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173~179
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【173.切れそう】
男達が麻雀に熱中している時、女達は服を取っ替え引っ替え試着していた。
「ふあっ! こんなに滑らかな着心地の服なんて初めて!」
「シルクではなくて、コットンですよね? それでこの肌触りですか」
「これ見てよ! 織ってる糸がほっそいの!」
「凄いですね……。こんなに細くしたら紡ぐ途中で直ぐに切れそうなのに。それこそマホみたいに」
「何よそれ! あたしが直ぐにキレるみたいじゃないの!」
「ほら、キレた」
「ぐぬぬ……」
魔法使いは顔を真っ赤にしながら拳を戦慄かさせた。
【174.すーすー】
「まったくもう」
魔法使いはプリプリ怒るが、いつものことなのでヒーラーはスルーする。
「そんなことより、これどうでしょう? すっごいひらひらです!」
ヒーラーがくるりと一回転すると、着ている夏向きのフレアワンピースの裾がふわりと広がった。明るい色彩がヒーラーの清楚さを一層引き立てるようだ。
「悔しいけど、似合ってるわ! あたしのはどう?」
魔法使いは肩出しのブラウスにプリーツのミニスカートで決めている。
「素敵です!」
ヒーラーも絶賛だ。しかし魔法使いがスカートの裾を抑えて表情を曇らせる。
「どうかしました?」
「何か股がすーすーする……」
【175.別の何かが】
「それだけ短ければ風が直接当たりますよね。どこにとは言いませんが」
「それに、少し動いただけで絶対見えちゃうよね?」
魔法使いはミニスカートの裾を引っ張り下げる。下がりはしないのだが。
「恐らくは……。だけど、異世界の人は平気で穿いているのでしょうか……」
「まさかぁ。オリエさんじゃあるまいし。……それとも異世界の人はみんなオリエさんみたいなのかしら?」
「それこそまさかです。別の何かがきっと有ります」
魔法使いとヒーラーは眉を顰めてにらめっこする。
すると、パサッと何かが落ちる音がした。
「「こ、これは……」」
下着のカタログであった。
世話の焼ける……。
魔王は独りごちた。勿論カタログは魔王の仕業である。
【176.失敗したかな】
「「破廉恥な!」」
下着のカタログを開いた瞬間、魔法使いとヒーラーは声を揃えた。
「異世界の女性って、こんな格好が当たり前なの!?」
「オリエさんのような方ばかりなのでしょうか!」
その瞬間、魔王はカクッと肩を落とした。そして「んな訳、あるか!」と内心で突っ込むが、はたと気付く。
魔王自身はその目で異世界を見知っているが、彼女達は知らない。知らなければ最初に見たものに印象が左右されやすいのだ。
魔王は「失敗したかな?」と首を傾げる。
「魔王。魔王の番だぞ」
ハンターに呼び掛けられて、魔王は麻雀の途中だったのを思い出した。
「すまぬ。少し考え事をした」
魔王は牌を引く。
「あ、ツモ」
「ぐはぁ!」
剣士が頭を抱えた。麻雀はまだまだ続くらしい。
【177.凄くリアル】
「さすがにこんな服はあり得ないわよね……」
「まったく破廉恥すぎます」
そう結論付いたので、魔法使いは下着のカタログを閉じようとした。
しかしそこでヒーラーが待ったを掛ける。
「待ってください。この絵って、凄くリアルじゃありませんか? まるで現実を写し取ったみたいに」
「そう言われれば……」
2人は改めてカタログをしげしげと見る。
「どうやって描いてるのかしら……」
2人は首を捻った。
そりゃ、写真は現実を写し取るものだからな……。
魔王は聞き耳を立てながら、どう説明したものかと、頭を捻った。
【178.重ね着】
突然、ヒーラーに閃きが走る。
「もしかしたら、この絵の通りにする必要は無いのではありませんか?」
「どう言うこと?」
「このオリエさんが着るような服と先程の服を重ね着すれば良いのです」
寒ければ誰しも重ね着するのだから、重ね着の概念を誤解することはない。重ね着によってミニスカートで股がすーすーしなくなるのも容易に想像が付く。
「あ、そっか! そうよね! セヒイラって頭良いわ!」
「そ、それ程でも……」
褒められて、顔を赤らめつつ照れるヒーラーである。割とお調子者らしい。この世界でも常識的な知恵の筈なのだが。
「じゃあ、早速この服を探してみましょう」
「みましょう!」
魔法使いとヒーラーは衣裳部屋の探索を始めた。写真のことは脇に置いたらしい。
何せこの部屋は広大だ。魔王は大手のデパートの売り場を丸ごとコピーしたのだから。
【179.うっかり】
「ちょっとぉ、どんだけ広いのよぉ」
「これが全部衣類だから信じられませんね……」
魔法使いとヒーラーは衣裳部屋を右往左往するが、目的の下着コーナーに行き着かない。少々うんざり気味だ。
もしも彼女らが案内板の文字を読めたら疾うに辿り着いていることだろう。読めなくても、経験則が利用できるなら概ねどこら辺に在るかが想像できるものだが、生憎とその経験も無い。
これには魔王もうっかりを認めざるを得なかった。だがしかし、のこのこ助言に赴いたりしようものなら監視していたことを知られてしまう。
