ。地方勤務ゆえに、こういった機会に情報交換が大事でね。その合間をぬって陛下のお時間をいただいた。しばらくはここで待機してくれたまえ」
「……領事つき補佐官?」
どこかで聞いたような称号です。誰のことでしたか……
そんな私の疑問に答えてくれたのは、アルベリックさんでした。
「サミュエルも来ているはずだ」
「……サミュエルさん!」
「あら、サミュエル・ドゥ・ラクロ? 懐かしい名前ね」
「アンジェさんも面識があるんですか?」
思わぬところから出たサミュエルさんのフルネーム。だけどよく考えてみれば、アルベリックさんとサミュエルさんは士官学校同期って言っていましたし、なによりお義父さんの部下でしたね。アンジェさんも面識があっても不思議ではありません。
しかしそこに、なぜかヴィクトールさんが爆弾投下しました。
「ああ、今回の顛末の元凶の一人だな」
「……あら。それはそれは……口の悪いやんちゃ坊主なところは、少しも治ってないのね」
うふふ。
そう笑うアンジェさんが怖いです。
何かしそうですけど、放っておいていいんですかアルベリックさん──? と思ったのですが、アルベリックさんは渋い顔をしながら、小さなため息をついただけです。
「アンジェ、ほどほどにな」
ヴィクトールさんも、そうじゃないでしょ?
その後、挨拶回りをするからと、忙しそうにヴィクトールさんは人混みに紛れていきました。アンジェさんもまた、各地に出す商会の関係で、ご挨拶からなにから引く手あまた。時間になったら戻ってくるからと、私たちとは別れることになりました。
残された私はというと、アルベリックさんとともに、テーブルに用意された美味しそうな料理に舌鼓を打っています。
……正確には私が、ですけれども。
お皿にローストビーフを思い出させる、薄切りのお肉をのせて、早速一口。
「んん~っ、これ、やわらかいです。ソースも絶妙……あ、あれって」
果物の皿を隔た向こうに並ぶ、オードブルにも美味しそうなパイ包みのお肉が。
私がそうして食べ物のお皿をウロウロと行き来する間にも、アルベリックさんはウェイターから受け取ったグラスを片手に、後をついてきていました。
「アルベリックさんも食べないんですか、ケーキもあちらにありますよ?」
「……私はいい。カズハも、謁見前にあまり食べ過ぎるな」
「あはは、すみません。これで最後にしますね……なのであちらで待っていてくださって大丈夫ですよ?」
視線を投げかけたのは、他の男性たちが歓談や休憩をしているバルコニー。
「いや、大丈夫だ」
「……でも」
私が首をかしげていると、アルベリックさんの見下ろす視線を感じます。それは珍しく出している肩、それから肩甲骨あたりまで晒されている……背中。そりゃあ、後ろに立っていたアルベリックさんに向けているからだけど……でもそんなに見られると、ちょっと恥ずかしいですよ?
そんな照れが伝わったのか、ふいと視線を外してくれたアルベリックさん。
「今日ばかりは、アンジェの見立てを恨めしく思う」
「え?」
アルベリックさんの珍しい物言いに驚きました。それと同時に、やっぱり似合ってなかったのだろうかと、不安になってしまいます。
「じゃあ、次からはもっと違うタイプのドレスに……」
「違う、カズハにとてもよく似合っている」
慌てて訂正するアルベリックさん。その顔はどこか照れたようにも見えて……
「で、でも。じゃあどうして」
「だから困っている。誰にも……特にサミュエルには見せずに、このまま帰ってしまえればいいのにとさえ思うくらいに」
「え……ええ? 謁見を許されていながら勝手に帰ってしまったら、それこそ大目玉ですよー! それに、サミュエルさんは関係ないじゃないですか」
もうアルベリックさんてば、こんなときに冗談言うなんて! なんてツッコミ半分、照れ隠し半分のつもりで、空いてる手で彼の腕をはたけば……
その手を取られて、そっと持ち上げられたかと思えば、手袋越しに彼の唇が触れたのです。
「……そういう鈍いところが、愛おしい」
ぎぃやああぁ!
公衆の面前で、なんてことを! なんてことを口走るんですかアルベリックさん!
照れればいいのか、それとも怒っていいのか、どうしたらいいのか分からず。とりあえずお肉のお皿をこぼさぬよう必死に持ったまま、周囲と彼を見比べる私に、アルベリックさんは微笑みました。
周囲がざわついたようにも聞こえましたが、私はそれどころではありません。この後、緊張の謁見が待っているというのに、予想外の大ダメージです。
そして追い討ちをかけるように、真っ赤になって口を魚のようにパクパクさせる私を、アルベリックさんが引き寄せたのです。
ひいいと悲鳴をあげそうになったその時。素晴らしくいいタイミングで、低い声がかかりました。
「おい、こんなところでいちゃつくな」
振り返れば、そこに立っていたのは今まさに話題沸騰中のサミュエルさんでした。さすがです、空気読めないサミュエルさんがこれほど天使に見える日が来ようとは!
「わー、お久しぶりですねサミュエルさん、相変わらずそうでなによりです!」
連れ去られる形で突然ローウィンを去ってしまって以来です。再会を喜ぶのは普通、ですよね?
