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第六七話 光の中に
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累造達の許に最初に現れたのはデイだった。
「デイさん!? どうしてここに?」
「夢を見た」
またその一言だけだ。
デイはセウスペルに黙祷を捧げた後、累造に魔動三輪を引き渡す。
「乗り心地は悪いがな」
このままでは乗り心地が悪すぎて実用には向かないと改良を続けていたが、急遽組み上げてここに来たのだと言う。
不思議にも程がある話ながら、今の累造にはとても有り難い。
「ありがとうございます」
これで迎えが到着しなくても帰ることはできる。だが、セウスペルをそのままにしておく気にはなれなかった。
次に到着したのはニナーレだった。累造の連絡から一時間余りしか経っていない。
ニナーレはゴッツイ商会に累造達のことを伝えた後、魔法も駆使してここまで走ったのだ。装いは神秘的な雰囲気も漂う神官服となっている。自らの本分に従ってのことであった。
その姿に累造が目を瞠る。普段にどちらかと言えばだらしない身形をしているニナーレのそんな姿に驚いた。
「累造さん、あの……」
累造の奇妙な気配にニナーレが恐る恐る尋ねると、累造は目を瞬かせていつもの雰囲気に戻った。
「良かったらセウスペルに祈ってあげてください」
「はい、それこそ神官の務めですの」
祈るのは後から来る予定のケメンを待ってのことである。
ケメンが到着を待つ間に累造はデイに手伝って貰いながら魔動三輪を馬車の荷車へと繋ぐ。
馬具を魔動三輪に引っ掛けるような形になるため、走る途中でずれないように固定するのに少々手間取った。
ケメンが到着したのは昼過ぎだった。
「君は一体何を考えているんだ!」
ケメンの第一声は叱責である。
「僕に連絡も寄越さず旅に出るとは! もう少し、自分達の立場を自覚したまえ!」
累造はそれを一人で甘んじて受ける。レザンタを出て直ぐルミエに助けられたのだ。彼女が居なければ大事になっていた。
以前、ルゼが一人で他の町まで仕入れに旅した時には、せいぜい冷やかしに絡まれる程度だった。だが、それだけで済んでいたのは、ルゼがどう見ても貧乏商人にしか見えなかった事と、ケメンが陰から護衛していた事による。見た目そのものは以前と大差なくとも、仕入れるもので懐具合は判るものだ。金を持っているのが知られれば襲撃される可能性が高くなる。今回の旅でも累造やルゼが気付かない内にルミエが撃退した事も幾度か有ったのだ。
叱責に続いての説教で聞かされた内容には累造も肝が冷えた。
ケメンはルゼも叱責するつもりだったようだが、ルゼのことは一瞥しただけだった。ルゼは未だセウスペルの傍で涙を流している。そんな彼女を叱責するなどできないのだ。
「す、すみません」
「まあ、いい。君達が無事で良かった」
一通り説教したことで落ち着いたららしいケメンが、安堵したように言った。
「それと、セウスペルの最期の様子を教えてくれるかい?」
それに答えて累造は語った。
話を聞き終わると、ケメンはルゼへと歩み寄って静かにその横に膝を付けた。
「ルゼ」
「セウスペルが……、セウスペルが……死んじゃった……よ」
ケメンの呼び掛けに答えるようにルゼが呟いた。
「彼は優しかった」
ケメンは静かに語り掛けた。
「彼は雄々しかった」
ルゼの頬に伝う涙をケメンは指で拭う。
「そんな彼への最高の手向けは君の笑顔じゃないかな? ルゼ?」
「でも! でも!」
ルゼがケメンに縋って号泣する。
そんなルゼの頭をケメンは静かに撫で続けた。
「そろそろ始めますの」
ルゼが少し落ち着くのを見計らい、ニナーレは告げた。皆が離れるまで、一呼吸、二呼吸と心を静めていく。ルゼもケメンが抱きかかえるようにして移動させた。
