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1423.尾
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荷物であれば青い布にくるんでオリエが抱えて素速く天高く跳び上がることで周囲に気付かれずに運び出せる。
しかし同じ調子で普通の人を運ぶことはできない。
もしやったら衝撃で死んでしまう。
木箱なんかであれば壊れても作り直せば良いが、人はそうも行かない。
「ねえオリエ。ほんとにこうしないといけないの?」
納屋の中、オリエの姉はオリエが密かに運び込んだ荷車の荷台に括り付けられながら尋ねた。
腕は特別に設けられた手摺りを掴むために自由だが、身体は身動ぎすら難しい。
「うん。ちょっと危ないから」
「ここはオリエちゃんに任せよう」
「そうね……」
オリエがきっぱりと肯定したからか、姉の夫が妻を宥め、妻も諦めたように夫に頷いた。
出発だ。
家は監視はされていても包囲まではされていないので出ることはできる。
納屋の扉を開け放ち、荷車を牽いたオリエが道路へと出る。
「出たぞ!」
どこからかそんな声が響いて辺りがざわめいたが、オリエはそんな物音を置き去りにして加速する。
「きゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」
その荷車の中から絹を裂くような女の悲鳴が長く長く尾を引いた。
しかし同じ調子で普通の人を運ぶことはできない。
もしやったら衝撃で死んでしまう。
木箱なんかであれば壊れても作り直せば良いが、人はそうも行かない。
「ねえオリエ。ほんとにこうしないといけないの?」
納屋の中、オリエの姉はオリエが密かに運び込んだ荷車の荷台に括り付けられながら尋ねた。
腕は特別に設けられた手摺りを掴むために自由だが、身体は身動ぎすら難しい。
「うん。ちょっと危ないから」
「ここはオリエちゃんに任せよう」
「そうね……」
オリエがきっぱりと肯定したからか、姉の夫が妻を宥め、妻も諦めたように夫に頷いた。
出発だ。
家は監視はされていても包囲まではされていないので出ることはできる。
納屋の扉を開け放ち、荷車を牽いたオリエが道路へと出る。
「出たぞ!」
どこからかそんな声が響いて辺りがざわめいたが、オリエはそんな物音を置き去りにして加速する。
「きゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」
その荷車の中から絹を裂くような女の悲鳴が長く長く尾を引いた。
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