27 / 1,609
188~195
しおりを挟む
【188.むっつり】
ヒーラーはとある下着に目を留めた。
「む、向こうが透けてます……」
「うわぁ、すっごい。こんなの穿く意味あるのかしら」
「ひえっ!」
ヒーラーが慌てて振り返ると、魔法使いが覗き込んでいた。
「セヒイラって、こんなのに興味があるの?」
「い、いえ! そんな!」
「うわー、案外むっつりなんだ」
「ち、違います! オリエさんじゃないんですから」
へっくちっ!
日課になった鍛練の途中、くしゃみが出て不思議そうに首を傾げるオリエである。
【189.光に透かす】
「だけどこれ、穿いた方が卑猥じゃない?」
魔法使いはヒーラーが手にしていたのと同じすけすけの下着を光に透かす。見えそうで見えないのか、見えなそうで見えるのか微妙なところだ。
「ど、どうなんでしょう……」
ヒーラーは顔を赤らめてそっぽを向いた。声と同じように手が少し震えている。想像したらしい。
「あたしはレンジで試してみるけど、セヒイラはどうする? ゾッケンなら絶対食い付くし、ヤンリークもぶすっとした顔で野獣になるかもよ?」
ヒーラーが誘えば剣士は勿論、槍士もイチコロだとの評価である。
「は、破廉恥です!」
真っ赤になって叫ぶヒーラーが可笑しくて、魔法使いは腹を抱えて笑った。
【190.穿いたまま】
「だけどさ。考えてみたら、異世界の人だって重ね着するわよね」
笑いが治まった魔法使いは人差し指で浮かんだ涙を拭いながら言った。
ヒーラーもハッとした顔をする。
「そうでした。こんなのだけを着るなんてあり得ませんよね……」
「まあ、こんなに短いスカートと組み合わせたら、あんまり変わらないけどね!」
未だミニスカート姿の魔法使いである。因みに今は下着を着けていない。試着しては脱ぎ、試着しては脱ぎを繰り返しで気に入る下着を探す最中なのだ。ヒーラーと2人だけと言う安心感から極めて無防備になっている。
「ところで、いつまでその短いのを穿いたままなんですか?」
「そ、それは……」
ヒーラーの疑問に、魔法使いは顔を赤らめて応えた。ハンターに見せようと言うのだろう。
「はいはい。ごちそうさま」
ヒーラーは目を眇めて応えた。
【191.決めたら早い】
魔法使いとヒーラーは、探した中で最も気に入った下着を穿いた。
そうして下半身が落ち着いたら、次に気になるのが上半身である。下着は多く上下セットになっているものだ。
魔法使いは下着を着けたマネキンを改めて見る。
「あの人形が胸に着けているのって何かしら?」
「胸を隠すための服ではありませんか?」
「……そりゃ、そうよね」
「……あれも重ね着したら、薄着でも胸が透けないのでは?」
「……」
魔法使いは暫し考えた。
「着けてみる」
決めたら早い。あっと言う間にパンツ1枚を残して服を脱いだ。
【192.こんなに広い】
「こんな所で脱がないでください!」
ヒーラーは顔真っ赤で声を荒らげた。一方の魔法使いはそんなヒーラーに呆れ顔だ。
「セヒイラとあたししか居ないって」
「だからって、こんなに広い場所で!」
「広さ関係無くない?」
幾ら広くても、この衣裳部屋の中には他に誰も居ないのだ。魔法使いは及び腰なヒーラーに痺れを切らして、脱がしに掛かる。
「ほら! セヒイラも脱いじゃいなさい!」
「や、止めてぇぇ!」
抵抗虚しくパンツ1枚に剥かれるヒーラーだった。
「ひ、酷いです……」
そして、よよよと泣き崩れる真似をした。他に誰も居ないのを理解はしているようで、然程ダメージは見られないのであった。
【193.時間掛かりそう】
「「う……」」
魔法使いとヒーラーはブラジャーを着けようとして固まった。パンツ以上に何かが上手く行かない。
「すっごい時間掛かりそうなんだけど……」
「奇遇ですね。わたしもそう思ったところです」
顔を見合わせてくすりと笑う2人。そして案の定、これと思う品物を探し当てるまでに、嫌と言うほどの時間を費やすこととなった。
「疲れた……」
「はい……」
暫しの間へたり込む2人であった。
【194.冷や汗】
魔法使いとヒーラーは、そこが何のために在るのか判らないまでも、レジから紙の手提げ袋を見付け出した。そしてヒーラーは下着を20セットばかり詰めた袋を1つだけ手に提げる。ところが魔法使いは下着を詰められるだけ詰めた袋を両手に5袋ずつだ。最早、手提げ袋が半円状に広がっている。
「マホ、持ち過ぎです」
「だって、折角だから」
「だけど、まだ服を探す途中なんですよ? それを持ち歩くんですか?」
「あ……」
魔法使いは冷や汗を垂らした。服はもう探し終わった気分になっていたのだ。
「あ、明日にしよ! ね!」
魔法使いを半眼で睨むヒーラーではあったが、改めて衣裳部屋をぐるっと見回し、違う冷や汗を垂らした。
「そうしましょう」
ヒーラーも広さに怖じ気づいたのだった。
【195.可笑しい】
帰ると決めたらヒーラーはまた下着コーナーへと踵を返し、持てるだけの下着を紙袋に詰め始めた。
「あっきれたー」
魔法使いの眉尻と口角は限界に近く下がっている。醸し出されるのは心底呆れた風情だ。
「わ、わたしだって……、その……」
口を尖らせながらぼそぼそと反論するヒーラーの言葉は尻窄みだ。現金なのは自覚しているらしい。
しかしそんな挙動不審なヒーラーも愛しげなもので、魔法使いにはそれがどこか可笑しい。
プッ。
魔法使いは思わず噴き出した。慌てて口を押さえるが、肩の震えは止まらない。
ヒーラーは恨みがましい視線を向けた。しかし時として笑いは伝染するものらしい。釣られたように笑い出す。
そしてそれから暫く、声を上げて笑い合う2人であった。
一過性の病のようなものだろう。
ヒーラーはとある下着に目を留めた。
「む、向こうが透けてます……」
「うわぁ、すっごい。こんなの穿く意味あるのかしら」
「ひえっ!」
ヒーラーが慌てて振り返ると、魔法使いが覗き込んでいた。
「セヒイラって、こんなのに興味があるの?」
「い、いえ! そんな!」
「うわー、案外むっつりなんだ」
「ち、違います! オリエさんじゃないんですから」
へっくちっ!
日課になった鍛練の途中、くしゃみが出て不思議そうに首を傾げるオリエである。
【189.光に透かす】
「だけどこれ、穿いた方が卑猥じゃない?」
魔法使いはヒーラーが手にしていたのと同じすけすけの下着を光に透かす。見えそうで見えないのか、見えなそうで見えるのか微妙なところだ。
「ど、どうなんでしょう……」
ヒーラーは顔を赤らめてそっぽを向いた。声と同じように手が少し震えている。想像したらしい。
「あたしはレンジで試してみるけど、セヒイラはどうする? ゾッケンなら絶対食い付くし、ヤンリークもぶすっとした顔で野獣になるかもよ?」
ヒーラーが誘えば剣士は勿論、槍士もイチコロだとの評価である。
「は、破廉恥です!」
真っ赤になって叫ぶヒーラーが可笑しくて、魔法使いは腹を抱えて笑った。
【190.穿いたまま】
「だけどさ。考えてみたら、異世界の人だって重ね着するわよね」
笑いが治まった魔法使いは人差し指で浮かんだ涙を拭いながら言った。
ヒーラーもハッとした顔をする。
「そうでした。こんなのだけを着るなんてあり得ませんよね……」
「まあ、こんなに短いスカートと組み合わせたら、あんまり変わらないけどね!」
未だミニスカート姿の魔法使いである。因みに今は下着を着けていない。試着しては脱ぎ、試着しては脱ぎを繰り返しで気に入る下着を探す最中なのだ。ヒーラーと2人だけと言う安心感から極めて無防備になっている。
「ところで、いつまでその短いのを穿いたままなんですか?」
「そ、それは……」
ヒーラーの疑問に、魔法使いは顔を赤らめて応えた。ハンターに見せようと言うのだろう。
「はいはい。ごちそうさま」
ヒーラーは目を眇めて応えた。
【191.決めたら早い】
魔法使いとヒーラーは、探した中で最も気に入った下着を穿いた。
そうして下半身が落ち着いたら、次に気になるのが上半身である。下着は多く上下セットになっているものだ。
魔法使いは下着を着けたマネキンを改めて見る。
「あの人形が胸に着けているのって何かしら?」
「胸を隠すための服ではありませんか?」
「……そりゃ、そうよね」
「……あれも重ね着したら、薄着でも胸が透けないのでは?」
「……」
魔法使いは暫し考えた。
「着けてみる」
決めたら早い。あっと言う間にパンツ1枚を残して服を脱いだ。
【192.こんなに広い】
「こんな所で脱がないでください!」
ヒーラーは顔真っ赤で声を荒らげた。一方の魔法使いはそんなヒーラーに呆れ顔だ。
「セヒイラとあたししか居ないって」
「だからって、こんなに広い場所で!」
「広さ関係無くない?」
幾ら広くても、この衣裳部屋の中には他に誰も居ないのだ。魔法使いは及び腰なヒーラーに痺れを切らして、脱がしに掛かる。