シャラーン。
打ち鳴らす鈴の音が響く。
シャラーン。
鈴の音を聞く者達が固唾を呑んでニナーレに注目する。
シャラーン。
そしてニナーレはゆっくりと舞い、唄う。
常世の神、隠世の神、死せる命に安らぎを、死せる命に導きを。
天の神、大地の神、新たな命と成し賜え、新たな息吹と成し賜え。
時の神、人の神、いつかまた時の交わらん事を、いつかまた道の交わらん事を。
ニナーレの故郷の言葉で唄われる祝詞の意味が判るのはニナーレの他には累造だけだ。それでも涼やかな声で唄われる祝詞は荘厳な響きとともに聞く者の心に染み渡る。
鎮魂の祝詞に合わせるかのようにニナーレの周囲に光の粒が舞う。光の粒は次第に数を増やし、いつしか光の渦を為す。
渦となった光はセウスペルの亡骸へと向かい、包んでいく。ついにはセウスペルの全てが光の粒で覆われた。
シャラーン。
舞が終わった。
シャラーン。
その瞬間、光の粒が弾けて天へと続く一条の光となる。そして光の中に弾けずに残った光の粒が集まって馬の姿を為していく。その姿は紛うことなくセウスペルである。
光の馬はルゼに顔を寄せて嘶いた。
『幸せだった』
累造には嘶きではなく言葉として聞こえた。
ルゼが呆けたように見詰める中、光の馬は続けて累造に顔を寄せて嘶いた。
『ママ。また会えた』
その声を累造がそう認識した瞬間、脳裏に様々な光景が走馬燈のように流れた。
セウスペルが初めて虹の橋雑貨店を訪れた時の様子。幼い女の子をあやすように戯れるセウスペル。ブラシで手入れされるセウスペル。走り回るセウスペル。馬車を引くセウスペル。
咄嗟にセウスペルの記憶だと思った。だが、セウスペルは視界の中だ。セウスペルの記憶であればあり得ない。
不意に水桶に映る女性の顔が見えた。ルゼとよく似ている。
そう、これも誰かさんの思い出。彼女もまた彼の死を悼んでいる。
それを察し、累造は静かにその光景を見続けた。
そしてそれを終えた後、光の馬は天へと昇り、光の粒となって消えた。
居合わせた者は皆、それを呆けたように見送った。それは神官のニナーレとて同じだった。
「ニナーレさんの故郷の葬儀はこんなに凄いものなんですか?」
累造は詮無きことをついつい尋ねてしまった。
「私も初めての経験ですの」
ところが、ニナーレの答えは困惑を伴っていた。
ニナーレが纏っていたのは「精霊の光」と呼ばれるもので、祝詞に乗せた魔力が光の玉となって漂う現象だと言う。精霊の光を発現させられるのは神官長とデージと他数名くらいのもので、ニナーレが発現させたのは初めての経験らしい。光が渦になったり馬の形を成したりしたことに至っては伝説でしか知らないとも。
「それじゃ、ニナーレさんは伝説を為したってことでは?」
ニナーレは首を横に振る。そしてじっと累造を見詰める。
「私のものとは別の魔力を感じましたの。セウスペルさんと……累造さんから……」
「き、気のせいでは?」
心当たりの有る累造は思わず目を彷徨わす。
それに気付いたかどうかニナーレが嘆息した。
「そう言うことにしておきますの」
「そ、そうですねっ」
挙動不審の累造が可笑しかったのかニナーレがクスッと笑う。
「理由はともあれ、精霊の光のことを感じられたのは幸せですの」
ニナーレは少しだけ嬉しそうにした。
ルゼが未だ光が消えた先を見続ける中、デイが一人になっているのを見計らって累造は声を掛けた。
「デイさん、ルゼさんはお母様はルゼさんと似てらっしゃったのでしょうか?」
「似ている。あの娘が母親に似ているんだがな」
「ありがとうございます」
ただの確認だった。
続けて累造はケメンに一つの提案した。少しだけ難しい顔をしたものの、ケメンは首を縦に振った。
そして後のことはケメンに任せてレザンタへの帰路に就く。
