9 / 10
第九話 再出発
しおりを挟む
翌日、私は連合国司令部に事件の真相をしるした調査報告書を郵送したあと、バー夜汽車に向かった。
ことの真相を信じるかどうかは司令本部次第だ。
一応、この虫の王の呪い事件は解決した。
これで学ははれて自由の身になると思われる。
バーにはあの麗しのマダムがカウンターの奥に立っていた。
本当にこの人が男だとは信じられない。
カウンター席に渡辺学は腰をかけていた。またあの甘ったるいコーヒーを飲んでいるようだ。
「あらアンさん、こんにちは。そいうそう良い茶葉が手に入りましたのよ。白洲正子様が送ってくださったのよ」
マダムは私のために香り高い紅茶をいれてくれた。
「やあ、赤毛のアン」
学は紫色の瞳で私を見る。
「事件の経緯を司令本部に伝えたわよ」
私は学にそう伝えた。
「これであなたは自由の身になれるはずよ。この約束を反故にはさせないわ」
私は彼のアメジストの瞳をみつめる。きれいな瞳だ。
「で、これからどうするの?」
帝国陸軍は解散させられる。日本に武力を放棄させる動きがアメリカ合衆国にある。
よほど帝国陸軍に恨みがあるのだろう。
故に学が陸軍に戻ることはない。
これからのことを決めるのは彼自身だ。
できれば……。
「赤毛のアン、これからは君の身を守ることにするよ。君はまたあのような奇妙な事件に首をつっこむのだろう。そんな君には護衛が必要だ。それも腕利きのね。僕は君を守ることを人生の目的にするよ」
学はずれるサングラスをなおしながら、そう言った。
「Thank you Manabu」
私は彼の硬い手を握り、そう言った。
ことの真相を信じるかどうかは司令本部次第だ。
一応、この虫の王の呪い事件は解決した。
これで学ははれて自由の身になると思われる。
バーにはあの麗しのマダムがカウンターの奥に立っていた。
本当にこの人が男だとは信じられない。
カウンター席に渡辺学は腰をかけていた。またあの甘ったるいコーヒーを飲んでいるようだ。
「あらアンさん、こんにちは。そいうそう良い茶葉が手に入りましたのよ。白洲正子様が送ってくださったのよ」
マダムは私のために香り高い紅茶をいれてくれた。
「やあ、赤毛のアン」
学は紫色の瞳で私を見る。
「事件の経緯を司令本部に伝えたわよ」
私は学にそう伝えた。
「これであなたは自由の身になれるはずよ。この約束を反故にはさせないわ」
私は彼のアメジストの瞳をみつめる。きれいな瞳だ。
「で、これからどうするの?」
帝国陸軍は解散させられる。日本に武力を放棄させる動きがアメリカ合衆国にある。
よほど帝国陸軍に恨みがあるのだろう。
故に学が陸軍に戻ることはない。
これからのことを決めるのは彼自身だ。
できれば……。
「赤毛のアン、これからは君の身を守ることにするよ。君はまたあのような奇妙な事件に首をつっこむのだろう。そんな君には護衛が必要だ。それも腕利きのね。僕は君を守ることを人生の目的にするよ」
学はずれるサングラスをなおしながら、そう言った。
「Thank you Manabu」
私は彼の硬い手を握り、そう言った。
11
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
大奥~牡丹の綻び~
翔子
歴史・時代
*この話は、もしも江戸幕府が永久に続き、幕末の流血の争いが起こらず、平和な時代が続いたら……と想定して書かれたフィクションとなっております。
大正時代・昭和時代を省き、元号が「平成」になる前に候補とされてた元号を使用しています。
映像化された数ある大奥関連作品を敬愛し、踏襲して書いております。
リアルな大奥を再現するため、性的描写を用いております。苦手な方はご注意ください。
時は17代将軍の治世。
公家・鷹司家の姫宮、藤子は大奥に入り御台所となった。
京の都から、慣れない江戸での生活は驚き続きだったが、夫となった徳川家正とは仲睦まじく、百鬼繚乱な大奥において幸せな生活を送る。
ところが、時が経つにつれ、藤子に様々な困難が襲い掛かる。
祖母の死
鷹司家の断絶
実父の突然の死
嫁姑争い
姉妹間の軋轢
壮絶で波乱な人生が藤子に待ち構えていたのであった。
2023.01.13
修正加筆のため一括非公開
2023.04.20
修正加筆 完成
2023.04.23
推敲完成 再公開
2023.08.09
「小説家になろう」にも投稿開始。
旅路ー元特攻隊員の願いと希望ー
ぽんた
歴史・時代
舞台は1940年代の日本。
軍人になる為に、学校に入学した
主人公の田中昴。
厳しい訓練、激しい戦闘、苦しい戦時中の暮らしの中で、色んな人々と出会い、別れ、彼は成長します。
そんな彼の人生を、年表を辿るように物語りにしました。
※この作品は、残酷な描写があります。
※直接的な表現は避けていますが、性的な表現があります。
※「小説家になろう」「ノベルデイズ」でも連載しています。
幕末博徒伝
雨川 海(旧 つくね)
歴史・時代
江戸時代、五街道の内の一つ、甲州街道が整備され、宿場町として賑わった勝沼は、天領、つまり、徳川幕府の直轄地として代官所が置かれていた。この頃、江戸幕府の財政は厳しく、役人の数も少なかったので、年貢の徴収だけで手がいっぱいになり、治安までは手が回らなかった。その為、近隣在所から無宿人、博徒、浪人などが流れ込み、無政府状態になっていた。これは、無頼の徒が活躍する任侠物語。
毛利隆元 ~総領の甚六~
秋山風介
歴史・時代
えー、名将・毛利元就の目下の悩みは、イマイチしまりのない長男・隆元クンでございました──。
父や弟へのコンプレックスにまみれた男が、いかにして自分の才覚を知り、毛利家の命運をかけた『厳島の戦い』を主導するに至ったのかを描く意欲作。
史実を捨てたり拾ったりしながら、なるべくポップに書いておりますので、歴史苦手だなーって方も読んでいただけると嬉しいです。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
明治仕舞屋顛末記
祐*
歴史・時代
大政奉還から十余年。年号が明治に変わってしばらく過ぎて、人々の移ろいとともに、動乱の傷跡まで忘れられようとしていた。
東京府と名を変えた江戸の片隅に、騒動を求めて動乱に留まる輩の吹き溜まり、寄場長屋が在る。
そこで、『仕舞屋』と呼ばれる裏稼業を営む一人の青年がいた。
彼の名は、手島隆二。またの名を、《鬼手》の隆二。
金払いさえ良ければ、鬼神のごとき強さで何にでも『仕舞』をつけてきた仕舞屋《鬼手》の元に舞い込んだ、やくざ者からの依頼。
破格の報酬に胸躍らせたのも束の間、調べを進めるにしたがって、その背景には旧時代の因縁が絡み合い、出会った志士《影虎》とともに、やがて《鬼手》は、己の過去に向き合いながら、新時代に生きる道を切り開いていく。
*明治初期、史実・実在した歴史上の人物を交えて描かれる 創 作 時代小説です
*登場する実在の人物、出来事などは、筆者の見解や解釈も交えており、フィクションとしてお楽しみください
妖戦刀義
和山忍
歴史・時代
時は日本の江戸時代初期。
とある農村で、風太は母の病気を治せる人もしくは妖怪をさがす旅に出た父の帰りを待っていた。
しかし、その父とは思わぬ形で再会することとなった。
そして、風太は人でありながら妖力を得て・・・・・・。
※この物語はフィクションであり、実際の史実と異なる部分があります。
そして、実在の人物、団体、事件、その他いろいろとは一切関係ありません。
朝敵、まかり通る
伊賀谷
歴史・時代
これが令和の忍法帖!
時は幕末。
薩摩藩が江戸に総攻撃をするべく進軍を開始した。
江戸が焦土と化すまであと十日。
江戸を救うために、徳川慶喜の名代として山岡鉄太郎が駿府へと向かう。
守るは、清水次郎長の子分たち。
迎え撃つは、薩摩藩が放った鬼の裔と呼ばれる八瀬鬼童衆。
ここに五対五の時代伝奇バトルが開幕する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる