19 / 19
エピローグ
しおりを挟む
王国軍に千名以上の犠牲者を出した戦いは、第一次迷宮戦役として記録に残された。出兵した兵士の殆どの命が失われた戦いだった事と共に、僅かに生き残った兵士達がハジリの町で強盗団として猛威を振るった事でも記録に残る。その強盗団はシルベルト伯爵領軍によって討伐されるまでハジリの町を恐怖のどん底に叩き込んだ事でも知られる。
第一次迷宮戦役にていち早く逃げ延びた国王は、一年の後、傭兵を集めると共に各領の領軍から兵士を徴集して二万の軍隊を組織し、再度開拓地を攻めた。第二次迷宮戦役の始まりである。
その、国王が暗殺されるまで続く戦いにおいて、計五回に及ぶ大攻勢、多数の奇襲や暗殺が実行された。だが、爆炎の魔女、水神の巫女、土竜の妖女、そして閃剣の鬼女と言う二つ名と共に四天王と呼ばれる事になる四人の女達によって王国軍は悉く殲滅され、二十万以上の兵士が失われた。
そして、迷宮と後に「始まりの開拓地」と呼ばれる開拓地は不可侵の存在として認識される事になった。
第二次迷宮戦役での無理な派兵により、治安は乱れて国内は荒れ、経済は破綻して貧困に喘ぎ、国力は弱体化して隣国からの侵略を許した。
だが、その他国の侵略からもシルベルト伯爵領だけは揺らがなかった。四天王が他国の軍をも討ち滅ぼしたのである。
◆
女は目を醒ました。思考の定まらないまま人の気配のする方へ歩いていく。その先に見たのは、酷く懐かしく感じる四人の人の姿だった。目頭が熱くなる。これはきっと夢なのだろう。天国なのかと一瞬考えてしまったが、天国だとは思いたくない。知らず嗚咽が漏れた。
「お、目が醒めたのかい。婆さん並みに寝坊助だったな」
「こりゃ、こやつに比べればわしは居眠り程度じゃ!」
「あっはっはっは、違いない」
「一体何を泣いているのですか?」
答えが返る事など期待していない口調で尋ねられた後、女は優しく抱きしめられた。
「泣かないで、ね?」
もう一人に女は頭を撫でられた。
女は心が満たされるのを感じた。
◆
ザムトは椅子にもたれ掛かり、微睡みの中にいる。既に為すことは何も無い。ただ無為に時を過ごすだけだ。
その横にエリザは控えている。このまま永い時を過ごすことに不満は無い。
第一次迷宮戦役にていち早く逃げ延びた国王は、一年の後、傭兵を集めると共に各領の領軍から兵士を徴集して二万の軍隊を組織し、再度開拓地を攻めた。第二次迷宮戦役の始まりである。
その、国王が暗殺されるまで続く戦いにおいて、計五回に及ぶ大攻勢、多数の奇襲や暗殺が実行された。だが、爆炎の魔女、水神の巫女、土竜の妖女、そして閃剣の鬼女と言う二つ名と共に四天王と呼ばれる事になる四人の女達によって王国軍は悉く殲滅され、二十万以上の兵士が失われた。
そして、迷宮と後に「始まりの開拓地」と呼ばれる開拓地は不可侵の存在として認識される事になった。
第二次迷宮戦役での無理な派兵により、治安は乱れて国内は荒れ、経済は破綻して貧困に喘ぎ、国力は弱体化して隣国からの侵略を許した。
だが、その他国の侵略からもシルベルト伯爵領だけは揺らがなかった。四天王が他国の軍をも討ち滅ぼしたのである。
◆
女は目を醒ました。思考の定まらないまま人の気配のする方へ歩いていく。その先に見たのは、酷く懐かしく感じる四人の人の姿だった。目頭が熱くなる。これはきっと夢なのだろう。天国なのかと一瞬考えてしまったが、天国だとは思いたくない。知らず嗚咽が漏れた。
「お、目が醒めたのかい。婆さん並みに寝坊助だったな」
「こりゃ、こやつに比べればわしは居眠り程度じゃ!」
「あっはっはっは、違いない」
「一体何を泣いているのですか?」
答えが返る事など期待していない口調で尋ねられた後、女は優しく抱きしめられた。
「泣かないで、ね?」
もう一人に女は頭を撫でられた。
女は心が満たされるのを感じた。
◆
ザムトは椅子にもたれ掛かり、微睡みの中にいる。既に為すことは何も無い。ただ無為に時を過ごすだけだ。
その横にエリザは控えている。このまま永い時を過ごすことに不満は無い。
0
お気に入りに追加
3
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
魔王へのレクイエム
浜柔
ファンタジー
五百年前に世界を滅ぼし掛けた魔王はダンジョンの奥底で微睡み続ける。
その魔王を訪れる者が居て、その魔王の真実を探す者が居て、そしてその魔王と因縁を持つ者が五百年前から召喚された。
※重複投稿。https://ncode.syosetu.com/n5955ez/
冒険者の狂詩曲《ラプソディ》~碧い瞳の治療術士~
浜柔
ファンタジー
冒険者とは体の良い言葉だ。その日暮らしの人々を言い換えただけなのかも知れない。
社会の歯車に成り得ず、夢と自由を求めた人々。
だが彼らとて生きている。人生と言う旅路に於いて冒険をしているのだ。
そしてその冒険は終着点に辿り着くまで途切れることは無い。
そう、冒険者は今日を生き、過去と明日を夢に見る。
※タイトルを変更しました(主題を原点に戻し、副題はシンプルに)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)
浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。
運命のまま彼女は命を落とす。
だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。
天ぷらで行く!
浜柔
ファンタジー
天ぷら屋を志しているあたし――油上千佳《あぶらあげ ちか》、24歳――は異世界に連れて来られた。
元凶たる女神には邪神の復活を阻止するように言われたけど、あたしにそんな義理なんて無い。
元の世界には戻れないなら、この世界で天ぷら屋を目指すしかないじゃないか。
それ以前に一文無しだから目先の生活をどうにかしなきゃ。
※本作は以前掲載していた作品のタイトルを替え、一人称の表現を少し変更し、少し加筆したリライト作です。
ストーリーは基本的に同じですが、細かい部分で変更があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる