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196~201
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【196.流せない】
魔法使いとヒーラーが元の服に着替えてから紙袋をぶら下げて居間に戻れば、まだ麻雀は続いていた。違いがあるとするなら、麻雀に飽きたハンターが抜け、日課と入浴を終えたオリエがすっぽんぽんのまま加わっているくらいだ。ハンターは鼻の下を伸ばしてオリエを凝視している。
しかしあっさり流せないのがヒーラーと魔法使いであった。
「オリエさん! 服を着てください!」
「ほら、レンジもこっちに来なさい」
ヒーラーは悲鳴のような声を上げ、魔法使いは片手の紙袋を手放して、その手でハンターの耳を摘み上げて引っ張って行く。
一瞬きょとんとしたオリエであったが、自らの身体に視線を落とし、汗が引いているのを確かめる。
「あ、もういいかな。じゃあ、代わりにやってて」
オリエは立ち上がって、代わりにヒーラーを座らせた。
「え? え? え?」
ヒーラーは雀卓と化したこたつと左右を見回して、ひたすら頭に疑問符を浮かべた。
【197.呼んだら】
「痛い! 痛いから、ちょっと待てって!」
ハンターは魔法使いに為すがままにされながら叫んだ。振り解こうと思えば振り解けるのだが、そうはしない。これもある種のじゃれ合いだ。
「そんなに裸が見たいなら、あたしが見せてあげるって言ったでしょ」
「お、おう……」
改めてマジ顔ではっきり言われると、返答に困るハンターである。嫉妬と綯い交ぜになっていても好意は素直に嬉しい。しかしそれとこれとは話が別。魔法使いの裸がいつでも見られるとしても、他の女の裸も見たい気持ちは別なのだ。だから「もう見ません」なんて口が裂けても言えない。魔法使いはその場限りの言い逃れで誤魔化せば良いと思う相手でも無い。
自分の部屋まで行き着いた魔法使いはハンターの耳を放してドアを開け、振り返る。
「ちょっと待ってて。呼んだら入って来るのよ?」
「え……」
訳も判らず、扉の前に取り残されて茫然とするハンターであった。
【198.はははは入って】
魔法使いは両の拳を胸元で握って足踏みのようにぴょんぴょん跳ねながら、キャー、キャー、キャーと、声にならない悲鳴を上げた。ハンターに見せようと思ったミニスカートを改めて穿いてみたまでは良かったが、いざ穿いたら穿いたで恥ずかしくなって決心し切れなくなったのだ。
しかしハンターをいつまでも待たせる訳にも行かない。
「おーい、いつまで待てばいいんだー?」
ハンターも痺れを切らしつつあるのが声で判る。だから覚悟を決め、ドアを開ける。
「いいいいいいわ。はははは入って」
火が出るように顔が熱く、声がどうしようもなく震えた。
【199.高鳴り】
魔法使いの部屋のドアが開いたのは、ハンターがいい加減待ちくたびれた時だった。いくら恋仲であっても一言言わなきゃ気が済まないと、この時は思っていたハンターである。
ところがその言葉は出なかった。いや、出せなかったが正解だろう。いつに無く恥ずかしそうに顔を赤らめている魔法使いの色っぽさに、思わず生唾を飲み込んだ。
「お、おう……」
漸く絞り出した声も呻くようなものだった。
魔法使いはハンターにチラッと視線を送っただけで踵を返して部屋の奥へと行く。
そのいつもとは異なる様子に、ハンターの胸が高鳴る。そして視界に入る、魔法使いのミニスカートから伸び出たいつもなら見えない生の太股が、その高鳴りを一層強くさせる。
「ふあっ!」
突然の奇声にビクッとなる魔法使いの後ろで、ハンターは期せずして襲って来た激しい動悸に、胸を押さえて荒い息を吐いた。
【200.くるりと】
ビクッとなった魔法使いは恐る恐るの風情で振り返るが、ハンターの浮かべるどこか間の抜けた表情に、肩から力が抜けた。すると逆に余裕も生まれる。
「何おたついているのよ?」
「そ、その格好……」
ハンターはそれだけを絞り出した。
「いいでしょ。魔王がくれた異世界の服よ」
魔法使いはその場でくるりと一回転する。
「み、短くないか……?」
「見せてあげるって言ったでしょ?」
魔法使いは蠱惑的な笑みを浮かべると、ハンターに向けてお尻を突き出し、挑発するようにゆっくりとミニスカートの裾をたくし上げる。すると、ハンターの喉が釣られるように上がった。
【201.淫靡な空気】
魔法使いのたくし上げられたミニスカートから覗くのは、すけすけの下着とその下着越しのお尻だ。ハンターは無意識に生唾を飲み込んだ。
魔法使いも次第に荒くなるハンターの息に、この後の成り行きに思いを馳せて胸を高鳴らせる。
「どう? この服。そそるでしょ」
「お、おお……」
ハンターからは言語能力が失われたかのようだ。そして次第に醸し出される淫靡な空気。
しかしその時だった。
「ご飯だよーっ!」
どっきーん!
軽快に響いたオリエの声。魔法使いとハンターの心臓が飛び跳ねた。
「どうしたの?」
「いえ、何でも……」
ハンターと2人、両手を突いて床に突っ伏した魔法使いは絞り出すように言った。
魔法使いとヒーラーが元の服に着替えてから紙袋をぶら下げて居間に戻れば、まだ麻雀は続いていた。違いがあるとするなら、麻雀に飽きたハンターが抜け、日課と入浴を終えたオリエがすっぽんぽんのまま加わっているくらいだ。ハンターは鼻の下を伸ばしてオリエを凝視している。
しかしあっさり流せないのがヒーラーと魔法使いであった。
「オリエさん! 服を着てください!」
「ほら、レンジもこっちに来なさい」
ヒーラーは悲鳴のような声を上げ、魔法使いは片手の紙袋を手放して、その手でハンターの耳を摘み上げて引っ張って行く。
一瞬きょとんとしたオリエであったが、自らの身体に視線を落とし、汗が引いているのを確かめる。
「あ、もういいかな。じゃあ、代わりにやってて」
オリエは立ち上がって、代わりにヒーラーを座らせた。
「え? え? え?」
ヒーラーは雀卓と化したこたつと左右を見回して、ひたすら頭に疑問符を浮かべた。
【197.呼んだら】
「痛い! 痛いから、ちょっと待てって!」
ハンターは魔法使いに為すがままにされながら叫んだ。振り解こうと思えば振り解けるのだが、そうはしない。これもある種のじゃれ合いだ。
「そんなに裸が見たいなら、あたしが見せてあげるって言ったでしょ」
「お、おう……」
改めてマジ顔ではっきり言われると、返答に困るハンターである。嫉妬と綯い交ぜになっていても好意は素直に嬉しい。しかしそれとこれとは話が別。魔法使いの裸がいつでも見られるとしても、他の女の裸も見たい気持ちは別なのだ。だから「もう見ません」なんて口が裂けても言えない。魔法使いはその場限りの言い逃れで誤魔化せば良いと思う相手でも無い。
自分の部屋まで行き着いた魔法使いはハンターの耳を放してドアを開け、振り返る。
「ちょっと待ってて。呼んだら入って来るのよ?」
「え……」
訳も判らず、扉の前に取り残されて茫然とするハンターであった。
【198.はははは入って】
魔法使いは両の拳を胸元で握って足踏みのようにぴょんぴょん跳ねながら、キャー、キャー、キャーと、声にならない悲鳴を上げた。ハンターに見せようと思ったミニスカートを改めて穿いてみたまでは良かったが、いざ穿いたら穿いたで恥ずかしくなって決心し切れなくなったのだ。
しかしハンターをいつまでも待たせる訳にも行かない。
「おーい、いつまで待てばいいんだー?」
ハンターも痺れを切らしつつあるのが声で判る。だから覚悟を決め、ドアを開ける。
「いいいいいいわ。はははは入って」
火が出るように顔が熱く、声がどうしようもなく震えた。
【199.高鳴り】
魔法使いの部屋のドアが開いたのは、ハンターがいい加減待ちくたびれた時だった。いくら恋仲であっても一言言わなきゃ気が済まないと、この時は思っていたハンターである。
ところがその言葉は出なかった。いや、出せなかったが正解だろう。いつに無く恥ずかしそうに顔を赤らめている魔法使いの色っぽさに、思わず生唾を飲み込んだ。
「お、おう……」
漸く絞り出した声も呻くようなものだった。
魔法使いはハンターにチラッと視線を送っただけで踵を返して部屋の奥へと行く。
そのいつもとは異なる様子に、ハンターの胸が高鳴る。そして視界に入る、魔法使いのミニスカートから伸び出たいつもなら見えない生の太股が、その高鳴りを一層強くさせる。
「ふあっ!」
突然の奇声にビクッとなる魔法使いの後ろで、ハンターは期せずして襲って来た激しい動悸に、胸を押さえて荒い息を吐いた。
【200.くるりと】
ビクッとなった魔法使いは恐る恐るの風情で振り返るが、ハンターの浮かべるどこか間の抜けた表情に、肩から力が抜けた。すると逆に余裕も生まれる。
「何おたついているのよ?」
「そ、その格好……」
ハンターはそれだけを絞り出した。
「いいでしょ。魔王がくれた異世界の服よ」
魔法使いはその場でくるりと一回転する。
「み、短くないか……?」
「見せてあげるって言ったでしょ?」
魔法使いは蠱惑的な笑みを浮かべると、ハンターに向けてお尻を突き出し、挑発するようにゆっくりとミニスカートの裾をたくし上げる。すると、ハンターの喉が釣られるように上がった。
【201.淫靡な空気】
魔法使いのたくし上げられたミニスカートから覗くのは、すけすけの下着とその下着越しのお尻だ。ハンターは無意識に生唾を飲み込んだ。
魔法使いも次第に荒くなるハンターの息に、この後の成り行きに思いを馳せて胸を高鳴らせる。
「どう? この服。そそるでしょ」
「お、おお……」
ハンターからは言語能力が失われたかのようだ。そして次第に醸し出される淫靡な空気。
しかしその時だった。
「ご飯だよーっ!」
どっきーん!
軽快に響いたオリエの声。魔法使いとハンターの心臓が飛び跳ねた。
「どうしたの?」
「いえ、何でも……」
ハンターと2人、両手を突いて床に突っ伏した魔法使いは絞り出すように言った。
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