「ほら! セヒイラも脱いじゃいなさい!」
「や、止めてぇぇ!」
抵抗虚しくパンツ1枚に剥かれるヒーラーだった。
「ひ、酷いです……」
そして、よよよと泣き崩れる真似をした。他に誰も居ないのを理解はしているようで、然程ダメージは見られないのであった。
【193.時間掛かりそう】
「「う……」」
魔法使いとヒーラーはブラジャーを着けようとして固まった。パンツ以上に何かが上手く行かない。
「すっごい時間掛かりそうなんだけど……」
「奇遇ですね。わたしもそう思ったところです」
顔を見合わせてくすりと笑う2人。そして案の定、これと思う品物を探し当てるまでに、嫌と言うほどの時間を費やすこととなった。
「疲れた……」
「はい……」
暫しの間へたり込む2人であった。
【194.冷や汗】
魔法使いとヒーラーは、そこが何のために在るのか判らないまでも、レジから紙の手提げ袋を見付け出した。そしてヒーラーは下着を20セットばかり詰めた袋を1つだけ手に提げる。ところが魔法使いは下着を詰められるだけ詰めた袋を両手に5袋ずつだ。最早、手提げ袋が半円状に広がっている。
「マホ、持ち過ぎです」
「だって、折角だから」
「だけど、まだ服を探す途中なんですよ? それを持ち歩くんですか?」
「あ……」
魔法使いは冷や汗を垂らした。服はもう探し終わった気分になっていたのだ。
「あ、明日にしよ! ね!」
魔法使いを半眼で睨むヒーラーではあったが、改めて衣裳部屋をぐるっと見回し、違う冷や汗を垂らした。
「そうしましょう」
ヒーラーも広さに怖じ気づいたのだった。
【195.可笑しい】
帰ると決めたらヒーラーはまた下着コーナーへと踵を返し、持てるだけの下着を紙袋に詰め始めた。
「あっきれたー」
魔法使いの眉尻と口角は限界に近く下がっている。醸し出されるのは心底呆れた風情だ。
「わ、わたしだって……、その……」
口を尖らせながらぼそぼそと反論するヒーラーの言葉は尻窄みだ。現金なのは自覚しているらしい。
しかしそんな挙動不審なヒーラーも愛しげなもので、魔法使いにはそれがどこか可笑しい。
プッ。
魔法使いは思わず噴き出した。慌てて口を押さえるが、肩の震えは止まらない。
ヒーラーは恨みがましい視線を向けた。しかし時として笑いは伝染するものらしい。釣られたように笑い出す。
そしてそれから暫く、声を上げて笑い合う2人であった。
一過性の病のようなものだろう。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)
浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。
運命のまま彼女は命を落とす。
だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。
魔法道具はじめました
浜柔
ファンタジー
趣味で描いていた魔法陣によって間川累造は異世界へと転移した。
不思議なことに、使えない筈の魔法陣がその世界では使える。
そこで出会ったのは年上の女性、ルゼ。
ルゼが営む雑貨店で暮らす事になった累造は、魔法陣によって雑貨店の傾いた経営を立て直す。
※タイトルをオリジナルに戻しました。旧題は以下です。
「紋章魔法の始祖~魔法道具は彼方からの伝言~」
「魔法陣は世界をこえて」
冒険者の狂詩曲《ラプソディ》~碧い瞳の治療術士~
浜柔
ファンタジー
冒険者とは体の良い言葉だ。その日暮らしの人々を言い換えただけなのかも知れない。
社会の歯車に成り得ず、夢と自由を求めた人々。
だが彼らとて生きている。人生と言う旅路に於いて冒険をしているのだ。
そしてその冒険は終着点に辿り着くまで途切れることは無い。
そう、冒険者は今日を生き、過去と明日を夢に見る。
※タイトルを変更しました(主題を原点に戻し、副題はシンプルに)
魔王へのレクイエム
浜柔
ファンタジー
五百年前に世界を滅ぼし掛けた魔王はダンジョンの奥底で微睡み続ける。
その魔王を訪れる者が居て、その魔王の真実を探す者が居て、そしてその魔王と因縁を持つ者が五百年前から召喚された。
※重複投稿。https://ncode.syosetu.com/n5955ez/
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる