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154~160

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【154.ノートパソコン】
「お前もそろそろ寝るがいい」
「うん」

 うつらとし掛けていたオリエに魔王が言うと、オリエは素直に部屋へと戻って行った。

「さて、始めるか」

 オリエを見送った魔王は異世界から新品のノートパソコンとプリンタをコピーする。翻訳したすごろくのマスの文言を、この世界の文字で印刷して貼り付ければ良いのではと考えたのだ。
 そして電源オン。パソコンは起動する。しかし幾らか動かしたところで手が止まる。

「ぐぬぬ……。こやつ、インターネット接続を求めすぎだ……」

 魔王はパタンとこたつに突っ伏した。



【155.古いパソコン】
「やはりネット接続できなきゃならないか……」

 散々試行錯誤してから、魔王は頭を抱えた。これまで異世界のものをこの世界にコピーしても、逆は電波たりともしていない。異世界にどんな影響を及ぼすか判ったものではないからだ。しかしインターネットに繋ぐには少なくとも電波を送り出す必要がある。

「追々だな……」

 今は諦めて、少々古い時代のパソコン一式をコピーする。
 そしてセットアップ。

「これはこれで結構時間が掛かる」

 手作業多めなのだった。



【156.親戚のような】
「おはよう、魔王」

 オリエの起床であった。

「む……、もうそんな時間か……」

 魔王は睡眠を特には必要としない。意識を保ったまま数秒間目を瞑って気を休めるだけで疲れが取れる。だから作業を夜通ししていたのだが、思うようには進んでいなかった。ポチポチとラスタフォントのドットを打っていたのだから印刷以前なのだ。

「魔王、それは?」

 恐らく、オリエでなくてもこたつの上に鎮座する物体が気になっただろう。

「これはパソコンだ」
「パソコン?」
「テレビゲームの親戚のようなものだ」
「ふーん」

 オリエは頭に疑問符を浮かべるばかりで理解からは程遠そうだ。
 そりゃそうである。魔王とて説明できる気がしないのであった。



【157.簡単に】
 魔王はパソコンをこたつから退けた。
 オリエがその様子を目で追いながら尋ねる。

「魔王は何をしていたの?」
「これだ」

 魔王はすごろくを広げて見せた。そしてゲームの内容を簡単に説明する。

「これの文字を貼り替えられないかと思ってな」
「ふーん」

 オリエが顎に手を当てて考える。

「1枚だけなら手書きしたらいいのに」
「う……む……」

 色々応用を利かせたかったからフォント作りに勤しんだ魔王ではあったが、全く反論できなかった。



【158.一緒に】
「魔王、一晩の宿を感謝する」

 5人パーティーが連れ立って魔王の許に現れた。既に帰り支度も万全だ。

「うむ。一晩だけでいいのか?」
「一晩だけでとは……?」

 剣士は首を傾げた。5人パーティーにとっては一晩の宿だけでも格別の厚意だと受け取っている。これ以上は端から考えもしていない。それに、ここまで何泊もしながらやって来たのだから、帰り道でもそう変わらない時間が掛かる見込みだ。あまりのんびりしてもいられない。
 当然ながらこれは彼ら自力で入り口まで戻るつもりだからである。魔王が一瞬で送ってくれるとは想像すらしていない。

「泊まりたければ好きなだけ泊まって行くがいい。帰りは入り口まで送ってやろう」
「え……?」
「そうだよ! 帰る時は魔王に頼んで、それで空く時間で一緒に遊ぼう!」
「〃「ええっ!?」〃」

 オリエの提案に混乱するばかりの5人である。



【159.テレビゲーム】
「あ、あの、遊ぶとは……、オリエさんはここで普段は何をなさっておいでなのですか?」

 ヒーラーが意を決したように尋ねた。他の4人の視線もオリエに集中する。

「テレビゲームかな」
「テレ? 何ですか?」
「テレビゲーム。ゲームだよ」
「は、はあ……」

 ヒーラーが上目遣いに首を傾げ、他の4人も疑問符を浮かべるばかりだ。

「やってみた方が早いだろう」
「魔王の言う通り! だから一緒に遊ぼう!」

 何が「だから」なのかがさっぱりな5人である。



【160.慌てなくて】
「そうしたいのは山々なのですが、稼がないと生活できませんので……」

 ヒーラーが冷や汗混じりに言うと、オリエが困ったように魔王を見る。

「お前達は誰かを養っているのか?」
「いえ、それはありませんが……」
「それなら慌てなくていいだろう。飯もタダで食わせてやろう」

 魔王は言いながら、朝食を準備中のシェフを顧みた。

「5人くらいなら余裕ダ」

 シェフの答えに魔王は頷いた。

「で、どうする? もう暫く泊まって行くか?」

 5人はお互いに顔を見合わせる。思い浮かべるのは昨夜の食事だ。

「〃「是非に!」〃」

 5人の声が揃った。
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