だけど……返事もないサミュエルさんと、黙ったままのアルベリックさん。
ええと。
なんで二人とも無言で見つめあってるんですかー!
淡いアプリコットをベースにした生地は、とても上質なのでしょう、とても艶やかな肌触り。同じ生地で作られたバラを象ったコサージュが広めに開いた胸元と、背中の中央を飾っています。切り返しに入るドレープには、アルベリックさんの瞳を思い出させるような碧が入っています。これはもしかして……
「まさか、これってわざわざ作ったのですか?」
「さっき新しいドレスって言ったわよ、聞いてなかったのね。あら、カズハの肌にはやっぱりこの色も映えるわね、私の見立て通りだったわ」
「で、でもアンジェさん、この前に作ったドレスだって、まだ一度しか袖を通していませんよ、どうして……」
私の疑問など考えてもみなかったと言わんばかりに、アンジェさんがキョトンとしています。
しかし少しの間をおいて、笑い出すアンジェさん。
「それは昼間用ね、これはイブニングドレス。面倒だけど、時間によって衣装には決まりがあるのよ。もとの世界では違ったかしら?」
「イブニング……いえ確かに違いありません。だけど、これ」
見下ろすと貧相とはいえ、懸命に寄せられた胸の谷間。己の未熟さに、思わず目を背けながらアンジェさんに訴えます。
「こんなものを人目に晒してはいけないと思います……いやいや、ましてやアルベリックさんに見られるわけには」
「あら、アルの目を気にしちゃうなんて、可愛いわねカズハ」
「だって寄せて上げたのにこの貧相さでは、ガッカリするに決まって……」
そこまで言って、ハッとします。
嫌~な予感がしてアンジェさんを見上げれば、目が、目が据わっているのですよ。怖いです!
「ガッカリするはずなんてないわよ、でも……」
「でも……?」
目が据わっているにもかかわらず、口許は美しい弧を描いていますよ、お義姉さん!
そして勢いよくガシリと肩を掴まれました。
「……そうね、万が一でもそんな失礼な反応をする者がいたら、私がきっちり絞り上げてあげる。たとえそれがアルであろうとも!」
「いえ、あの……あはははは」
アンジェさんの迫力に圧され、フォローの言葉が見つかりませんでした。
ごめんなさい、アンジェさんに絞られる誰かさん……というか、アルベリックさん?
これからお会いする国王陛下は、さすがに除外されますよね。
それから時間がないということで、大急ぎで支度を終えた私は、アンジェさんに引きずられるようにして長い廊下を歩きます。彼女の手に掴まれている私の腕、そして女性ながらに颯爽と歩くその後ろ姿に、かつて見たアルベリックさんの姿が重なります。
さすが姉弟。世話焼きなところなど、本当にそっくりなのです。
やがて長い通路の終いには、大きな扉が現れました。
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「凄い……まるでお伽噺の世界みたい」
まるで映画などで見る、王公貴族の舞踏会ホール……ええ
と、ここってお城でした。忘れていましたが、こちらがリアル。
高い天井には装飾の施された梁がアーチ型に連なり、巨大なシャンデリアを吊るしています。壁はジルベルドが得意とする植物の紋様を織り込んだタペストリーが飾られ、その合間には大きな鏡。バルコニーに張り出すようにして作られた窓は、見たこともないくらい大きくて、精巧です。
その広間には正装をした方々が、歓談を楽しんでいるようです。奥の一角には、小さな楽団がいて落ち着いた音楽を奏でていました。
「そう畏まった会ではないわ。たまたま今日は、地方から戻った官吏たちを労う催しが開かれていたの。特に秋は盛大で……ああ、いたわ」
「あ、アルベリックさん……と、ヴィクトールさん!」
「やあ、カズハ。今回は災難だったね、話は一通り聞いているよ」
レヴィナス家の長子、ヴィクトールさんです。いつも通りビシッとスーツ姿が凛々しいお兄さん。にこやかに微笑みながら、私たちを迎えてくれました。
「お久しぶりです、ヴィクトールさん。このような形になりましたけれど、またみなさんに会えて嬉しいです」
「僕もだよ、ルイーズと子供たちに会わせるのは、まだまだ先になるかと思っていたからね」
「はい、楽しみにしてます!」
そしてアルベリックさんはというと、この後陛下に謁見するために、警備隊隊長服に着替えていました。すっと自然に手を出してくれて、私を引き寄せてくれました。
「似合っている」
「……ひえ……そ、そそそういうのは、後でお願いします」
恐らく、真っ赤になっている私を、困ったように微笑んで見てると思うのですよ、アルベリックさんってば。
ええ、うつむいていますからね、予想の範囲を越えませんけれど。
そんな私の後ろでクスクスと笑う、アンジェさんの声がします。
「今日は、領事つきの補佐官が召喚されて、その労をねぎらう催しなんだよ。地方勤務ゆえに、こういった機会に情報交換が大事でね。その合間をぬって陛下のお時間をいただいた。しばらくはここで待機してくれたまえ」
「……領事つき補佐官?」
どこかで聞いたような称号です。誰のことでしたか……
そんな私の疑問に答えてくれたのは、アルベリックさんでした。
「サミュエルも来ているはずだ」
「……サミュエルさん!」
「あら、サミュエル・ドゥ・ラクロ? 懐かしい名前ね」
「アンジェさんも面識があるんですか?」
思わぬところから出たサミュエルさんのフルネーム。だけどよく考えてみれば、アルベリックさんとサミュエルさんは士官学校同期って言っていましたし、なによりお義父さんの部下でしたね。アンジェさんも面識があっても不思議ではありません。
しかしそこに、なぜかヴィクトールさんが爆弾投下しました。
「ああ、今回の顛末の元凶の一人だな」
「……あら。それはそれは……口の悪いやんちゃ坊主なところは、少しも治ってないのね」
うふふ。
そう笑うアンジェさんが怖いです。
何かしそうですけど、放っておいていいんですかアルベリックさん──? と思ったのですが、アルベリックさんは渋い顔をしながら、小さなため息をついただけです。
「アンジェ、ほどほどにな」
ヴィクトールさんも、そうじゃないでしょ?
