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三 余部鉄橋 昭和六十一年 十二月
あまるべの風
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それは、徹が家族で餅つきを終えて、炬燵に入っているときだった。激しくなった風の音を聞きながら、うとうとしていると、今まで聞いたこともないものすごい音がした。
十二月二十八日午後一時二十五分のことであった。どこかから
「脱線や、落ちたぞ」
という叫び声が聞こえた。まさかと思って外に出てみたら白い煙がもうもうと上がっていた。列車が真下に!
真っ白になった頭、強張った全身。それでも徹は何とか見上げると、鉄橋の上にはディーゼル機関車と客車の二、三の台車だけが見えた。
救急車と消防車、パトカーのサイレンが鳴り響く中、無我夢中で駆け付けると、真下の蟹の加工場や家は無残に原型をとどめず押しつぶされ、火の手が上がっていた。
徹の家は鉄橋の真下で、その当時母親が民宿を営んでいたが、墜落現場とは少し距離があったので災難は免れた。
徹の家である民宿に新聞記者たちが大勢やって来て、無線用だろうか高い柱を庭に立てた。ものすごい勢いで記事を送っていて、電話が鳴り響き、家は喧騒を極めた。翌朝の新聞には、一面に無残な写真と記事が載っていた。
回送のお座敷列車には乗客がいなかったのは幸いだったが、蟹加工場で働いていた方が五名亡くなられた。みんな地元の徹の知ってるおばさんばかりで、もう悔しくて悲しくて、歯をくいしばって泣いた。地区には正月もなく、悲しみと無念が垂れこめていた。二八歳の徹にとって、最も衝撃を受けた事故だった。
様々な調査がなされたが、限界を超える横風が原因と一応結論付けられた。
その後、知元ではいろんな話し合いが行われた結果、橋脚を保存して新しい「空の駅」を設置して『余部鉄橋の物語』を継承しようということになった。
それは一直線の道筋ではなかったけれど、少しずつ一つにまとまっていった。
徹は、JAの職員としてだけでなく地元の人間として深く関わって来た年月であった。
十二月二十八日午後一時二十五分のことであった。どこかから
「脱線や、落ちたぞ」
という叫び声が聞こえた。まさかと思って外に出てみたら白い煙がもうもうと上がっていた。列車が真下に!
真っ白になった頭、強張った全身。それでも徹は何とか見上げると、鉄橋の上にはディーゼル機関車と客車の二、三の台車だけが見えた。
救急車と消防車、パトカーのサイレンが鳴り響く中、無我夢中で駆け付けると、真下の蟹の加工場や家は無残に原型をとどめず押しつぶされ、火の手が上がっていた。
徹の家は鉄橋の真下で、その当時母親が民宿を営んでいたが、墜落現場とは少し距離があったので災難は免れた。
徹の家である民宿に新聞記者たちが大勢やって来て、無線用だろうか高い柱を庭に立てた。ものすごい勢いで記事を送っていて、電話が鳴り響き、家は喧騒を極めた。翌朝の新聞には、一面に無残な写真と記事が載っていた。
回送のお座敷列車には乗客がいなかったのは幸いだったが、蟹加工場で働いていた方が五名亡くなられた。みんな地元の徹の知ってるおばさんばかりで、もう悔しくて悲しくて、歯をくいしばって泣いた。地区には正月もなく、悲しみと無念が垂れこめていた。二八歳の徹にとって、最も衝撃を受けた事故だった。
様々な調査がなされたが、限界を超える横風が原因と一応結論付けられた。
その後、知元ではいろんな話し合いが行われた結果、橋脚を保存して新しい「空の駅」を設置して『余部鉄橋の物語』を継承しようということになった。
それは一直線の道筋ではなかったけれど、少しずつ一つにまとまっていった。
徹は、JAの職員としてだけでなく地元の人間として深く関わって来た年月であった。
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