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180~187

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【180.下着コーナー】
「や、やっと見付かった……」
「そ、遭難するかと思いました……」

 魔法使いとヒーラーは息も絶え絶えになりながら下着コーナーに辿り着いた。下着コーナーだけでも、縦横それぞれ端から端まで歩いて1分も掛かろうかと言う広さだ。近くに行けば直ぐに判りそうなものだが、近くに行くまでに迷った。そして別にそうする必要が無いにも拘わらず、先の見えない焦りからついつい足が速くなり、終には駆け足で探し回ったのだ。疲れようと言うものである。

「早速、どれか穿いてみましょ」
「そうしましょう」

 2人は地味なバラ売りの下着を手に取った。横目で少々派手な下着を盗み見るが、そちらに手を伸ばす勇気はまだ無い。
 小さく頷いて、「こっちよね?」と前後を確かめつつ下着に足を通した。



【181.すとーん】
「ゆるゆるなんだけど……」
「え?」
「ほら、これ」

 魔法使いは両脚に少しだけ隙間を空けてまっすぐ立ち、両手でミニスカートをたくし上げる。
 眼前に股間を晒されたヒーラーは下着を穿く途中で手を止めて目を見開いた。

「は、はしたないです!」
「どうせあたしとセヒイラしか居ないわよ」
「それはそうですが……」

 ところが、ヒーラーが魔法使いを説得し倦ねている間に、魔法使いの下着が堪えるかのようにジリジリとずり下がった後、すとーんと一気に足首まで落ちた。

「ひえっ!」
「これじゃ、穿けないわ。セヒイラの方はどう?」

 ヒーラーは前屈みで足の付け根で手を止めていた。

「お尻が入りません……」



【182.パッツパツ】
「セヒイラってそんなに太ってたっけ?」
「マホこそそんなに幼児体型でした?」
「「まさかぁ」」

 魔法使いとヒーラーは顔を見合わせて苦笑いした。

「交換してみましょう」
「そうよね」

 2人は穿こうとしていた下着を交換して足を通す。

「ゆるゆるです……」
「入ったけど、パッツパツよ」

 ヒーラーの方が魔法使いよりお尻が大きいのは動かないが、問題はそこではない。

「そりゃ、これだけあるんだから、サイズも色々有る筈よね」
「ですよね」

 今更ながらに気付いた2人であった。



【183.微妙に違う】
「よくよく見たら、同じ見た目のものが縦に並んでるじゃない」
「大きさの違い……でしょうか?」

 魔法使いとヒーラーは困り顔で顔を見合わせる。大量生産の既製品を初めて見る2人にとって、この陳列は未知の世界なのだ。

「比べてみよっか」
「そうしましょう」

 2人はそれぞれの段から下着を取って重ねてみる。

「やっぱり大きさが微妙に違うわね」
「これなら合うのがきっと有ります」
「試着してみましょ」
「はい」

 2人は大きさ違い全てに足を通すことにした。



【184.商品タグ】
「しかしこれ、全部穿いてみないといけないんでしょうか」

 ピッタリのサイズの下着を引き当てたヒーラーは呟いた。穿いてみなければ選べないのでは時間が掛かり過ぎる。

「それよー。何か判るようにしてても良さそうよね」
「もしかして、この変な札が関係しません?」

 ヒーラーは商品タグを指の先でぷらぷら振った。

「あー、その邪魔なやつね。比べてみよっか」

 2人は商品タグを見比べる。

「これ、文字なのでしょうか……」

 ヒーラーはそれぞれ「S」「M」「L」と印刷された部分を指す。

「文字かは判らないけど、他に違う所も無いよね」

 魔法使いは今穿いている「M」と印刷された下着を脱いで、別の「M」と印刷された下着を穿いてみる。

「同じだったわ」



【185.内側の背中の方】
「大きさも判ったんだから、色々着けてみましょ」
「ですね」

 魔法使いとヒーラーは下着を物色する。色もデザインも今まで見たことの無いものばかりだ。それでいてどこか心惹かれるものがある。だから少し視線を動かすだけで、あっちにこっちに目移りしっぱなしだ。

「でもさ。さっきみたいな札は有っても、さっきのが書いてないのも有ったりしない?」
「それなんですけど、ちょうど内側の背中の方に、小さな布が縫い付けてありますよ」

 ヒーラーに言われて魔法使いは下着の内側を確かめる。

「あ、ほんとだ」
「何か他にも書いてありますけど、サイズはこれで判るのでは?」
「やったわ! セヒイラ、良く見付けたわ!」
「それほどでも……」

 褒められて照れるヒーラーであった。……若干お調子者なのかも知れない。



【186.Tバック】
 魔法使いとヒーラーは改めてサイズタグ比較して、小さい方から「S」「M」「L」「LL」と書かれているのを理解した。魔法使いに合うサイズは「M」で、ヒーラーに合うサイズは「L」。最初に2人が穿いてみた下着はそれぞれ「LL」と「S」だった。
 そこまで判ったからにはそれぞれに分かれて物色を始める。
 そして魔法使いはヒーラーに向け、1枚の下着を広げて掲げた。

「ねぇ、ねぇ、セヒイラ! こんなのどう?」
「は、破廉恥です!」

 際どいTバックであった。
 形はオリエが付けていたビキニアーマーのようなものだ。しかし魔法使いが手にしている下着は薄く柔らかいので、防御力など欠片ほども期待できない。

「異世界の人って、やっぱりオリエさんみたいな人ばっかりなのかしら?」
「だとしたら、オリエさんより破廉恥です!」

 ガツン。カシャカシャカシャン。

 2人様子を監視していた魔王は目の前の麻雀牌の上に突っ伏した。そんな訳あるか、と。



【187.チョンボ】
「魔王、何やってんだ?」
「すまんな。どうにも手が悪くてな」

 魔王は誤魔化した。事実、悪いと言って良いほどの手が続いていたから、嘘ではない。ずっと上がることもできずに居た。

「だからって、場を崩さないでくれ」
「ああ。今回は我のチョンボにしよう」

 と、進言する魔王であったが、支払う点棒が足りなかい。ハコったのだ。

「や、やった! 初めて最下位脱出だ! さあ、次だ! 勝つまでやるぞ!」

 剣士は喜ぶが、槍士とハンターはそんな剣士に胡乱な目を向けた。
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