上 下
169 / 1,609

514.線引き

しおりを挟む
 好むと好まざるとに拘わらず、ダンジョンで建築される建物が増えて行く。
 ダンジョン族が無視できない規模に膨らんだこともあり、彼らをターゲットにした大手の商店がダンジョン庁の進出を切っ掛けにして次々と進出を決めた。この商店そのものと、商店の関係者の住居が建築されつつあるのだ。
 ただ、魔王には少々懸念が有った。

「階段に近すぎる」

 階段と転移陣の在る周辺には建てて欲しくない。ダンジョン庁の出張所は距離感に節度が有った。冒険者ギルドの監視が目的だから当然の帰結だろう。
 しかし商店はより階段に近い位置を指向する。これを放置すれば早晩階段周辺が建物に埋もれ、移動が阻害されてしまうだろう。

「線引きしたらどうダ?」

 魔王はこれまでかなりアバウトに建物を設置していた。しかし地上の人々の振る舞いに何か制限を加えるなら、何らかの基準は必要だろう。

「あまり気は進まないが、仕方ないな」

 焼きそば屋や冒険者ギルドは階段から200メートル余り離れた場所に在る。だから階段から半径200メートルを建築不可とすることにした。
 ただ、おふれを出したりはしないので地上の人々自身に気付いて貰わなければならない。
 そして魔王は早速実行に移し、幾つかの建築中の建物が消失させた。ちょうど境界線に建てられつつあった建物は境界線ですっぱり切断されて内側だけが消滅した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)

浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。 運命のまま彼女は命を落とす。 だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。

魔法道具はじめました

浜柔
ファンタジー
 趣味で描いていた魔法陣によって間川累造は異世界へと転移した。  不思議なことに、使えない筈の魔法陣がその世界では使える。  そこで出会ったのは年上の女性、ルゼ。  ルゼが営む雑貨店で暮らす事になった累造は、魔法陣によって雑貨店の傾いた経営を立て直す。 ※タイトルをオリジナルに戻しました。旧題は以下です。 「紋章魔法の始祖~魔法道具は彼方からの伝言~」 「魔法陣は世界をこえて」

魔王へのレクイエム

浜柔
ファンタジー
五百年前に世界を滅ぼし掛けた魔王はダンジョンの奥底で微睡み続ける。 その魔王を訪れる者が居て、その魔王の真実を探す者が居て、そしてその魔王と因縁を持つ者が五百年前から召喚された。 ※重複投稿。https://ncode.syosetu.com/n5955ez/

冒険者の狂詩曲《ラプソディ》~碧い瞳の治療術士~

浜柔
ファンタジー
 冒険者とは体の良い言葉だ。その日暮らしの人々を言い換えただけなのかも知れない。  社会の歯車に成り得ず、夢と自由を求めた人々。  だが彼らとて生きている。人生と言う旅路に於いて冒険をしているのだ。  そしてその冒険は終着点に辿り着くまで途切れることは無い。  そう、冒険者は今日を生き、過去と明日を夢に見る。 ※タイトルを変更しました(主題を原点に戻し、副題はシンプルに)

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...