魔動三輪でルゼ、ニナーレ、ルミエの乗った馬車を引く。ルゼが後ろ髪を引かれていたが、累造としてはこの後の光景を見たくもなく、ルゼにも見せたくなかったため、少し強引に連れ帰ることにした。ルゼに見せたくないと言うのはケメンも同意見だった。
残るケメンは累造の提案を実行する。提案を受けた時には一瞬だけ迷ったが、ルゼにはその方が良いと感じた。
埋めるだけの予定だったセウスペルの骸から皮を剥ぎ、骨の一部を抜き取る。デイもこれを手伝った。皮は鞣してルゼの靴やベルトに、骨は装飾品に加工する予定である。
そうした後でセウスペルを埋葬した。
魔動三輪はゆっくり進んでいる。馬車の普段の速さと同じ位だ。それでも累造は必死である。鉄の車輪でサスペンションも無いため、振動がもろに伝わる。それを砂利道で走らせるのだから、座席が有っても座れたものではなかった。そのため、ずっと中腰で運転する形になり、足腰が悲鳴を上げる。更に、握力もどんどん奪われていった。
結果、一時間程で音を上げた。
「面目有りません」
項垂れてもレザンタはまだまだ遠い。
「あの、私が動かしてみても良いですか?」
ルミエは累造が運転しているのを見て興味を持ったらしい。
既に疲れ果てていた累造は頷いた。
だが、数分後に後悔する。
「ひゃーっははははは、ひゃっほー」
ルミエがどんどんスピードを上げ、危ない人と化したのだ。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ま、ま、ま」
「も、も、も、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ」
「じじじじじ」
累造、ルゼ、ニナーレである。激しく揺れる馬車の中、それぞれ「ちょっと待って」「もっとゆっくり」「自分で走れば良かった」と言いたいのだが、歯の根が合わず、言葉にはならない。ルゼもこの時ばかりは哀しんでいたことも忘れたようであった。
一方で累造は、ルミエがスカートをはためかせているせいで下着がモロに見えているのを、知らせるべきかどうか悩んでもいる。
「デイさん!? どうしてここに?」
「夢を見た」
またその一言だけだ。
デイはセウスペルに黙祷を捧げた後、累造に魔動三輪を引き渡す。
「乗り心地は悪いがな」
このままでは乗り心地が悪すぎて実用には向かないと改良を続けていたが、急遽組み上げてここに来たのだと言う。
不思議にも程がある話ながら、今の累造にはとても有り難い。
「ありがとうございます」
これで迎えが到着しなくても帰ることはできる。だが、セウスペルをそのままにしておく気にはなれなかった。
次に到着したのはニナーレだった。累造の連絡から一時間余りしか経っていない。
ニナーレはゴッツイ商会に累造達のことを伝えた後、魔法も駆使してここまで走ったのだ。装いは神秘的な雰囲気も漂う神官服となっている。自らの本分に従ってのことであった。
その姿に累造が目を瞠る。普段にどちらかと言えばだらしない身形をしているニナーレのそんな姿に驚いた。
「累造さん、あの……」
累造の奇妙な気配にニナーレが恐る恐る尋ねると、累造は目を瞬かせていつもの雰囲気に戻った。
「良かったらセウスペルに祈ってあげてください」
「はい、それこそ神官の務めですの」
祈るのは後から来る予定のケメンを待ってのことである。
ケメンが到着を待つ間に累造はデイに手伝って貰いながら魔動三輪を馬車の荷車へと繋ぐ。
馬具を魔動三輪に引っ掛けるような形になるため、走る途中でずれないように固定するのに少々手間取った。
ケメンが到着したのは昼過ぎだった。
「君は一体何を考えているんだ!」
ケメンの第一声は叱責である。
「僕に連絡も寄越さず旅に出るとは! もう少し、自分達の立場を自覚したまえ!」
累造はそれを一人で甘んじて受ける。レザンタを出て直ぐルミエに助けられたのだ。彼女が居なければ大事になっていた。
以前、ルゼが一人で他の町まで仕入れに旅した時には、せいぜい冷やかしに絡まれる程度だった。だが、それだけで済んでいたのは、ルゼがどう見ても貧乏商人にしか見えなかった事と、ケメンが陰から護衛していた事による。見た目そのものは以前と大差なくとも、仕入れるもので懐具合は判るものだ。金を持っているのが知られれば襲撃される可能性が高くなる。今回の旅でも累造やルゼが気付かない内にルミエが撃退した事も幾度か有ったのだ。
叱責に続いての説教で聞かされた内容には累造も肝が冷えた。
ケメンはルゼも叱責するつもりだったようだが、ルゼのことは一瞥しただけだった。ルゼは未だセウスペルの傍で涙を流している。そんな彼女を叱責するなどできないのだ。
「す、すみません」
「まあ、いい。君達が無事で良かった」
一通り説教したことで落ち着いたららしいケメンが、安堵したように言った。
「それと、セウスペルの最期の様子を教えてくれるかい?」
それに答えて累造は語った。
話を聞き終わると、ケメンはルゼへと歩み寄って静かにその横に膝を付けた。
「ルゼ」
「セウスペルが……、セウスペルが……死んじゃった……よ」
ケメンの呼び掛けに答えるようにルゼが呟いた。
「彼は優しかった」
ケメンは静かに語り掛けた。
「彼は雄々しかった」
ルゼの頬に伝う涙をケメンは指で拭う。
「そんな彼への最高の手向けは君の笑顔じゃないかな? ルゼ?」
「でも! でも!」
ルゼがケメンに縋って号泣する。
そんなルゼの頭をケメンは静かに撫で続けた。
「そろそろ始めますの」
ルゼが少し落ち着くのを見計らい、ニナーレは告げた。皆が離れるまで、一呼吸、二呼吸と心を静めていく。ルゼもケメンが抱きかかえるようにして移動させた。
シャラーン。
打ち鳴らす鈴の音が響く。
シャラーン。
鈴の音を聞く者達が固唾を呑んでニナーレに注目する。
シャラーン。
そしてニナーレはゆっくりと舞い、唄う。
常世の神、隠世の神、死せる命に安らぎを、死せる命に導きを。
天の神、大地の神、新たな命と成し賜え、新たな息吹と成し賜え。
時の神、人の神、いつかまた時の交わらん事を、いつかまた道の交わらん事を。
ニナーレの故郷の言葉で唄われる祝詞の意味が判るのはニナーレの他には累造だけだ。それでも涼やかな声で唄われる祝詞は荘厳な響きとともに聞く者の心に染み渡る。
鎮魂の祝詞に合わせるかのようにニナーレの周囲に光の粒が舞う。光の粒は次第に数を増やし、いつしか光の渦を為す。
渦となった光はセウスペルの亡骸へと向かい、包んでいく。ついにはセウスペルの全てが光の粒で覆われた。
シャラーン。
舞が終わった。
シャラーン。
その瞬間、光の粒が弾けて天へと続く一条の光となる。そして光の中に弾けずに残った光の粒が集まって馬の姿を為していく。その姿は紛うことなくセウスペルである。
光の馬はルゼに顔を寄せて嘶いた。
『幸せだった』
累造には嘶きではなく言葉として聞こえた。
ルゼが呆けたように見詰める中、光の馬は続けて累造に顔を寄せて嘶いた。
『ママ。また会えた』
その声を累造がそう認識した瞬間、脳裏に様々な光景が走馬燈のように流れた。
セウスペルが初めて虹の橋雑貨店を訪れた時の様子。幼い女の子をあやすように戯れるセウスペル。ブラシで手入れされるセウスペル。走り回るセウスペル。馬車を引くセウスペル。
咄嗟にセウスペルの記憶だと思った。だが、セウスペルは視界の中だ。セウスペルの記憶であればあり得ない。
不意に水桶に映る女性の顔が見えた。ルゼとよく似ている。
そう、これも誰かさんの思い出。彼女もまた彼の死を悼んでいる。
それを察し、累造は静かにその光景を見続けた。
そしてそれを終えた後、光の馬は天へと昇り、光の粒となって消えた。
居合わせた者は皆、それを呆けたように見送った。それは神官のニナーレとて同じだった。
「ニナーレさんの故郷の葬儀はこんなに凄いものなんですか?」
