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長期休み・図書館の秘密編
夢
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「ふぅ、疲れたー。」
そう言ってふかふかのベッドにダイブする。
とても疲れた。
抱きついてきたお母様やお父様達を引き剥がし、全力疾走で自室へと駆け込んだのだから。
少し気になったため、ゆっくりとベッドから降りて窓の近くへと歩く。
「あー・・・、やっぱり・・・。」
案の定、お兄ちゃんがお母様達に捕まっていた。
お兄ちゃんは苦笑しながらも、嬉しそうにしている。
私は精神年齢が高いせいか、あまり親に甘えたいとは思わない。というか、甘えるのって結構恥ずかしいんだよね。
でも、お兄ちゃんはまだ八歳。
大人びている方ではあるが、まだ親離れするような年頃ではないだろう。
「ちょっと寝ようかな・・・。」
そう呟いてベッドへと戻り、目を閉じた。
「梨乃!!」
「・・・つかさ?」
ああ、夢か。
もう会えないんだもんね。
死んじゃったから。
キョロキョロと周りを見渡す。
よく一緒に遊んだ公園だ。
私とつかさは大体十一歳くらいだろうか。
「ちょっと来て!」
つかさは私の手を掴んで走り出した。
その顔はなんだか嬉しそうだ。
いつの夢なんだろうか。
しばらく走って、つかさは止まった。
路地裏の隅だ。
目の前にあるのは、古びた狐の石像。
お稲荷様とかいうやつだった気がする。
「さっき見つけたの!」
つかさが満面の笑みを私に向けて言った。
「なんか汚いね。」
勝手に私の口から言葉が出た。
つかさはお稲荷様をじーっと見つめる。
・・・思い出した。
この後のこと。
「確かに。」
うんうん、とつかさが頷いた。
「二人できれいにしてあげようよ!」
また、勝手に言葉がするりと口から出てきた。
これは夢だから、私は幼い私のなかに意識だけ入って、ただ見ているだけ。
「そうだねっ!」
つかさがまた笑みを私に向けた。
眩しい笑顔。
パッと景色が変わる。
森の中だ。
いつのまにか服装までも変わっている。
ミンミンと蝉の声がうるさい。
私は、つかさと手を繋いでいた。
見ているのは、すっかり綺麗になったお稲荷様だ。
「こんなに綺麗になった!」
つかさが目を細めて私の方へ顔を向けた。
「さすが私達だねっ!」
私も笑顔でつかさに言った。
そういえば、この後って信じられないことが起こるんだよね。前世では考えられないようなことが。
―おぬしらか、我を救うてくれたのは―
頭に直接声が響いた。
女性の声。
私とつかさは、目を見開いてキョロキョロと周りを見渡した。
―前じゃ、目の前じゃ―
「・・・お稲荷様?」
私がお稲荷様に近づいて言った。
つかさもゆっくりと近づく。
―そうじゃ、そうじゃ―
そう声が聞こえたと同時に、辺りに青白い光の玉が浮かび上がった。
まるで人魂のようだ。
「ひぃっ!?」
つかさが私に抱きついた。
怖いのだろう。
―そう怖がるでない。人魂のようなものではないからのう。これは感謝の印じゃ―
すると、光の玉はどんどん小さく縮んでいき、小指ほどの大きさになると可愛らしい狐の形に変化した。
―手を出すのじゃ―
言われた通りに私達は手を出した。
小さな狐は、私達の手のひらの上に乗り、私の狐は青、つかさの狐はピンクに染まり、固まった。
―可愛らしいじゃろう?おぬしらのようなおなごはこのようなものの方が嬉しいと思うての。大事に持っておくがよい―
「念のため聞いておくけど、これってお守り?」
私が首を傾げて聞いた。
―違うぞ?きいほるだあというやつじゃ―
キーホルダーね。
でも、キーホルダーっていうか、置物って感じがする。
そこで目が覚めた。
窓を開けて空を見上げた
赤く染まっている。
「あのお稲荷様、どうなったんだっけ。」
そう言ってふかふかのベッドにダイブする。
とても疲れた。
抱きついてきたお母様やお父様達を引き剥がし、全力疾走で自室へと駆け込んだのだから。
少し気になったため、ゆっくりとベッドから降りて窓の近くへと歩く。
「あー・・・、やっぱり・・・。」
案の定、お兄ちゃんがお母様達に捕まっていた。
お兄ちゃんは苦笑しながらも、嬉しそうにしている。
私は精神年齢が高いせいか、あまり親に甘えたいとは思わない。というか、甘えるのって結構恥ずかしいんだよね。
でも、お兄ちゃんはまだ八歳。
大人びている方ではあるが、まだ親離れするような年頃ではないだろう。
「ちょっと寝ようかな・・・。」
そう呟いてベッドへと戻り、目を閉じた。
「梨乃!!」
「・・・つかさ?」
ああ、夢か。
もう会えないんだもんね。
死んじゃったから。
キョロキョロと周りを見渡す。
よく一緒に遊んだ公園だ。
私とつかさは大体十一歳くらいだろうか。
「ちょっと来て!」
つかさは私の手を掴んで走り出した。
その顔はなんだか嬉しそうだ。
いつの夢なんだろうか。
しばらく走って、つかさは止まった。
路地裏の隅だ。
目の前にあるのは、古びた狐の石像。
お稲荷様とかいうやつだった気がする。
「さっき見つけたの!」
つかさが満面の笑みを私に向けて言った。
「なんか汚いね。」
勝手に私の口から言葉が出た。
つかさはお稲荷様をじーっと見つめる。
・・・思い出した。
この後のこと。
「確かに。」
うんうん、とつかさが頷いた。
「二人できれいにしてあげようよ!」
また、勝手に言葉がするりと口から出てきた。
これは夢だから、私は幼い私のなかに意識だけ入って、ただ見ているだけ。
「そうだねっ!」
つかさがまた笑みを私に向けた。
眩しい笑顔。
パッと景色が変わる。
森の中だ。
いつのまにか服装までも変わっている。
ミンミンと蝉の声がうるさい。
私は、つかさと手を繋いでいた。
見ているのは、すっかり綺麗になったお稲荷様だ。
「こんなに綺麗になった!」
つかさが目を細めて私の方へ顔を向けた。
「さすが私達だねっ!」
私も笑顔でつかさに言った。
そういえば、この後って信じられないことが起こるんだよね。前世では考えられないようなことが。
―おぬしらか、我を救うてくれたのは―
頭に直接声が響いた。
女性の声。
私とつかさは、目を見開いてキョロキョロと周りを見渡した。
―前じゃ、目の前じゃ―
「・・・お稲荷様?」
私がお稲荷様に近づいて言った。
つかさもゆっくりと近づく。
―そうじゃ、そうじゃ―
そう声が聞こえたと同時に、辺りに青白い光の玉が浮かび上がった。
まるで人魂のようだ。
「ひぃっ!?」
つかさが私に抱きついた。
怖いのだろう。
―そう怖がるでない。人魂のようなものではないからのう。これは感謝の印じゃ―
すると、光の玉はどんどん小さく縮んでいき、小指ほどの大きさになると可愛らしい狐の形に変化した。
―手を出すのじゃ―
言われた通りに私達は手を出した。
小さな狐は、私達の手のひらの上に乗り、私の狐は青、つかさの狐はピンクに染まり、固まった。
―可愛らしいじゃろう?おぬしらのようなおなごはこのようなものの方が嬉しいと思うての。大事に持っておくがよい―
「念のため聞いておくけど、これってお守り?」
私が首を傾げて聞いた。
―違うぞ?きいほるだあというやつじゃ―
キーホルダーね。
でも、キーホルダーっていうか、置物って感じがする。
そこで目が覚めた。
窓を開けて空を見上げた
赤く染まっている。
「あのお稲荷様、どうなったんだっけ。」
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