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49 チーズを求めて
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街道に出てしまったなら仕方がない。これに沿って北上してみよう。チーズの買い出しの時に通る場所だから、横切っていたら誰かに見られてしまう。それでまた怪童の噂なんてものに再来されたら面倒に巻き込まれるだけじゃない? だから、この街道とその先に在る何かは迂回したい訳さ。
その何かってのは、多分、純三さんに聞いたルーメンミの迷宮だけどね。そこから森の外に出るのに、この街道を使うのだと思う。南に行ったら森の外に出る筈だから、何か在るなら北。何処まで北に行けばいいのかを確かめに行こうってことだ。
道に沿って歩きたいところだけど、歩くのはやっぱり森の中。道を見失わないように、時々確かめに近付くから余分に時間が掛かるけど、うっかり誰かと擦れ違ったりしたくない。あたしがどうしてここに居るのか説明を求められたらめんどくさいもの。
森に分け入って、北に少し歩いて、人目を警戒しながら道の近くまで戻る。
どこまで行けばいいのか判らないからヘビィだ。別にへびは居ないけどね!
意外に近かった。直線距離ならほんの2キロメートル程度で人工物の壁が在った。
壁は高さ1メートルくらい。その周りには壕も掘られている。そんなに深くないから、小動物避けってところかな?
街道が通る門の部分には壕も無ければ壁も無い。門扉も無い。近くに小屋が在って、監視員らしき人も座ってるけど、通行人の監視はしてない様子。きっと魔物が入らないように監視してるんだろうね。
さて、あまり長居して見咎められてしまわないように、ぐるっと回り込もう。
……結構距離があるなぁ。
3キロメートルくらい歩いてやっとこさ壁が途切れた。壁の東側には街道が無い。壁は概ね8角形をしていて、その中心に建物が在るみたい。迷宮も多分その辺りに在るんじゃないかな。
北に回り込んで、壁の西の端を目指す。
北側にも街道は無かった。これなら少し北に迂回するだけで、誰かに見付かったりすることも無さそう。ホッとしたよ。
思いがけずに時間を費やしちゃったけど、まだ昼前だ。目的の町を目指そう。
壁から少し離れてから西に向かって走る。50キロメートルほど走った所で森が途切れて草原に変わった。更に10キロメートルほどで街道に行き当たった。
隠れるような場所が無いな……。
街道は見通しがいい。良すぎるくらいにだから、下手に離れた場所を走ったら不信感を抱かれちゃう。
ここからは街道沿いにゆっくり走るとしよう。こんなこともあろうかと、フード付きのマントを買っていたのだ! これを着込んだらパッと見にあたしだとは判らない筈。森のこっち側でだけ着たら完璧じゃないかな?
ゆっくりでも、街道を走っている人なんて他に居ないからか、通りすがりの人に変なものを見るような目で見られてしまった。マントが無かったら逃げ帰ってたかも。なかなかヘビィだ。
街道からは放牧されている牛も沢山見える。畜産がかなり盛んな様子。
だけど、ここにこんなに牛が居るのに、どうしてファラドナでは肉が売られていないんだろうね……。街道を使ったら100キロ以上の距離になりそうだけど、それだけで流通されなくなったりするもの?
町には街道を走ること10キロほどで着いた。ここが、チーズ屋の店主の言っていた一番近い町だと思う。
3000人規模の町のようだけど、通行税はしっかり1000円だった。地味に痛い。
町に入って直ぐの目立つ場所に商業ギルドが有った。入ってみよう。
受付に行く。
「ギルドの登録料は幾らでしょうか?」
「登録をご希望ですか? 登録料は、店舗であれば100万ゴールドで、行商であれば10万ゴールドです」
ファラドナと同じ料金だ。小さい町なのに高い!
「登録証は、ここラジアンガの他、ここから西に有るステラジアンガ、北西に有るシーベルトム、北に有るジーメンスラで有効です」
続きが有った!
4つの町で有効なら悪くない。今後、何度となく来る予定だから、行商で登録していた方がお得だ。
「では、行商で登録したいのですが」
「はい。それでは、この用紙に必要事項をお書きください」
受付嬢が用紙を差し出した。
用紙には名前の他、販売品目の欄が有る。チーズを仕入れるだけだから書きようが無いんだけど……。
「チーズを仕入れに来るだけなので、販売品目の欄は空欄で良いですか?」
「できれば仕入れだけでなく、何かを売っていただきたいのですが、何か持ち込める商品はございませんか?」
あたしがお手軽に調達できるのは海塩くらいのものだよね……。魚も調達できるけど、腐りやすいから、どうやってここまで持って来たんだってなるもの。
「持ち込めるのは塩くらいですが、それで大丈夫ですか?」
「塩ですか!? それは、是非、お願いします!」
「う……」
いきなり受付嬢が身を乗り出したので、ちょっと引いた。
あたしの目を見ながら一瞬硬直した受付嬢が「こほん」と咳払いして、神妙な顔付きで居住まいを正す。
「失礼いたしました」
「塩が必要なのですか?」
身を乗り出すくらいだからね。聞くだけならタダだし。
「はい。ここラジアンガと付近の三つの町の特産品はチーズで、その製造には塩が欠かせません。ところが、この近くに塩の産地が無く、入手が不安定になりがちなのです。そのため、少量であっても塩を持って来てくださる行商人の方はこの町にとって貴重です」
「ファラドナからは仕入れられないんでしょうか?」
街道が多少曲がっていても200キロまでの距離は無いと思う。
だけど受付嬢が渋い顔になった。
「そうしたいのは山々なのですが、ファラドナとの交易は荒野の街道を通ることになります。ところがその荒野には塩蟲と呼ばれる強力な魔物が巣くっていて、塩を運べないのです」
「塩蟲? それは一体……?」
「塩蟲はその体内に塩を蓄積する性質がありまして、体の大半が塩で出来ている不思議な魔物です。普段は土の中に潜んでいるので、いつ出てくるか判りません。そして、塩に誘引される性質から、塩を運んでいると土の中から突然飛び出して襲って来るのです。地上でも馬よりも速く移動しますから、塩を持っていたら逃げることもできません」
「討伐はしないのですか?」
受付嬢はかくんと首を傾げた。
「それが、とても数が多いのです。その上、大きな個体ともなれば、討伐するためにはランク3冒険者のパーティか、ランク2冒険者の力が必要です。とてもその費用は賄い切れません」
「そこまで強いんですか!?」
それっていつかのトカゲに匹敵する強さだ。そんなのがうようよしていたら、とてもじゃないけど通れないよね……。
「はい。そして討伐すると塩が残されるのですが、それがまた別の塩蟲を誘引して収拾が付きません。過去には塩蟲から塩を採取することも試みられたようですが、失敗した記録が残されています」
ふと、チーズ屋の店主のことを思い出した。
「だけど、ファラドナとの間で交易している人も居ますよね?」
「はい。交易品に塩が含まれなかったり、量が少なければ、塩蟲に襲われる危険も少ないのです。チーズには多くの塩を含みますので大量には運べませんが、少量なら大丈夫です。そのためにファラドナとの交易は食品以外が主になっていますが……」
確かに、ちょこっとだけでもだめだったら人が通り掛かるだけで襲われちゃうよね。もしそうなら街道も通せてないだろうし。
「少量ってことは、おみあげ程度ってことになりますね……」
「当にその通りです。そしてそうではない量の運び出すには、東の森を北に大きく迂回するような経路を辿ることになります。そして仕入れる塩もその経路を使います。すると費用が嵩んで高価になってしまうため、価格を抑えるために当ギルドが直接塩を仕入れて、ほぼ実費のみで販売していますが、十分とは言えません。当ギルドが売るその塩の影響で利益が出ないと言うことで、旅商人の方々も塩の持ち込みを敬遠なさいます」
「確かに誰が運んでも経路が同じなら費用は同じでしょうね……」
「その通りです。そのため、塩は少量であっても歓迎いたします」
「塩の販売は国で規制されていたりしませんか?」
「はい? そう言うことはございませんが、もしや貴女は他国からの移住者でいらっしゃいますか?」
「はい。そんな感じです」
他国からの移住者と言ったらその通りなのだけど、クーロンスの町にそんな規制が有るかどうかをあたしは知らない。ただ、塩が高価なようなら、昔の日本で専売公社が塩を専売していたような規制が有ってもおかしくないと思ったんだ。