累造は詮無きことをついつい尋ねてしまった。
「私も初めての経験ですの」
ところが、ニナーレの答えは困惑を伴っていた。
ニナーレが纏っていたのは「精霊の光」と呼ばれるもので、祝詞に乗せた魔力が光の玉となって漂う現象だと言う。精霊の光を発現させられるのは神官長とデージと他数名くらいのもので、ニナーレが発現させたのは初めての経験らしい。光が渦になったり馬の形を成したりしたことに至っては伝説でしか知らないとも。
「それじゃ、ニナーレさんは伝説を為したってことでは?」
ニナーレは首を横に振る。そしてじっと累造を見詰める。
「私のものとは別の魔力を感じましたの。セウスペルさんと……累造さんから……」
「き、気のせいでは?」
心当たりの有る累造は思わず目を彷徨わす。
それに気付いたかどうかニナーレが嘆息した。
「そう言うことにしておきますの」
「そ、そうですねっ」
挙動不審の累造が可笑しかったのかニナーレがクスッと笑う。
「理由はともあれ、精霊の光のことを感じられたのは幸せですの」
ニナーレは少しだけ嬉しそうにした。
ルゼが未だ光が消えた先を見続ける中、デイが一人になっているのを見計らって累造は声を掛けた。
「デイさん、ルゼさんはお母様はルゼさんと似てらっしゃったのでしょうか?」
「似ている。あの娘が母親に似ているんだがな」
「ありがとうございます」
ただの確認だった。
続けて累造はケメンに一つの提案した。少しだけ難しい顔をしたものの、ケメンは首を縦に振った。
そして後のことはケメンに任せてレザンタへの帰路に就く。
魔動三輪でルゼ、ニナーレ、ルミエの乗った馬車を引く。ルゼが後ろ髪を引かれていたが、累造としてはこの後の光景を見たくもなく、ルゼにも見せたくなかったため、少し強引に連れ帰ることにした。ルゼに見せたくないと言うのはケメンも同意見だった。
残るケメンは累造の提案を実行する。提案を受けた時には一瞬だけ迷ったが、ルゼにはその方が良いと感じた。
埋めるだけの予定だったセウスペルの骸から皮を剥ぎ、骨の一部を抜き取る。デイもこれを手伝った。皮は鞣してルゼの靴やベルトに、骨は装飾品に加工する予定である。
そうした後でセウスペルを埋葬した。
魔動三輪はゆっくり進んでいる。馬車の普段の速さと同じ位だ。それでも累造は必死である。鉄の車輪でサスペンションも無いため、振動がもろに伝わる。それを砂利道で走らせるのだから、座席が有っても座れたものではなかった。そのため、ずっと中腰で運転する形になり、足腰が悲鳴を上げる。更に、握力もどんどん奪われていった。
結果、一時間程で音を上げた。
「面目有りません」
項垂れてもレザンタはまだまだ遠い。
「あの、私が動かしてみても良いですか?」
ルミエは累造が運転しているのを見て興味を持ったらしい。
既に疲れ果てていた累造は頷いた。
だが、数分後に後悔する。
「ひゃーっははははは、ひゃっほー」
ルミエがどんどんスピードを上げ、危ない人と化したのだ。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ま、ま、ま」
「も、も、も、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ」
「じじじじじ」
累造、ルゼ、ニナーレである。激しく揺れる馬車の中、それぞれ「ちょっと待って」「もっとゆっくり」「自分で走れば良かった」と言いたいのだが、歯の根が合わず、言葉にはならない。ルゼもこの時ばかりは哀しんでいたことも忘れたようであった。
一方で累造は、ルミエがスカートをはためかせているせいで下着がモロに見えているのを、知らせるべきかどうか悩んでもいる。
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