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3ー1章 故郷
リュファス副隊長の新業務日報・抜粋2
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八月十日
市場通りで事件発生。
カーラ・ブリュネに対して未成年略取未遂として商人アンガスを拘束。無理矢理働かせるべく連れ去ろうとしたようだが、その場に居合わせたレヴィナス隊長とその夫人カズハにより阻止。おおごとになる前に警備隊も介入し事態を収拾。カーラとその母親を一時隊長宅に保護。アンガスは未遂のため、厳重注意ののち釈放。
追記
後日、市場商店街で会合を開くことで合意。アンガスなど供与を受けていた商人たちとその他の商人たちとの対立に、そろそろ終止符を打たねばならないだろう。頭が痛いが良い機会だと思われる。
ノエリア支部副隊長リュファス・ドゥ・ラクロ記
八月十二日
街の治安にかなりの人員を割く必要が出てきて悩ましい。スリなどの被害も増え始めたので、予防のために隊長の見回りを増やすことにした。少々渋い返事をいただいたが、本人からは了承済みである。あの顔で回ればかなりの効果が望めると期待するが、最近は街で気軽に声をかけられるようになったせいか、防犯予防効果が薄れつつあることは今後の課題だ。ベルクムントへの警戒が薄まってきた今、人員補充のための予算を確保することが難しくなった。頭が痛い。
カズハ・レヴィナスのローウィンへの出発が早まり、その手配に終われていたがそれも目処がついた。本当に世話がやける。
深夜にようやくではあるが、商工組合への商人たちの合意を得ることができた。まだ雛形にすぎないものの、まずは手探りでも始めることが肝心である。今後に期待したい。
追記
隊長には助言をしたが、堅物ゆえに恐らく聞く耳をもたないだろう。加護など無くしてしまえばいいものを、その手段を知っているにもかかわらず、手をこまねいている。どうしたものか。
ノエリア支部副隊長リュファス・ドゥラクロ記
八月十三日
カズハ・レヴィナス隊長夫人がブリュネ母娘とともに早朝、ローウィンへ向けて出発した。ギリギリではあったが、母娘にノエリアを捨てさせることなく見送ることができたことは、個人的にも喜ばしいことであった。
カズハには知らせず、フレデリク・ソラン隊員も乗車している。隊長が合流するまでの三日間、彼には歯止めとして身を呈して働いてもらわねばならない。全てはノエリア支部の名誉のため。
隊長は心配のあまりいつもにも増して、無表情で街の警らにあたっている。今日はおそらく滅多な犯罪は起きないだろう。私はその間に休憩を取らせてもらうことにした。
嵐の目もいないことだ、ノエリアにつかの間の平穏が訪れるに違いない。
ノエリア支部副隊長リュファス・ドゥ・ラクロ記
八月十六日
明日、隊長が休暇を取るにあたり、引き継ぎを完了させる。戻ってくる隊員も多いため、業務に差し障りはないと思いたい。明日からの激務を考え、午後は休ませてもらうことにした。
午後になり、隊長宅の手伝いをしているマリーに引き留められた。何か不都合でもあるかと思い話を聞いてみれば、隊長夫妻についての心配事だという。その後もオランド亭でセリアと肉屋のアルマにも同じ件で呼び止められた。
私になんとかできれば、とうに何とでもなっている。
ノエリアは今日も平和である。
追記
あの二人が、というよりあのカズハの変わらない様子に、どうやら二人がままごと夫婦であることが、近い者たちにすっかりお見通しのようだ。本当に頭が痛い。
市場通りで事件発生。
カーラ・ブリュネに対して未成年略取未遂として商人アンガスを拘束。無理矢理働かせるべく連れ去ろうとしたようだが、その場に居合わせたレヴィナス隊長とその夫人カズハにより阻止。おおごとになる前に警備隊も介入し事態を収拾。カーラとその母親を一時隊長宅に保護。アンガスは未遂のため、厳重注意ののち釈放。
追記
後日、市場商店街で会合を開くことで合意。アンガスなど供与を受けていた商人たちとその他の商人たちとの対立に、そろそろ終止符を打たねばならないだろう。頭が痛いが良い機会だと思われる。
ノエリア支部副隊長リュファス・ドゥ・ラクロ記
八月十二日
街の治安にかなりの人員を割く必要が出てきて悩ましい。スリなどの被害も増え始めたので、予防のために隊長の見回りを増やすことにした。少々渋い返事をいただいたが、本人からは了承済みである。あの顔で回ればかなりの効果が望めると期待するが、最近は街で気軽に声をかけられるようになったせいか、防犯予防効果が薄れつつあることは今後の課題だ。ベルクムントへの警戒が薄まってきた今、人員補充のための予算を確保することが難しくなった。頭が痛い。
カズハ・レヴィナスのローウィンへの出発が早まり、その手配に終われていたがそれも目処がついた。本当に世話がやける。
深夜にようやくではあるが、商工組合への商人たちの合意を得ることができた。まだ雛形にすぎないものの、まずは手探りでも始めることが肝心である。今後に期待したい。
追記
隊長には助言をしたが、堅物ゆえに恐らく聞く耳をもたないだろう。加護など無くしてしまえばいいものを、その手段を知っているにもかかわらず、手をこまねいている。どうしたものか。
ノエリア支部副隊長リュファス・ドゥラクロ記
八月十三日
カズハ・レヴィナス隊長夫人がブリュネ母娘とともに早朝、ローウィンへ向けて出発した。ギリギリではあったが、母娘にノエリアを捨てさせることなく見送ることができたことは、個人的にも喜ばしいことであった。
カズハには知らせず、フレデリク・ソラン隊員も乗車している。隊長が合流するまでの三日間、彼には歯止めとして身を呈して働いてもらわねばならない。全てはノエリア支部の名誉のため。
隊長は心配のあまりいつもにも増して、無表情で街の警らにあたっている。今日はおそらく滅多な犯罪は起きないだろう。私はその間に休憩を取らせてもらうことにした。
嵐の目もいないことだ、ノエリアにつかの間の平穏が訪れるに違いない。
ノエリア支部副隊長リュファス・ドゥ・ラクロ記
八月十六日
明日、隊長が休暇を取るにあたり、引き継ぎを完了させる。戻ってくる隊員も多いため、業務に差し障りはないと思いたい。明日からの激務を考え、午後は休ませてもらうことにした。
午後になり、隊長宅の手伝いをしているマリーに引き留められた。何か不都合でもあるかと思い話を聞いてみれば、隊長夫妻についての心配事だという。その後もオランド亭でセリアと肉屋のアルマにも同じ件で呼び止められた。
私になんとかできれば、とうに何とでもなっている。
ノエリアは今日も平和である。
追記
あの二人が、というよりあのカズハの変わらない様子に、どうやら二人がままごと夫婦であることが、近い者たちにすっかりお見通しのようだ。本当に頭が痛い。
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