「ここガベトラーでは塩の販売に規制は有りませんのでご安心ください」
「判りました」
規制は気にしなくていいみたいだから、販売品目には「塩」と書いた。薩摩揚げをこの町で売るつもりは無いから。
10万円を支払って、魔力を登録して、登録証を貰った。
さあ、市場に急ごう。
ラジアンガの市場で売られているチーズの殆どは白カビチーズだった。日本のスーパーで売られているプロセスチーズ並みの値段だから常食もできそう。
ただ、トロッとしている白カビチーズはチーカマには使えないので、買うのは自分で食べる分だけ。
ラジアンガを出て、次に行くのは北のジーメンスラ。
ジーメンスラの市場では、チェダーチーズやパヴェ・コレジアン、パルミジャーノ・レッジャーノなんかに相当する、硬質のチーズが殆どだった。チーカマに使うのはこの手のチーズだから、比較的柔らかめのもの2種類を多めに仕入よう。
次は西のシーベルトム。
シーベルトムには酸で凝固させたチーズが並んでいた。これは、フレッシュチーズの類だから、乾燥させたもの以外は日持ちしない。今日味見する分だけを少し買っておこう。
最後に、そこから南のステラジアンガ。
ステラジアンガは青カビチーズが主だった。癖が強くてあたしは苦手なんだよね……。だけど一応、味見程度に買っておこう。
4つの町は、どれもほぼ同じ大きさだった。本来なら1つの町にするところを、チーズの特性に合わせて分散させている感じ。商業ギルドが共通なのもそんな意図からじゃないかな? ただ、ギルドの金融機能ばかりは登録した町でしか利用できないらしい。
さて、ファラドナに帰ろう。
ものは試しで、南の荒野を通ってみる。そこそこ多くのチーズを持っているけど、塩蟲らしきものは出て来ない。
運も有りそうだけど、これなら南の荒野を突っ切っても良さそう。
……と思っていたら、幾つかの街道が南北に走っていて横切ることになってしまった。人通りは少ないけど、街道が有る以上、いつ人目に触れてもおかしくない。見通しのいい場所を爆走中に見らたら、また変な噂が立っちゃう。それは避けたいから、やっぱり森の中を移動するしか無さそう。
だけどまあ、どうせ仕入をするのは主にジーメンスラだから、ルーメンミの北を通った方が行きやすそうだよね。
その何かってのは、多分、純三さんに聞いたルーメンミの迷宮だけどね。そこから森の外に出るのに、この街道を使うのだと思う。南に行ったら森の外に出る筈だから、何か在るなら北。何処まで北に行けばいいのかを確かめに行こうってことだ。
道に沿って歩きたいところだけど、歩くのはやっぱり森の中。道を見失わないように、時々確かめに近付くから余分に時間が掛かるけど、うっかり誰かと擦れ違ったりしたくない。あたしがどうしてここに居るのか説明を求められたらめんどくさいもの。
森に分け入って、北に少し歩いて、人目を警戒しながら道の近くまで戻る。
どこまで行けばいいのか判らないからヘビィだ。別にへびは居ないけどね!
意外に近かった。直線距離ならほんの2キロメートル程度で人工物の壁が在った。
壁は高さ1メートルくらい。その周りには壕も掘られている。そんなに深くないから、小動物避けってところかな?
街道が通る門の部分には壕も無ければ壁も無い。門扉も無い。近くに小屋が在って、監視員らしき人も座ってるけど、通行人の監視はしてない様子。きっと魔物が入らないように監視してるんだろうね。
さて、あまり長居して見咎められてしまわないように、ぐるっと回り込もう。
……結構距離があるなぁ。
3キロメートルくらい歩いてやっとこさ壁が途切れた。壁の東側には街道が無い。壁は概ね8角形をしていて、その中心に建物が在るみたい。迷宮も多分その辺りに在るんじゃないかな。
北に回り込んで、壁の西の端を目指す。
北側にも街道は無かった。これなら少し北に迂回するだけで、誰かに見付かったりすることも無さそう。ホッとしたよ。
思いがけずに時間を費やしちゃったけど、まだ昼前だ。目的の町を目指そう。
壁から少し離れてから西に向かって走る。50キロメートルほど走った所で森が途切れて草原に変わった。更に10キロメートルほどで街道に行き当たった。
隠れるような場所が無いな……。
街道は見通しがいい。良すぎるくらいにだから、下手に離れた場所を走ったら不信感を抱かれちゃう。
ここからは街道沿いにゆっくり走るとしよう。こんなこともあろうかと、フード付きのマントを買っていたのだ! これを着込んだらパッと見にあたしだとは判らない筈。森のこっち側でだけ着たら完璧じゃないかな?