その後、挨拶回りをするからと、忙しそうにヴィクトールさんは人混みに紛れていきました。アンジェさんもまた、各地に出す商会の関係で、ご挨拶からなにから引く手あまた。時間になったら戻ってくるからと、私たちとは別れることになりました。
残された私はというと、アルベリックさんとともに、テーブルに用意された美味しそうな料理に舌鼓を打っています。
……正確には私が、ですけれども。
お皿にローストビーフを思い出させる、薄切りのお肉をのせて、早速一口。
「んん~っ、これ、やわらかいです。ソースも絶妙……あ、あれって」
果物の皿を隔た向こうに並ぶ、オードブルにも美味しそうなパイ包みのお肉が。
私がそうして食べ物のお皿をウロウロと行き来する間にも、アルベリックさんはウェイターから受け取ったグラスを片手に、後をついてきていました。
「アルベリックさんも食べないんですか、ケーキもあちらにありますよ?」
「……私はいい。カズハも、謁見前にあまり食べ過ぎるな」
「あはは、すみません。これで最後にしますね……なのであちらで待っていてくださって大丈夫ですよ?」
視線を投げかけたのは、他の男性たちが歓談や休憩をしているバルコニー。
「いや、大丈夫だ」
「……でも」
私が首をかしげていると、アルベリックさんの見下ろす視線を感じます。それは珍しく出している肩、それから肩甲骨あたりまで晒されている……背中。そりゃあ、後ろに立っていたアルベリックさんに向けているからだけど……でもそんなに見られると、ちょっと恥ずかしいですよ?
そんな照れが伝わったのか、ふいと視線を外してくれたアルベリックさん。
「今日ばかりは、アンジェの見立てを恨めしく思う」
「え?」
アルベリックさんの珍しい物言いに驚きました。それと同時に、やっぱり似合ってなかったのだろうかと、不安になってしまいます。
「じゃあ、次からはもっと違うタイプのドレスに……」
「違う、カズハにとてもよく似合っている」
慌てて訂正するアルベリックさん。その顔はどこか照れたようにも見えて……
「で、でも。じゃあどうして」
「だから困っている。誰にも……特にサミュエルには見せずに、このまま帰ってしまえればいいのにとさえ思うくらいに」
「え……ええ? 謁見を許されていながら勝手に帰ってしまったら、それこそ大目玉ですよー! それに、サミュエルさんは関係ないじゃないですか」
もうアルベリックさんてば、こんなときに冗談言うなんて! なんてツッコミ半分、照れ隠し半分のつもりで、空いてる手で彼の腕をはたけば……
その手を取られて、そっと持ち上げられたかと思えば、手袋越しに彼の唇が触れたのです。
「……そういう鈍いところが、愛おしい」
ぎぃやああぁ!
公衆の面前で、なんてことを! なんてことを口走るんですかアルベリックさん!
照れればいいのか、それとも怒っていいのか、どうしたらいいのか分からず。とりあえずお肉のお皿をこぼさぬよう必死に持ったまま、周囲と彼を見比べる私に、アルベリックさんは微笑みました。
周囲がざわついたようにも聞こえましたが、私はそれどころではありません。この後、緊張の謁見が待っているというのに、予想外の大ダメージです。
そして追い討ちをかけるように、真っ赤になって口を魚のようにパクパクさせる私を、アルベリックさんが引き寄せたのです。
ひいいと悲鳴をあげそうになったその時。素晴らしくいいタイミングで、低い声がかかりました。
「おい、こんなところでいちゃつくな」
振り返れば、そこに立っていたのは今まさに話題沸騰中のサミュエルさんでした。さすがです、空気読めないサミュエルさんがこれほど天使に見える日が来ようとは!
「わー、お久しぶりですねサミュエルさん、相変わらずそうでなによりです!」
連れ去られる形で突然ローウィンを去ってしまって以来です。再会を喜ぶのは普通、ですよね?
だけど……返事もないサミュエルさんと、黙ったままのアルベリックさん。
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