頑張れー。
魔王は内心で2人にエールを送った。
男達が麻雀に熱中している時、女達は服を取っ替え引っ替え試着していた。
「ふあっ! こんなに滑らかな着心地の服なんて初めて!」
「シルクではなくて、コットンですよね? それでこの肌触りですか」
「これ見てよ! 織ってる糸がほっそいの!」
「凄いですね……。こんなに細くしたら紡ぐ途中で直ぐに切れそうなのに。それこそマホみたいに」
「何よそれ! あたしが直ぐにキレるみたいじゃないの!」
「ほら、キレた」
「ぐぬぬ……」
魔法使いは顔を真っ赤にしながら拳を戦慄かさせた。
【174.すーすー】
「まったくもう」
魔法使いはプリプリ怒るが、いつものことなのでヒーラーはスルーする。
「そんなことより、これどうでしょう? すっごいひらひらです!」
ヒーラーがくるりと一回転すると、着ている夏向きのフレアワンピースの裾がふわりと広がった。明るい色彩がヒーラーの清楚さを一層引き立てるようだ。
「悔しいけど、似合ってるわ! あたしのはどう?」
魔法使いは肩出しのブラウスにプリーツのミニスカートで決めている。
「素敵です!」
ヒーラーも絶賛だ。しかし魔法使いがスカートの裾を抑えて表情を曇らせる。
「どうかしました?」
「何か股がすーすーする……」
【175.別の何かが】
「それだけ短ければ風が直接当たりますよね。どこにとは言いませんが」
「それに、少し動いただけで絶対見えちゃうよね?」
魔法使いはミニスカートの裾を引っ張り下げる。下がりはしないのだが。
「恐らくは……。だけど、異世界の人は平気で穿いているのでしょうか……」
「まさかぁ。オリエさんじゃあるまいし。……それとも異世界の人はみんなオリエさんみたいなのかしら?」
「それこそまさかです。別の何かがきっと有ります」
魔法使いとヒーラーは眉を顰めてにらめっこする。
すると、パサッと何かが落ちる音がした。
「「こ、これは……」」
下着のカタログであった。
世話の焼ける……。
魔王は独りごちた。勿論カタログは魔王の仕業である。
【176.失敗したかな】
「「破廉恥な!」」
下着のカタログを開いた瞬間、魔法使いとヒーラーは声を揃えた。
「異世界の女性って、こんな格好が当たり前なの!?」
「オリエさんのような方ばかりなのでしょうか!」
その瞬間、魔王はカクッと肩を落とした。そして「んな訳、あるか!」と内心で突っ込むが、はたと気付く。
魔王自身はその目で異世界を見知っているが、彼女達は知らない。知らなければ最初に見たものに印象が左右されやすいのだ。
魔王は「失敗したかな?」と首を傾げる。
「魔王。魔王の番だぞ」
ハンターに呼び掛けられて、魔王は麻雀の途中だったのを思い出した。
「すまぬ。少し考え事をした」
魔王は牌を引く。
「あ、ツモ」
「ぐはぁ!」
剣士が頭を抱えた。麻雀はまだまだ続くらしい。
【177.凄くリアル】
「さすがにこんな服はあり得ないわよね……」
「まったく破廉恥すぎます」
そう結論付いたので、魔法使いは下着のカタログを閉じようとした。
しかしそこでヒーラーが待ったを掛ける。
「待ってください。この絵って、凄くリアルじゃありませんか? まるで現実を写し取ったみたいに」
「そう言われれば……」
2人は改めてカタログをしげしげと見る。
「どうやって描いてるのかしら……」
2人は首を捻った。
そりゃ、写真は現実を写し取るものだからな……。
魔王は聞き耳を立てながら、どう説明したものかと、頭を捻った。
【178.重ね着】
突然、ヒーラーに閃きが走る。
「もしかしたら、この絵の通りにする必要は無いのではありませんか?」
「どう言うこと?」
「このオリエさんが着るような服と先程の服を重ね着すれば良いのです」
寒ければ誰しも重ね着するのだから、重ね着の概念を誤解することはない。重ね着によってミニスカートで股がすーすーしなくなるのも容易に想像が付く。
「あ、そっか! そうよね! セヒイラって頭良いわ!」
「そ、それ程でも……」
褒められて、顔を赤らめつつ照れるヒーラーである。割とお調子者らしい。この世界でも常識的な知恵の筈なのだが。
「じゃあ、早速この服を探してみましょう」
「みましょう!」
魔法使いとヒーラーは衣裳部屋の探索を始めた。写真のことは脇に置いたらしい。
何せこの部屋は広大だ。魔王は大手のデパートの売り場を丸ごとコピーしたのだから。
【179.うっかり】
「ちょっとぉ、どんだけ広いのよぉ」
「これが全部衣類だから信じられませんね……」
魔法使いとヒーラーは衣裳部屋を右往左往するが、目的の下着コーナーに行き着かない。少々うんざり気味だ。
もしも彼女らが案内板の文字を読めたら疾うに辿り着いていることだろう。読めなくても、経験則が利用できるなら概ねどこら辺に在るかが想像できるものだが、生憎とその経験も無い。
これには魔王もうっかりを認めざるを得なかった。だがしかし、のこのこ助言に赴いたりしようものなら監視していたことを知られてしまう。
頑張れー。
魔王は内心で2人にエールを送った。
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