ゆっくりでも、街道を走っている人なんて他に居ないからか、通りすがりの人に変なものを見るような目で見られてしまった。マントが無かったら逃げ帰ってたかも。なかなかヘビィだ。
街道からは放牧されている牛も沢山見える。畜産がかなり盛んな様子。
だけど、ここにこんなに牛が居るのに、どうしてファラドナでは肉が売られていないんだろうね……。街道を使ったら100キロ以上の距離になりそうだけど、それだけで流通されなくなったりするもの?
町には街道を走ること10キロほどで着いた。ここが、チーズ屋の店主の言っていた一番近い町だと思う。
3000人規模の町のようだけど、通行税はしっかり1000円だった。地味に痛い。
町に入って直ぐの目立つ場所に商業ギルドが有った。入ってみよう。
受付に行く。
「ギルドの登録料は幾らでしょうか?」
「登録をご希望ですか? 登録料は、店舗であれば100万ゴールドで、行商であれば10万ゴールドです」
ファラドナと同じ料金だ。小さい町なのに高い!
「登録証は、ここラジアンガの他、ここから西に有るステラジアンガ、北西に有るシーベルトム、北に有るジーメンスラで有効です」
続きが有った!
4つの町で有効なら悪くない。今後、何度となく来る予定だから、行商で登録していた方がお得だ。
「では、行商で登録したいのですが」
「はい。それでは、この用紙に必要事項をお書きください」
受付嬢が用紙を差し出した。
用紙には名前の他、販売品目の欄が有る。チーズを仕入れるだけだから書きようが無いんだけど……。
「チーズを仕入れに来るだけなので、販売品目の欄は空欄で良いですか?」
「できれば仕入れだけでなく、何かを売っていただきたいのですが、何か持ち込める商品はございませんか?」
あたしがお手軽に調達できるのは海塩くらいのものだよね……。魚も調達できるけど、腐りやすいから、どうやってここまで持って来たんだってなるもの。
「持ち込めるのは塩くらいですが、それで大丈夫ですか?」
「塩ですか!? それは、是非、お願いします!」
「う……」
いきなり受付嬢が身を乗り出したので、ちょっと引いた。
あたしの目を見ながら一瞬硬直した受付嬢が「こほん」と咳払いして、神妙な顔付きで居住まいを正す。
「失礼いたしました」
「塩が必要なのですか?」
身を乗り出すくらいだからね。聞くだけならタダだし。
「はい。ここラジアンガと付近の三つの町の特産品はチーズで、その製造には塩が欠かせません。ところが、この近くに塩の産地が無く、入手が不安定になりがちなのです。そのため、少量であっても塩を持って来てくださる行商人の方はこの町にとって貴重です」
「ファラドナからは仕入れられないんでしょうか?」
街道が多少曲がっていても200キロまでの距離は無いと思う。
だけど受付嬢が渋い顔になった。
「そうしたいのは山々なのですが、ファラドナとの交易は荒野の街道を通ることになります。ところがその荒野には塩蟲と呼ばれる強力な魔物が巣くっていて、塩を運べないのです」
「塩蟲? それは一体……?」
「塩蟲はその体内に塩を蓄積する性質がありまして、体の大半が塩で出来ている不思議な魔物です。普段は土の中に潜んでいるので、いつ出てくるか判りません。そして、塩に誘引される性質から、塩を運んでいると土の中から突然飛び出して襲って来るのです。地上でも馬よりも速く移動しますから、塩を持っていたら逃げることもできません」
「討伐はしないのですか?」
受付嬢はかくんと首を傾げた。
「それが、とても数が多いのです。その上、大きな個体ともなれば、討伐するためにはランク3冒険者のパーティか、ランク2冒険者の力が必要です。とてもその費用は賄い切れません」
「そこまで強いんですか!?」
それっていつかのトカゲに匹敵する強さだ。そんなのがうようよしていたら、とてもじゃないけど通れないよね……。
「はい。そして討伐すると塩が残されるのですが、それがまた別の塩蟲を誘引して収拾が付きません。過去には塩蟲から塩を採取することも試みられたようですが、失敗した記録が残されています」
