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286~292 連射

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【286.オリエが狩りをする一方】
「魔王、もっとあたる銃は無いのか?」
「わたしはもっと威力が欲しいです」

 オリエが狩りをする一方で、ハンターとヒーラーが魔王に直訴していた。

「無いこともない」

 魔王はショットガンとアサルトライフルをコピーする。レミントンM870とM-16だ。

「お、良さそうなのがあるじゃん!」
「大きいですね……」
「威力があるのはそれなりにな。扱えそうにないか?」
「いいえぇ、とーっても頼もしくて素敵ですぅ」
「「……」」

 ヒーラーは妖艶な笑みで応えた。
 その普段とのギャップに、魔王とハンターは微妙な気分だ。



【287.新しい銃を手に】
 ショットガンやアサルトライフルをいきなり実戦投入も危険なので、魔王は射撃練習場を用意した。ハンターはショットガンを、ヒーラーはアサルトライフルを的に向けて構える。

 ガチャ、ヴォン。ガチャ、ヴォン。ガチャ、ヴォン。
 ダン。……ダン。……ダン。

「はっはー、これなら当たるぜ」
「でもそれ、離れたら威力が弱いですよね」
「むぅ……」

 ハンターは考え込む。

「そんときゃ、近付きゃいいさ」

 近付いたら本末転倒だ。

「そっちこそ1回撃つ度によろめいてるじゃねぇか」
「くっ……」

 ヒーラーはハンターからの思わぬ反撃に反論できなかった。



【288.ヒーラーはよろめく】
「魔王さん、もっと反動の少ない銃はありませんか?」
「反動が小さければ威力も弱いぞ」
「やはりこれしかありませんね……」

 ヒーラーはまたアサルトライフルを構える。

 ダン。

「ん……」

 ダン。

「あっ……」

 ダン。

「はあん!」
「セヒイラ! その声止めろ!」

 銃を撃つ度に翻弄されながらも、ヒーラーは何故か顔を赤らめる。その口から漏れる声は次第に色っぽくなっていた。
 だからハンターは堪らずヒーラーを止めた。



【289.漏れる声は色っぽく】
「声? 出していませんよ?」

 ヒーラーには自覚が無かったらしい。
 ハンターは反応しそうになった部分から意識を逸らしつつ反論する。

「出てた! めっちゃ出てた!」

 ヒーラーは納得しかねる様子で魔王に意見を求めるように視線を送る。

「出てたぞ」
「ええー」

 ますます納得しかねる様子で、ヒーラーはまた銃を構える。

 ダン。

「あん……」

 反動で上がった銃口をそのままに、ヒーラーは動きを止める。

「出てました」

 そして「てへっ」と、小さく舌を出した。



【290.ヒーラーは舌を出した】
「セヒイラは小さい銃にしとけ」
「いいえ、そんな。これはこれで良いものですわ。感じるものがございます」

 ヒーラーはアサルトライフルを抱き締め、拒絶するように小刻みに頭を振る。

「だああ! 確かに感じてたようだけどよ!」

 むしゃくしゃして頭を掻きむしるハンターだ。ヒーラーから銃を撃つ度に艶っぽい声を出されたら、気が散ってしょうがない。

「魔王! 何かスカッとする銃は無いのか!?」
「フルオートで撃ってみるのはどうだ?」

 魔王はもう一挺のアサルトライフルをコピーしてハンターに手渡した。フルオートに設定済みだ。

「フルオート?」
「つまり連射だ」



【291.つまり連射】
 ヴォダダダダダ。ヴォダダダダダダ。

「うひょおおお! ご機嫌だぜええ!」

 ハンター、ハイテンション。ヒーラーもうずうずだ。

「わたしも! わたしのこれもあんな風に撃てないのですか!?」

 ヒーラーは手にしたアサルトライフルを魔王に突き出した。設定まではまだ解っていないのだ。

「できるぞ」

 魔王は設定を切り替えてやる。
 受け取ったヒーラーは直ぐに的に向けて射撃体勢だ。

 ヴォダダダダダ。

「はあああんあんああん!」

 ヒーラーのあまりの声に、魔王もハンターもヒーラーを振り向いて目を剥いた。魔王は見た目では判らないけど。



【292.怪しい声の一方】
 ヒーラーが怪しい声を出している頃、剣士、槍士、魔法使いの3人は交替でテレビゲームに勤しんでいた。テニスだ。

 パコッ! タッ!

「むっ」

『ゲームセット!』

「ゾッケンは全然上達しないわね」
「このゲームが難しいんだよ。こんなの自分で動いた方が簡単だ」

 剣士は両腕両脚を投げ出した。
 槍士は頷く。

「かも知れぬな」
「マジで自分でやってみればいいんじゃね? 何もこんな指先だけのゲームに拘らなくていいだろ」

 閃いたとばかりに言う剣士だ。

「乗ろう」
「泣きを見ないでよ?」

 槍士が頷く一方、魔法使いは余裕綽々だ。リアルのテニスでも同じ結果になるつもりなのだ。
 夕食時に剣士が要領を得ないながらもテニスコートを無心すれば、魔王はあっさり了承した。準備は簡単に整った。
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