ふと、チーズ屋の店主のことを思い出した。
「だけど、ファラドナとの間で交易している人も居ますよね?」
「はい。交易品に塩が含まれなかったり、量が少なければ、塩蟲に襲われる危険も少ないのです。チーズには多くの塩を含みますので大量には運べませんが、少量なら大丈夫です。そのためにファラドナとの交易は食品以外が主になっていますが……」
確かに、ちょこっとだけでもだめだったら人が通り掛かるだけで襲われちゃうよね。もしそうなら街道も通せてないだろうし。
「少量ってことは、おみあげ程度ってことになりますね……」
「当にその通りです。そしてそうではない量の運び出すには、東の森を北に大きく迂回するような経路を辿ることになります。そして仕入れる塩もその経路を使います。すると費用が嵩んで高価になってしまうため、価格を抑えるために当ギルドが直接塩を仕入れて、ほぼ実費のみで販売していますが、十分とは言えません。当ギルドが売るその塩の影響で利益が出ないと言うことで、旅商人の方々も塩の持ち込みを敬遠なさいます」
「確かに誰が運んでも経路が同じなら費用は同じでしょうね……」
「その通りです。そのため、塩は少量であっても歓迎いたします」
「塩の販売は国で規制されていたりしませんか?」
「はい? そう言うことはございませんが、もしや貴女は他国からの移住者でいらっしゃいますか?」
「はい。そんな感じです」
他国からの移住者と言ったらその通りなのだけど、クーロンスの町にそんな規制が有るかどうかをあたしは知らない。ただ、塩が高価なようなら、昔の日本で専売公社が塩を専売していたような規制が有ってもおかしくないと思ったんだ。
「ここガベトラーでは塩の販売に規制は有りませんのでご安心ください」
「判りました」
規制は気にしなくていいみたいだから、販売品目には「塩」と書いた。薩摩揚げをこの町で売るつもりは無いから。
10万円を支払って、魔力を登録して、登録証を貰った。
さあ、市場に急ごう。
ラジアンガの市場で売られているチーズの殆どは白カビチーズだった。日本のスーパーで売られているプロセスチーズ並みの値段だから常食もできそう。
ただ、トロッとしている白カビチーズはチーカマには使えないので、買うのは自分で食べる分だけ。
ラジアンガを出て、次に行くのは北のジーメンスラ。
ジーメンスラの市場では、チェダーチーズやパヴェ・コレジアン、パルミジャーノ・レッジャーノなんかに相当する、硬質のチーズが殆どだった。チーカマに使うのはこの手のチーズだから、比較的柔らかめのもの2種類を多めに仕入よう。
次は西のシーベルトム。
シーベルトムには酸で凝固させたチーズが並んでいた。これは、フレッシュチーズの類だから、乾燥させたもの以外は日持ちしない。今日味見する分だけを少し買っておこう。
最後に、そこから南のステラジアンガ。
ステラジアンガは青カビチーズが主だった。癖が強くてあたしは苦手なんだよね……。だけど一応、味見程度に買っておこう。
4つの町は、どれもほぼ同じ大きさだった。本来なら1つの町にするところを、チーズの特性に合わせて分散させている感じ。商業ギルドが共通なのもそんな意図からじゃないかな? ただ、ギルドの金融機能ばかりは登録した町でしか利用できないらしい。
さて、ファラドナに帰ろう。
ものは試しで、南の荒野を通ってみる。そこそこ多くのチーズを持っているけど、塩蟲らしきものは出て来ない。
運も有りそうだけど、これなら南の荒野を突っ切っても良さそう。
……と思っていたら、幾つかの街道が南北に走っていて横切ることになってしまった。人通りは少ないけど、街道が有る以上、いつ人目に触れてもおかしくない。見通しのいい場所を爆走中に見らたら、また変な噂が立っちゃう。それは避けたいから、やっぱり森の中を移動するしか無さそう。
だけどまあ、どうせ仕入をするのは主にジーメンスラだから、ルーメンミの北を通った方が行きやすそうだよね。
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